自分がやりたいことーヒロシの酒部屋No.38

<自分がやりたい事>
全てのアルコールを制覇しているわけではないが、
今までゆっくりと楽しみながら、
醸造酒、蒸留酒などを自分の舌や造り手から、
味の性格やレベルを感じてくると、
良い味の流れのものは、どのアルコールでも
同じきれいな透明感のある流れを持っている様に思う。
そのまじめな味の流れを感じさえすれば、
アルコールとともに食生活を楽しもうとしている方に、
アルコールで失望感を与える事はないだろうと思う。

今年は、売るだけではなく、上の事も含めて、
少し伝える仕事をするために、
全国の酒屋さんを少し訪問してみたいとある方に相談してみた。
賛同は得られなかったが、2月に一度お会いして、
もう少しじっくり話す事とした。
ただ具体的に動いてみないと
その酒屋さん達にとって必要な事なのか、意味のある事なのか、
それともやはり無駄な事なのか、見えてこないので、
6月は他の予定もあるし、
ついでに東京の酒屋さん2軒の訪問を計画していただいた。
この結果も踏まえて、
今自分が思い描いているいくつかの考えの中から、
やりたい方向性は同じであるが、どの選択肢を選ぶべきか、
少し具体的に見えてくるのではと思っている。

やりたいこと

ヒロシとは、こちら

自分のスタイルーヒロシの酒部屋No.37

<自分のスタイル>
ドイツのファルツ地域にリンゲンフェルダーという
ワイン生産者がおられます。
今までは、複雑で難しい味わいのものを造っていました。
それが自分が目指していた味なのか、
それとも高い評価をもらうためだったのか、
定かではありませんが、
実際、五つ星という高い評価を得ていました。
私もすばらしいワインであるとは認識していましたが、
実際売るとなるととても難しいと感じていました。
彼がそう感じていたかはわかりませんが、
最近入荷したワインを試して、その変化に驚きました。

ドイツファルツのワイン

おいしさがわかりやすく、もちろん元々造りが良いのですから、
レベルの高さも感じられ、すばらしい出来映えです。
これだったら、売り易いし、
食中酒としてもっと気軽に飲んでいただけるでしょう!
ただおもしろい事に評価は落ちているのです。
評価するのも同じ人間ですから、その人なりの経験なり、
基準を持っておられるのでしょうが、
評価を鵜呑みにするのではなく、
実際飲んでみて、
レベルやスタイルを把握するのが肝要だと思います。
こういうレベルの高い造り手が、
多くの人に気軽に楽しんでもらおうと
自分のスタイルを変えるのは、非常に有り難い事です。
おいしいし、安いし、売れるし〜!感謝!

ワインの手強さーヒロシの酒部屋No.36

サボンさんの赤ワイン

コート デュ ローヌのサボンさんの赤ワインですが、
左から、
1、2005 コート デュ ローヌVV
2、2004 コート デュ ローヌVV
3、2004 コート デュ ローヌ
となっていまして、
1、2が同じワインでヴィンテージ違い、3は、2の下のクラスです。

先日福岡でワインの稲葉の試飲会がありまして、
あらためて、1と3を試飲しました。
3は、1年前ぐらいからとても良い状態になっていましたが、
今回その状態を維持しながら、
さらに少ししなやかな厚みが増しており、
このワインの底力を感じました。
これだけ、繊細で状態もすばらしくうまいのに売るのが難しい。
酒屋としての力のなさを思い知らされます。

逆に1は、最初から凝縮感があり、
若いのにバランスも良く、今までもかなり売りましたが、
今回試飲して味が閉じている様に感じました。
抜栓してどの時点で試飲したかもありますが、
この様な事はたまにあります。
また改めて飲む必要がありますが、
いつも同じ味ではない事は認識しなければなりません。
ワインが生き物であるが故ですが、ワインの手強さです。

2は、2年前に入荷してまだ味が集まっていなかったので、
そのままセラーで寝ています。来年ぐらい試してみようかなと
思っていますが、手強さ反面、楽しみでもあります。

ソムリエも人間ーヒロシの酒部屋No.35

<ソムリエも人間>
現地の雑誌の情報で、評判が良いと書かれていたので、
こちらから予約して行った事があります。
場所は、ジュブレシャンベルタンの畑の横で
洞窟を利用した様な雰囲気の良いレストランでした。
決していい印象のソムリエではありませんでしたが、
自信ありそうな感じだったので、白赤とチョイスした後、
あなたのお薦めはと聞いたのが間違いで、チェンジした赤が
なんとも無難すぎる力のない味で、
ま、力のない平凡な料理だったので合うと言えば合うのだろうが!?
ただ救いだったのは、食事した後、セラーを見学させていただき、
その時、彼の好みのドメーヌを聞き、なぜそのワインを紹介しなかったの?と
言ったら、苦笑いしていました。ま、少し心が通じたかな!?

