BBTime 647 拙を守る

「木瓜咲くや漱石拙を守るべく」夏目漱石

2024/02/10投稿 2/11追加 2/14追加 2/17動画追加
鹿児島には春がそこまで来ております。句の解説『花そのものではなく、木瓜(ぼけ)という語感に着目した句だ。「拙を守る」とはへんてこな意志と思われるかもしれないが、漱石のような才気横溢した人にとっては、おのが才気のままに流れていくことは、たぶん怖いことだったのだろう。才気には、知らず知らずのうちに現実から遊離してしまうという落し穴がある。小説家にしてみれば、この穴がいちばん恐ろしい。だから、どうしても「拙を守る」強固な意志を持ちつづける必要があった。「世間には拙を守るという人がある。この人が来世生れ変るときっと木瓜になる。余も木瓜になりたい」(『草枕』)。そして漱石ならずとも、現代人の多くはいま木瓜になるべきときかもしれない。シャープという名の小賢しさが一掃されたら、どんなに気持ちがよいことか。私が俳句を好むのも、俳人には「拙を守る」人がたくさんいるからである。とは、それこそまことに小賢しい言い方かもしれないが……。『漱石俳句集』(岩波文庫)所収。(清水哲男)』(引用元)。先日目にした記事「認知症を引き起こすアカン習慣13選」について、ズバリ認知症予防のお話。

まず『「拙を守る」とは、漱石が好んだ言葉で、生き方の基本としたものという。世渡りが下手なことを自覚し、それをよしとし敢えて拙を曲げぬ愚直な生き方、俗世に媚びて利を追求する事を卑しとする心』(引用元)。さて記事を見ていきましょう。
「日常生活の改善で発症リスクは約4割も下げられる」・・厚生労働省の推計によると認知症の患者数は2025年に約730万人にのぼり、65才以上の5人に1人は発症するとされている。もはや誰もが認知症に罹(かか)ると思った方がよさそうだ。最近の研究によると普段の習慣が認知症を招く要因になっていることがわかってきた。認知症を予防するためにやってはいけない生活習慣について専門家が解説する(記事)。
「2020年、世界五大医学雑誌のひとつ『ランセット』に、認知症の発症にかかわる12のリスク因子が掲載されました。それは、飲酒、喫煙、糖尿病、肥満、高血圧、頭のけが、運動不足、難聴、社会的孤立、うつ病、教育歴、大気汚染です。これらに加えて、睡眠の重要性も説かれており、これらを改善することで認知症の発症リスクを約4割下げられるといわれています。いまから、認知症になりにくい生活習慣を身につけておくことが重要です」(記事)。

では「アカン習慣13選」とは。
【1】たばこを吸う・・周りの人にも悪影響が!
「中年期(40~64才)以降も喫煙を続けた人は、非喫煙者に比べてアルツハイマー型認知症になる可能性が2倍、血管性認知症は2.9倍高いとされます」。受動喫煙者もリスクが上がるので要注意。・・脳内の循環
【2】愚痴や悪口を言う・・ネガティブ思考が機能低下を招く
「どうせ自分なんて」といったネガティブな思考は認知機能の低下を招く原因になるという。「悪口や批判的な態度は自分のストレスを助長するだけでなく、家族や友人が離れ、社会的な孤立を深める原因になるのでやめましょう」。・・ネガティブ(自己否定)
【3】料理はしない!食事は外食やデリバリーが中心・・“料理”は最適な脳トレに!
コロナ禍の影響でデリバリーが習慣化したり、もともと外食中心の食生活で料理をしない人もいるようだが、料理には脳を活性化させる効果がある。「脳の前頭前野の働きが活発となり、血流が増加したという研究結果も。簡単なものでいいので料理は毎日続けましょう」。・・脳の不活性

【4】面倒なときは歯みがきをサボりがち・・ムシ歯や歯周病が認知症を招く
「歯の健康と認知症の関係は深く、歯周病菌がアルツハイマー型認知症の発症因子アミロイドβの生成・蓄積を促進させることがわかっています。さらにムシ歯菌が認知機能の低下と関係していることも明らかに」。口腔内の健康が脳の健康につながると覚えておこう。・・歯周病菌が原因
【5】休日は誰にも会わず家でダラダラ~人に会わないと脳が衰える
他者とのコミュニケーションは、脳を刺激し、脳の発達を促進させる。「家にひとりで閉じこもっていては、人と話す機会が減るだけでなく、社会的孤立にもつながります。買い物に行く、カルチャースクールに通うなど、意識的に外出する用事を作って」。・・脳の不活性、ネガティブ
【6】イヤホンをして音楽を聴く・・使用自体を控えるのが望ましい
「イヤホンやヘッドホンを使い、大きな音量で音楽を聴き続けると、音を伝える役割をしている内耳の有毛細胞が徐々に壊れて難聴になりやすくなります。使用は控えた方がよいでしょう。やむなく使う場合は、音量に気をつけ、1日1時間未満に」・・難聴のリスク

【7】欲求は悪!“三大欲求”はできるだけがまん!・・欲求は満たすことこそ大切です
「認知症予防には、ストレスをためないことが大切です。人が心の底からリラックスできる状態は実は、食欲・性欲・睡眠欲の三大欲求が満たされることで成立します。性欲を満たす方法は、異性と体を重ねるだけでなく、ペットなどの動物や子供と触れ合ったり、“推し活”などの疑似恋愛でもかまいません。“ときめくこと”で、脳が活性化されます」・・脳の不活性
【8】美を維持するため筋トレは必須!毎日、ダンベルを上げています!・・筋トレのやりすぎはかえって危険!
「認知症予防に運動は大切。筋力維持を目的とした適度な筋トレはいいですが、50代以上でムキムキになるくらいの過度な筋トレは、けがや病気のもとに。認知症予防が目的なら有酸素運動が有効です。おすすめは、週2~3回、1回30分以上のウオーキング。認知機能の低下防止だけでなく、代謝がよくなり血糖値や血圧の改善も期待できます」・・怪我、ストレス
【9】ちょっとした不調でもすぐ市販薬をのむ・・必要以上の服薬は控えた方が◎
ちょっとした不調ならば、ドラッグストアなどで手に入る薬をのんで様子をみるという人も多いが…。「市販の風邪薬、花粉症薬、胃酸の分泌を抑える薬、せき止め薬、睡眠改善薬などの中には、認知機能に影響を及ぼす成分が含まれているものも。過度な服用は控え、不調時は病院で適切な薬をもらいましょう」。・・薬は毒

