BBTime 043 いれば食堂 李と百歳

BBTime 043 いれば食堂 李と百歳
「青梅をかむ時牙を感じけり」松根東洋城
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牙=きばと聞くと少々ドキッとしますが、「牙」は中国語では「歯」のこと。ちなみに歯科医は牙医(ヤーイー)と言います。今回のメニューは「李:すもも入れ歯」と「百歳入れ歯」。先日、上下総入れ歯の女性が調整後の確認で来られた時のこと。「下の前歯のベロ側が少し痛かった」と、診てみると確かに左下の前歯あたりが赤くなっています。こちらとしては前回調整後にもうこれで痛みは出ないはずと思っていただけに少々ショック。「何か普段と違うものを食べられましたか?」と聞くと、苦笑いしながらひとこと「スモモ」との返事。
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詳しく聞くと、店先に美味しそうなスモモを発見、ここ数年食べてなかった(食べられなかった)し、前回調整後入れ歯の調子が良いので早速買って帰り、丸齧り(かじり)されたとのこと。「スモモ入れ歯」の注文有りです!李の旬の間に「スモモ入れ歯」を完成させましょうと提案。果物の丸かじりは、総入れ歯のセミナーなどでひとつの目標とされたこともありましたが、小生の考えでは可能なケースと厳しいケースがあるように思えます。その方の歯茎(顎堤)の形や大きさ、噛み方などが関係します。歯科材料も他の分野と同じく日進月歩です、しかしながら保険診療ではいろいろな理由で同じスピードで日進月歩とは行きません。入れ歯(特に総入れ歯)は、口の中である程度動きます。本領発揮は食事中、会話中、歌う時、笑うときです。おおまかですが保険診療の認めている型採りは診療台に座り、食事などしていない状態での型採りです。日進月歩の材料を使えば食事しながら、会話しながらの形を型採りすることも可能です。このズレが歯がゆいところです。さてスモモと聞いて思い出すのが「スモモも桃もモモのうち」ちなみにこれは嘘です。スモモは桃の仲間ではありません。プラムは大きなカテゴリーの名称で、スモモ、梅も英語で言うとプラムです。プルーンはプラムのフランス語読みです。通常、日本スモモがスモモ、西洋スモモをプラム、プルーンと称しているようです。これがプルーン(下の画像)

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さて百歳入れ歯。実際は97歳の女性で娘さんと来られます。入れ歯希望で来院、結構歯は残っているのですが、かなりグラグラ。年齢のことも考慮して、抜かずに歯の頭(歯冠部)だけカットして根っ子を残して、その上に入れ歯を作りました。まずは百歳まで元気に食べられるようにという願いを込めての「百歳入れ歯」。つい先頃完成して口の中に。鏡で見てもらいました、開口一番御本人曰く「あらあ、わこう(若く)なった」(大笑顔)。治療中いつも感心させられたことは御本人の感謝の姿勢です。治療が終わると必ずお辞儀して「ありがとう」と感謝されるのです。このような方は周りの人からも好かれるだろうなあ、結果的により幸せに歳を重ねることができるのだろうと思いました。この時、思い出したのが「きんさん、ぎんさん」です。このお二人の功績は多々ありますが、仕事柄気になったのが「歯無し」でした。見かけ上おそらく歯が一本もないきんさんより前歯が残っているぎんさんの方が長生きされました。入れ歯を入れておられたなら、お二人ともにもっと長生きされたと思います。

梅、李ときて今回オススメは果物繋がりでフランス語で小ミカンの意味のクレモンティーヌ。かなりの日本贔屓(ひいき)のようです。5175


蛇足:「青梅を生で食べるといけない」と聞きますが嘘ではないようです。青梅に含まれる成分(アミグダリン)が問題ようです、ご注意ください。くわしくはこちら

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