そういう事があって、昨年ボルドーのレストランでの事。

白ワイン

ソムリエが出てきましたが、相談せず、まず白をチョイスすると、
そのソムリエが、「トレビアン」と言い、ま、社交辞令かなと思い、
次に、赤をチョイスすると、何も声を発しませんでした。

赤ワイン

あれっと思いましたが、実際両方試してみると
なるほど!赤は悪くなかったのですが、
彼は正直に反応してくれたのかと思うと、
相談すれば良かったなと後悔しました。
料理もすばらしかったし、
そのソムリエの雰囲気も悪くなかったのですが、
私のソムリエを見る目がなかったのでしょう!
ソムリエではありませんが、
以前カオールのレストランに行った時、
すばらしいメートルがおられました。
またあの接客を受けてみたいものです。

過去の「ヒロシの酒部屋」はこちら(No.1-18)

経営と思いーヒロシの酒部屋No.34

<経営と思い>
先日、ある県外の焼酎バーの方から電話で、
「お客さんにとって何が一番大事な事ですか?」
という質問を受けました。
彼ほど焼酎に対して
真正面からまじめに真剣に取り組んでいる方は、
この本場鹿児島にもいません。
鹿児島にも何度も来られ、
あまりにも深く入り込んだためにその感じてきたものを
全てのお客さんに伝えたいという思いが強すぎて、
本物の本道を突き進んでいます。
その結果、たとえば、この焼酎の飲み方は、
この焼酎を活かしてあげるには、
など全くその通り間違いのない事を薦めているのですが、
それを求めないお客さんに対しては、
妥協しないといけないのかという疑問が、
彼の存在価値そのものがなくなりそうで、
怖いのかもしれません。

私の答えは、
経営を考えれば聞く耳を持っている方のみを満足させても
経営として成り立たないので、最終的には聞く耳を持たない方も含めて、
その方々が満足すればいいのではと伝えました。
その中で自分の伝えたい事を少しずつ浸透させていくべきだと!

そういう私はどうかと言えば、
自分が納得した、売りたい商品しか置いてません。
この時点ですでにお客様が限定されているかもしれません。
たぶん鹿児島だけではこのスタイルで飯は食えないでしょうが、
全国に賛同して下さるお客様がおられるからこそ、
経営が成り立つのでしょう!
そう考えると、業務店さんに助言できる立場ではないですね!

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見事な相性ーヒロシの酒部屋No.33

「見事な相性」
6年前ぐらいに仕入れたカオールの白ワインですが、
1999年産で葡萄はヴィオニエ種なので、
テーブルワインとなります。
カオールの白
ちょっと状態を見たくて、
でもただ試飲するだけでは味気ないので、
フレンチレストラン「ガブローシュ」で試す事にしました。

もちろん前日の夜に予約を入れたので、
料理との相性なんて考えもしませんでした。
まず熟成具合がわからなかったので
しっかり冷やした状態でテイスティング。
健康な状態でとても良い熟成をしていたので、
前菜はその冷えた温度でいただき、
そのまま温度を戻していきました。

そして二皿目が、ブルターニュ産の少し薫製されたサーモン。
これは正に見事すぎる程の相性で、特に白ワインの温度が戻って
少し熟成感のあるしっとりとした味になった時との相性は抜群でした。
白ワインの熟成には勇気が必要ですが、
これほど良い状態で熟成された白ワインを飲めるのは
ほんとに稀な事です。

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酒屋の品揃えーヒロシの酒部屋No.32

<酒屋の品揃え>
酒屋の品揃えで、その酒屋の方向性、弱点、レベルなど
いろんな事が見えてくるものです。

たとえば、それは日本に限らず、ボルドーのワインショップでも、
ロンドンやエジンバラのウイスキーショップでも同様であります。
ワインだと、自分の舌や足で捜しているかがわかるし、
ウイスキーだと、どの蒸留所のものを扱っているか、
特に力を入れている蒸留所はどこか、
さらに選んできた樽を試飲させてもらうと一目瞭然。
ゆえにウイスキーの市場はそれ程大きくないので、
ウイスキーショップとして生き残っているのは、本物の店だけです。
ロンドンでも2軒ぐらいでしょうか!