【10】簡単な計算にすら電卓を使う・・計算は効果的な脳トレに
「脳は使わないとどんどん衰えてしまうので、日常生活で計算する習慣を作るのがおすすめです。たとえば、買い物をしながら合計金額を算出することで、計算力と記憶力が鍛えられます」・・脳の不活性
【11】失敗が怖い。得意なことしかやりたくない・・ささやかな“初体験”を心がけて
「年齢を重ねると何事も慣れ親しんだものを選びがちですが、新しい体験をすると脳の神経細胞が活性化。いつもと違う道を通る、新しい店に入るなど、ささやかでいいので“初体験”を心がけて」・・脳の不活性、ネガティブ
【12】いつも同じ人としか話さない・・知らない人との会話が脳の刺激に
「親しい人との会話は気楽で楽しいですが、緊張感が不足するかも。初対面やあまり話したことのない人との会話の方が、相手がどんな人か探りながら話すので脳への刺激も強くなります」・・脳の不活性、ネガティブ
【13】心配性で、何度も確認したくなる・・声を出して笑ってみよう!
「スウェーデンの大学が行った調査によると、心配性な人ほど認知症になりやすいとのこと。人は笑うと脳が活性化し、心身もリラックスします。心配性な人は、意識的に声を出して笑ってみて」(出典)。脳の不活性、ネガティブ

・中国原産。実が瓜のような形であるところから「木瓜」。「木瓜」を「もっけ」と呼んでいたのが 次第に 「もけ」→「ぼけ」になった。(「ぼっくわ」→「ぼけ」の説もある) ・花の色は赤、白、ピンクなど。枝にトゲがある場合とない場合がある(引用元)。

拙(小生)なりにまとめてみます。(2/11追加)
1)喫煙・・脳内の血液循環悪化
2)愚痴悪口・・ネガティブ・自己否定
3)料理しない・・脳の不活性
4)歯磨きサボリ・・歯周病菌による慢性炎症
5)人に会わない・・脳の不活性、ネガティブ
6)イヤホン使用・・難聴のリスク
7)我慢・・脳の不活性、ヒト本来の否定
8)筋トレやりすぎ・・怪我リスク、ストレス
9)薬の服用・・薬は毒
10)暗算しない・・脳の不活性(漢字の確認でも可)
11)失敗が怖い・・脳の不活性、ネガティブ(今さら失敗はない)
12)同じ人のみ・・脳の不活性、ネガティブ
13)心配性・・脳の不活性、ネガティブ
さて、いくつ当てはまりましたか?ご覧のように殆どが脳の不活性、言い換えれば「脳を使わない」。「廃用性萎縮:はいようせいいしゅく」使わないと使えなくなる!脳をもっともっと使いましょう、よりポジティブに、より楽しく。例「テレビ捨ててラジオ聴こう」「クルマ捨てて歩こう」さっそく今日から、いや今から!
皆様ご自愛の程ご歯愛の程。
2/14追加・・セミナー用2040年問題(詳しくはこちらを)。






BBTime 646 自ら然り

「春立つと古き言葉の韻よし」後藤夜半

2024/02/04 立春投稿 2/5追加
暦では春。句の解説『韻は「ひびき」と読ませる。昔から、立春の句や歌は数多い。それだけに、後代になるほどひねくりまわし過ぎた作品が目立つようになってきた。止むを得ないところではあるけれど、だからこそ、逆に立春という題材をどう扱うかは、俳人や歌人の腕の見せどころでもある。「芸の人」夜半としては、そこでしばらく考えた。考えた結果、立春のあれやこれやの情景を捨て去って、一見すると素朴な発想のこの一句に落ち着かせることにした。さすが、である。つまり、この句には古今の名句や名歌のひびきが、すべて収まってしまっているからだ。さりげなく「他人のフンドシで相撲をとる」のも、立派な芸というべきだろう。脱帽。(清水哲男)』(引用元)。この時期、好きな句です。句とは関係なく「自然:じねん」「自ら然り:おのずからしかり」について。
もうひとつ好きな句のご紹介(2/5追加)
「雨の中に立春大吉の光あり」高浜虚子

北原白秋の詩「薔薇二曲」
「薔薇ノ木ニ 薔薇ノ花サク。 
ナニゴトノ不思議ナケレド。

薔薇ノ花。
ナニゴトノ不思議ナケレド。
照リ極マレバ木ヨリコボルル。
光リコボルル。」

薔薇は向井バラ園@mukai_rosegarden 

ネットで見つけた文章
『なんのことはない。薔薇の木に薔薇が咲いたというだけだ。
しかし、考えてみれば不思議なことではないか。だれもなにも教えていないのに、時期がくればちゃんと咲くのだから。 
 動物だって、右足が出れば左足がでるというように、左右交互に手足が動くから歩いたり走ったりできるのだし、呼吸をすることも、心臓が動くことも、自分の意志とはまったく関係ない働きである。
 すべての生き物に備わっているこの不思議な働き。
 これこそ、天からの授かり物だろう。
 春来たらば草自ずから生ず、である。』(引用元)。
自ずから生ず・・まさに「自ら然り」自然(じねん)です。

自然(じねん)をネットで見ると・・
『「春は名のみの風の寒さや」
 暦の上では春なのに寒い日々が続くとき、この「早春賦(そうしゅんふ)」の詞章を想い出す人は優れた感受性の持ち主である。今や人間は大自然に住まうのでなく、改造された人工環境の中で生活している。
 今日、私たちが「自然」と言う場合、山川草木や雨や風など、人間を取り巻く外的な環境のことを指す。そのような自然環境は人間に対立するものであり、自分たちに都合のよいように改造できるものと考えてきた。その結果、地球の温暖化や砂漠化、水や大気の汚染などの様々な問題を惹起した。どれもこれも人間の我が儘が原因である。人間は自然を支配しようとするが、自然は人間の支配の対象ではない。
 仏教では、自然を〈じねん〉と訓じて「自ら然る」という意味に解する。人間の作為のない「そのまま」の在り方が自然である。法(真理)が「そのまま」に顕現していることを示す法爾(ほうに)と自然とは同義語で、その両者を合わせて「自然法爾(じねんほうに)」「法爾自然(ほうにじねん)」という四字熟語ができた。
 浄土宗開祖の源空は、「法爾自然」を略して法然と号した。浄土真宗を開いた親鸞は、「自然法爾章(じねんほうにしょう)」と称する一文を認め、その中で「自然といふは、自はをのづからといふ、行者のはからひにあらず、然といふはしからしむといふことばなり」(『末燈鈔(まっとうしょう)』)と説いている』(引用元)、こちらも。

