BBTime 668 浸透圧

「いちまいの皮の包める熟柿かな」野見山朱鳥

2024/11/02投稿
 鹿児島市は日によっては暑く未だ秋ではなく晩夏です。秋は来るのでしょうか。句の解説『掌に重い熟した柿。極上のものは、まさにこの句のとおり、一枚の薄い皮に包まれている。桃の皮をむくよりも、はるかに難しい。カラスと競い合うようにして、柿の熟れるのを待っていた我ら山の子どもは、みんな形を崩さずに見事にむいて食べたものだった。山の幸の濃密な甘味。もう二度と、あのころのような完璧な熟柿を手に取ることはないだろう。往時茫茫なり。なお、この句には、同時にかすかなエロスの興趣もある。『曼珠沙華』所収。(清水哲男)』(引用元)。今回は本来の意味とは異なりますが「浸透圧」について。

本題に入る前に御報告ひとつ。前回「湯島通れば」に書きました・・ご家族と話す機会があれば「お母様の好きな歌手は?」と聞きます。ある時は「お富さんです、母の名前がトミ子ですから」でした・・訪問診療行ってきました、この唄を自信たっぷりにかけました。この高齢女性、予備検診時には「なにも困っちゃおらん」「誰が歯医者を頼んだ?」「息子が歯医者を呼ぶはずがない」など、取り付く島もない反応。ということで息子さん同席で診療開始。お二人(母と息子)のやりとりはまさに漫才、さすが息子さん。お母様のネガティブ発言にもうまく対応されてます。2回目の開始に「お富さん」流したところ、歌詞が「・・死んだはずだよ お富さん・・」すぐさま「わたしゃ生きてるよ!」とお母様も大笑いでした。

さて本題「浸透圧」について。イラストはこちらから引用しました。ナメクジに塩をかけると、ナメクジは縮みます。この理由(原理)が浸透圧です。引用すると『半透膜はんとうまく両側りょうがわさのちがう食塩水しょくえんすいがあるとき、両方りょうほうさをおなじにしようとする圧力あつりょくのことを「浸透圧しんとうあつ」といいます』(引用元)。ナメクジに塩をかけると、ナメクジの表面の方が塩分濃度は高くなります。するとナメクジ体内の水分が、ナメクジの皮膚(半透膜)を通して外にひっぱり出されるので、ナメクジが縮むのです。

先日、坐禅中のこと。道場内は機会音ゼロです。その日は他の方の息遣いも聞こえません。たまに周りの道ゆく車のエンジン音と小鳥の声だけ。言わば浸透圧の逆のようなことを感じました。濃度の高い頭の中が、次第に周りの無音・静寂の濃度の低い方へ流れ出るような感覚。脳内の雑音・煩悩・迷いなどが徐々に薄らいでいくようでした。汚れたものを洗い清めるような、汚れた水が清くなるような、とも表現できます。

ある時、和尚さん曰く「坐禅中は感覚が鋭くなっており、目の前にある線香(タイマー替わり)の灰の落ちる音が「ドサッ」と聞こえるんです」。脳内の雑音・雑念が薄まると感覚が研ぎ澄まされるのでしょう。お寺の境内に銀杏の大木があった頃、坐禅中に銀杏の実が地面に落ちる瞬間、確かに「ボトッ」とはっきりと聞こえた記憶があります。

日常はこの真逆でしょう。テキスト情報・画像・動画・SNS、音声電話、メール、LINEなど次から次から洪水のように押し寄せてきます。当然のこと、頭の中は雑音だらけ煩悩だらけとなります。情報や感情でごちゃごちゃの脳に冷静な判断ができるでしょうか。

坐禅初心者が来られると担当の方が「映画を見るように頭に浮かぶことを次から次へと流してください」と説明されます。流して流して空になって「無」に近づくのでしょうか。今の日常はあまりにも多すぎます。夏に引っ越した時に自戒として痛感しました。

自己所有テレビで見た最後の番組は「おしん」(途中まで)でした。車を手放して九年。次にやめるのは年賀状ですかね。「放下著:ほうげじゃく」という禅語があります。何もかも捨てちまえ!の意です(こちら参照)。到底小生には無理ですが万分の一でも近付きたいと思います。皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

https://youtu.be/iuuaFrnj-IY?si=tJDGXeMauN0i2SN7

おまけ:おやつ堂が南日本新聞10/27朝刊に載りました。
たのし味(み)めぐり

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