BBTime 661 耕不尽

「夏の夜や崩て明し冷し物」松尾芭蕉

2024/07/20投稿
「耕不尽:こうふじん」耕せども尽きず。句の解説から『清少納言は「夏は、夜」がよろしいと言った。「月のころはさらなり、闇もなほ、螢の多く飛びちがひたる」。違いないが、健全な風流心にとどまっている。そこへいくと、掲句の「夏の夜」はよろしいようなよろしくないような、とにかく健全さは読み取れない。「なつのよやくずれてあけしひやしもの」と読む。句会が宴会に転じ、ずるずると飲みかつ語るうちに、夜がしらじらと明け初めてきた。その光のなかで卓上を見やれば、昨夜のせっかくの冷えた酒肴も見苦しく崩れてしまっている。みんなの顔もとろんと大儀そうで、ああ適当に切り上げておけばよかったのにと、後悔の念にかられているのである。眼目は、実際に「崩て」いるのは「冷し物」なのだが、座全体が「崩て」しまっている雰囲気を、崩れた「冷し物」に象徴させているところだ。徹夜の酒席の常であり、江戸期も現代も同じことで、最後はこの狼藉ぶりに後悔しながらのお開きとなる。蛇足ながら、旅にあった芭蕉は別室ですぐに休めたろうが、朝のまぶしい光のなかを歩いて帰宅する人もいたはずで、そんな人は一句ひねるも何もなかっただろう。私はいま、若き日に徹夜で飲んだ果ての新宿の早暁の光を思い出している。(清水哲男)』(引用元)。今回は前回「BBTime 660 届けるものは」の続きのようなお話し。

梅雨明け朝の桜島。冒頭の短冊は開業した1990年に南洲寺(鹿児島市)の当時の御住職矢野完道(やのかんどう)和尚の筆で、「あなたの仕事でもそれ以外でも、これで終わり(ゴール)ということはない」との言葉とともに頂きました。前回「届けるものは」をアップした後、この「耕不尽」が頭の中を回ってます。

訪問診療に従事するようになって「認知症」について勉強する機会が増えました。認知症にならないためにはどうすれば良いのか?認知症になるタイミングを極力遅くするにはいかにするか?認知症予防に有効なひとつは「生活を耕不尽」です。

鶴丸城跡御楼門前の蓮。冒頭の句を見てください、漢字とひらがなが交互です。読んでも見てもリズムを感じます。超有名句「菜の花や月は東に日は西に 与謝蕪村」も同じスタイル。見方を変えるだけでも「耕不尽」。訪問先で利用者の方を見て思います。まず第一に「自分の足で歩くこと」次に「口から食べること」・・この二つを死守してほしいと痛感します。逆の見方をすれば・・「しっかり歩く」「歯と口の健康を守る」。多くの方は充分でないのでは?ちょっとそこまででも車、ファストフードジャンクフード炭酸飲料等々を日々口にする。極端な言い方ですが、人並み(半数以上の人がやっていること)の生活をしていたら、認知症リスクは高まります。

7/20朝の桜島。今、盛んに「AI」関連の記事や動画を目にします。ネットが普及し始めた時以上の変革が始まっていると言われます。「AI」をいかに使うかが「人」として問われます。茶道で「一生稽古」という言葉をよく聞きます。「一生稽古」「生涯現役」「耕不尽」、人生百年を生ききる秘訣は、好奇心を失わず、日々キョロキョロし、歩き回って、美味しく食べることのような気がします。最後にひとつ「耕不尽」は字の通りまずは「耕す」です。耕さないと「不尽」はありません。では皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 657 生きるヒント

「花柘榴生きるヒントの二つ三つ」森 慎一

2024/05/25投稿 5/31加筆 6/4追加
まさに「時不待人:時人を待たず」早くも五月下旬です。句の解説は『こころが瞬間にぶつかって句が成る。よくあることなのだろうか。人事句でありながら、花石榴(はなざくろ)の実が一樹にぽつりぽつりとあるのを、永年見つづけてきた人の句。花はたくさん咲くが、実は少ない。やはり、二つ三つ。『風のしっぽ』所収』(引用元)。解説を読んで混乱するのは柘榴の花と実の時期です。花柘榴(柘榴の花)は初夏五月から七月、実は十月から十一月です。今回はセミナーのネタとして「生きるヒント=健康に老いる」について。

訪問診療に行き始めていろいろな気付きがあります。当たり前ですが、最後まで食べられます。コミニュケーションが取れなくなっても、ご家族のことがわからなくなっても、食事されます。食べるということは「口腔ケア」が必要になります。・・・先日ラジオを聴いていて合点しました。

ラジオ登場は「澤田誠:さわだまこと」氏。
かいつまんで話していきます。
1)脳は100%使われている!
『脳は考えたり記憶をしたりする以外にも、身体を動かしたり、内臓を制御したりしています。眠っているときでさえ脳はせっせと働いていて、起きているときよりも活発に活動する脳部位もあるくらいです。一部分だけが動いて、他の部分が休んでいるということもなく、全ての部位がそれぞれの役割を果たしながら、協調的に活動しています。』(引用元)。
*有意識下では数%しか使われていないが、正しい解釈のようです。いろいろなことを忘れても(記憶を引き出せなくても)食事はできるのです。
*「あなたはだあれ?」なのにご飯を食べる・・脳の約95%は生きることに使われています。一般的に言う「記憶」は脳のほんの数%が行う作業でしかありません。

