BBTime 346 無事を買う

BBTime 346 無事を買う
「六月を奇麗な風の吹くことよ」正岡子規

好きな句です。令和になってひと月余り・・早くも数年前から令和であったかのような空気です。句の解説に「旧暦と新暦」に対する人々の感覚のズレが出てきます。『句は明治二十八年七月下旬に、子規が須磨保養院で静養していたときのものだろう。つまり、新暦の「六月」ではない。旧暦から新暦に改暦されたのは、明治六年のことだ。詠まれた時点では二十年少々を経ているわけだが、人々にはまだ旧暦の感覚が根強く残っていたと思われる。戦後間もなくですら、私の田舎では旧暦の行事がいろいろと残っていたほどである。国が暦を換えたからといって、そう簡単に人々にしみついた感覚は変わるわけがない。「六月」と聞けば、大人たちには自然に「水無月」のことと受け取れたに違いない。ましてや、子規は慶応の生まれだ。須磨は海辺の土地だから、水無月ともなればさぞや暑かったろう。しかし、朝方だろうか。そんな土地にも、涼しい風の吹くときもある。それを「奇麗(きれい)な風」と言い止めたところに、斬新な響きがある。いかにも心地よげで、子規の体調の良さも感じられる。「綺麗」とは大ざっぱな言葉ではあるけれど、細やかな形容の言葉を使うよりも、吹く風の様子を大きく捉えることになって、かえってそれこそ心地が良い』(解説より)。今回、奇麗な風の如く「有るような無いような」話。

画像は岐阜県平成村(へなり村・現関市)で製造発売された平成の空気の缶詰(1080円)。ニュースを見て正直「商魂たくましい」と思いました(笑)。平成と令和の空気の何が違う?まさしく気分だけでしょう。その昔、大学時代(小倉在住)年末遠征で渋谷の旅館に泊まった時のこと・・当時九州モンにとって「東急ハンズ」は珍しく、貴重でした。お菓子の空筒に「オナラ」を詰めて先輩に「ハンズで買ったびっくり箱です」と渡したところ、先輩覗き込んでも何も見えず、開封した途端「モアっと」!ひとの好い先輩でしたので怒られずにすみました。皆さんは平成の空気缶のようなモノ(いわば何もないもの)を買いますか?もっとも、この缶は空気よりも平成の空気感を詰めているのでしょうけど。

買い物とは文字通り「モノ」と引き換えにお金を払います。手元に「モノ」が残ります。「モノ」が残らない買い物に「運賃」があります。移動のための支払いで、手元には何も残りません。外食は食べたモノが一時的にお腹に入りますが、直(じき)無くなります。多くの場合、人は体の外の「何か」を得る対価としてお金を払います。

一方、体の外ではなく「体の内」への買い物が塾やジムです。塾に通うと鉛筆を貰えるわけでもなく、ジムに通うたびにスポーツドリンクを飲めるわけでもありません。しかし、頭や体(筋肉)のパワーアップを色々な結果として知ることはできます。

さて、むし歯予防はどうでしょう。予防のための費用・時間の使い方は先の二つとは異なります。1)歯は元々あなたのもの 2)歯の能力は変化しない 3)見た目の変化もない 4)変えないことを買う・無事であることにお金を払う・・むし歯予防は「自分のものを変えないために」お金と時間を費やすとも言えるのです。

治療費や薬代は払いますよ!の声も聞こえてきますが・・これは「病気」という困り事を解決するために、日常生活の支障をなくすためにお金を使います。健康という「普通の状態」を買うとも言えるでしょう。しかし予防は「全く困りごとのない状態」でお金や時間を使うわけです。1)何ももらえない 2)見える変化がない 3)元々自分のモノ 4)必要性を感じない状態・・「むし歯予防」に時間とお金を掛けることは、ちとハードルが高いように思えます。

無事の本来の意味は少々異なるようですが、むし歯予防はいわば「無事を買う」ようなものです。令和の今、日々何もしないのでは「無事」でいることはできないのです、きっと。8650


この「Nothing from Nothing」記憶にありました。BBTime001で御紹介・・「BBTime 001 音楽は白い歯を救う!」は2015年5/6のこと、ちなみに本日6/6はBilly Prestonの命日(2006/06/06没、享年59歳)・・合掌。

