BBTime 518 記事ふたつ
「行く春について行きたる子もありし」矢島渚男
読み返してみても、解説にあるような深い意味を推測すらできませんでした。解説には『掲句の「子」は、赤ちゃんよりはもう少し大きい子だろう。作者の知っている子だが、そんなによく知っていたわけでもない。たぶん近所の子、あるいは友人か知人の子で、その死は伝聞によってもたらされたくらいの関係か。春の終り。生きとし生けるものの生命が盛んになる夏を待たずに逝った子のことを思って、作者の心はいわば春愁のように沈んでいる。しかし沈みながらも、作者は悼む気持ちをできるだけ相対化しようとしている。実際、子供というものは、習性と言ってよいほどに何にでもついていきたがる。だからこの子は、きっと春についていっちゃったんだと、そう思い決めることにしたのである。これまた、苦いユーモアにくるんで刻んだ心やさしい墓碑銘と言ってよい。『百済野』(2007)所収』(解説より)。最近、目にした記事について。
ひとつ目は、5/17記事「排ガス規制が「銀歯」に影響、原材料のパラジウムが高騰 「100万円前後の持ち出しも…」(出典はこちら)。車の排ガス規制で・・「風が吹けば桶屋が儲かる」のような話ですが、これは数年前から歯科業界では言われ続けてきた事実です。記事には『排出ガス規制をクリアするために、自動車に「排ガス浄化装置」という装置を組み込んでいる。この装置を作るうえで欠かせないのが「パラジウム」という金属。いま世界各国の需要拡大に伴い、このパラジウムの価格が高騰している。パラジウムが実は「銀歯」の材料にもなっている。歯科医院で虫歯の治療に使われる銀歯だが、原材料は銀だけではなく金、銀、パラジウムなどからなる「金銀パラジウム合金」、通称「金パラ」という合金から作られている。パラジウムの価格高騰により、この金パラの価格も上がっているのだ』(引用元)。
車(ガソリンエンジン車など)の排気ガスを浄化する際に触媒としてパラジウムが必要で、大量にパラジウムが使われるようになり高騰しているとのこと。ちなみに歯科用金属にパラジウムを混ぜているのは日本だけだと言われています。歯科用の通称「キンパラ・12パラ」とは金(ゴールド)を12%含む歯科用金属のことで、その組成は「金Au 12%、パラジウムPd 20%、銀Ag 52%前後、銅Cu 15%前後」。パラジウムを混ぜる理由は、適度な硬さ(天然歯に近い)にするためで、似たような硬さにしないと、その金属(冠やインレー)とご自分の歯が長持ちしないからです。画像はパラジウム地金
ネットでパラジウム価格を見て驚きでした!5/18時点で、1グラム当たり金:7254円、プラチナ:4886円、パラジウム:11467円、銀:117円の相場です。パラジウムは金の約1.5倍の価格、銀の100倍です(引用元)。実は数年前より歯科治療で「脱パラジウム」の動きが加速しています。簡単に言うと「白い被せ物:白いクラウン(冠)」の保険適用が拡大されています。口の中の条件・状態にもよりますが、大方上下とも6番目の歯までは白い冠が保険適用となっています。ついでに、土台(コア)の材料も脱金属の流れです。もし今後、歯の根の治療後に「被せ物はどうしましょう?」との質問には「金属を使わない方法は?」と聞いてみてください。一概に言えませんが、土台であれば「ファイバーポスト」、被せ物なら「CAD/CAM冠:キャドキャムかん」がオススメです。高騰しているパラジウムを使用しない分、割安感もあります。蛇足ですが・・エンジンを持たない車(電気自動車など)が増えるにつれ、当然ながら「触媒としてのパラジウム」の必要性は減少し、いつしかゼロとなります・・その時にはパラジウムは暴落するでしょうね。
さて二つ目は、5/17記事「歯磨きに「虫歯を予防する効果はない」衝撃事実」・・この見出しを鵜呑みにするとショックでしょう。この見出しの真意は「歯磨きだけではムシ歯予防は不十分です」だと解釈しました。記事には『実際に歯ブラシでこするだけの歯磨きには、むし歯の予防効果はありません。なぜなら、むし歯になりやすいところは、たいてい歯ブラシの毛先が届かないからです。むし歯になりやすいところとは、奥歯の噛み合わせの溝の中と、歯と歯の間です。また、一度むし歯を削って材料を詰めた場合、詰めた素材と歯の境目も、歯ブラシの毛先が届かず、新たにむし歯になりやすい箇所です』(引用元)。この文章は真実ですが、即「歯磨きに予防効果はない」とするのはちょっと飛躍し過ぎだと思います。
2ページ目で『最も効果的なむし歯の予防法は、フッ素を使うこと。フッ素には、むし歯の初期に起こる、歯から唾液中に溶け出したカルシウムやリンを元の歯に戻す効果があります(再石灰化作用)。また、口の中の細菌の増殖を抑える作用や、歯のエナメル質に働いて酸に溶けにくくさせる作用もあります』(引用元)。とあり3ページ目に結論として『「むし歯を減らす」たった2つの方法・・・むし歯ができないためには、むし歯ができる環境を根本的に改善する必要があります。そのための一番の近道が、砂糖を摂る頻度が高い人は、その頻度を減らすことです。 また、長い間、歯に詰め物をしていたり、歯の根が露出したりして、むし歯のリスクが高まっている人なら、フッ素入り歯磨き剤を使うことです。この2つを実践するだけでも、むし歯になるリスクは一気に低くなるのです』(引用元)。
揚げ足取る気はありませんが・・・歯磨きに効果なしと見出しにするのに、結論で「フッ素入り歯磨き粉を使うのが良い」と・・歯磨き粉を指で歯に塗るわけでもないでしょうから、やはり歯磨きは必要ですよね。さらにアドバイスするならば、夜の歯磨きをメインとし時間をかけてください。まず歯ブラシに歯磨き粉を付けずに「唾液」での歯磨きをオススメします。口の中で最もムシ歯ができにくい部位は下の前歯です。理由はシンプル・・常に唾液で濡れているから。つまり唾液によって守られているからです。鏡で口の中を見てください、ベロ(舌)を上げるとピンと伸びたスジ(舌小帯:ぜつしょうたい)が見えます。小帯の歯に近いところに左右に小さな膨らみ(舌下小丘:ぜっかしょうきゅう)が確認できます。ここから唾液が出てきます。よって下の前歯は始終唾液で守られている訳です。すなわち唾液には歯を守る作用があるんです。と言うことで、まずは唾液磨き。歯磨き粉を使うのは最後にちょこっと、歯ブラシに載せ、歯磨き粉を歯の表面に塗るつもりで歯磨きし、うがいせずに吐き出して終わり!せっかく塗布したフッ化物をうがいで流してしまうのはもったいないのです。このやり方だと、翌朝起床時の口の中のネバネバが少ないのが実感いただけます。
最後に、最もムシ歯予防効果のある方法をお教えします!ズバリ「歯は磨いても、もらうもの」なんです。セルフケア(自分磨き)でフッ素入りペーストを常用し、月に一度は「プロケア」を受けることを勧めます。脱金属で白い冠や詰め物を選択する、保険外でセラミック製のモノを選ぶ・・ご存じのように生えてきた時は白い綺麗な歯です。守った方がお得ですよ!繰り返しますが「歯は磨いても、もらうもの」。ではでは皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。4930