「粕汁にあたたまりゆく命あり」石川桂郎
2023/12/24 投稿 2024/01/02画像追加と加筆
先日(12/21)桜島初冠雪、やっと冬らしい年末が来ました。句の解説『鮭や野菜等に粕を加えてコクを出すという、冬を乗り切る知恵が<粕汁>には詰まっている。桂郎はこの句を病床にあって詠んだ。だからこそ身体のみならず<命>がぬくめられる感覚を抱いたのだろう。この一年の間に死別した人の数を思う。そして、いずれ自分自身の命ともサヨナラをしなければならない時が来ることをも思う。しかし生きている限り、その日まで食べ続けなければならない宿命をわれわれは生まれながらに持っている。(『四温』)季語=粕汁(冬)』(櫂未知子著 食の一句より)。同感!「Music for 介護」「Sweets for 介護」ときて締めは「食こそエンターテインメント!」。この言葉、昔雑誌「dancyu」の表紙に載っていました。
今年(2023)春から本格的に訪問診療に携わるなかで、今更ですが歯科医師の仕事は「食べる」であると痛感しています。健康な人そうでない人、誰にとっても「食べる」は喜びであり生きている証(あかし)でありエンターテインメントであると実感します。句の解説にあるように『生きている限り、その日まで食べ続けなければならない宿命をわれわれは生まれながらに持っている』のです。
ある施設利用者女性は百歳。その方だけは、昼御飯お膳に九皿載っています。ご家族の希望で「おばあちゃんに、好きな物を好きなだけ、食べて欲しい」とのこと。おおかた箸をつけられるのは二割から三割、ご家族はそれでもいいと。これを知った時ショックを受け感動しました。まさに「食こそエンターテインメント」!。栄養のバランスがどうのこうの、ムシ歯のリスクがどうのこうの等々、一切関係無いと気付きました。(失礼な言い方ですが)残された日々をいかに楽しむか。その大きな楽しみが「食べる」です。まさに「エンタメ、生きる、生ききるため」!
以前書いた「BBTime 538 残るは食欲」に・・「阿川佐和子著「残るは食欲」に『書名ともなった「残るは食欲」というのは、そもそもだいぶ昔に悪友、ダンフミが呟いた言葉だ。「愛欲と物欲を捨てた今、自分と俗世を結ぶ唯一の絆は食欲のみ」うまいことを言う女優だと感心した。感心はしたけれど、私はそこまで欲を捨ててはいないと自認した。』(あとがき)」。
余すところ七日、除夜の鐘は百八。百八番目の煩悩が食欲なのかも知れません。今年の大掃除のメニューに口の中の大掃除も加えてください。診療所に出向くのが無理な場合、湯船でゆったりゆっくりじっくりのハミガキを!皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。
https://youtu.be/ZcJjMnHoIBI?si=gytN2JaKfE7Z5zwU
朝日新聞 2024年元日の朝刊より