BBTime 345 オレオ詐欺

BBTime 345 オレオ詐欺
「金塊のごとくバタあり冷蔵庫」吉屋信子

どう見てもバタは金塊に見えませんが・・『戦後三年目の夏の句。いまでこそバターはどこの家庭にもあるが、戦中戦後はかなりの貴重品であった。冷蔵庫(電気冷蔵庫ではない)のある家も極めて少なく、それを持っている作者は裕福だったと知れるが、その裕福な人が「金塊」のようだというのだから、バターの貴重度が理解できるだろう。冷蔵庫のなかでひっそりと冷えているバター。それは食べ物ではあるけれど、食べるには惜しい芸術品のようなものですらあった。十歳を過ぎるころまで、私などは純正のバターを見たこともない』解説より。小生もマーガリンの方が身近でした。安いバターがマーガリンだと信じていましたから(笑)。ネットに歯磨き粉の記事を見つけました・・それがオレオ詐欺!

画像は記事より拝借。記事によると21歳の『スペインのYouTuberが、行き過ぎたいたずらで15カ月の服役と2万2300ドル(約240万円)の罰金を科された。動画の為に、オレオに歯磨き粉を挟んだクッキーをホームレスに与えたことが原因だ。』『2017年に、レンは100万人いる彼のフォロワーからの「いたずらチャレンジ」に応え、オレオクッキーの中身のクリームを歯磨き粉に入れ替え、動画を制作した。そのクッキーと20ユーロ(約2400円)を、ルーマニア人のホームレスの中年男性に与えると、男性はクッキーを食べた後に嘔吐した。』『後にYouTubeから消去されたそのビデオでレンは、「やりすぎたかも」と言ったが、「でもこれで歯が綺麗になる…きっと彼は貧しくなってから、歯を磨いていないだろうから」と話していた。』以上記事より抜粋。

これは本物のオレオ。歯磨き粉を挟んだクッキーを食べた後に嘔吐したと記事にあります、おそらく「味に驚いて吐き出した」のでしょう。基本的に歯磨き粉は口に入れるもの(勿論、食べ物ではありませんが)ですので、少々食べても、飲み込んでも急性中毒を起こして嘔吐することはありません。ちなみに誤飲の際の対処法はこちら。ホームレスの方は甘いクリームのオレオだと信じて食べた途端に「全く別の味」が口中に広がったのでびっくりして嘔吐(吐き出した)したのだと思います。いずれにせよけしからん話です。『レンは「弱い被害者」に「冷酷な行為」をしてきた、と指摘した』と記事にあります、同感。

気分直し口直しに甘い記事をもうひとつ、ふたつ。小生も好きな「博多通りもん」がギネス認定!記事では『福岡のお土産として定着している饅頭の「博多通りもん」が、このほど「最も売れている製菓あんこ饅頭ブランド」としてギネス世界記録に認定された。博多通りもんは福岡市博多区にある明月堂が製造・販売している饅頭。1993年に「博多西洋和菓子」というコンセプトのもと誕生し、白あんの詰まった独特の舌触りなどが人気を呼んでいる。明月堂の発表によると、年間6400万個生産され、2018年1年間の売り上げは75億9126万1769円。「最も売れている製菓あんこ饅頭ブランド」としてギネス認定された』(記事より)。まだの方は是非ご賞味あれ!

次は「甘くて高い」お話。『
夕張メロン 初競り2玉500万円で落札、「北海道夕張メロンのソーダ」10周年記念/ポッカサッポロフード&ビバレッジ』のタイトル・・『ポッカサッポロフード&ビバレッジは、5月24日に札幌市中央卸売市場で行われた「夕張メロン」の令和元年の初競りで、「夕張メロン」の「秀品」1箱(2玉)を500万円で落札した。同社によれば、今回の企画は「北海道夕張メロンのソーダ」の発売10周年を記念したもの。10年間にわたり「夕張メロン」果汁原料を提供してきた夕張市の生産者へ「感謝の思いをお伝えすべく」初競りに参加し、落札したという』(記事より)。別記事では「商品開発のため香りや色を分析する」とのことで、社長さんも口にできないとか。

画像はマーガリン。ウイキペディアには『
元々バターが高価であることから、バターの代替としてつくられた食品。日本ではかつては人造バターと呼ばれていたが、1952年11月にマーガリンに呼称を改めている』『マーガリンは精製した油脂発酵乳・食塩ビタミン類などを加えて乳化し練り合わせた加工食品で、その製造過程において水素を分子に付加して(水素付加、水素化)、常温固体にしている。バターとの大きな違いは、バターの主原料牛乳だがマーガリンの主原料は植物性動物性油脂である。以前は脂肪鯨油)を用いた物も普及していた』(抜粋)。

