美白は文化になった!ー掘り起こし記事より

「美白は文化になった」2005/02/28付けのハナマルメールより

「中国は巨大な市場で、
上海を中心にヘアカラー文化への興味が高まっている」
2004年6月8日付けの朝日新聞の経済欄に、このような文章を見つけました。この記事は「ヘアカラー市場縮小」という見出しで、これから、成長市場を海外に求めることについての業界最大手社長のコメントです。今や、女性のみならず男性までも髪の毛を染め、「茶髪」という言葉は、もはや死語とも言われます。そんな今、ふとヘアカラー文化って、なんだろうと思いました。

文化の定義は、色々あると思いますが、広辞苑によると「衣食住をはじめ技術・学問・芸術・道徳・宗教・政治など生活形成の様式と内容とを含む。文明とほぼ同義に用いられることが多いが、西洋では人間の精神的生活にかかわるものを文化と呼び、文明と区別する」とあります。友人の大学講師Mr.Michael Narronの論によりますと、まず科学や産業の発達(文明)によって新しいモノやサービスが生まれます。それらが人々の生活の中に浸透していきます(習慣化)。その習慣が、新しい文化を育て、その文化によってさらに新しいモノやサービスがつくられていきます。

文化という視点で、何冊かの本を拾い読みしてみました。「美女の教科書1」には「日本女性はなぜ、ここまでキレイにこだわるのか?」というタイトルで次のように書いてあります。「女はみんなキレイになりたい。でもこの日本ほどに、女が強く激しく”キレイになりたい”と思っている国はない。(中略)誇っていいのか、恥じるべきなのか。少なくとも今は”誇れること”にはなっていない。だからといって、”恥”と決めつけてしまうのはもう少し待ってほしい。なぜなら日本の女は、今すさまじい勢いで”進化”している最中だからだ。日本人が”和服”を脱いでから、まだやっと百年。西洋的な化粧をするようになってからも百年、世界に通用するようになってからも百年、世界に通用する美貌を作らないとマズイと気づいてからも、やはりまだ百年。いやそれを”戦後”と考えるなら、まだ六十年かそこらだ」(287頁)

この意見には、なるほどと納得させられる力があります。また、このような見方もありました。「顔を読む」には「美とは物自体がもつ質ではない。ただそれを見つめるひとの心の中に存在する。人の心はそれぞれに違う美しさを感じとるのである。-デヴィッド・ヒューム  (中略)美しさにはたしかに、文化が違っても見る人が違ってもなんらかの関連性があるのである。そして同時に、普遍的な要素がある」(174頁)

何かしら、しだいに解らなくなってきました。しかし、ホテルマンの書いた本「サービス哲学」に「日本には「セクシー」という文化がない!」という見出しを見つけて溜飲を下げました。「私の言う「セクシー」には二つの意味がある。一つは一般的に言われる「色っぽい」という意味。そしてもう一つは「魅力的な(転じてワクワクする)」という意味だ。(中略)とりわけ色っぽさについては、なぜか「悪しきもの」というマイナーイメージで捉えられているようで、例えば日本の女性はドレスを身にまとうときも、欧米の女性のように胸元まであらわになったものをセクシーに着ることはほとんどないし、男性にしても女性に一輪の薔薇をプレゼントして気分や雰囲気を高めるようなことはまずしないだろう。また、そのようなことをした女性や男性を世間は少し変わった人、とさえ捉えるのではないだろうか。」(83頁)

「ホテルならではのセクシーなサービス」という見出しでは「例えば、ベッドのシーツ一つとっても、素材やデザインの選択に妥協は許されない。計算に計算を重ねるべきであるが、一番いいのは、裸でスリップインしたときを想定して選ぶ方法である。そうすれば肌にも心にも、客室の空気にも優しいシーツはどれかがわかるはずだ」セクシーな文化はないといいながらも、セクシーなサービスは必要であると、説いています。裏を返せば、セクシーな文化が日本において育ってほしい、すでにセクシーな文化が芽吹いているとも読めるのではないでしょうか。

このように考えてくると、やはり、日本人にとって「美白は文化になった」と言えるでしょう。しかし、まだ成熟した文化とは言い難いようです。髪を染める、肌を白くする、そして歯を白くする。美白は、今現在、成熟中の文化です。進化している文化とも言えるでしょう。成熟した文化となるべく、一翼を担うのは、我々歯科医療従事者です。文化の創造に歯科医療が貢献できるということは、なんと素晴らしいことではないでしょうか。もちろん、今までも「健康美」という言葉は耳にしてきました。相対する言葉をあえて探すなら「官能美」でしょうか。健康美が、文字通り身体的な美であるならば、官能美は精神的な美であると言えましょう。広辞苑にも「精神的生活にかかわるものが文化」とあります。まさしく「美白は文化となった!」

参考文献:
広辞苑第五版  新村 出編    岩波書店 1999
美人の教科書1 齋藤 薫     文藝春秋 2002
顔を読む    レズリー・A・ゼブロウィッツ 大修館書店 1999
サービス哲学  窪山哲雄 オーエス出版社   2003
(日本歯科漂白研究会 第3巻第1号会誌投稿 平成17年2月1日発行)
http://connote.jp/hanamaru/007.htmより
2005/020/28のハナマルメールより

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