2)使わない記憶は劣化していく!・・去る者は日々に疎し
『記憶を保管するネットワークは活性化されると、そのつながりが強化されます。逆に、あまり使われないネットワークのつながりは弱くなります。よく使う記憶は強化され、使わない記憶は劣化していくのです。非常に合理的な仕組みです』(引用元)。
『脳は非情ともいえるほど合理的です。使わない記憶は必要がないと判断して、ネットワークを作るのに必要なシナプス(神経細胞の連結部)を刈り取っていきます。その結果、ネットワークのつながりは弱くなり、最終的に記憶は失われます』(引用元)。
『きちんと覚えていた記憶も、思い出さないでいると、少しずつ薄れていきます。そのおかげで、私たちは過去と現在を区別することができます。昨日朝食をとった記憶が、食べた直後と同じように今日もありありとよみがえってしまったら、「もう朝ごはんを食べ終わった」と勘違いしてしまいますが、実際には、そのようなことは起こらないのは、脳に忘れる仕組みが備わっているおかげです』(引用元)。
*食べたばかりなのに「ご飯は?」・・まさに生きるために脳が働いている証拠です。何度もトイレに行きたい・・これも同じ、排泄しなければ健康を害する(生命に危険が及ぶ)ので脳が働きます。

3)思い出は美しすぎて!(記憶違いは必然)
『情報を長期的に取っておく「長期記憶」は大脳新皮質の神経細胞のネットワークに保管されていますが、思い出ごとに1つにまとめられて、1ヵ所に保管されているわけではありません。要素ごとにバラバラに別の場所に保管されています。そして、思い出すたびにそれぞれの保管場所から呼び出されて、ひとまとまりの記憶として再構成されるのです。』(引用元)。上下ひと揃いの服を上下バラバラ(ジャケットとパンツ(ズボン)にわける)にしまうようなことです。では、なぜこのようにするのか?
『記憶は、未来に役立てるための貴重なデータベースです。未来の生存確率を少しでも上げるために、脳は苦労して情報を取り込み、取り込んだ情報を取捨選択して整理し、記憶として保管しているのです。記憶があれば、過去に経験したのと似たような出来事があったときに、より適切な対処方法を考えることができます』
『ひとまとまりに保管しない方が、応用範囲が広がります。実際には、脳は、もっともっと細かく分けて保管しています。そして、さまざまなシチュエーションに応用できるように備えているのです』(引用元)。
『記憶はオーケストラに似ています。オーケストラの音楽を作るのは、いろいろな楽器の奏者たちの奏でる音です。大勢の奏者によって奏でられる曲がひとまとまりの記憶です』
『このようなことを繰り返していくと、本来とは別の奏者が間違って演奏した曲や、多くのメンバーが欠けた曲のほうが上達してしまい、元々の曲自体(つまりは元々の記憶)が変わってしまうのです』(引用元)。
*その方のおっしゃるストーリーの場所や時期が異なるのはこのためです。

4)隠れ脳梗塞
『神経細胞が加齢で死ぬ主な原因は、血流不足です。脳は体重の40分の1程度の重さしかありませんが、身体全体の約2割の酸素を消費します。酸素を消費するのは脳にある細胞たちです。すべての細胞に酸素を届けるために、隅々まで細かい血管が張り巡らされています』
『年を取って、動脈硬化などで血管の内側が狭くなると、その細い血管内まで血液が流れにくくなります。また、悪玉コレステロールや糖が多い血液によって血管が傷つけられたり詰まったりします。年齢を重ねていくと自覚できないほど小さな脳梗塞が脳の中で起こる確率が高くなるのです。その隠れ脳梗塞が起こると、そこから先で血液を待っていた神経細胞は死んでしまいます。小さな脳梗塞は健康な40代で3割、60代になると7割の人に見られると言われています』(引用元)。
『過度な飲酒習慣の継続は、確実に脳に悪影響を及ぼします。脳も臓器のひとつですから、身体の健康と精神や知的活動の健康は、直結しています。飲酒習慣によって睡眠の質が悪くなったり、栄養バランスが悪くなったりして、身体の健康状態が悪化すると、脳にも影響するからです。   脳の細胞を少しでも減らさないために私たちにできることは、たくさんあります。血管の健康を保ち、適度な運動をし、質の良い睡眠をとりましょう』(引用元)。
*生活習慣病:体重や体型、血液検査のデータは意識しますが、脳の数値データは健康診断には現れません。脳も臓器!お忘れなく。

5)認知予備能とは
『認知症の傾向は40代から始まっていると言われています。認知症を予防したいという人は、なるべく若いうちから、脳をいたわり、運動や充分な睡眠など、身体によいことを始めるとよいでしょう』
『高齢者の死後脳の解剖研究から、明らかに認知症を発症しているだろうと思われる脳の状態でも、生前はまったくその症状が認められなかったという例が報告されました。脳の損傷や変性があっても、柔軟で豊かな脳であれば、認知機能が保持される「認知予備能」があると考えられるようになりました』(引用元)。
『認知予備能は、高齢になっても人との交流を絶やさなかった人に見られることが分かっています。人との交流は脳の複数の部位を活性化させます。専門的で高度な仕事をしているだけでは、脳は限られた箇所しか使われません。長い間使われなかったシナプスは刈り取られ、細胞も死んでしまいます。   普段とは違う余暇活動や、人との交流を絶やさないことによって、さまざまな部位の脳の細胞を活性化させておけば、細胞の数が減っていっても機能を保つことができるでしょう』(引用元)。
*認知予備能をしっかり持つためには・・まずは「感謝の意を伝える」ことでしょう。声に出してジェスチャーを添えて!より多くの人と交流するためには、あなたが相手から受け入れられなければ無理です。常に好奇心を持って人との交流をすることが予備能を保つコツです。
*現在、介護職に携わる方は予備能保持にプラスで有ると言えましょう、ただしストレスが多くなければ・・ですがね。

