BBTime 429 甘い力

BBTime 429 甘い力
「少しのことにも、先達は、あらまほしきことなり」兼好法師

画像は京都府八幡(やわた)市の石清水八幡宮です。徒然草に登場します・・『仁和寺にある法師、年よるまで、石清水を拝まざりければ、心うく覚えて、ある時思ひ立ちて、ただひとりかちより詣でけり。極楽寺・高良(こうら)などを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり。さて、かたへの人にあひて、「年比(としごろ)思ひつること、果し侍りぬ。聞きしにも過ぎて、尊くこそおはしけれ。そも、参りたる人ごとに山へのぼりしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど、神へ参るこそ本意(ほい)なれと思ひて、山までは見ず」とぞ言ひける。少しのことにも、先達(せんだち)はあらまほしき事なり。』第五十二段より。現代語訳などはこちらこちらをご参照の程。この縁で「徒然草エッセイ大賞」が開催されており、今回応募しました。いまだに連絡が来ませんが(笑)。募集テーマは「発見」!

『今回のテーマは「発見」です。思いがけず見つけた素敵な場所、それまで気づかなかった知人や自分の一面、生きる知恵や時代のゆくえなど、あなたが「みつけた!」「わかった!」と感じた物事、考えなどを紹介してください。下記いずれか(または両方)を選んで一文にしてください。〇あなたの印象的な「発見」を、あなたの思いや考え、理由を交えて紹介してください。〇「発見」をテーマに、あなたが身近に考えることなどを、批評や提言にまとめてください。』(募集要項より抜粋)。では応募した拙文をご披露します。「甘い力」(徒然草エッセイ大賞応募文章)・・

「甘い力」  四十年近く前のこと。歯科大入学後間も無く、先輩の口からため息のようなひと言「敗者だ」。新聞に「ムシ歯のワクチン開発につながる研究」の見出し。先輩曰く「実用化されれば歯科医不要、敗者だ」。「将来どうなるんだろう」とその時思った。

杞憂に終わった。しかしそれは喜ぶべきことではなく、憂うべきことだと、今思う。日々「ムシ歯の真の原因は?」と自問自答。「カイスの三つの輪」という古典的病因論を大学で習った。三つの輪とは「歯・細菌・砂糖」で、これらが重なるとムシ歯になるという極めてシンプルな理論。予防のためには輪の重なりを減らせば良い。歯をなくすことは本末転倒なので、残る二つの輪を小さくすることでリスクは減り予防につながる。細菌を減らすために歯を磨き、砂糖を減らすためにお菓子を食べないようにする。これまたシンプルで可能だと信じていた。歯科医になりたての頃、ムシ歯の小学生に「歯をしっかり磨き、あまりお菓子を食べないように」と注意し、親御さんには「お菓子を制限してください」と忠告した。磨き残しのある年配の方に「しっかり磨くように」と真顔で諭していた。

これは間違いではないのか?不可能なこと強いているだけではないか?と疑い始めたのが、ここ十年。まさしく「発見」であった。卵焼きにも焼肉のタレにも砂糖は入っている。ケーキやジュースだけではない、しかもムシ歯菌にとっては卵焼きもケーキも同じ。砂糖の摂取量を減らすことはできても、ゼロにすることは無理である。細菌すなわち汚れにおいても同様で、磨けば予防できると信じていた。磨けば予防可能、これは事実。しかし完璧に磨くことはできないのが現実。フロスや歯間ブラシを併用しても、歯の汚れを自力のみで完璧に取り去ることは不可能に近い。左手の汚れは、目で見て右手で落とすことができ、落ちたか否かを確認できる。ところが口の中はさにあらず。汚れている箇所を確認しないまま闇雲に磨き、汚れが落ちたか否かを確認することもできない。日常生活で不可能なことを、あたかも可能であるかのように説き、時にムシ歯をつくったのは自業自得であるかのように説明してきたことを心密かに恥じた。「甘いものを食べ過ぎず歯を磨けばムシ歯にならない」は、実生活においては正しくないのである。試験管の中では「カイスの三つの輪」は正しい、しかし口の中では正しいとは言えない、少なくとも現実的ではない。

「ヒトは甘いものが好きである」を進化の過程で検証すると「ヒトが選ぶものは甘い」がより的確だそうだ。摂食する際に高カロリーのものを選ぶようになり、結果的にそれら高カロリーのものはヒトにとって「甘かった」とのこと。原始人のみならず現代人を魅了してやまない「甘い力」。ヒトやアリのみならず、ムシ歯菌をも引きつける「甘い力」は絶大である。

近年、ムシ歯をはじめ多くの病気について予防の重要性が声高に説かれる。「予防に勝る治療なし」は言うは易く行うは難し。とはいえ数ある病気の中でも病因が明らかなのはムシ歯をおいて他にない。そこで「甘い力」の利用を考える。老若男女から愛され、癒しや喜びを与える甘い力を利用しない手はない。

ムシ歯発生をゼロにする方法は本当にあるのか。カイスの輪において「歯」をゼロにはできない、「砂糖」ゼロもほぼ不可能に近い、残るは「細菌」。思うに「何を食べるか」よりも「食べた後、どうするか」である。砂糖てんこ盛りのスイーツを食べても、完璧に磨き上げればムシ歯にはならない。日常において、ムシ歯の真の原因は砂糖ではなく「行動」だと確信する。口の中から如何にして汚れを減らすかが、最も模索すべきことだと思う。歯ブラシに加え糸ようじ、歯間ブラシ、フッ化物などを駆使することは可能でも、この離れ技を多くの人に求めるのは、これまた無理難題である。ズバリ、解決法をひと言で言うならば「歯は磨いても、もらうもの」。プロ(歯科衛生士・歯科医師)による定期的なクリーニングを加えるのが一番現実的だと思う。「えっそんな」と思わず、髪の毛を触って欲しい。その髪を切ったのは誰ですか?多くはプロのはず。月に一度でいいのである。月に一度「歯は磨いても、もらうもの」を実践頂ければ、ムシ歯発生ゼロは可能だ。「そんなこと近くの歯医者も言ってるよ」と聞こえてきそうだが、おそらく甘い力を使ってはいない。甘い力を利用した予防とは「ムシ歯予防カフェ」。月に一度、できれば二度、三度と足を運んでもらえば完璧である。スイーツを楽しんだ後にプロに「磨いてもらう」甘い仕掛け。甘い力で行動変容を促し、しっかりと予防を日常に組み込む。スイーツをムシ歯の主犯と捉えるのではなく、スイーツの持つ「甘い力」を予防に生かす。これぞまさしく「ムシ歯ワクチン」システム。カフェは現在構想中だが、発見を発明に、発明から文明文化へとムシ歯予防を進化させたい。病気は要らぬ、健康ほしい!

エッセイに書いていますように「ムシ歯予防カフェ」実現に向けてあれやこれや考えております。同じタイトルで「BBTime 356 甘い力」書いており、徒然草五十二段は「BBTime 384 超極旨!」で引用しています。またエッセイは加筆後「BBTime 415 新年信念」で、実は既にアップしております。ではでは  3630
https://youtu.be/f9qGur8eTUg

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