「あたたかき十一月もすみにけり」中村草田男

2023/11/23投稿
昨今の気温について、掲句の解説のようには受け止められない「今年」です。解説は『旧版の角川書店編『俳句歳時記』には、この句と並んで細見綾子の「峠見ゆ十一月のむなしさに」が載っている。長年親しんできた歳時記だから、毎年この時期になると、二つの句をセットで思いだすことになる。並んでいるのは偶然だが、いずれもが、十一月という中途半端で地味な月に見事な輪郭を与えていて、忘れられないのだ。忙中閑あり。……ならぬ、年の瀬をひかえて「忙前閑あり」といえば当たり前だが、両句ともそんな当たり前をすらりと表現していて、しかもよい味を出している。ただ草田男句の場合は、どちらかといえば玄人受けのする作品かもしれない。(清水哲男)』(引用元)。今回は介護と音楽について。

歯科訪問診療で介護の現場に出向きます。訪問先で感ずること二点、明るさ(照明)と音。居宅(ご自宅)であっても施設であっても様々です。今回新たな試みを始めました。今までも可能な限り、ご家族や職員の方に一言断って、カーテンや窓を開けて外光を入れたり換気したりしていました。また、その場の「音」・・テレビ、ラジオ、BGMなどの音があることもあれば無音のこともあります。大雑把に言えば、戸やカーテンが閉まって(明るくなく)音がない部屋は、空気は重く暗く感じます。

介護を受けられるご本人が耳が遠い故の無音なのかも知れません。明るい空間(現場)もあります。明るい部屋にベッドがあり介護される方も明るい。あるお宅はご主人が奥様を介護されています、奥様は元バスガイドさん。いつも音楽が演歌、歌謡曲とエンドレスで流れてきます。小生がイントロ当てクイズよろしく「これは前川清」と言って間違っていると、奥様は寝たまま大笑い。ご主人と奥様のやりとりはまさに夫婦(めおと)漫才。かたや暗い空間もあります。光は届いていても「無音」、九十代半ばのお母さんを六十代半ばの息子さんがお世話していらっしゃる。介護鬱(うつ)を疑いたくなるくらい気落ちされていることも。帰りしな思いました「音楽をかけよう!」

簡単です、手元にスマホがあります。早速BGM作戦開始!はたと考えました「何をかけよう?」その時に浮かんだ曲がチャップリンの「Smile:スマイル」。早速spotifyで検索すると、様々な歌手がこの曲をカバーしているチャンネルがありました。狙いは「ご本人」「介護する人」「我々(歯科訪問診療)」へのBGMです、スマイルです。

効果の検証はこれからです。先日百歳過ぎ女性の口腔ケアでした。会話は成立しませんが、言う事は理解してくださいます。ケア終了後「今日はこれで終わりです、また来ますね」と大きめの声で言うと、感謝と喜びの気持ちが充分に伝わる目だけの笑顔で見送ってくださいました。「目は口ほどにものをいう」と言いますが、これほどまでに伝わるとはと驚くほどの「目だけ笑顔」でした。Music for 介護、試行錯誤していきます。皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。