6)意思ではなく記憶が将来を決める!
『将来の認知症のリスクが心配になってきた世代の人たちにとっては、記憶力という言葉を聞くと、ぎくりとしてしまうかもしれません。何か物忘れをするたびに、もしかして自分は認知症になってしまったのではないかと不安になるからです』(引用元)。
『私たちの脳はまず生き残り、そして子孫を残すために、記憶という能力を発展させました。スマートフォンを手に入れた現代人も、とっさの判断や無意識に下してしまう数々の決断は、脳内の記憶をもとに行われます。また、何かを経験した時に、何の情報を残して何を忘れてしまうかということも、私たちの脳の中にすでにある記憶をもとに判断されています。   自分の意思で決めていると思う人もいるかもしれませんが、意思が関与できる部分はほんのわずかです。ヒトが意識できる情報量は脳内で処理されている情報の100万分の1以下だという説もあるくらいです』
『記憶というのはただの情報の集積ではありません。脳は記憶を形成し、活用するために、情報の抽出、再編集、関連付けを常に行っています。脳の中の記憶はあなた専用にカスタマイズされた唯一無二の情報源なのです。  もっといえば、私たちは、それぞれ脳の中に外界を解釈するための、記憶をもとに作られた自分だけの世界を持っているのです』(引用元)。
『脳の中に作られた世界のことを、私は「マインドセット」と呼んでいます。(中略)簡単には「思考の癖」とも説明されます』
『私たちが何かを経験し、記憶すると、このマインドセットが変化していきます。育っていくと言ってもいいかもしれません。マインドセットが豊かで健全な状態であれば、自分の望む未来に進みやすくなります。逆に、マインドセットが乏しく偏ると、その人の判断や行動は決まったパターンから抜け出せなくなり、自分にとって本当に利益になる合理的な選択ができなくなります。   マインドセットが私たちの未来を左右します。そしてそのマインドセットを形成する基礎になるものが記憶なのです』(引用元)。
*高村光太郎「道程」には『僕の後ろに道は出来る』とありますが、後ろに出来た道を踏まえて、これからの「道」「人生のゴール」を歩むのです。

「脳」は生存維持装置であって、本来は記憶装置ではないと理解してください。脳もひとつの臓器、体に良い事は脳にも良いのです。健康的な生活(食事・睡眠・運動)が健康な脳を維持します。良質の睡眠について一言。歩くことと早寝早起きの習慣化で良質の睡眠を得ることができます。詳しくはこちら「BBTime 651 リズム」をご覧ください。では皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

追加:六月四日は何の日?かつて「むし歯予防デー」で、今では「歯と口の健康週間」となってます。始まりは1928年(昭和3年)。実はこの年に始まったもうひとつの健康づくりに関することが・・「ラジオ体操」なんです。
おまけ:花柘榴・・紅一点の「紅」はこの花のこと。王安石の詩「万緑叢中紅一点」が出典だとか、詳しくはこちらを。
*オススメ本 だいじょうぶだよ ぼくのおばあちゃん 長谷川和夫

この絵本の原作者「長谷川和夫」氏登場のラジオ番組見つけました。6/11午前2時まで視聴可能です)。6/14は認知症予防の日、ドイツ人医師アロイス・アルツハイマーの誕生日にちなんで。

ラジオはこちら! ジャンプ先、上から三番目、是非お聴きください。


BBTime 655 シンブログ

「ある朝の焼海苔にあるうらおもて」小沢信男

2024/04/26投稿 4/25「惜春のバタークッキー
4/30「バウハウスのポスター」 5/8「河内晩柑
本当に、今年は晴日の続かない春です。句の解説『海苔(のり)に裏と表があるくらいは、誰でも承知している。でも、食卓でいちいち裏表を気にしながら食べる人はいないだろう。ご飯などに巻きつけるときに、ほとんどの人は海苔の表を外側にしていると思うが、無意識に近い食べ方である。ところが、作者はある朝に、どういうわけか海苔の裏表を意識してしまった。「ふーむ」と、箸にはさんだ「山本山」か何かの焼き海苔を、裏表ひっくり返してみては、しきりに感心している。こんな図を漱石の猫が見たら、何と言うだろうか。想像すると、楽しくなる。しかし、こういうことは誰にでも起きる。当たり前なことを当たり前なこととして直視することがある。他人には滑稽だけれど、本人は大真面目なのだ。そして、この大真面目を理解できない人は、スカスカな人間に成り果てるのだろう。余談になるが「山本山」のコマーシャル・コピーに「上から読んでもヤマモトヤマ、下から読んでもヤマモトヤマ」というのがあった。すかさず「裏から読んでもヤマモトヤマ」と反応したのが、今は早稲田大学で難しそうな数学の先生をやっている若き日の郡敏昭君であった。『足の裏』(1998)所収。(清水哲男)』(引用元)。誰でも承知している?・・知ったのは大人になってかなり経ってからでした。アルミホイルの表裏は知ってましたが。今回は新連載ブログについて。

去る二月のこと。美味しい生パスタの店「トマトの実」のカウンターに雑誌オレンジページ。パラパラめくると「エディター募集」の記事。原稿料なしですが、(ライターになる)良いチャンスと思い応募したところ採用されました!今月中旬オンライン説明会後、アップ可能となりました。オレンジページエディターとして随時ブログをアップしていきます。「オレペエディターblog」です、是非ご覧ください。

