BBTime 267 歯にのり

BBTime 267 歯にのり
「ある朝の焼海苔にあるうらおもて」小沢信男

解説に「海苔(のり)に裏と表があるくらいは、誰でも承知している。でも、食卓でいちいち裏表を気にしながら食べる人はいないだろう。ご飯などに巻きつけるときに、ほとんどの人は海苔の表を外側にしていると思うが、無意識に近い食べ方である」とありますが、言われてみると・・そうかもねです。よりツヤツヤの方が表でしょう。同じく解説に「コマーシャル・コピーに「上から読んでもヤマモトヤマ、下から読んでもヤマモトヤマ」というのがあった。すかさず「裏から読んでもヤマモトヤマ」と反応したのが・・・」とあります、言われてみると・・これまたそうですね。薄い白い紙にマジックで「山本山」と書いて裏返すとやはり「山本山」。ちなみに「海苔」は春の季語、悪しからず。小学生時分、遠足弁当の定番がお握りの頃、友人の「歯にのり」を見つけては大笑いでしたが、今回は同じノリでも接着剤の「ノリ」のお話・・ノリが違う(笑)。

「歯科用セメント」と呼ばれ、歯科治療の中で「印象採得:いんしょうさいとく:型を取る」後に出来上がったものを歯に固定する際にセメントを使用します。土台(銀製・樹脂製)、インレー(部分的な詰め物、金属製、樹脂製、セラミック製)、クラウン(冠、金属製、樹脂製、セラミック製)などを歯に着ける時に使い、大きく「合着」と「接着」に分かれます。

セメダインのページに接着の基本についてわかりやすく説明してあります。
「接着とは「接着剤を媒介とし、化学的もしくは物理的な力またはその両者によって二つの面が結合した状態」と定義されています。この定義に至る迄には永い歴史がありました。さて、次に接着のメカニズムについて簡単には、1)機械的結合 2)物理的相互作用 3)化学的相互作用の三つがあり、機械的結合とはアンカー効果とか投錨効果とも言われ、材料表面の孔や谷間に液状接着剤が入り込んで、そこで(接着剤が)固まることによって接着が成り立つという考え方です。木材や繊維、皮等の吸い込みのある材料の接着を説明するのに有効です」セメダインのページより

「物理的相互作用とは分子間(引)力といわれるもので、あらゆる分子の間の引き合う力(ファン・デル・ワールス力)をいい、二次結合力ともいって接着剤の基本的な原理とされています。三つ目の化学的相互作用とは、一次結合力といって最も強い接着力が期待される共有結合や水素結合をいいます。即ち「接着」とは、機械的な引っ掛かりや分子間力、原子間力によって成り立っており、そのどれかに原因を絞り込むことができない複雑さをもっています」セメダインより

歯科臨床においては「合着:機械的結合のみ」より「接着」の方が良いと言えます。合着セメントよりも接着セメントをオススメします・・と言っても患者さんの口から「接着セメントで着けてください」とは言いにくいでしょうね。歯科臨床でどのようなことが起きるか簡単に述べます、イメージしてください。二枚の紙をのり付けしましょう。ノリを塗って貼り合わせます→ノリが乾くと(固まると)二枚の紙ははがれません→貼り合わせの部分が濡れたら?→おそらくはがれますよね。「合着セメント:ごうちゃく」だとこれに似たことが起こり得ます。歯にインレー(部分的詰め物)を合着セメントでセット(歯に着ける)しました→数年経ってインレーが外れました・・理由は?いくつかありますが、合着セメントも原因のひとつです。歯とインレーは機械的結合のみです、すなわち顕微鏡レベルでの凸凹にセメントが入り込んで固まっていることでインレーは歯にくっ付いています。数年経つうちに、歯とインレーの間にミクロン単位の隙間ができた場合、その隙間に唾液・水分が侵入します(隙間ができる原因はいくつかあります)。入り込んだバイキン入りの唾液・水分が徐々に歯とインレーの機械的結合を剥がしていくのです。剥がすのみならず、その隙間にムシ歯を作ってしまう可能性も十分あります(二次カリエス)。ただ単に外れることよりも二次カリエスの方が問題なんです。

この二次カリエスは金属(メタル)インレーの場合(メタルインレーの下が二次カリエス)はレントゲンで判別は困難です。メタルインレーが真っ白く写るために二次カリエスの発見はほぼ困難です。あなたの歯に部分的な金属(メタルインレー・アマルガム)がある場合は、定期検診の際にでも「メタルインレー部の二次カリエスは大丈夫でしょうか?」と聞かれてみてはいかがでしょうか。今回の曲は「ABBA」どちらから読んでも「アバ」!3300


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