BBTime 464 十万が一

BBTime 464 十万が一
「純白のマスクを楯として会へり」野見山ひふみ

季語は「マスク」で冬の句、解説が結構面白いです。『さて、作者は身構えて物を言わざるを得ない人に会いに行った。実際に風邪をひいていたのかどうかはわからないが、とにかくマスクを「楯(たて)」のようにして話したというのである。「純白の」に、相手に対する挑戦的な姿勢が強調されている。マスク一つで、心強くなれる人間心理は面白い』(解説より抜粋)。黒の方が挑戦的だと思うのですが、当時(1997年発表)一般的マスクで黒はなかったでしょう。マスクからサングラスへ。

『マスクに似た効果があるのはサングラスで、あれもかけ慣れると、なかなか外せなくなる。私は若い頃にいっとき、夜でもかけていた。礼儀上外したときなど、別に身構える相手ではないのに、なんだか自分が頼りなく思えて困ったものだった』

『古風な小説や映画に出てくる怪盗などがしばしばアイ・マスクをして登場するのは、一つには顔を見られたらいけないこともあるが、そのこと以上に、あれはまず自分自身を鼓舞するための道具なのではなかろうか。風邪のマスクに話を戻せば、SARS騒ぎの中国の街で、ほとんどの人たちがマスクをしている映像は記憶に新しい。あの場合はむろん自己鼓舞とは無関係だけれど、あれだけの人々がマスクをしていたら、それまでの人間関係が微妙に変化する部分もあったのではないかと思う。句が言うように、たかがマスクとあなどれないのである。『俳句歳時記・冬』(1997・角川mini文庫)所載。(清水哲男)』(解説より)。

この解説が書かれたのが2003年12月、誰がコロナ禍を想像したでしょうか。SARSも中国起源であることを考えると、やはり中国は人口のみならずウイルス人口も世界一なのでしょう。今回はマスクが「楯」なのか「矛:ほこ」なのかについて。

今月文月二日の毎日新聞に記事「マスクと感染リスク」を読みました。『ようやく全国で移動制限が解除された。まだマスク着用など、感染対策をする新しい生活様式が必要とされる。一方で、熱中症が心配される夏である。「マスクをしないとダメなの?」と思っている人は多いだろう。   その答えは、立場によって違う。マスクの効果を調べた動物実験で、感染リスクが半分に抑えられたという。だから感染症が専門の立場からは、リスクを下げるには、マスクの着用が必要だとなる。一方で、熱中症が専門の立場からは、マスクをつけた状態で運動すると、心拍数、呼吸数、血中二酸化炭素濃度、体感温度が上昇したという報告がある。だからマスクをはずして休憩することも必要だという。結果として、科学的根拠に基づくべき厚生労働省や政府の立場からの指針は、両論併記となる。「外してよい」などと発表し、万一、感染者が出たら責任を問われてしまうからなおさらだ。』(記事より)。

『フェーズ・局面の視点から考えても、春先と今とは違う。春先には感染力の強さも感染ルートも、有効な対策も未知で、新規感染者数も1日で700人、入院者数も1万人に近づきベッドが逼迫(ひっぱく)し、緊急事態宣言が全国に拡大された。しかも、無症状の人にも感染力があるとわかった。だから拡大期には無症状の人もマスクをして、感染リスクの抑制が優先されるべきだ。』(記事より)。しかし今は夏、春先とは違うフェーズです。

記事にあるように「万が一の十分の一」つまり「十万が一」「1/100,000」です。「さらに半分に感染リスクを下げたい人には」すなわち「二十万が一・1/200,000」のリスクとなります。言い換えれば「二十万人に一人の陽性者」からの感染を考慮する方は「マスク必要」と言えます。「マスクをしないとダメなの?」の問いには、記事の最後『多くの人にとって怖いのは、ウイルスよりも、周りの目なのかもしれない』を根拠とすると「周りの目を気にする方はマスクをしましょう」となります。ところで、あなたは二十万人いや十万人の人と濃厚接触する可能性のある立場の方ですか?ご自愛の程ご歯愛の程。6250



エンニオ・モリコーネ氏死去の報に触れて・・・合掌。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です