冒頭の句の解説に『どういうわけか海苔の裏表を意識してしまった』・・実は小生には、このようなことが多々あります。と言うより癖か性分なのか「当たり前な事に何故だろう?」と疑問を抱きます。例えば・・学生時代に「(超個人的に)日本人の定義は?」と思い、小生なりの答えは「日本文化を嗜(たしな)んでいる」・・その後、社会人になって「茶道」を習い始めました。ブログではカルノ的視点で感じたことを文章化していきます。

プロフィールの文章:はじめましてカルノです。歯科医になって38年、ムシ歯予防カフェ「おやつ堂」店主として丸一年。興味あること多かれど、大まかに「食う飲む遊ぶ、はは大事」にちなんだブログをアップします。「食う」鹿児島のみならず旅先でのグルメやスイーツ。「飲む」ワインを主に抹茶・茶道についても。茶道は茶名「宗秀」にて裏千家専任講師。「遊ぶ」は旅や生活雑貨など。「はは大事」歯は大事で健康や歯について。お見知り置きを!
https://www.instagram.com/oyatsu.do/

版画は黒木郁朝(いくとも)氏。内容が拙ホームページconnote.jpとかぶる事もありますが、ご容赦の程。ちなみにアルミホイル使用の際は「表裏どちらでも同じ」とのこと、詳しくはこちら。「あれなんだっけ?」「なぜなの?」などの疑問などございましたら遠慮なくリクエストください。ジャンルは「食う 飲む 遊ぶ」「はは大事」がメインです。ちなみにご紹介1曲目は「あれ、なんだっけ(名前が出てこない)」を英語で「Whatchamacallit=What you may call it.」。皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 651 リズム

「米磨げばタンゴのリズム春まぢか」三木正美

2024/03/30投稿 3/31追加
 その昔「二月逃げる三月去る」・・だから他の月よりも時が経つのが速いと聞きました。今年度も明日でお終い。まずは掲句の解説『当歳時記では「春近し」に分類。いかにも軽い句だけれど、あまり仏頂面して春を待つ人もいないだろうから、これで良い。四分の二拍子か、八分の四拍子か。気がつくと「タンゴのリズム」で「米を磨(と)」いでいた。たぶん、鼻歌まじりにである。なるほど、タンゴの歯切れの良い調子は、シャッシャッと米を磨ぐ感じに似あいそうだ。想像するに、作者は直接手を水につけて磨いではいないようである。何か泡立て器のような器具を使っていて、それがおのずからシャッシャッとリズムを取らせたのだろう。手で磨ぐ場合には、そう簡単にシャッシャッとはまいらない。そんなことをしたら、米が周囲に飛び散ってしまう。子供時代の「米炊き専門家」としては、そのように読めてしまった。ちなみに作者は二十代だが、私の世代がタンゴを知ったのは、ラジオから流れてきた早川真平と「オルケスタ・ティピカ・東京」の演奏からだ。アルゼンチン・タンゴを、正当に継承した演奏スタイルだったという。でも、歌謡曲全盛期の私の耳には、とても奇異な音楽に思えたことを覚えている。いつだったか辻征夫に「『ラ・クンパルシータ』って、どういう意味なの」と聞かれても、答えられなかったっけ。ま、私のタンゴはそんな程度です。「俳壇」(2001年4月号)所載。(清水哲男)』(引用元)。節分春分とうに過ぎ季節外れの句です、「タンゴのリズム花まぢか」としてご容赦の程。今回はリズムについて。

先日、面白い記事を見つけました。記事「睡眠で脳の老廃物を洗い流す仕組みが解明される、アルツハイマー病などの神経変性疾患の予防に役立つ可能性」(出典)です。要約すると「睡眠中の脳波のリズムを利用して脳内の老廃物を洗い流しているようだ」とのこと。記事によると『私たちの脳は睡眠時でも休むことなく動き続けており、睡眠中の脳ではニューロンが協調して電気信号を発し、それらが蓄積してリズミカルな波となることで脳にたまった老廃物を洗い流している可能性が、ワシントン大学医学部の研究チームによって示されています』『食事から得た栄養素がエネルギーとして脳細胞に供給されます。しかし、栄養素を消費すると、その過程で代謝による老廃物が作り出され、これらが蓄積するとアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患を発症する可能性が高まることが指摘されています』『「睡眠とは、覚醒時に蓄積された老廃物や毒素を洗い流すために、脳が掃除を行う時間であることが知られています。しかし、このメカニズムは解明されていません」と述べています』(引用元)。

記事は続きます『睡眠状態にあるマウスの脳を分析し、ニューロンが協調して電気信号を発し、脳内でリズミカルな波を形成することで、密集した脳組織に脳脊髄液を送りこんでいることを明らかにしました。さらに研究チームは、特定の脳領域の活動を抑制してリズミカルな波の形成を阻害すると、睡眠時に新鮮な脳脊髄液が流れることはなく、蓄積した老廃物が洗い流されないことを確認しています。
また、私たちが眠っている際にはレム睡眠やノンレム睡眠を繰り返しており、脳波のパターンは睡眠サイクルを通じて大きく変化します。研究チームは、高周波または高振幅の脳波が観測される際に脳脊髄液が大きく動くことを発見しています』(引用元)。

以前BBTime 583 「カムカムポンプ」に脳内への血液供給に「噛む」ことがポンプの役割を担っていることを書きました。脳が欲しがるものは「酸素とブドウ糖」で、これは血液が運んで来ます。その後、脳内のゴミなどを寝ている間に脳波のリズムを利用してゴミ出ししているようです。

