<本物と嗜好>
本物の味を造っても人それぞれで好みが違うので、
全ての方が受け入れてくれるわけではない。
大事なのは、その方にとってうまいかどうかである。
しかし、物造りにとって、本物は真実である。
嗜好に左右されるものではない。
嗜好がはっきりされている方を満足させる必要もない。
造り手が、謙虚に構え、その蔵に見合ったまじめな造りをした結果、
賛同して下さる人が少しいてくれたら、十分だと思う。
絵1は、鹿児島川内の村尾酒造で、薩摩茶屋という
すばらしい芋焼酎を造っている蔵である。
今期の薩摩茶屋は、ここ6年の味とは全く別物である。
まじめなきれいな味の流れの中に、骨太さとふくよかさがあり、
すばらしい出来である。
昨年、村尾さんに進言したが、求めていた味でもある。
今年7月にお伺いした時に、今年もこの味でいくと強く言われ、
うれしい限り。
でも前の味が好きな方もいる様ですよと言ったところ、
今までの軽い味はいつでも造れるし、
自分達もこの味が気に入っているので、
これからはぶれずにこの味でいきますとの事。
これが私にとっても、村尾さんにとっても本物の味という事である。