BBTime 178 泣ムシ歯

BBTime 178 泣ムシ歯
「湯豆腐やいとぐち何もなかりけり」石原八束

湯豆腐の季節になりました。天文館には老舗の湯豆腐「ごん兵衛」があります。年中、湯豆腐がメインです。先代のおかみさんの正調薩摩弁が何よりのご馳走でした。先日、診療室に入るなりメソメソ、グスグスの男の子来院・・今回は泣ムシ歯のお話。

こちらが何もしないのに「メソメソグスグス」だと、冒頭の句のように「緒:いとぐち」がありません。まずは付き添いの方(多くはお母さん)からじっくり歯科治療ヒストリーの聞き取りです。その男の子は麻酔薬の味がまさに苦い記憶のようでした。数日前は奥歯(乳歯)が痛かったようですが、幸いその日は痛みなしでしたのでバナナ味のフッ素を塗って終わりました。

このような場面で母親(父親)を叱る歯科医師もいるようですが、感心しません。現状を踏まえ前向きに考える方がベターでしょう。幸い全て乳歯で永久歯はまだ生えておらず・・ということは永久歯のムシ歯はゼロです、勝負は永久歯、これから生えてくる永久歯を守ることに傾注しましょうと話しました。小生も未熟な頃はきつい口調で「誰がお菓子を買うのですか?」のようなことを言っていました(笑)。

ところで、なぜ泣き虫というのか、泣き人・泣き子ではなく「虫」なのか?答えは中国の道教(どうきょう)にありました。ネットの書き込みによると道教の考えでは丹田に棲む「虫」が感情を司っているようです、「腹の虫がおさまらない」と同じ虫でしょうか。落語の演目に「疝気の虫:せんきのむし」があります。

さて歯科医師は「虫歯」ではなく「ムシ歯」の表記を使います。理由はムシ歯とは「蝕まれた歯」だからです。閑話休題、泣く子のムシ歯治療をどうするか?「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」(あのう、泣くんですけど・笑)が持論・・可能になるまでひたすら待ちます。週一でも週二でも毎日でもいいから練習に来てください、必ず出来る様になります。昔、診療室に入るまで半年かかった女の子がいました。半年経ってやっと診療室へ・・その後十年以上経って、その時の思い出が彼女を歯科衛生士への道へと進ませました。

この女性、1950年生まれのジャズシンガー:デニース・ドナテッリ美魔女はさておき、先の五歳の男の子は平均寿命でこれから先80年以上の人生を歩んでいきます、しかも永久歯とともに!今ここで、嫌いな歯科、行きたくない歯科を大嫌いにしてしまったらお先真っ暗です。勝負は永久歯、この先80年の人生です。美魔女のみならず誰しもキレイに若々しく長寿を味わいたいと思います。五歳でつまずくよりも長い目で考えた方が、その子供さんにとって絶対プラスだと考えます。

今、歯が痛い場合は?・・痛み止めを出すだけのこともあります。無理はしません、乳歯の痛みは長くは続きません、ヒトの体はうまくできています。たとえ乳歯を一本ダメにしても、心に大きなムシ歯を作るよりはベターだと思います。
今回の一言「鳴くまで待とうホトトギス」
今回の曲は「cry」、暗くないcryの曲を三曲ご紹介。おまけで疝気の虫も。7280




追伸:二曲目の「I cry」のバックの曲にやっとたどり着きました。ブレンダ・ラッセルの多分これ「Brenda Russell – Piano In The Dark」です。

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