これはアップルウオッチでトラッキングしたある夜の小生の眠りです、リズムがあります。おそらくこの朝は、スッキリした目覚めだったことでしょう。何事にも「リズム」が必要なようです。冒頭のお軸は、この季節に茶室で見かけます(逸外老師の筆)。日本語では「やなぎはみどり はなはくれない」と読んだりします。中国語では「リュウリュウ フアフォン」とちゃんと音韻を踏んでいます、リズムがあります。北京の方曰く「柳緑花紅又一春」とも言うとのこと。「リュウリュウフアフォン ヨウイーチュン(また春が来た)」・・リズミカルです。睡眠中のリズムについては「BBTime 644 歩く」もどうぞ。食べる際のリズム、睡眠中のリズム、歩く時のリズム、一日のリズム・・リズミカルな生活が良さそうですよ。では皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

おまけ:「柳緑花紅」の花は?・・桃のようです。詳しくはこちらを!

3/31追加:リズムのある睡眠(質の良い眠り)に必要なことは「歩くこと」の記事が出ておりました。記事によると『朝もしくは昼(太陽のあるうち)にウォーキングをすると、体の中に「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンがたっぷりと作られます。  このセロトニンは15時間後「睡眠ホルモンメラトニン」に加工されます。そうすると人はよく眠れます。  ですからよく眠れないという人は、朝もしくは昼、太陽のあるうちにウォーキングをすれば、幸せホルモンセロトニンが増えるとともにぐっすり眠れるというダブルの効果が期待できます』(引用元)。ということでBBTime 「歩く!」に書いたことは、どうやら正しいようです。ではでは、ではまた

BBTime 647 拙を守る

「木瓜咲くや漱石拙を守るべく」夏目漱石

2024/02/10投稿 2/11追加 2/14追加 2/17動画追加
鹿児島には春がそこまで来ております。句の解説『花そのものではなく、木瓜(ぼけ)という語感に着目した句だ。「拙を守る」とはへんてこな意志と思われるかもしれないが、漱石のような才気横溢した人にとっては、おのが才気のままに流れていくことは、たぶん怖いことだったのだろう。才気には、知らず知らずのうちに現実から遊離してしまうという落し穴がある。小説家にしてみれば、この穴がいちばん恐ろしい。だから、どうしても「拙を守る」強固な意志を持ちつづける必要があった。「世間には拙を守るという人がある。この人が来世生れ変るときっと木瓜になる。余も木瓜になりたい」(『草枕』)。そして漱石ならずとも、現代人の多くはいま木瓜になるべきときかもしれない。シャープという名の小賢しさが一掃されたら、どんなに気持ちがよいことか。私が俳句を好むのも、俳人には「拙を守る」人がたくさんいるからである。とは、それこそまことに小賢しい言い方かもしれないが……。『漱石俳句集』(岩波文庫)所収。(清水哲男)』(引用元)。先日目にした記事「認知症を引き起こすアカン習慣13選」について、ズバリ認知症予防のお話。

まず『「拙を守る」とは、漱石が好んだ言葉で、生き方の基本としたものという。世渡りが下手なことを自覚し、それをよしとし敢えて拙を曲げぬ愚直な生き方、俗世に媚びて利を追求する事を卑しとする心』(引用元)。さて記事を見ていきましょう。
「日常生活の改善で発症リスクは約4割も下げられる」・・厚生労働省の推計によると認知症の患者数は2025年に約730万人にのぼり、65才以上の5人に1人は発症するとされている。もはや誰もが認知症に罹(かか)ると思った方がよさそうだ。最近の研究によると普段の習慣が認知症を招く要因になっていることがわかってきた。認知症を予防するためにやってはいけない生活習慣について専門家が解説する(記事)。
「2020年、世界五大医学雑誌のひとつ『ランセット』に、認知症の発症にかかわる12のリスク因子が掲載されました。それは、飲酒、喫煙、糖尿病、肥満、高血圧、頭のけが、運動不足、難聴、社会的孤立、うつ病、教育歴、大気汚染です。これらに加えて、睡眠の重要性も説かれており、これらを改善することで認知症の発症リスクを約4割下げられるといわれています。いまから、認知症になりにくい生活習慣を身につけておくことが重要です」(記事)。

では「アカン習慣13選」とは。
【1】たばこを吸う・・周りの人にも悪影響が!
「中年期(40~64才)以降も喫煙を続けた人は、非喫煙者に比べてアルツハイマー型認知症になる可能性が2倍、血管性認知症は2.9倍高いとされます」。受動喫煙者もリスクが上がるので要注意。・・脳内の循環
【2】愚痴や悪口を言う・・ネガティブ思考が機能低下を招く
「どうせ自分なんて」といったネガティブな思考は認知機能の低下を招く原因になるという。「悪口や批判的な態度は自分のストレスを助長するだけでなく、家族や友人が離れ、社会的な孤立を深める原因になるのでやめましょう」。・・ネガティブ(自己否定)
【3】料理はしない!食事は外食やデリバリーが中心・・“料理”は最適な脳トレに!
コロナ禍の影響でデリバリーが習慣化したり、もともと外食中心の食生活で料理をしない人もいるようだが、料理には脳を活性化させる効果がある。「脳の前頭前野の働きが活発となり、血流が増加したという研究結果も。簡単なものでいいので料理は毎日続けましょう」。・・脳の不活性