薔薇がバラとして何事もなく咲くように、ヒトもまた自然(じねん)。Wikipediaには特徴として『直立二足歩行 現存生物で唯一ヒトのみが直立二足歩行を行う。 二足歩行のみなら鳥類やカンガルー、一時的な二足歩行であれば一部の哺乳類が行えるが、頭から足までまっすぐ伸ばした直立姿勢を取るのはヒトのみ』
『コミュニケーション能力 脳・声帯が発達しており、(身振りだけでなく)音声(音声言語)・手話や文字(書記言語)によるコミュニケーションを図れる』
加えて『全体として「大型」「群れる」「中速度で長距離を移動する」「調理された質の良い、多様な食物を食べる」「投擲など自分の体から離れたものを利用する」ことが動物としてのヒトの特徴・生態的地位といえる』(引用元)。

シンプルに考えるに、ヒトは「歩く」「食べる」「話す」が自然(じねん)、自ら然りでしょう。歩くについては「BBTime 644 歩く!」を、食べるは「BBTime エンタメ」を、話すは「BBTime 640 セイタイハイリョ」もご覧ください。皆様、是非ご自愛の程ご歯愛の程、自ら然りで人生を楽しみ尽くしませんか!

BBTime 645 平常心是道

「映画出て火事のポスター見て立てり」高浜虚子

2024/01/30投稿 02/17インタビュー動画追加
鹿児島もここ数日冷たい日々です。まずは句の解説『映画館を出た後は、しばらくいま見てきたばかりの映画の余韻が残っている。と、街角に「火の用心」を呼びかけるポスターが貼ってあった。見ているうちに、作者の意識はだんだん現実に引き戻されていく。そんな状況の句だ。季語は「火事」である。この季語についての虚子自身の説明が、岩波文庫『俳句への道』に載っているので、引用しておく。「『火事』というものは季題ではあるが、他の季題に較べると季感が薄い、ということは言えますね。一体火事という季題は、我らがきめたものですし、火事はいつでもあるが、殊に冬に多いから、というので冬の季題にしたのですが、季感は従来のものよりも歴史的に薄いとはいえる。だからこれは季感のない句であるという風に解釈する人があるかも知れぬ。(中略)そういう人は季題趣味を嫌がっている人ではないですか。だが俳句は季題の文学である。……」。つまり、虚子は自分(我ら)で「火事」を冬の季題にし、そう決めたのだから、この句を無季句などとは呼ばせないと力み返っている。この自信満々が、虚子という文学者のパワーであった。(清水哲男)』(引用元)。先日、映画「PERFECT DAYS」を観ました、ラストシーンで感じたことについて。

解説にあるように「映画館を出た後は、しばらくいま見てきたばかりの映画の余韻が残っている」・・小生も同様。帰りしな用足しに公園トイレに・・ひょっとして平山さんが掃除したのかな、と。タイトルの「平常心是道:へいじょうしんこれどう、びょうじょうしんこれどう」は茶室で目にする禅語です。和尚さん曰く「多くの人は誤解していらっしゃいます。喜怒哀楽、波があるのが平常心であって、いかなる時も冷静にいるべきであると言うのではありません」。詳しくは是非「こちら」「こちらも」ご参照ください。

以前、BBTime「ブラシラブ・掃除」に引用しました無印良品の本「掃除」。2ページ目に「気持ちいいのはなぜだろう。」の一言。うしろ(484頁)の文章・・『自然に対してヒトがなした環境を「人工」といいます。人工は心地がいいはずなのですが、プラスチックやコンクリートのように自然を侵食する素材が蔓延してくると、ヒトは自然を恋しがるようになります。しかし自然は、放っておくと埃や落ち葉が降り積もり、草木は奔放に生い茂ります。したがって、自然をほどほどに受け入れつつ、適度に排除しながらヒトは暮らしてきたのでしょう。(中略)まるで、打ち寄せる波が砂浜を洗う渚のように、人為と自然がせめぎ合う「ほどほどの心地よさ」を探し当てること、それが「掃除」の極意なのかもしれません』『この先の未来においてどんなに技術が進んでも、ヒトは生き物。身体の奥底に響き続ける生のリズムがあります。ここに耳をすませていきたいものです。』(引用元)。

詳しくは書きませんが平山さんは、日常に起こる非日常による「喜怒哀楽」をトイレ掃除によって、便器とともに心まで浄化しているのかも知れません。本「掃除」に明記してあるように掃除は「気持ちいい」のです。

深呼吸すると気持ちいい、お風呂に入ると気持ちいいなど、身体感覚においてはっきりと説明できないけど「気持ちいい」と感じることがあります。なんとなく気持ちいいのは、脳が明確に捉えていない(言葉にできない)けど、身体にはわかること。本「掃除」には『ヒトは生き物。身体の奥底に響き続ける生のリズムがあります。ここに耳をすませていきたいものです』と。口の中が多少汚れていても、痛くも痒くもないけどなんとなく不快。キレイにすると息までキレイになったような清々しさを感じる。身も心も口もキレイにできる「歯磨き」、日常ルーティンである「歯磨き」・・心まで清める効果あります!

ここまで読まれても合点しにくいと思います。是非、映画平山さんを観てくださいラストシーンを凝視してください。皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 644 歩く!

「なずな咲くてくてく歩くなずな咲く」小枝恵美子

2024/01/20大寒投稿 1/21追加
 今朝の桜島(1/20)大寒なのに鹿児島は温かい朝です。昨春から本格的に歯科訪問診療に携わるようになって痛感すること・・それは「口から食べると歩く」・・これだけは死守して欲しい!まずは句の解説『なずな(漢字では「薺」と難しい字を書く)は、陰暦正月七日の七種粥に入れる七草の一つなので、単に「なずな」だと、歳時記的には「新年」に分類される。が、花が咲くのは早春から梅雨期にかけてであり、掲句の場合には「薺の花」で春。またの名を「ぺんぺん草」とも「三味線草」とも言う(こちらのほうがポピュラーか)。さて、この句の魅力は「てくてく」にある。「歩く」といえば「てくてく」など常套的な修辞でしかないが、実にこの「てくてく」の用法は素晴らしい。いたるところに咲いているなずなの道を行く気分は、別にいちいち花を愛でながらというわけでもないので、むしろ常套的な「てくてく」がふさわしいし、句の情景を生き生きとさせている。「むしろ技巧的に思われるほどだ」と句集の栞で書いた池田澄子は、さらにつづけて「そこここに咲いている『なずな』と、そのことを喜び受け止めながら歩いている人物は、春を輝く万物の細部としての代表である」と述べている。これまた素晴らしい鑑賞だ。春の道は、こんなふうに「てくてく」と歩きたい。なお「なずな」を「ぺんぺん草」「三味線草」と呼ぶのは、その実を三味線のバチに見立てたことにちなむそうだ。今日調べてみるまでは、つゆ知らなかった。『ポケット』(1999)所収。(清水哲男)』(解説より)。今回は歩くについて。

