BBTime 438 フッソの話

BBTime 438 フッソの話
「たんぽぽのサラダの話野の話」高野素十

高野素十は、東京帝国大学医学部卒の医者であり、現新潟大学医学部教授も務めた俳人です。句の解説は『たんぽぽが食べられるとは、知らなかった。作者も同様で、「たんぽぽのサラダの話」に身を乗り出している。「アクが強そうだけど」なんて質問をしたりしている。そこから話は発展して野の植物全般に及び、「アレも食べられるんじゃないか、食べたくはないけれど」など、話に花が咲き、楽しい話は尽きそうにもない。この句は、いつか紹介したことのあるPR誌「味の味」(2000年4月号)の余白ページで見つけた。いつものことながら、この雑誌の選句センスは群を抜いていて、読まずにはいられない。偶然だろうが、これまた楽しみにしている詩のページに、坂田寛夫のたんぽぽの詩「おそまつさま」が出ていた。全文引用しておく(/は改行)。「ストローをくわえるかっこうで/すこしずつ/ウサギの子がたんぽぽを/茎の方から呑みこんでゆく/しまいに花びらが小さい口のふたをした/いいにおいをうっとり楽しむかと思ったら/ひと思いに食べちゃった/「おいしかった」/ため息まで聞こえたような気がしたから/たんぽぽもさりげなく/「おそまつさま」/と答えたかったが/ぎざぎざに噛みひしがれて目がまわり/先の方はもう暗い胃散にこなれかけている」。今日は「味の味」におんぶにだっこ、でした。(清水哲男)』(解説より)。さて今回は野の話ならぬ、フッ素のお話。

先日、未就学児を持つお母さんとの会話で「フライパンのフッ素コーティングと同じですか?」との質問・・実は別なんです、フライパンや車などのフッ素コーティングと歯科におけるムシ歯予防の「フッ化物(フッ素)」は全く別モノなんです。

この図は「株式会社フロロコート」のサイトより引用しました。わかりやすく説明してあります。『フッ素樹脂は、蛍石に多く含まれるフッ素元素(F)と炭素鎖からなる熱可塑性ポリマーです。1938年、PTFE(ポリテトラフロロエチレン)が発見されて以来、数種類のフッ素樹脂が開発されています。フッ素樹脂の多くは、(1)難付着性(2)耐熱性(3)すべり性(4)耐薬品性(5)はっ水・はつ油性(6)耐摩耗性(7)電気特性 などの優れた特性を兼ね備えた素材として、コーティング、成形品、フィルム、建築材料などに広く用いられています。』(引用元)。同じく引用『最後に、よく虫歯予防に使われている「フッソ」はフッ素化合物(正確にはフッ化ナトリウムの水溶液)ですが、これは「フッ素樹脂」ではありません』(引用元)。

ムシ歯予防におけるフッ素は、歯の表面(歯面:しめん、歯質:ししつ)に直接作用し歯の表面構造を変化(歯質強化)させることで耐酸性(酸に対する抵抗性)を向上させムシ歯予防へと繋げます。子供さんに「フッ素塗布」や「フッ素入り歯磨き」を勧めるのは、乳歯や生えたての永久歯は表面が軟らかいため、よりムシ歯になりやすいからです。上のイラスト引用元はこちら

『歯を修復するフッ素は、溶け出したカルシウムイオンやリン酸イオンを歯に戻す「再石灰化」を促進して歯を修復し、酸に強い丈夫な結晶にします。また、ムシ菌の活動を抑えて酸を作りにくくし、「脱灰」を抑制します。ムシ歯予防のためには、毎日のケアにフッ素を取り入れることが効果的です』(引用元はこちら)。

このイラストはライオンのサイトからです。さすがはライオン!このページにわかりやすく詳しく書いてあります。以下引用『口内が常に中性であれば、歯の脱灰は起こりませんが、脱灰と再石灰化は1日の中でもめまぐるしく起こっています。初期むし歯ができてしまっても、フッ素の活用やその他のケアにより再石灰化しやすい状態をつくり出せれば、修復は可能です。初期むし歯が修復されるまでには、半年~1年程度かかるといわれています。その意味では、歯科の定期健診が半年に1回以上と推奨されるのは理にかなっているといえるでしょう。また、初期むし歯は自分では見つけにくく、歯科専門家による定期的なチェックが必要です』(引用元)。

ただし、臨床において「不安」を持たれる親御さんもいらっしゃいます。そこで「フッ化物(フッ素)は薬のようなもの」と理解されたらいかがでしょうか?すなわち薬と同じく「使用量に注意が必要」なんです。イラストのように、低年齢のお子さんほど量が少ないのは「飲み込んでも問題ないように」です。フッ化物は基本的に「歯の表面」においてのみ効果を発揮します。できるだけ長い時間、歯の表面にフッ化物が留まっていて欲しいのですが、口の中ですからそうはいきません。国によっては水道水にフッ化物を「ムシ歯予防目的」で添加している国もあります、日本はフッ化物無添加です。よって歯磨きの時にフッ化物を歯の表面に作用させる他ないのです。

使用される方の年齢によって濃度も違います(違う濃度のハミガキがあります)。6歳までは500ppm、約6歳から18歳までは950ppm、成人は1450ppmの濃度の製品があります(詳しくはこちら)。・・それでも「フッ化物」に不安を持たれる方には「唾液磨き」をお勧めします。唾液中のラクトフェリンの様々なプラスの効果を十二分に活かすことができます。歯磨きが苦手、億劫だ、磨いているつもりでもムシ歯になる方は「フッ化物入りハミガキ」を是非どうぞ。

フライパンや車などに施される「フッ素コーティング」は、はがれにくいスマホの保護フィルムのようなものです。歯の「フッ化物応用」は歯の表面そのものを酸に対して強くする方法です。同じ「フッ素」という言葉を使いますが全くもって別物です。以前書いたブログ「フッ化物」「ハミガキ」「タツブラシ」「鰯の頭も!」も合わせてお読みください。ご自愛の程、ご歯愛の程。2750


追加:テフロン加工について。「テフロン・テフロン加工」も見かけますが、これもフッ素樹脂で基本的には、フッ素コーティング・フッ素加工と同じ種類です。アメリカのデュポン社の商品名が「テフロン」です。若干の違いはあるようですが・・同じものと考えてさほど問題はありません。くどいようですが(笑)歯科のフッ化物とテフロンは全く別物です。

追加2:タンポポ=ダンデライオン(英dandelion)の名前の由来は・・『タンポポの根は辛みがあるためにイエス・キリストの受難の象徴とされ,また一般的にも辛苦の意味をもつ。英名ダンデライオンdandelionはフランス語のダンドリオンdent de lion(〈ライオンの歯〉の意)が転訛したもので,葉の欠刻がライオンの歯に似るためだという。しかしフランスでは利尿剤に使うところからピサンリpissenlit(〈寝小便〉の意)とも呼ばれる』(引用元)。なんと!タンポポと「歯」が関係ありとはビックリでした。けど、似てますかね?

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