【4】面倒なときは歯みがきをサボりがち・・ムシ歯や歯周病が認知症を招く
「歯の健康と認知症の関係は深く、歯周病菌がアルツハイマー型認知症の発症因子アミロイドβの生成・蓄積を促進させることがわかっています。さらにムシ歯菌が認知機能の低下と関係していることも明らかに」。口腔内の健康が脳の健康につながると覚えておこう。・・歯周病菌が原因
【5】休日は誰にも会わず家でダラダラ~人に会わないと脳が衰える
他者とのコミュニケーションは、脳を刺激し、脳の発達を促進させる。「家にひとりで閉じこもっていては、人と話す機会が減るだけでなく、社会的孤立にもつながります。買い物に行く、カルチャースクールに通うなど、意識的に外出する用事を作って」。・・脳の不活性、ネガティブ
【6】イヤホンをして音楽を聴く・・使用自体を控えるのが望ましい
「イヤホンやヘッドホンを使い、大きな音量で音楽を聴き続けると、音を伝える役割をしている内耳の有毛細胞が徐々に壊れて難聴になりやすくなります。使用は控えた方がよいでしょう。やむなく使う場合は、音量に気をつけ、1日1時間未満に」・・難聴のリスク

【7】欲求は悪!“三大欲求”はできるだけがまん!・・欲求は満たすことこそ大切です
「認知症予防には、ストレスをためないことが大切です。人が心の底からリラックスできる状態は実は、食欲・性欲・睡眠欲の三大欲求が満たされることで成立します。性欲を満たす方法は、異性と体を重ねるだけでなく、ペットなどの動物や子供と触れ合ったり、“推し活”などの疑似恋愛でもかまいません。“ときめくこと”で、脳が活性化されます」・・脳の不活性
【8】美を維持するため筋トレは必須!毎日、ダンベルを上げています!・・筋トレのやりすぎはかえって危険!
「認知症予防に運動は大切。筋力維持を目的とした適度な筋トレはいいですが、50代以上でムキムキになるくらいの過度な筋トレは、けがや病気のもとに。認知症予防が目的なら有酸素運動が有効です。おすすめは、週2~3回、1回30分以上のウオーキング。認知機能の低下防止だけでなく、代謝がよくなり血糖値や血圧の改善も期待できます」・・怪我、ストレス
【9】ちょっとした不調でもすぐ市販薬をのむ・・必要以上の服薬は控えた方が◎
ちょっとした不調ならば、ドラッグストアなどで手に入る薬をのんで様子をみるという人も多いが…。「市販の風邪薬、花粉症薬、胃酸の分泌を抑える薬、せき止め薬、睡眠改善薬などの中には、認知機能に影響を及ぼす成分が含まれているものも。過度な服用は控え、不調時は病院で適切な薬をもらいましょう」。・・薬は毒

【10】簡単な計算にすら電卓を使う・・計算は効果的な脳トレに
「脳は使わないとどんどん衰えてしまうので、日常生活で計算する習慣を作るのがおすすめです。たとえば、買い物をしながら合計金額を算出することで、計算力と記憶力が鍛えられます」・・脳の不活性
【11】失敗が怖い。得意なことしかやりたくない・・ささやかな“初体験”を心がけて
「年齢を重ねると何事も慣れ親しんだものを選びがちですが、新しい体験をすると脳の神経細胞が活性化。いつもと違う道を通る、新しい店に入るなど、ささやかでいいので“初体験”を心がけて」・・脳の不活性、ネガティブ
【12】いつも同じ人としか話さない・・知らない人との会話が脳の刺激に
「親しい人との会話は気楽で楽しいですが、緊張感が不足するかも。初対面やあまり話したことのない人との会話の方が、相手がどんな人か探りながら話すので脳への刺激も強くなります」・・脳の不活性、ネガティブ
【13】心配性で、何度も確認したくなる・・声を出して笑ってみよう!
「スウェーデンの大学が行った調査によると、心配性な人ほど認知症になりやすいとのこと。人は笑うと脳が活性化し、心身もリラックスします。心配性な人は、意識的に声を出して笑ってみて」(出典)。脳の不活性、ネガティブ

・中国原産。実が瓜のような形であるところから「木瓜」。「木瓜」を「もっけ」と呼んでいたのが 次第に 「もけ」→「ぼけ」になった。(「ぼっくわ」→「ぼけ」の説もある) ・花の色は赤、白、ピンクなど。枝にトゲがある場合とない場合がある(引用元)。

拙(小生)なりにまとめてみます。(2/11追加)
1)喫煙・・脳内の血液循環悪化
2)愚痴悪口・・ネガティブ・自己否定
3)料理しない・・脳の不活性
4)歯磨きサボリ・・歯周病菌による慢性炎症
5)人に会わない・・脳の不活性、ネガティブ
6)イヤホン使用・・難聴のリスク
7)我慢・・脳の不活性、ヒト本来の否定
8)筋トレやりすぎ・・怪我リスク、ストレス
9)薬の服用・・薬は毒
10)暗算しない・・脳の不活性(漢字の確認でも可)
11)失敗が怖い・・脳の不活性、ネガティブ(今さら失敗はない)
12)同じ人のみ・・脳の不活性、ネガティブ
13)心配性・・脳の不活性、ネガティブ
さて、いくつ当てはまりましたか?ご覧のように殆どが脳の不活性、言い換えれば「脳を使わない」。「廃用性萎縮:はいようせいいしゅく」使わないと使えなくなる!脳をもっともっと使いましょう、よりポジティブに、より楽しく。例「テレビ捨ててラジオ聴こう」「クルマ捨てて歩こう」さっそく今日から、いや今から!
皆様ご自愛の程ご歯愛の程。
2/14追加・・セミナー用2040年問題(詳しくはこちらを)。






