BBTime 507 味覚異常
「街の雨鶯餅がもう出たか」富安風生
鶯餅:製は明石屋、皿の銘は桜島。句の鶯餅は考えるに妙で、形状はメジロで名はウグイス。古来、姿のメジロと声のウグイスが混同されてきたのでしょう。この名は『秀吉はその餅を大いに気に入り「以来この餅を鶯餅と名付けよ」と菓銘を下賜した』(Wikipediaより)とのことです。詳しくはこちら「鰯の頭も!」を。ちなみに句の解説に『和菓子は美しい。食べるには惜しいと思うことすらある。作者の師である富安風生に「街の雨鴬餅がもう出たか」という有名な句があるが、味わいたいという気持ちよりも、その美しさが春待つ心に通い合っている』(解説より抜粋)。今回は味覚の異常について。
先日2/28付朝日新聞天声人語より『カレーを一口なめただけで、スパイスの種類や量をぴたりと言い当てられる人はいるだろうか。「しょうがにニンニク、シナモン、クローブ……」。安房直子さんの童話『まほうをかけられた舌』の主人公、洋吉にならできる▼地下室に住むこびとが舌に木の葉を乗せ、呪文を唱えて魔法をかけた。この舌があれば、高級レストランの自慢料理もたちどころに再現できる。すごい、私も欲しいと、幼いころに夢中で読んだ▼』
『そんな記憶がよみがえったのは、昨春に新型コロナウイルスに感染したイタリアの友人から近況を聞いたからだ。「目を閉じて食べると、ピザかパスタかパンかわからない」。回復から8カ月たっても続く、嗅覚(きゅうかく)・味覚障害である▼彼女によると、コーヒーはガソリン、肉は金属のような味がするという。さらに、排泄(はいせつ)物は良い香りに感じ、水道水は臭くてシャワーを浴びるのが嫌になるほどだとか。まるでウイルスが舌と鼻に呪いをかけたかのようだ▼』
『英国などではコロナ後遺症のうち、若者や女性に目立つ傾向が報告されている。日本でも厚生労働省の研究班が調査を始めたが、原因や実態がはっきりしないのがもどかしい。呼吸困難や脱毛などと比べ、これくらいならと我慢している人はいないか▼味やにおいは、生活の質を左右する。食欲が失せたりガス漏れに気づかなかったりすれば、命にもかかわってくる。平凡な舌でも、また食事がおいしく楽しめる。そんな魔法のような治療法はできないだろうか。』2/28天声人語より。(スコーン画像はパニスのインスタグラムより@panis_kagoshima_)
新型コロナウイルス感染によって「嗅覚・味覚障害」がみられることがあるようで、その機序は簡単に言えば「ウイルスが嗅覚や味覚に関与する細胞のあるタンパク質を攻撃する」からとのこと(こちらを参照)。天声人語にもあるように未だ確実な治療法は確立されていません。現段階での確実な治療法は「予防」しかありません。自宅で一人ひとり可能なことは「うがいと手洗い」です。また口の中(口腔内:こうくうない)をキレイに保つことは非常に重要であり、感染予防に効果的と考えられます(こちらも参照のほど)。
画像は鶯餅の本家本元「菊屋」の御城之口餅。まだまだ先は見えませんが、峠をいくつか超えたことは確かです。最後に富安風生の句をもう一句ご紹介します。皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。7030
「三月の声のかかりし明るさよ」富安風生
https://youtu.be/Q0ygeMkAlZ4
おまけ:二曲目の最後の最後に明るい声なき声が入っています(笑)。またこちらもどうぞ「味覚の95%は鼻で感じる」ではまた。