BBTime 621 施設診療

「走り梅雨ちりめんじゃこがはねまわる」坪内稔典

2023/06/10投稿 6/12追加 6/13更に追加
 鹿児島は梅雨真っ只中で、跳ね回るどころか雨の中を泳ぎ廻っています。句の解説は『梅雨の兆し。そのただならぬ気配に、「ちりめんじゃこ」がはねまわっている。昔から鯰は地震を予知すると言われるが、「ちりめんじゃこ」も雨期を予知するのだろうか。予知して、こんな大騒をするのだろうか。そんなはずはない。そんなことはありっこない。このとき、ただならぬのは「ちりめんじゃこ」よりも作者の感覚のほうである。誰にでも、他人はともかくとして、なんとなくそんな気がするという場面はしばしばだ。独断的な感受という心の動きがある。詩歌の作者は、この独断に言葉を与え、なんとか独断を普遍化しようと試みる。平たく言えば、「ねえ、こんな感じがするじゃない」と説得を試みるのだ。その説得の方法が、俳句と短歌と自由詩と、はたまた小説とでは異なってくる。そのことから考えて、掲句の世界は俳句でしか語れないものだと思う。たとえば、詩の書き手である私は、この独断を句のように放置してはおけない。はねまわる「ちりめんじゃこ」の様態までを自然に書きたくなってしまう。書かないと、気がおさまらないのだ。したがって、こうした句をこそ「俳句の中の俳句」と言うべきではなかろうか。ふと、そう思った。なお「ちりめんじゃこ」は関西以西の呼称だろうか。東京あたりでは「しらすぼし」と言う人が多い。『猫の木』(1987)所収。(清水哲男)』(引用元)。今回はBBTime 618「ゴックン」とBBTime 620「食べる」のまとめです。

1)摂食・嚥下について。
「認知期」「準備期」「口腔期」「咽頭期」「食道期」のステージがあります。

2)認知期でできること:ある日のお昼ご飯。お分かりのように右が「普通食」、左が「ミキサー食」。一目瞭然!食欲を刺激するのは右側普通食。それぞれ匂いを嗅いでみると・・ミキサー食はなんとなく料理がわかる程度。介助者はひと匙ごとに「キャベツですよ」「お魚ですよ」など声で伝えながら食べさせていらっしゃいます。ミキサー食の場合、「目で見えること:視覚情報」「鼻でわかること:嗅覚情報」において劣ります。それらを捕捉することとして「食材そのもの」「食材模型」などで情報を増やすことは可能ではないでしょうか?また、言わば食前酒効果を狙って音楽の使用です。小生が小学生の頃お昼の給食前には必ずある音楽がスピーカーから流れてきました。給食準備の合図です。施設においても同様に、お昼直前に童謡や文部省唱歌などを流してみてはいかがでしょう。六月は「雨雨ふれふれ」七月は「われは海の子」など。

3)準備期・口腔期でできること:口の中に問題があれば歯科治療が必要です。さほど問題がないとして気を付けて欲しいことは、椅子とテーブルの高さ関係。差が約30cmが良さそうです。車椅子使用などで30cm確保できない時には、テーブルに脚継ぎするなどしてください。またベッドで食事を取る方は可能な限り、通常の食事姿勢(少し前かがみ)に近づけてください。ベッドを少し起こしても、やはり寝たままだと食はすすみません。舌根(ぜっこん、舌の奥)が沈下(喉の方へ落ちて)して、口の中が窮屈のまま咀嚼せざるを得ない状態なので。
義歯使用の方:シンプルに考えてください。義歯は口の中の食具(しょくぐ)、箸やスプーンと同じです。特に総入れ歯の方で、義歯が合っていないなどの理由で食べにくい時には外して(義歯なし)食べる方がベターでしょう。

4)咽頭期・食堂期:この二つのステージは反射です。できることと言えば舌骨上筋下筋の強化ぐらいですが、施設利用者の程度によって筋トレが無理な場合もあるでしょう。

 さてもちろん利用者ファースト。施設利用者が「口から食べられる」ことをまず第一に考えます。次は、介助する人介護する人の負担を減らすことを考えるべきだと思います。負担には「臭い」「汚く見える」「しにくい(例えば義歯の着脱)」なども含まれます。先日次のような相談を受けました。上顎のみ総義歯・胃瘻の方。経口摂食無しですが、幾つかの理由で上顎総義歯を入れたほうが良いケース。介護者が上顎総義歯の着脱の際に口角(こうかく:唇の左右のつなぎ目)を切ってしまうので、どうしたら良いかとのこと。ワセリン使用など色々と試されたけど、口角が切れる。解決策は「総義歯を削りましょう」でした。義歯の幅を小さくすれば着脱しやすくなります。

ある時、施設の方が「この男性の舌打ちが嫌だ」と。もちろんその男性は不快感を表現しているのではないのですが・・。そこで一言「舌打ちではなく舌鼓と受け取るのはどうですか?」。その方は奥歯が無いので、その空間に舌が入り込み舌打ちをされるのかも知れないと判断し義歯を作ります、さて結果はいかに。

訪問歯科診療に携わると、診療室とは違う判断を求めらることが多々あります。また、訪問先において如何に機転をきかせて問題を解決・改善するかも求められます。利用者ご本人も日々の食事、日々の生活はある意味大変ですが、施設の方はさらに大変です。最後にひとつ、歯科医師からアドバイス。あなた自身の認知症予防・認知症発症を遅らせるためにできることがあります。口の中の炎症を極力低いレベルに保ってください。必ず定期的(一月に一回)メンテナンスをお勧めします。皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

追加6/12:咀嚼嚥下の際に力を発揮するのが脳神経の五番目「三叉神経」です。脳神経の一番目「嗅神経」を忘れておりました。味の9割は嗅覚由来ともいわれます。こちらの記事を是非お読みください。施設のご飯の際に、この「嗅覚」を刺激してください。スプーンで「これはカボチャですよ」とミキサー食を口元に運ぶ前に、まず鼻先に!鼻先で嗅いでもらう時間が余計にかかりますが、咀嚼嚥下の準備運動となり、誤嚥回避につながります。もちろん食も進みます。花より団子ではなく「鼻から団子」・・口に入れる前に嗅ぐ・嗅がせる!人生に華が必要なように、食事には鼻が必要です。

追加追加:施設におけるお昼ご飯前の候補曲を追加します。食事中はゆっくりの曲の方がよろしいかと。

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