マーガリンの歴史になんと「オレオ」が登場!『
名称としてのマーガリンは、1813年フランス化学者であるミシェル=ウジェーヌ・シュヴルールが、動物性脂肪の研究からマルガリン酸を発見したことに遡る。マルガリン(またはマーガリン)という言葉はギリシャ語margarite真珠の意)に由来しており、真珠のように美しく輝くという性質を表現したものである[9]。製品としてのマーガリンは、19世紀末に発明された。1869年ナポレオン3世が軍用と民生用のためにバターの安価な代用品を募集したところ、フランス人のイポリット・メージュ=ムーリエフランス語版牛脂に牛乳などを加え硬化したものを考案。これは、オレオマーガリン (oleomargarine)[10]という名前がつけられ、後に省略してマーガリンと呼ばれるようになった。ムーリエの考案したマーガリンは公に採用され、その後1871年オランダアントニウス・ヨハネス・ユルゲンスオランダ語版が特許権を買収。ユルゲンスはサミュエル・ファン・デン・ベルフオランダ語版と共にマーガリン・ユニオランダ語版を創業し、これは現在のユニリーバに繋がっていく。日本へは1887年に初めて輸入され、1908年横浜の帝国社(現在のあすか製薬の前身)によって国産化に成功しているウイキペディアより。

マーガリンの名前が元は「オレオマーガリン」だったとは。ちなみに「オレオ」の由来には諸説あるそうで・・『フランス語で黄金を意味する”Or”から来た(初期の包装は金色だったから』とウイキペディア。オレオマーガリン、いわば金のマーガリン。冒頭の句の「金塊のごとくバタ」に繋がりますね!お後がよろしいようで。8460



 

BBTime 344 電動VS手動

BBTime 344 電動VS手動
「自転車のベル小ざかしき路地薄暑」永井龍男

『狭い路地を歩いていると、不意に後ろから自転車のベルの音がする。「狭い道なんだから、降りて歩けよ」とばかりに、作者は自転車に道をゆずるようなゆずらないような足取りだ。暑さが兆してきたせいもあって、いささかムッとした気分。下町俳句とでも言うべきか。いかにも短編小説の名手らしい作品である』以上解説より。最近身の回りの品々に電動が増えて来たように感じます。今回は電動歯ブラシVS手動歯ブラシについてのお話。

幼い頃、電動といえば洗濯機と掃除機、扇風機くらいのものでした。母の使うバリカンが電動に変わった時は驚きでした。さらなる衝撃はクオーツ腕時計!秒針が一秒毎に動くのを見てテクノロジーを感じました。令和の今、色々な電動版が登場していますが、やはり一長一短あるように思います。電動歯ブラシは大きく二種類、ツイスト式(左右反転運動)と振動式。ツイスト式はブラウン、振動式はソニッケアーが両横綱でしょう。ブラウンのHPに横綱対決「ブラウンVSソニッケアー」が載っております。

ツイスト式ブラウンはイラストのように、丸型ヘッドがツイスト(左右反転運動)して歯を磨きます。かたや振動式ソニッケアーは、ブラシ自身の振動と振動によって発生する「音波水流」によって汚れを落とします。どちらが良いか?選ぶポイントは使用する方の性格でしょうか。せっかちな方はブラウン、ゆっくりペースの方にはソニッケアーを勧めます。必要な歯磨き時間は両方ともトータル約二分で同じですが、ブラウンの方が「磨いた感」がはっきりしています。ソニッケアーは「音波水流」を発生させるためのタイムラグ(ほんの数秒ですが)を感じます。

電動歯ブラシをどこで使うか?多くは洗面でしょうが、オススメはバスタブの中(入浴中)です。電動歯ブラシ使用時は歯磨き粉つけずに磨き始めます。唾液が徐々に口からこぼれ歯ブラシ本体まで唾液が垂れて来ます。リビングでのながら磨き時にハンドタオルで本体を包んでから使用するのも良い方法ですが、入浴中にバスタブの中だと割とゆっくり長時間(五分程度)磨けます。気分的に歯磨き粉を使いたい方は、最後に仕上げ磨きとしてほんの少し(米粒程度)の使用で十分です。