BBTime 646 自ら然り

「春立つと古き言葉の韻よし」後藤夜半

2024/02/04 立春投稿 2/5追加
暦では春。句の解説『韻は「ひびき」と読ませる。昔から、立春の句や歌は数多い。それだけに、後代になるほどひねくりまわし過ぎた作品が目立つようになってきた。止むを得ないところではあるけれど、だからこそ、逆に立春という題材をどう扱うかは、俳人や歌人の腕の見せどころでもある。「芸の人」夜半としては、そこでしばらく考えた。考えた結果、立春のあれやこれやの情景を捨て去って、一見すると素朴な発想のこの一句に落ち着かせることにした。さすが、である。つまり、この句には古今の名句や名歌のひびきが、すべて収まってしまっているからだ。さりげなく「他人のフンドシで相撲をとる」のも、立派な芸というべきだろう。脱帽。(清水哲男)』(引用元)。この時期、好きな句です。句とは関係なく「自然:じねん」「自ら然り:おのずからしかり」について。
もうひとつ好きな句のご紹介(2/5追加)
「雨の中に立春大吉の光あり」高浜虚子

北原白秋の詩「薔薇二曲」
「薔薇ノ木ニ 薔薇ノ花サク。 
ナニゴトノ不思議ナケレド。

薔薇ノ花。
ナニゴトノ不思議ナケレド。
照リ極マレバ木ヨリコボルル。
光リコボルル。」

薔薇は向井バラ園@mukai_rosegarden 

ネットで見つけた文章
『なんのことはない。薔薇の木に薔薇が咲いたというだけだ。
しかし、考えてみれば不思議なことではないか。だれもなにも教えていないのに、時期がくればちゃんと咲くのだから。 
 動物だって、右足が出れば左足がでるというように、左右交互に手足が動くから歩いたり走ったりできるのだし、呼吸をすることも、心臓が動くことも、自分の意志とはまったく関係ない働きである。
 すべての生き物に備わっているこの不思議な働き。
 これこそ、天からの授かり物だろう。
 春来たらば草自ずから生ず、である。』(引用元)。
自ずから生ず・・まさに「自ら然り」自然(じねん)です。

自然(じねん)をネットで見ると・・
『「春は名のみの風の寒さや」
 暦の上では春なのに寒い日々が続くとき、この「早春賦(そうしゅんふ)」の詞章を想い出す人は優れた感受性の持ち主である。今や人間は大自然に住まうのでなく、改造された人工環境の中で生活している。
 今日、私たちが「自然」と言う場合、山川草木や雨や風など、人間を取り巻く外的な環境のことを指す。そのような自然環境は人間に対立するものであり、自分たちに都合のよいように改造できるものと考えてきた。その結果、地球の温暖化や砂漠化、水や大気の汚染などの様々な問題を惹起した。どれもこれも人間の我が儘が原因である。人間は自然を支配しようとするが、自然は人間の支配の対象ではない。
 仏教では、自然を〈じねん〉と訓じて「自ら然る」という意味に解する。人間の作為のない「そのまま」の在り方が自然である。法(真理)が「そのまま」に顕現していることを示す法爾(ほうに)と自然とは同義語で、その両者を合わせて「自然法爾(じねんほうに)」「法爾自然(ほうにじねん)」という四字熟語ができた。
 浄土宗開祖の源空は、「法爾自然」を略して法然と号した。浄土真宗を開いた親鸞は、「自然法爾章(じねんほうにしょう)」と称する一文を認め、その中で「自然といふは、自はをのづからといふ、行者のはからひにあらず、然といふはしからしむといふことばなり」(『末燈鈔(まっとうしょう)』)と説いている』(引用元)、こちらも。

薔薇がバラとして何事もなく咲くように、ヒトもまた自然(じねん)。Wikipediaには特徴として『直立二足歩行 現存生物で唯一ヒトのみが直立二足歩行を行う。 二足歩行のみなら鳥類やカンガルー、一時的な二足歩行であれば一部の哺乳類が行えるが、頭から足までまっすぐ伸ばした直立姿勢を取るのはヒトのみ』
『コミュニケーション能力 脳・声帯が発達しており、(身振りだけでなく)音声(音声言語)・手話や文字(書記言語)によるコミュニケーションを図れる』
加えて『全体として「大型」「群れる」「中速度で長距離を移動する」「調理された質の良い、多様な食物を食べる」「投擲など自分の体から離れたものを利用する」ことが動物としてのヒトの特徴・生態的地位といえる』(引用元)。

シンプルに考えるに、ヒトは「歩く」「食べる」「話す」が自然(じねん)、自ら然りでしょう。歩くについては「BBTime 644 歩く!」を、食べるは「BBTime エンタメ」を、話すは「BBTime 640 セイタイハイリョ」もご覧ください。皆様、是非ご自愛の程ご歯愛の程、自ら然りで人生を楽しみ尽くしませんか!

