BBTime 287 ま、いいや

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「煙草火の近づいてくる寒夜かな」盛生高子

先日、久しぶりに現物(画像)を見ました。さて、コンビニの入り口に喫煙者がいると遠回りします、煙(臭い)が苦手です。歯科でも禁煙について話すことがあります。昔から不思議なんですが「なぜ法的に禁止しないのか?」「法的に製造を中止しないのか?」。この議論になると色々な言い訳が聞かれます。「喫煙は嗜好品である」「必ずしも肺がんにならない」「煙草葉生産者保護」等々。かたや喫煙は病気であるとして禁煙は治療として保険適応です。喫煙しない多くの人の副流煙による害がニュースになります。原因が非常に複雑で、一筋縄ではいかないのでしょうかね。

ムシ歯にも似たところがあります。病因(病気の原因)は砂糖とムシ歯菌だとわかっているのですが、無くなりません。歯医者になりたての頃から「歯を磨けばムシ歯にならないのに何故予防できないのだろう」と自問自答してきて三十年あまり・・。なんとなく真の理由がつかめてきました。

これで「太らない・痩せることができる」というダイエット方法はただひとつ「食べないこと」です。しかし「食べない」と人は生きられません。ムシ歯予防法もこれと同じような気がします。普通の日本人において「砂糖を摂取しない」は不可能です。「ムシ歯菌がゼロ」も無理です。口の中に歯が無ければ絶対にムシ歯になりませんが、これはハナシになりません(笑)。昔から歯医者は特にムシ歯の子供さんに「お菓子を食べ過ぎるな」「歯をしっかり磨け」など、親御さんの小言のようなことをさも「正しいこと・必要なこと・実行すべきこと」かのように説いてきました。今思えば「無理なこと・不可能なこと・実行できないこと」を言っていたに過ぎません。子供さんにとって馬耳東風となるのは当たり前です。

国際結婚カップルのお子さんがバイリンガル可能なのと同じような気がします。ムシ歯にならない・ムシ歯がほとんどないのは「これ」をしたからというよりも言わば「育ち・環境」でしょう。もちろん「親御さんの仕上げ磨き」「フッ化物やキシリトールの活用」「砂糖摂取への配慮」などは考えられますが、「これのみ」でムシ歯ゼロは難しいと思います。

もうひとつ思うことがあります。愛煙家は頭のどこかで「肺がんになってもま、いいか」と思い、「ムシ歯あるけど、ま、いいか」と考える人もいるということです。つい歯医者は「ムシ歯は治療すべきだ」と、ムシ歯を見つけると「ここムシ歯ですね」と伝えますが、それは歯医者の考えであり「別に一本や二本ムシ歯があっても困らないし」と思う人がいるのも事実です。太っていても「ま、いいや」痩せていても「ま、いいや」タバコ辞めなくても「ま、いいや」・・。こう考えると「喫煙は文化」「肥満はスタイル」「ムシ歯は生き方」とも言えます。ムシ歯がなくならない理由は「本人が選択している」からではないでしょうか。同じセンタクなら「歯の洗濯」を選んで欲しいと思うのは歯医者だけ?

句の煙草火を解説では不気味と捉えているようですが、タバコ火の思い出をひとつ。これまでに自分の意志で数箱買いました。学生時代、バイト(家庭教師)の帰りのこと、小倉の冬はかなりの寒さです。バス停に近づくとタバコの自販機・・ここで一服つけると温かくなれるのでは・・と思い硬貨を入れました。出てきたキャビンの赤い箱の封を切りながらふと・・喫煙しないのでライターを持ってないことに気がついて苦笑い。しかし良き時代だったのでしょうね、自販機に紐付きのライターひとつ、蓑虫のようにぶら下がっているではないですか!マッチ売りの少女よろしくライターの火にも暖をもらって一服・・。この時も二本目吸わずに友人にあげました・・「もう吸わなくても、いいや」本日立冬、ご自愛のほど。0380

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