私事で恐縮です、就寝時アップルウォッチをつけて寝ます。ある時、面白いことに気がつきました。雨以外はほぼ毎朝、自転車かウオーキングで30分以上のエクササイズをします、天候などによって自転車なし歩きだけの日もあります。ちなみに一日トータル80分以上のエクササイズがノルマ。驚いたことに、エクサイズ時間は同じでも「歩き」と「自転車」では睡眠の質が違うのです(小生の場合)。

ある日の睡眠パターン。さほど自分では認識していないのですが、記録を見ると覚醒と睡眠を細かく繰り返しています。

これは途中の覚醒がありません。実はこちら「歩きだけ」の日の睡眠です。思うに、自転車よりも歩きの方が、体全体(脳を含めて)が程よく疲労するのではないか。よって自転車エクササイズ日よりも落ち着いた睡眠になるのではないか、ということ。気付いてからしばしば睡眠パターンをチェックしますが同じような結果です。
追加:小生の仮説を裏付けるような記事を見つけました、こちらです

さて、必要なので(仕方なく)車椅子を使用されることは理解できますが、施設によっては車椅子を多用する傾向があると感じます。もちろん理由は推測できます。施設利用者の転倒、転倒によるケガ骨折防止、職員側の効率等々。ある訪問先の要介護男性宅(ワンルームひとり住まい)にて・・季節が良いので散歩どうですか?と提案したところ、「看護師から外出は禁止されている」とのこと。数ヶ月後、玄関に車椅子・・車椅子がありますね。「転けると危ないので車椅子を使うように」とのこと。その方は室内ではつたえ歩き可能な方でした。ある理学療法士との会話・・リハビリに励み杖使用で歩行可能になったら、その方の家族から介護度が下がったとクレームが来た。それぞれのケースがあるので一概に「車椅子より杖歩き」とは言えません。しかしはっきり言えることは、今現在、歩ける人は自分の足で歩くことを死守してください!です。

ヒト(ホモ・サピエンス)の定義は未だはっきりしていないと聞きますが、特徴でまず挙げられることが「直立二足歩行」です。Wikipediaには「現存生物で唯一ヒトのみが直立二足歩行を行う。 二足歩行のみなら鳥類やカンガルー、一時的な二足歩行であれば一部の哺乳類が行えるが、頭から足までまっすぐ伸ばした直立姿勢を取るのはヒトのみ。」とあります。逆に言えば(極端な表現ですが)直立二足歩行しなければヒトではないとなるのでは?

施設職員の方を見ていると大変な仕事だと思います。きつい介護の仕事を減らすために可能なことは、今健康な方が「口から食べる」「自分の足で歩く」を死守していただくことだと痛感します。歩くを死守するために日頃から歩く!くどいようですが直立二足歩行可能な哺乳類が唯一「ヒト」なのです。皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 643 大きな問題

「芹レタスセロリパセリよ血を淨めよ」山本左門

2024/01/07投稿
年始早々いろいろな事で、とうに正月気分は消え去っています。解説は『自然から遠ざかるほど、人は病気に近づく。京都浄瑠璃寺の住職がラジオで話していた。作者の焦燥感も、そこに根拠を持っている。歴史上、自然が昨今ほどに人間の問題となったことはないのである。その意味で、まことに現代的な俳句だ。(前半のみ引用)』。ちなみに「淨めよ:きよめよ」

画像は朝日新聞1/3「折々のことば」。「若いうちはみんながやっていることをしないと不安だろうが、「大きな問題クエスチョン」が見つかれば迷わずにそれと格闘すべきだと言う。サイエンスを突き動かすのはつねに情熱パッションだからと」。

昨年の天皇誕生日(2/23)に、ムシ歯予防カフェ「おやつ堂」開店しました。小生の大きな問題は「歯は、磨いてももらうもの」、言い換えれば「歯は、自分では磨き切れない」・・これは真実、開業して二十年ほど経った頃に気が付きました。きちんと予防すれば、生まれて生えてきた「健康な歯」はそのまま健康です。ここ数年、箱根駅伝スポンサーサンスターのコピーは「100年mouth 100年health 口は、生きるの1丁目」(「百年一生」参照の程)。これも真実!しかし、残念ながらサンスターの歯ブラシ歯磨き粉を毎日使っても「100年マウス 100年ヘルス」は達成困難。理由はお分かりでしょう、自分自身で歯を完璧に磨くことは不可能に近いからです。そこで「歯は、磨いてももらうもの」・・このシンプルな事実を歯科医はもっともっと声高に言うべきだと思います。はっきり言って、サンスターライオン花王に、歯磨きを丸投げしていてはダメ。七草は血を清める、すなわち不足したビタミンを補う。その七草を咀嚼嚥下するためには「健康な歯」が必要です、「口は、生きるの1丁目」。皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 641 エンタメ

「粕汁にあたたまりゆく命あり」石川桂郎

2023/12/24 投稿 2024/01/02画像追加と加筆
先日(12/21)桜島初冠雪、やっと冬らしい年末が来ました。句の解説『鮭や野菜等に粕を加えてコクを出すという、冬を乗り切る知恵が<粕汁>には詰まっている。桂郎はこの句を病床にあって詠んだ。だからこそ身体のみならず<命>がぬくめられる感覚を抱いたのだろう。この一年の間に死別した人の数を思う。そして、いずれ自分自身の命ともサヨナラをしなければならない時が来ることをも思う。しかし生きている限り、その日まで食べ続けなければならない宿命をわれわれは生まれながらに持っている。(『四温』)季語=粕汁(冬)』(櫂未知子著 食の一句より)。同感!「Music for 介護」「Sweets for 介護」ときて締めは「食こそエンターテインメント!」。この言葉、昔雑誌「dancyu」の表紙に載っていました。

今年(2023)春から本格的に訪問診療に携わるなかで、今更ですが歯科医師の仕事は「食べる」であると痛感しています。健康な人そうでない人、誰にとっても「食べる」は喜びであり生きている証(あかし)でありエンターテインメントであると実感します。句の解説にあるように『生きている限り、その日まで食べ続けなければならない宿命をわれわれは生まれながらに持っている』のです。

ある施設利用者女性は百歳。その方だけは、昼御飯お膳に九皿載っています。ご家族の希望で「おばあちゃんに、好きな物を好きなだけ、食べて欲しい」とのこと。おおかた箸をつけられるのは二割から三割、ご家族はそれでもいいと。これを知った時ショックを受け感動しました。まさに「食こそエンターテインメント」!。栄養のバランスがどうのこうの、ムシ歯のリスクがどうのこうの等々、一切関係無いと気付きました。(失礼な言い方ですが)残された日々をいかに楽しむか。その大きな楽しみが「食べる」です。まさに「エンタメ、生きる、生ききるため」!

