BBTime 397 勿体無い!

BBTime 397 勿体無い!
「白湯一椀しみじみと冬来たりけり」草間時彦

今年の立冬は八日ですので句はフライングです。老婆心ながら「白湯」はさゆと読み「飲用のための沸かした湯」のこと。今では家の中は暖房もきき、窓枠はサッシですので隙間風も入らず「しみじみ」を感じることは少なくなりました。今回は「勿体無い」話を三つ。「WSD:楔(くさび)状欠損」「歯磨き不足」「捨てました」・・今まで何度も書いておりますが、やはり日々臨床で毎日のように出会うものですから。まずは「楔状欠損」について。

原因として「噛み合わせ・歯ぎしり」も文献に出てきますが、小生の感触ではおそらく九割以上は「ゴシゴシ磨き」だと確信します。冬になると(水道水の温度が下がると)「歯磨きの時に痛い・しみる」との主訴で来院される方が増えます。鏡で見てもらいながらゴシゴシ磨きの弊害を説明し、治療はムシ歯と同じように表面を少し削って(勿論ムシ歯があればそれも除去して)樹脂を詰めます・・勿体無い話です!
1)ムシ歯ではないのにムシ歯と同じ治療を受ける必要があるのが、勿体無い!2)ご本人はムシ歯予防(ゴシゴシ磨き)のつもりが結果的にムシ歯(様欠損)を作ってしまったことが、勿体無い!3)ゴシゴシ磨きのために費やした歯ブラシと歯磨き粉と時間が、勿体無い! 次は「歯磨き不足」。

例えば上の前歯を考えます。歯磨き不足でムシ歯を作り、そのムシ歯が深くなり歯髄(しずい:血管や神経を含む)まで炎症が及び、歯髄を取り除き土台をたて白い歯を被せたとしましょう。作り物とわからないようなナチュラルな陶器の歯(一本十万円)を選択したとします。どんなに色や形がナチュラルであっても所詮偽物、作り物の歯。偽物が十万だとしたら、あなたは本物にいくらの値段をつけますか?はっきり言います、本物は百万でも買えません!勿体無い話です。

「捨てました」・・これは先の二つとは次元の違う話ですが、被せ物や詰め物が外れての来院の際に「捨てました」と言われる方・・勿体無い!外れたものが金属の場合、保険がカバーしている金属であっても貴金属です。組成は金銀銅でそれぞれ12%,
52%,15%(メーカーによって若干違いますが、金12%は同じ)で、金と銀で約60%以上、さらにレアメタルのパラジウムを20%含みます。貴金属を「捨てました」は勿体無い!。再セット(外れたものを再使用する)できる場合は治療費も時間も少なくてすみます。外れた物がなければ、ゼロからの治療になります・・勿体無い!因みにパラジウムは排ガスの触媒として使われるために、時に金より高値がつくこともあるレアメタルで貴金属に分類されます。

「勿体無い」を調べてみると、「勿体」とは仏教用語で直訳すれば「かたち(体)がない(勿い)」言い換えれば「色即是空:しきそくぜくう」に通ずるとのこと。詳しくは「勿体無いはありがたいお言葉!」「もったいない」「忘れえぬ言の葉」を是非。一部引用します『例えば、夕食のおかずに出されたお魚は、本来海の中で泳ぎまわっている存在です。ところが、何の因果かめぐり巡って、今、私の目の前のお皿に載っている。このお魚の生命を粗末にしてはもったいない、というのが「もったいない」の根本です』(引用元)。

楔状欠損予防策は上のイラストのように「鉛筆握り」で磨くこと。歯磨き不足解消法は、子供さんであれば親御さんが磨いてあげる、大人の方なら「歯は磨いても、もらうもの」ですので、定期的に歯科医院でPMTC(専門家による歯磨き)を受けてくだい。最後に詰め物などが外れた場合は捨てずに「持参する」事をオススメします。金属でなく白いものであっても、歯科医にとって多くの情報を持っていますので捨てずにご持参ください。

「白湯:さゆ」は水を沸かしただけです。中華料理の「白湯:パイタン」は勿論別です。『パイタンは、豚骨、豚すね肉、豚の背脂、鶏ガラ、鶏の脚などを主材料にし、長時間材料が煮くずれるくらいまで煮込んで作る。脂肪が入ることによって、白く濁ったスープとなる』(引用元)。表記は同じでも、白湯の持つ温かさと(鉄瓶ならば)ほのかな甘みをしみじみと味わい飲む・・日本ならではの「勿体ない」です。0450


 

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