それでは同じ蒸留酒としての焼酎はどうか?
食中酒と食後酒という違いはあるけれど、
蒸留酒として焼酎もウイスキーも良いものは、
同じ味の流れがあります。
焼酎ブームの終焉とともに、いずれは本物の店だけが
生き残っていくだろうと思いますが、懸念材料もあります。

以前、全国の焼酎で有名な酒屋さん達との会の中で、
焼酎を選ぶ基準は何かと尋ねられた時がありました。
私は当然のごとく、自分の舌で良いと判断した焼酎で、
できれば自分が感動した味のものを売っていきたいと答えました。
すると鹿児島のある有名な酒屋さんに、
それではあなたの好みの焼酎に偏るではないですかと反論されました。
では自分の舌で感じ得ないのに、
何の基準を持って選ぶのか!と思いましたが、
根底が違うなと思い、話しても無駄だと諦めました。
たぶんこの方々は、たくさんの種類の焼酎を扱っているのだと思いますが、
逆にある意味、消費者にとっては、選ぶ楽しみがあるので、
そういう酒屋も必要になるのでしょう!
では焼酎で、本物の店とは?
跡形もなくブーム終了の2、3年後の品揃えで
何か見えてくるかもしれません。

生き残るのは?

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あまりにもうまかったので!ーヒロシの酒部屋No.31

<あまりにもうまかったので!>

2007
2007 コート デュ ローヌ ヴィラージュ サブリーヌ
2000円の赤ワインですが、香りからすでに、
ただ者ではない風格を感じたが、
一口、口に含んで笑ってしまった。
これはすごい!

この造り手(アンドレ ブルネル)
に持っていたイメージの味とは別物だった。
大体きれいなわかりやすい味筋なのに、
意外と懐に力を秘めていて何年か経つと、
とてもしなやかないい感じの味になるのが、
今回のワインは、ふくよかな上にかなり繊細な味筋となっていた。
葡萄の出来があまりにも良すぎてそれに支えられた味である。
それをブルネルが完全に活かしきった結果であろう!
もちろん洗練された造りをするブルネルであるが、
この葡萄の出来が、そうさせたのであろう!
これは飲むべきだが、如何せん、数が少ない。
600本ぐらいであろうが、どれだけ確保できるかが勝負である。
他の全国の酒屋が気付いていなければよいが!

アンドレ・ブルネル
アンドレ ブルネル
シャトーヌフデュパプ村
彼の本拠地のシャトーヌフデュパプ村(高台の城跡より写す)

過去の「ヒロシの酒部屋」はこちら(No.1-18)

経験と味覚から来るイメージ:ヒロシの酒部屋No.30

<経験と味覚から来るイメージ>
天草酒造に「池の露」という芋焼酎があります。
今年で4年目の造りとなりますが、
毎年、味のイメージを持って造られています。

初年度は、蒸留酒としてきれいな味の流れ、つまり味の骨格を造る。
2年目は、初年度の味に骨太さを乗せる。
3年目は、それに繊細さを加味する。
4年目の今年は、醪の香りと蒸留仕立ての原酒の味から、
3年目の味にさらに濃厚さを出そうとしているのがわかりました。

この方向性は全て本村氏のイメージです。
ただ、たとえば発酵温度を上げれば濃厚な味ができるとかの
経験と知識からどう造り込んでいくかも大事ですが、
出来た味を利く事ができなければ先に進みません。
麹造りだけが大事なのではなく、全ての行程で手抜きをせずに
イメージを持って、醪になるべくストレスを与えない様にしながら
出来上がった焼酎の味を最大限に引き出してあげる事の
もろもろ全てが大事になってきます。
イメージを持たなければ味の向上はありません。
ここ以外で私が知る限り、
イメージを持って造っている蔵があと2蔵あります。
全てすばらしい蔵です。

天草酒造「池の露」

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人間味ーヒロシの酒部屋No.29

<人間味>
お客様でも、もちろん人間ですから、いろんな方がおられます。
必ずお薦めや話を聞いて選ばれる方、その中でも私と家内で
共有できる方もおられるし、やはりワインですと女性が多いので、
家内じゃないとダメな方も多いです。性格や空気で合う合わないが
ありますので、それはお客様で決めていただければ良いわけです。

また、接客を嫌う方ももちろんおられます。その中にも
書いてある説明を読みながら、ゆっくり見たい方と、
少し知識があるから自分で選ぼうとする方と、両方おられます。
はずれないワインを選んでいるので全く問題はないのですが、
後者の方に限って、ワインの扱い方が乱暴であったり、
棚の高い場所に置いてあるストックのワインをさわったりします。
私にとって一番いやな行為ですが、そういう方に限って
悪くないけど早く売ってしまいたい数少ないワインを掴んできます。
ほんとに不思議な事ですが、東京の有名レストランに行ってるとか、
海外によく行く、住んだ事があるからワインは知っていると
勘違いしている方も同じ行動をする方が多い様です。

ワインは、私にとって、手強い相手なので、
そんなにラベル見ただけでわかるほど簡単なものではないけど、
人間の性格や行動によって、なんかその人の味覚は、見える気がします。
純粋な部分を持っておられて食生活や人生を楽しもうとされている方の
味覚のバランスはすばらしいですね。そうありたいものです。

何事もバランス

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