以前書いた「BBTime 538 残るは食欲」に・・「阿川佐和子著「残るは食欲」に『書名ともなった「残るは食欲」というのは、そもそもだいぶ昔に悪友、ダンフミが呟いた言葉だ。「愛欲と物欲を捨てた今、自分と俗世を結ぶ唯一の絆は食欲のみ」うまいことを言う女優だと感心した。感心はしたけれど、私はそこまで欲を捨ててはいないと自認した。』(あとがき)」。

余すところ七日、除夜の鐘は百八。百八番目の煩悩が食欲なのかも知れません。今年の大掃除のメニューに口の中の大掃除も加えてください。診療所に出向くのが無理な場合、湯船でゆったりゆっくりじっくりのハミガキを!皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

https://youtu.be/ZcJjMnHoIBI?si=gytN2JaKfE7Z5zwU

朝日新聞 2024年元日の朝刊より

BBTime 640 セイタイハイリョ

円鏡のラジオやせわし年用意」小沢昭一

2023/12/17投稿 2024/01/05追加(セミナー向け)
 小生落語大好きです、まずは解説を。『年用意は、新年を迎えるためにいろいろと支度を整えること。私などは何もしないが、それでも部屋の掃除などをはじめると大変だ。本の山をあっちへやりこっちへやり掃除機をかけたところまではよかったが、その本どもが元の場所に戻らない。どう積み重ねてみても、以前より広い場所を占めてしまう。寝る場所の確保さえ覚束なくなり、本は乱雑に積み上げたほうが狭いスペースですむという真理を発見するに至る。ところで、このときの作者は何をしていたのだろうか。ふと気がつくとつけっぱなしのラジオから、円鏡のせわしない話し声が聞こえてくる。ただでさえせわしないのに……と、さすがの小沢昭一も苦笑の図。これで三平でもからんだヒには、ラジオをぶん投げたくなってしまっただろう。『変哲』所収。(清水哲男)』(引用元)。この方の声は「鈴を転がす」とは言い難いです・・今回は声帯についてのお話「声帯配慮」。ちなみに「セイタイハイリョウ:聖体拝領」はこちら

先日、NHKラジオ「健康ライフ」は声帯についてのお話。声帯をケアすることがスムーズな嚥下につながるとのこと、かいつまんで見ていきましょう。読むらじるもご参照の程。
1)声帯の役割:「声帯」は声を出すだけではなくて、食べ物や飲み物を飲み込むことと密接につながっています。良い声を維持することは生活の質の向上につながりますし、食べ物や飲み物を飲み込む機能がうまく働かなくなる「嚥下障害」、さらに命に関わる「誤嚥性肺炎」などの病気を防ぐことにもつながっています。
2)のどの役割は三つ:のどには、大きく分けて「物を飲み込む」「空気を運ぶ」「声を出す」という三つの役割があります。
3)声帯の場所:人間の特徴は音声言語コミュニケーションつまり「話をすること」。言葉を出すために大切な器官が、喉頭の中にある「声帯」でちょうど「のどぼとけ」、のどの真ん中辺りにあります。
4)声帯のもうひとつの役割:誤嚥防止です。「誤嚥」とは、食べ物や飲み物が気管に入ってしまうこと。喉頭と、それに蓋をする喉頭蓋は哺乳類にはみんな備わっているんですけれども、人間の特徴はその位置なんですね。人間は言葉で会話をするために、喉頭と、それに蓋をする喉頭蓋は首の真ん中の辺りまで下がってきちゃったんですね。
5)咳反射:喉頭蓋で蓋ができなかった時は「咳反射」といって、声帯が左右ぶつかり合ってくれるんです。加齢や病気などで声帯の筋肉が衰えてしまうと、うまく飲み込むことができなくなることがあります。声帯は声を出すことだけではなく、飲み込むことと密接なつながりがあります。

6)声帯の老化:ゴムのパッキンが劣化することと同様で、左右の声帯が閉じても隙間ができてしまいます。そうすると「声がれ」や「息漏れ」が起きてしまうんです。声帯の老化が進んでしまうと、誤えん性肺炎やえん下障害にもつながります。
7)声帯老化の確認:思いっきり息を吸って「あーーー」と声を出して一息で何秒続くか。この時間を計ることで、声帯の衰えを確認できます。「あーーー」と声を出すときは、普段の会話くらいの大きさで出しましょう。男性で15秒以上、女性で12秒以上が正常で、声が高くなったり、震える、変な声になる場合は要注意です。他にも人から「声が変わった」と言われた。歌い慣れた歌が歌いにくくなったなども老化の表れです。
8)加齢以外の原因:声をあまり使わない。仕事やプライベートで人と話す機会が減ってきますと、筋肉が衰えて声の萎縮が進みます。姿勢も重要です。猫背の方やうつむいて話す方は、肺から上がって来る空気を遮ってしまうので、声の響きに影響を与え、こもった声になります。また、余分に胃酸が出やすい食生活を送っていることも、原因のひとつとなります。アルコールをとり過ぎて、胃酸が食道に逆流して「のどやけ」を起こして声帯を痛めてしまいますし、タバコも声帯にとってはよくないです。
9)声帯の鍛え方:電話やオンライン通話でも会話はできますが、毎日通話の相手を見つけるのも難しいので、1人でもできることとして、本や新聞を声に出して音読することです。また、テレビ番組に参加しているつもりで「あ~、そうそう」などと言ってみたり、クイズ番組なら声を出して答えるのもいいと思います。カラオケや詩吟などもおすすめします。ご自分の気分が楽しくなるような、好きな歌や好きなことを歌っていただくのが一番よいと思います。