では、電動歯ブラシのみで良いのか?といえばそうでもないような気がします。自転車が電動アシストに変わっても、基本的な運転操作は同じです。歯磨きも同じこと。やはり手磨きが基本、メインは電動で良いのですが手磨きもお忘れなく。「えっ!毎回両方で磨くの」・・自宅では電動で、仕事場(昼食後)では手磨きが良いでしょう。手磨きには手軽さがあります。電池切れもないし、歯ブラシ自体が軽いです。また、メーカー各社子供向け電動歯ブラシもラインナップしていますが、あまりオススメはしません。子供さんが自転車に乗るステップをイメージしてください。三輪車→補助輪付き二輪車→子供用自転車→通学用ママチャリ・・の手順を踏むように、いきなり電動歯ブラシだと「毛先がどこに当たっている?」「磨く時の圧は?」「動かし方は?」などの基本動作を習得しないうちに電動歯ブラシ使用は問題有りのような気がします。全て永久歯になってから(中学生から高校生)電動歯ブラシ使用開始で良いのではないでしょうか。あくまでも個人的な意見ですけどね。8370


冒頭の句は「BBTime 039 無事の人その四 コマと自転車」でも紹介しておりました。

BBTime 343 五月後六月

BBTime 343 五月後六月
「五月雨の降のこしてや光堂」松尾芭蕉

句の解説には『旧五月十三日、芭蕉と曽良は平泉見物に訪れ、別当の案内で光堂(正式には金色堂)を拝観している。「おくのほそ道」の途次のことだ。句意を岩波文庫から引いておく。……五月雨はすべてのものを腐らすのだが、ここだけは降らなかったのであろうか。五百年の風雪に耐えた光堂のなんと美しく輝いていることよ。とまあ、これは高校国語程度では正解であろうが、解釈に品がない。芭蕉はこのように光堂の美しさをのみ詠んだのではなくて、光堂の美しさの背景にある藤原氏三代やひいては義経主従の「榮耀一睡」の夢に思いを馳せているのだからである。有名な「夏草や兵どもが夢の跡」はこのときの句だ。ところで光堂であるが、現在は鉄筋コンクリートの覆堂(さやどう)で保護されている。たとえば花巻の光太郎山荘と同じように、元々の建物をそっくり別の建物で覆って保護しているわけだ。家の中の家という感じ。芭蕉の時代にも覆堂はあり(と、芭蕉自身がレポートしている)、学者によれば南北朝末の建設らしいが、いずれにしても五月雨からは物理的に逃れられていた。『おくのほそ道』の文脈のなかではなく、こうして一句だけを取り出して読むと、光堂はハダカに見える。また、ハダカでなければ句が生きない。その意味からすると状況矛盾の変な句でもあるのだが、覆堂の存在を忘れてしまうほどの美しさを言っているのであろう』とあります(解説はこちら)。ちなみに旧五月十三日は六月十五日(令和元年)です。金色堂についてはこちら

鹿児島は先日(5/31)梅雨入りしました。ご存じのように「五月雨:さみだれ」とは梅雨のこと。本来「さつきばれ」とは「梅雨の晴れ間」であって、五月(現代のごがつ)の晴れではないのです。句は旧暦五月十三日に詠まれたので六月十五日(今年)。現代では五月=さつきと解釈されますが、このように正確には旧暦五月=さつき=現代六月となります。ややこしくなりました・・結局「さつき=六月」なんです。

去る三月にNHKラジオ第二「私の日本語辞典」「歳時記を読み直す」シリーズでのお話。本「季語の博物誌」をベースに著者の工藤力男氏と話は進みます。「さつき」の項で「さ」は「稲の霊」の意味を含むとのこと、さつきとは梅雨時ですので湿っぽいイメージとのこと。こちらで聴けます(6/2現在視聴可能)。

画像は紫陽花(錦玉:きんぎょく)です(引用元)。紫陽花は雨に濡れているほうがしっくり来ます。さて強引ですが口の中について。以前「したしたこおか」に書きました、口の中(歯)でいつも潤っているのが下の前歯です。かたや濡れにくいのが上の前歯の唇側なんです。下の前歯にむし歯を作る方はよほどの方(失礼)です。上の前歯は唾液が届きにくく濡れにくいので、むし歯になりやすいのです。言い換えれば「唾液の力」「むし歯から歯を守る力」が及びにくいのが上の前歯なんです。よって、むし歯になりやすいところ、お握り食べて「歯に海苔」になりやすいのも上の前歯なんです。

下の前歯は始終唾液で濡れている・潤っている反面、歯石(しせき)の付きやすくなります。お茶やコーヒーの渋も付きやすくなります。これから暑くなり水分補給(一日1リットル以上が目安)が肝要となります。水やお茶を一口含んだら、すぐさまゴクンと飲み込まずに上の前歯を十二分に濡らしてから飲んでください(可能ならば)。いつまでもあなたの歯が「光」輝き続けるように!7570