「美味礼賛」海老沢泰久著

この書名を広告で見たときに、「オヤッ?」と思いました。
『美味礼讃』といえば、
かの有名なブリア・サヴァランの著した本です。
「どんなものを食べているか言ってみたまえ。
君がどんな人であるかを言いあててみせよう」
と述べている、哲学の書ともいえる名著です。
その書名を使うとは、恐れ多いなぁと思いつつ繙いたところ……、
参りました。
1993年3月2日に亡くなられた辻 静雄さんを
モデルに話は展開していきます。
そのたおやかなストーリーは、
あたかも三ツ星レストランでフルコースを
堪能しているかのような錯覚に陥らせてくれます。
「ブリア・サヴァランはこの本の中でこういっているの。
『フランス人は、ほかの民族よりも、
ただおなかがすいたから食べるという人間と、
味をよく噛みしめて楽しんで食べるという人間を
厳重に区別することに、非常な熱意を燃やしている民族である』。
つまり、世の中には食べるということに関して
二種類の人間がいて、
フランス人はそのことに早くから
気がついていたということなのよ。
わたしの話が分る?」(158〜159頁から)
読み終わったときに、
心から「ごちそうさまでした」と手を合わせました。
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