10)誤嚥性肺炎:水や食べ物や唾は、肺に入ってはいけない“異物”です。水や異物が気管から肺に入ってしまうと、肺では対応できませんから炎症を起こします。この炎症を起こすと「誤嚥性肺炎」となります。誤嚥性肺炎の症状として、発熱、せき、たんが出て、呼吸も苦しくなります。何となく元気がないとか食欲がない、唾がたまったようなこもった声、呼吸に伴い首の辺りがゴロゴロ鳴る、などの症状も、誤嚥性肺炎になりやすい特徴です。厚生労働省の人口動態統計によると、2022年、令和4年に誤嚥性肺炎で亡くなられた方は5万6,000人強で、死因の中で6番目に多い病気です。特に、高齢者の方には気をつけていただきたい病気です。
11)誤嚥防止策:顎を引いて飲み込むことで、のどを口に近づけられますので、飲み込みやすくなります。飲み込みにくくなったら、ストローを使うことをおすすめします。
また、えん下の動作全体が加齢で遅れますので、食事に“とろみ”をつけて流れを緩やかにすることで飲み込みやすくなります。薬をゼリーに包んで飲み込むのも、誤えん防止にいいでしょう。
12)声帯が衰えると:会話をしなくなると、認知症のリスクも高まります。会話には耳や目、脳も使いますので、会話によるコミュニケーションの低下は認知症のリスクを高めるとも考えられます。また、声が出にくいと話さなくなり、さらに声が出しにくくなるという悪循環を招きます。日頃から声を出すこと、これを心がけてほしいです。
13)声帯萎縮の予防:声帯も筋肉ですから、鍛えて萎縮を予防する体操があります。1から10の数字を唱えていただきます。まず胸の前で両手を合わせてください。左右の手を押し合う瞬間に「いちっ」などと短く区切って発声します。短くがポイントです。10まで発声します。これを朝晩2回ずつやってみてください。声帯が鍛えられて筋肉がついてきますから、肺炎の予防につながってまいります。やってはいけないのは、「い~ち」「に~い」「さ~ん」と伸ばし、力を長く入れてしまうことです。

14)声帯を鍛える:人と話す機会を増やす。喉の乾燥を防ぐ。声帯に悪影響を及ぼす生活を改める。
15)人と話す:人と話すことで声帯は鍛えられます、たくさん話しましょう。特にお年寄りや会話が減った人は、話をするということが大切です。会話で声の異変を指摘されたり、大きな病気が見つかる場合もあります。
16)喉の乾燥防止:喉の乾燥は声帯を痛める原因のひとつ。マスクや加湿器を使って、喉の潤いを保つことが大切です。うがいをして口全体を湿らせておくのも良いし、適宜、水を飲むことも良いです。
17)声の衛生に留意:無理な高さでの発声やささやき声、これは避ける必要があります。せきばらい、からぜきは必要最小限にとどめてください。食事は水分もとりつつ、少しずつ、むせないように慌てずゆっくり食べるようにすると良いでしょう。
18)声の衛生に留意2:大量にお酒を飲むと、口の中がアルコールで乾燥してしまいます。さらに気分が高揚して、いつの間にか大声を出すようになるので、ほどほどにするのがおすすめです。思うように声が出ない時、かぜをひいた時は、無理に声を出さないことが一番。
19)声の衛生に留意3:胃から出る胃液が逆流すると、声帯を傷つけます。食べてからすぐ寝ると、胃液や消化途中の食べ物が食道に逆流して、炎症を起こします。胃液はとても強い酸なので、胃液にさらされると声帯に炎症を起こしてしまいます。声帯を守る意味でも、寝る2時間前は食事やお酒を避けてください。また家庭でできる工夫として、寝るときに肩や肩甲骨の辺りを高くすることや、布団の下に座布団を入れると逆流が起きにくくなります。

かなり長くなりましたが声帯の健康のためのお話「声帯配慮」でした。ご存じ「阿吽:あうん」です。皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

追加:声帯健康を保つひとつの方法として「朗読」もいいと思います。ふと思い出しました。昔、近所の家から読経の声が聞こえてきたことを。お経であっても朗読のひとつです、昔の人の知恵でしょうかね。オススメの詩を四篇。こちらもどうぞ「寿命延長」。

「山のあなた」カール・ブッセ 上田敏訳
山のあなたの空遠く
「幸ひ」住むと人のいふ
噫 われひとと尋めゆきて
涙さしぐみ かへりきぬ
山のあなたになほ遠く
「幸ひ」住むと人のいふ

「われは草なり」高見順
われは草なり
伸びんとす
伸びられるとき
伸びんとす
伸びられぬ日は
伸びぬなり
伸びられる日は
伸びるなり
われは草なり
緑なり
全身すべて
緑なり
毎年かはらず
緑なり
緑の己れに
あきぬなり

われは草なり
緑なり
緑の深きを
願ふなり

ああ 生きる日の
美しき
ああ 生きる日の
楽しさよ
われは草なり
生きんとす
草のいのちを
生きんとす

自分の感受性くらい」茨木のり子
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった

駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ陰ノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ
宮沢賢治


BBTime 636 くちびる

「物言へば唇寒し秋の風」松尾芭蕉

2023/11/10投稿 11/11画像追加 11/17リンク追加
 立冬(11/08)が過ぎたと言うのに日中は冬でもなく秋でもなく夏です。四季が二季(夏と冬)になる日も近いのでしょうか?句の解説は『あまりにも有名なので、作者の名前を知らなかったり、あるいは諺だと思っている人も少なくないだろう。有名は無名に通じる。こうした例は、他のジャンルでも枚挙にいとまがない。それはともかく、掲句は教育的道徳的に過ぎて昔から評判は芳しくないようだ。ご丁寧にも座右の銘として、こんな前書までついているからだろう。「人の短をいふ事なかれ 己が長をいふ事なかれ」。虚子も、苦々しげに言っている。「沈黙を守るに若かず、無用の言を吐くと駟(シ)も舌に及ばずで,忽ち不測の害をかもすことになる,注意すべきは言葉であるという道徳の箴言に類した句である。こういう句を作ることが俳句の正道であるという事はいえない」。ま、そういうことになるのだろうが、私はちょっと違う見方をしてきた。発表された当時には、かなり大胆かつ新鮮な表現で読者を驚かせたのではないのかと……。なぜなら、江戸期の人にとって、この「唇」という言葉は、文芸的にも日常的にも一般的ではなかったろうと推察されるからである。言葉自体としては、弘法大師の昔からあるにはあった。が、それは例えば「目」と言わずに「眼球」と言うが如しで、ほとんど医術用語のようにあからさまに「器官」を指す言葉だったと思われる。普通には「口」や「口元」だった。キスでも「口吸ふ」と言い、「唇吸ふ」という表現の一般性は明治大正期以降のものである。そんななかで、芭蕉はあえて「唇」と言ったのだ。むろん口や口元でも意味は通じるけれど、唇という部位を限定した器官名のほうが、露わにひりひりと寒さを感じさせる効果があがると考えたに違いない。「目をこする」と「眼球をこする」では、後者の方がより刺激的で生々しいように、である。したがって、ご丁寧な前書は句の中身の駄目押しとしてつけたのではなくて、あえて器官名を持ち出した生々しさをいくぶんか和らげようとする企みなのではなかったろうか。内容的に押し詰めれば人生訓的かもしれないが、文芸的には大冒険の一句であり、元禄期の読者は人生訓と読むよりも、まずは口元に刺激的な寒さを強く感じて驚愕したに違いない。(清水哲男)』(出典元)。今回は唇について。

