BBTime 515 変異人:へんいびと
「目には青葉山時鳥初鰹」山口素堂
掲句にはこの時期よく出会います。目で青葉、耳でホトトギス、舌で鰹と視覚聴覚味覚および触覚を見事にカバーしており、本歌(ほんか、オリジナル)には「は」が入っています。チラシなどで目にする「目に青葉山ほととぎす初鰹」は正確には単にコピー(言葉)、「目に青葉」の方が平仮名五文字となり言いやすいのでしょう。変異しています。
「目には青葉尾張きしめん鰹だし」三宅やよい・・・句の解説に『思わず破顔した読者も多いだろう。もちろん「目には青葉山時鳥初鰹」(山口素堂)のもじりだ。たしかに、尾張の名物は「きしめん」に「鰹だし」』(解説より)。かなりの変異です。
「味噌・醤油・塩・酢・浅葱・初鰹」瀬戸正洋(せいよう)・・・解説に『調味料、そして薬味、初鰹。単語の羅列だけでできた句。たとえば映画のカメラが台所を撮影しているような感覚がある。味噌を映し、醤油を映し・・と来て、最後は初鰹をクローズアップ』(「食の一句」櫂未知子著82頁より)。この句が冒頭の句を本歌としているか否かは分かりません。踏まえているならば相当の変異です。ちなみに「浅葱」は「あさつき」。
ニュースでインド変異株が連日のように伝えられます。記事に『L452R変異はアジア人の免疫から逃れるために発現したとも仮定できる」と指摘する』(出典はこちら)とあります。地球上の動植物はもちろんのこと、細菌やウイルスにおいても「生き延びるために変わる」ことは共通しています。正確に言うならば「ウイルスは始終変異しており、その時々の環境や条件に合った変異株が生き残る」のです。ウイルスであっても生き延びたいのです。結果的に生き延びるための変異なのです。
次のような記事も目にしました。「なんでんかんでん 川原ひろし社長はコロナ直撃も悲壮感なし、アフターコロナの飲食店のあり方も語る」(出典はこちら)内容は『オープン直後は好調でしたが、3月から怪しい雰囲気になり、緊急事態宣言が出た4、5月は入居していたビルが閉鎖。たくさん入居していた居酒屋がみんな撤退するありさまです。その後やることがなくて。寝るのが好きなので、働きづめだった35年分寝ようと開き直りました』『この1年、家に籠りっきりであまりにも暇なので、ペペロンチーノやバーニャカウダーといった料理を基本から勉強して、かなり料理が好きになりましたね。こんな生活を送っていると、ますます店をやりたい気持ちが強くなって、なんでんかんでんを再始動させるとともに、ラーメン以外のメニューにもチャレンジしたいと意欲が湧いているところです』(記事より抜粋)。見方によってはこの方も変異されています。そうです!コロナウイルスが変異するのであれば、我々人類も変異せねば生き残れない(仕事・収入が続かない)のではないでしょうか。
これは「明鏡志水」特製淡麗塩らぁ麺・・『JR博多駅5、6番ホームにあるラーメン店「明鏡志水」が人気だ。600~1100円と立ち食い店にしては高級だが、限定100食が連日売り切れ、食べるためだけにホームに来る人もいるという』(記事はこちら)。この方(秋吉氏)も変異人(へんいびと)です。六月末までの営業、チャンスある方は是非食べてみてください。スープをひと口飲んだだけで元気百倍食欲千倍!
仕事のみならず、マスク常用、小声での会話、ソーシャルディスタンスなど自分のみならず人(他人)も守る心遣いを踏まえたライフスタイルの実践も変異人です。最後にダーウインの言葉からふたつ。「有利な個々の変異を保存し、不利な変異を絶滅すること。・・・これが自然淘汰である」「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである」(引用元)。皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。9420