「木瓜咲くや漱石拙を守るべく」夏目漱石
2023/1/27投稿 1/29追加
画像は木瓜(ボケ)。名の由来は『果実が瓜に似ており、木になる瓜で「木瓜(もけ)」とよばれたものが「ぼけ」に転訛(てんか)したとも、「木瓜(ぼっくわ)」から「ぼけ」に転訛したとも言われる。『本草和名』(918年)には、果実の漢名を木瓜(もくか)、和名を毛介(もけ)として登場する』Wikipediaより。句の解説には『花そのものではなく、木瓜(ぼけ)という語感に着目した句だ。「拙を守る」とはへんてこな意志と思われるかもしれないが、漱石のような才気横溢した人にとっては、おのが才気のままに流れていくことは、たぶん怖いことだったのだろう。才気には、知らず知らずのうちに現実から遊離してしまうという落し穴がある。小説家にしてみれば、この穴がいちばん恐ろしい。だから、どうしても「拙を守る」強固な意志を持ちつづける必要があった。「世間には拙を守るという人がある。この人が来世生れ変るときっと木瓜になる。余も木瓜になりたい」(『草枕』)。そして漱石ならずとも、現代人の多くはいま木瓜になるべきときかもしれない。シャープという名の小賢しさが一掃されたら、どんなに気持ちがよいことか。私が俳句を好むのも、俳人には「拙を守る」人がたくさんいるからである。とは、それこそまことに小賢しい言い方かもしれないが……。『漱石俳句集』(岩波文庫)所収。(清水哲男)』(解説より)。わかるようなわからないような解説ですが、今回はプラークと認知症について。
これがボケの実、確かに瓜に似てます。歯科でプラークと言えば「歯の表面の白っぽい汚れ・付着物」のことです。『プラークは歯垢やバイオフィルムとも呼ばれています。プラーク=食べカスだと思われる方も多いのですが、プラークと食べカスは全くの別物です。プラークは、歯の表面に、お口の中にいる菌が付着し増殖した物、つまり細菌の塊です。キッチンの三角コーナーや排水溝についたヌルヌルとしたぬめりをイメージしてもらうとよいでしょう。この中に、むし歯菌や歯周病菌など様々な菌が生息しているのです』(引用元)。ご存じでしょうか?このプラークは歯磨き粉(ペースト)の力では落ちません。歯ブラシによる物理的除去のみで取り除くことができます・・これが歯科のプラーク。
拙ブログ「BBTime 301 シセキ巡り」に登場するのが、銘板(めいばん)の意味のプラークです。『画像は「The Pioneer Plaque:パイオニアプラーク」と呼ばれる銘板で「この金属板は1972年と1973年に打ち上げられた宇宙探査機パイオニア10号・11号に取り付けられた銘板で、人類からのメッセージを絵で記したものである」(ウイキペディアより)。プラークとは「銘板」のことでもあります。夏目漱石関連のプラークもロンドンにあります。銘板:めいばん=小型の平板に銘柄(仕様)を表示したものである。銘柄を表記する板、またはプレート、コーションラベルのこと。』・・プラーク二つ目。
順序が逆になりましたが、これが「パイオニアプラーク」詳しくはこちらを。先日、記事の中に三つ目のプラークを見つけました。「この病気の特徴は脳にタンパク質のプラークが現れることだ」・・この病気とはアルツハイマー病です。記事『「認知症になりたくなければデンタルフロスを習慣にしたほうがいい」北欧の分子生物学者がそう説くワケ』に詳しく書かれています。
『この病気の特徴は脳にタンパク質のプラークが現れることだ。このプラークはアミロイドβと呼ばれるペプチド(鎖状につながったアミノ酸)が凝集し、小さな塊になったものだ。この塊ができる理由はわからないが、これが脳内で炎症を引き起こし、やがて脳細胞を死滅させる』(引用元)。
『微生物の培養液にアミロイドβを入れると微生物が死ぬことを科学者たちは発見した。アミロイドβは微生物の周りに凝集し、無力化して息の根をとめるのだ。さらには、念のため、厳重に保存する。このみごとなメカニズムが起きるのは実験室で培養した微生物に対してだけではない。・・・マウスの脳に細菌を注入するとアミロイドβはさっそく活性化し、細菌の周りに集まって塊を作る。そのため、アミロイドβを持つマウスは細菌を注入されても生き残りやすいが、アミロイドβを持たないマウスは細菌によって死ぬ。さらに、アルツハイマー病の遺伝子研究から、この病気の発生に免疫システムが何らかの役割を果たしていることがわかっている』(引用元)。
『アルツハイマー病に微生物が関与しているという決定的な証拠があるのだ。残された謎は、その微生物の正体だ。・・・台湾で行われたある研究が、最も疑わしい容疑者を突き止めた。この研究者たちは、ヘルペスウイルスの感染者が抗ヘルペス薬を服用しなければ、非感染者の2.5倍もアルツハイマー病になりやすいことを発見した。抗ヘルペス薬はヘルペスウイルスを抑制し、興味深いことに、アルツハイマー病になるリスクも正常レベルに戻す。また、アルツハイマー病で亡くなった患者の脳組織にはヘルペスウイルスの痕跡が大量に見られるが、対照群の脳には見られない。これを複数の研究グループが確認したことはヘルペスウイルス説を補強する』(引用元)。
『2番目の容疑者になる細菌は通常、口中に棲んでいるポルフィロモナス・ジンジバリス(P・ジンジバリス)だ。P・ジンジバリスもアルツハイマー病で亡くなった患者の脳組織で見つかっている。この細菌は歯周炎と呼ばれる口の中の深刻な炎症を引き起こすことがある。そして歯周炎はアルツハイマー病(と心血管疾患)のリスクの高さと関連がある。・・・実際、60代の高齢者、8000人を対象として歯科検診を行った研究では、歯周病になっている人は20年後に認知症になるリスクが高いことがわかった。因果関係があるかどうかはともかく、デンタルフロスは有益だ』(引用元)。
簡単におさらいすると
1)口腔内にプラークが常に多いと歯周病が悪化します。
2)歯周病菌が血液によって脳内に運ばれます。
3)歯周病菌を攻撃するために脳内にアミロイドβが現れ蓄積します。
4)アミロイドβプラークがアルツハイマー病発症に繋がります。
日々の臨床で、時に「歯石取りは必要ない」とおっしゃる方がいらっしゃいます。無理強いはしませんが、一言「認知症のリスクが高まりますよ」とは伝えます。歯を磨けばリスクを減らせるのか?・・そうです。そうですが、ご自分で完璧に磨くことは至難の業。繰り返し言います「歯は、磨いてももらうもの」。歯磨きとカフェのコラボ、ムシ歯予防カフェ「おやつ堂」が来月下旬、鹿児島市荒田1丁目にオープンします。詳しくは「おやつ堂」インスタグラムをご参照ください(おやつ堂:oyatsu.do)、近づきましたら情報をアップします。では皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。今回は、先日亡くなられた二人のミュージシャンへの哀悼の意を表して。
追加:この記事は、コペンハーゲン大学(デンマーク)在籍の研究者が書いた「寿命ハック」をもとにしています。デンタルフロスだけがクローズアップされていますが、歯ブラシによるブラッシングはほぼOKで、加えてフロスであると理解してください。日本人の方が口の中の汚れは多いです、恐らく。「デンタルフロスを習慣にしたほうがいい」を日本人向けに翻訳するならば「こまめに歯科に通ってプロにキレイにしてもらった方がいい」となるでしょう。最後にしつこく(笑)「歯は磨いても、もらうもの」!