冒頭の画像は朝日新聞「折々のことば」です。
「唇のまわりに、文化が横たわっている。」ミッシェル・セール
 食べる、味わう、話す、歌う、泣く、笑う、愛撫する。口は文化を最も基本的なところで担う器官だ。知性の原型もそこから蠢き(うごめき)はじめる。赤子は物の形状を齧って(かじって)確かめるし、考えるとはそもそもが、ものごとを吟味すること、つまり味わい分けることだ。そしてホモ・サピエンス。語源をたどれば「味わう人」を意味する。フランスの哲学者の『五感』(米山親能訳)から。

ヒトにおける歯の発生は胎生六週頃、かなり早い段階で口や歯はでき始めます。その意味は、それだけ重要ということ。口ができなければ、食べることはできません。日々、訪問診療に携わっていると「口」「歯」「唇」の重要性を感じます。最近特に感じることが「ウガイする力」です。ウガイできる方は「咀嚼・嚥下」「モグモグ・ゴックン」がおおかたできます。逆に「ウガイする力」が弱まるとともに、摂食・嚥下にいろいろと問題が生じます。ウガイする力を維持してください。具体的には、日々「ぶくぶくウガイ」の励行、準備運動としてウガイトレーニングをおすすめします。水(白湯でもお茶でもOK)を口に含んで「ぶくぶく」ぺっ(吐き出す)でもいいし、そのまま飲み込む「ぶくぶくゴックン」でも構いません。食前にすれば「準備運動」、食後にすれば「口の洗浄」「歯の素洗い」となります。最後まで口から食べるために、是非「ウガイする力」を保持してください。来週から季節通りの寒さになるようです、皆様ご自愛の程ご歯愛の程。

追加:「口」が出てきます。口は生き物の入り口であり始まりです。
追加2:冒頭の折々のことばは「BBTime 549 唇」でも。

BBTime 634 イライラを洗う

「疲労困ぱいのぱいの字を引く秋の暮」小沢昭一

2023/10/18投稿
 駆け足で秋が来ました、駆け足で過ぎ去るのでしょうか。句の解説『共感して大きくうなずくことは、よくある。が、共感するあまりに、力なく「へへへ」と笑ってしまいたくなるのが、この句だ。疲れた身体にムチ打つようにして文章を書いている最中に、何の因果か「ヒロウコンパイ」と書かねばならなくなった。ところが「困ぱい」の「ぱい」の字が思いだせない。大体のかたちはわかるのだが、いい加減に書くわけにもいかず、大きな辞書をやっこらさと持ちだして来て「こんぱい」の項目を「困ぱい」しながら探すのである。「疲労困ぱい」の身には厄介な作業だ。そんな孤独な原稿書きの仕事に、秋の日暮れは格別にうそ寒い……。ちなみに、季語「秋の暮」は秋の日暮れの意味であり「晩秋」のことではないので要注意(と、どんな歳時記を引いても書いてある)。ところで、この句は「紙」に文字を直接書きつける人の感慨だ。と、この句をワープロで写していた先ほど、いまさらのように気がついた。ワープロだと「こんぱい」と打てば「困ぱい」ではなく、すぐにぴしゃりと「困憊」が出てきてしまう。その「困憊」の「憊」をいちいち「ぱい」に直さなければならぬ「わずらわしさよ秋の暮」というのが、今の私のいささかフクザツな心持ちである。この句は、既に井川博年が昨年の11月に取り上げていた。さっき検索装置で調べてみて、やっと思いだしたというお粗末。ま、いいか。最近は「困ぱい」することが多いなア。『変哲』(1992)所収。(清水哲男)』(引用元)。さて疲労困憊でもイライラします、今回はイライラを洗うお話。

イライラの原因はイロイロ。三分待たされてイライラする人もいれば、三十分待ってもイライラしない人もいます。イライラがストレスとなり、ストレスが体の不調を引き起こし、不調が病気のトリガー(引き金)になる・・理解しやすい論理です。実は感じないイライラもあるのです。

「慢性炎症」が感じないイライラです。
「慢性炎症」はサイレントキラーとも呼ばれ、気づかぬうちに炎症が継続し、毛細血管を通してさまざまな病気を引き起こす。(中略)糖尿病、メタボ、アトピー性皮膚炎、認知症、躁うつ病、心臓病、脳卒中、がん…、これらの病気はまったく別の病気に見えますよね?ところが、一見無関係な病気の根本に、慢性炎症という共通項があったんです。例えば、躁うつ病はセロトニンなどの神経伝達物質の不足によると考えられてきましたが、その上流には慢性炎症があることがわかってきました」(引用元)。

「歯周病は歯周病菌による慢性炎症ですが、糖尿病を引き起こすことがわかっています。炎症性サイトカインは血糖値を下げるインスリンの働きを悪化させるため、血糖値が高くなりやすいんです。このように慢性炎症は全身いたるところに広がる可能性があり、さまざまな病気のもとになります」(引用元)。

プラーク(歯の汚れ)と認知症の因果関係も明らかになってきています。その繋がりは1)口腔内プラークが常に多いと歯周病が悪化。2)歯周病菌が血液によって脳内に運ばれます。3)歯周病菌を攻撃するために脳内にアミロイドβが現れ蓄積します。4)アミロイドβプラークがアルツハイマー病発症に繋がります(引用元)。詳しくは「BBTime 615 明日は我が身?」に書いております、ご参照のほど。

画像は先日、国が承認したアルツハイマー型認知症治療薬「レカネマブ」です。「25日、エーザイと米バイオジェンが開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」を正式に承認した。進行を遅らせる効果を証明した国内初の薬となる。薬の公定価格である薬価の決定を経て、年内にも医療現場で使えるようになる見込みだ」(引用元)。年間で薬代が約390万円、保険適用で自己負担がおおよそ14万円くらいになるだろうとのことでした。

認知症を予防する・遅らせる、ひとつの技が「歯磨き」。健康寿命を伸ばし、最後の一日まで人生を味わうための「歯磨き」と思えば、煩わしくないのではないでしょうか?心の感じない「イライラ」をアライ流す、ムシ歯予防・歯周病予防のためだけではなく、認知症予防・PPK(ピンピンコロリ)のための歯磨きと捉えるのはいかがでしょう。

以下、施設依頼セミナーのための内容です。
1)ヘッドライトを付け、開けてくれない場合は指サック式バイトブロック(上の画像)を使用する。2)歯磨きペーストは始めから使わない。3)ライトで口腔内を照らし汚れや食物残渣(しょくもつざんさ、食べかす)を見る。4)歯ブラシで落とす。5)歯間ブラシにジェル(歯磨きペースト)を付けて磨く。6)フッ素入りのペーストを少量、歯ブラシにつけて仕上げ磨きと言うより、歯にペーストを塗るつもりで磨く。7)うがいはしない(塗ったペーストの効果がなくなるので)。

これからお風呂が癒しの季節です。ぬるめのお湯にゆったり浸かりながらの「だらだら磨き」が、人生を長く輝くものにすると考えてみては、皆様ご自愛の程ご歯愛の程。



BBTime 631 ラジオ出演

「人間に寝る楽しみの夜長かな」青木月斗

2023/09/16投稿
先日(9/9)地元民放ラジオ(MBC)出演でした。句の解説は『秋の「夜長」。ようやく暑い夜の寝苦しさから解放されて、一晩通して眠れるようになった。この時期にこの句を読むと、はらわたに沁み入るようなリアリティを感じる。とくに会社勤めの人たちにとっては、そうだろう。私もサラリーマン時代には、寝る前にひとりでに「寝れば天国」とつぶやいていたものだった。若かったから、むろん寝ない楽しみもあったけれど、くたくたに疲れて眠る前の至福感もまた、格別だった。江戸期の狂歌に「世の中に寝るほど樂はなかりけり浮世の馬鹿は起きて働く」があり、これは昼間も寝ている怠け者の言い草を装っていながら、眠らないで頑張る人たちへの痛烈な風刺になっている。なぜ、そんなに頑張るのか。わずかな蓄財のために、親方に鼻面をひきまわされながらも頑張って、それでお前の一生はいいのかと辛辣だ。当時の私はこの狂歌を机の前に貼り付けて、何もかもぶん投げてしまいたいと切に願っていたが、ついにそういうことにできずに、今日まで来てしまった』(解説より抜粋)。寝る楽しみもさることながら「食べる楽しみ」もあります。ラジオで話した内容を文章化してみました。

「おやつ堂」はどんなお店ですか?
・・おやつ堂には「ムシ歯予防カフェ」が枕詞として付いています。メニューは看板の「ソンナバナナジュース」をはじめ、コーヒー、抹茶、ワインなど飲み物は全て砂糖を含みません、砂糖ゼロです。飲み物以外ではドーナツ、和菓子、チーズなどを常備しております。全て取り寄せで言わばスイーツのセレクトショップです。

「ムシ歯予防カフェを開こうと思ったのは?」
・・1990年に歯科医院を開業しました。開業当初、子供さんのムシ歯を見つけると親御さんを診療室に呼んで「ここがムシ歯です」「甘いものをあまり食べないように」「もう少ししっかり磨くように指導してください」とか真顔で話していました。ある時、小学四年生くらいの男の子だったでしょうか。ムシ歯があったのでお母さんに「もっと磨くようにいてください」と話したところ、お母さんが男の子に「だから言ったじゃない」と。すると男の子は「僕、磨いたもん」お母さん「でもムシ歯ができてるじゃない」男の子「ちゃんと磨いたよ」・・二人は徐々にヒートアップして男の子は泣き顔に・・。はたで見ていて「そうだよね、この子はちゃんと磨いたんだ!けど磨き方が足りなかっただけだ」・・。
そのような経験を踏まえて、2011年に天文館近くにクリーニング専門の「ニコラ歯科」を開業しました。自費診療の歯のクリーニング専門施設です。「歯は、磨いてももらうもの」を掲げてのオープンでしたが、約十ヶ月で閉めざるを得ませんでした。

その後、勤務医として働きながらも、頭の中では「歯を磨けばムシ歯にはならない、予防できる、回避できる!」との考えが渦巻いていました。病気の中で唯一ほぼ完全に予防できる、回避できる病気が「ムシ歯」。かたや巷では「グルメブーム」・・ランチ、ディナーからスイーツに至るまで。年を経るごとに盛り上がります。グルメブーム、美味しいを求める欲望とムシ歯予防を結びつけられないかと悶々する日々でした。
 ある時「あれこれ難しく考えずに、ムシ歯予防とグルメをシンプルに結びつければ良いのでは?」・・この時、ムシ歯予防カフェの誕生です。より美味しく食べるためには、口の中の食器(食具とも言います)が、食器である歯がキレイでなければ味わえません。美味しいと思われた時に、少しでも口の中の食器の大切さ・健康を再認識していただければと思うのです。このような考えのもとに、ムシ歯予防カフェが私にとっての究極の予防歯科スタイルです。

ムシ歯予防カフェと謳っているには根拠があります。ドリンクは砂糖ゼロでもスイーツには砂糖が入っています。心配御無用、希望される方には歯磨きのプロ(歯科医師)が歯磨きチェックをします。また、その人に合った歯磨きのタイミング、歯磨き粉(歯磨きペースト)の選び方、使い方もアドバイスいたします。ドリンク砂糖ゼロだけでは勿論不十分で、プロの歯磨きチェックがあるので「ムシ歯予防カフェ」なんです。

近年の研究で歯周病と認知症の因果関係、ズバリ言うと、認知症の発症のひとつの原因が歯周病であることが明らかになりました(BBTime603「プラーク三種」参照の程)。
「美味しい」の一言が歯を守る。ムシ歯予防は歯周病予防につながり、歯周病予防は認知症予防につながる。「美味しい」の感動が人生を守る、「美味しい」のひと言が人生を味わい尽くす秘訣であると心から思います。

以上がラジオで話した内容です。おやつ堂に是非お越しください。営業日営業時間などはインスタグラムにてお知らせしております。では皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。