BBTime 645 平常心是道

「映画出て火事のポスター見て立てり」高浜虚子

2024/01/30投稿 02/17インタビュー動画追加
鹿児島もここ数日冷たい日々です。まずは句の解説『映画館を出た後は、しばらくいま見てきたばかりの映画の余韻が残っている。と、街角に「火の用心」を呼びかけるポスターが貼ってあった。見ているうちに、作者の意識はだんだん現実に引き戻されていく。そんな状況の句だ。季語は「火事」である。この季語についての虚子自身の説明が、岩波文庫『俳句への道』に載っているので、引用しておく。「『火事』というものは季題ではあるが、他の季題に較べると季感が薄い、ということは言えますね。一体火事という季題は、我らがきめたものですし、火事はいつでもあるが、殊に冬に多いから、というので冬の季題にしたのですが、季感は従来のものよりも歴史的に薄いとはいえる。だからこれは季感のない句であるという風に解釈する人があるかも知れぬ。(中略)そういう人は季題趣味を嫌がっている人ではないですか。だが俳句は季題の文学である。……」。つまり、虚子は自分(我ら)で「火事」を冬の季題にし、そう決めたのだから、この句を無季句などとは呼ばせないと力み返っている。この自信満々が、虚子という文学者のパワーであった。(清水哲男)』(引用元)。先日、映画「PERFECT DAYS」を観ました、ラストシーンで感じたことについて。

解説にあるように「映画館を出た後は、しばらくいま見てきたばかりの映画の余韻が残っている」・・小生も同様。帰りしな用足しに公園トイレに・・ひょっとして平山さんが掃除したのかな、と。タイトルの「平常心是道:へいじょうしんこれどう、びょうじょうしんこれどう」は茶室で目にする禅語です。和尚さん曰く「多くの人は誤解していらっしゃいます。喜怒哀楽、波があるのが平常心であって、いかなる時も冷静にいるべきであると言うのではありません」。詳しくは是非「こちら」「こちらも」ご参照ください。

以前、BBTime「ブラシラブ・掃除」に引用しました無印良品の本「掃除」。2ページ目に「気持ちいいのはなぜだろう。」の一言。うしろ(484頁)の文章・・『自然に対してヒトがなした環境を「人工」といいます。人工は心地がいいはずなのですが、プラスチックやコンクリートのように自然を侵食する素材が蔓延してくると、ヒトは自然を恋しがるようになります。しかし自然は、放っておくと埃や落ち葉が降り積もり、草木は奔放に生い茂ります。したがって、自然をほどほどに受け入れつつ、適度に排除しながらヒトは暮らしてきたのでしょう。(中略)まるで、打ち寄せる波が砂浜を洗う渚のように、人為と自然がせめぎ合う「ほどほどの心地よさ」を探し当てること、それが「掃除」の極意なのかもしれません』『この先の未来においてどんなに技術が進んでも、ヒトは生き物。身体の奥底に響き続ける生のリズムがあります。ここに耳をすませていきたいものです。』(引用元)。

詳しくは書きませんが平山さんは、日常に起こる非日常による「喜怒哀楽」をトイレ掃除によって、便器とともに心まで浄化しているのかも知れません。本「掃除」に明記してあるように掃除は「気持ちいい」のです。

深呼吸すると気持ちいい、お風呂に入ると気持ちいいなど、身体感覚においてはっきりと説明できないけど「気持ちいい」と感じることがあります。なんとなく気持ちいいのは、脳が明確に捉えていない(言葉にできない)けど、身体にはわかること。本「掃除」には『ヒトは生き物。身体の奥底に響き続ける生のリズムがあります。ここに耳をすませていきたいものです』と。口の中が多少汚れていても、痛くも痒くもないけどなんとなく不快。キレイにすると息までキレイになったような清々しさを感じる。身も心も口もキレイにできる「歯磨き」、日常ルーティンである「歯磨き」・・心まで清める効果あります!

ここまで読まれても合点しにくいと思います。是非、映画平山さんを観てくださいラストシーンを凝視してください。皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 644 歩く!

「なずな咲くてくてく歩くなずな咲く」小枝恵美子

2024/01/20大寒投稿 1/21追加
 今朝の桜島(1/20)大寒なのに鹿児島は温かい朝です。昨春から本格的に歯科訪問診療に携わるようになって痛感すること・・それは「口から食べると歩く」・・これだけは死守して欲しい!まずは句の解説『なずな(漢字では「薺」と難しい字を書く)は、陰暦正月七日の七種粥に入れる七草の一つなので、単に「なずな」だと、歳時記的には「新年」に分類される。が、花が咲くのは早春から梅雨期にかけてであり、掲句の場合には「薺の花」で春。またの名を「ぺんぺん草」とも「三味線草」とも言う(こちらのほうがポピュラーか)。さて、この句の魅力は「てくてく」にある。「歩く」といえば「てくてく」など常套的な修辞でしかないが、実にこの「てくてく」の用法は素晴らしい。いたるところに咲いているなずなの道を行く気分は、別にいちいち花を愛でながらというわけでもないので、むしろ常套的な「てくてく」がふさわしいし、句の情景を生き生きとさせている。「むしろ技巧的に思われるほどだ」と句集の栞で書いた池田澄子は、さらにつづけて「そこここに咲いている『なずな』と、そのことを喜び受け止めながら歩いている人物は、春を輝く万物の細部としての代表である」と述べている。これまた素晴らしい鑑賞だ。春の道は、こんなふうに「てくてく」と歩きたい。なお「なずな」を「ぺんぺん草」「三味線草」と呼ぶのは、その実を三味線のバチに見立てたことにちなむそうだ。今日調べてみるまでは、つゆ知らなかった。『ポケット』(1999)所収。(清水哲男)』(解説より)。今回は歩くについて。

私事で恐縮です、就寝時アップルウォッチをつけて寝ます。ある時、面白いことに気がつきました。雨以外はほぼ毎朝、自転車かウオーキングで30分以上のエクササイズをします、天候などによって自転車なし歩きだけの日もあります。ちなみに一日トータル80分以上のエクササイズがノルマ。驚いたことに、エクサイズ時間は同じでも「歩き」と「自転車」では睡眠の質が違うのです(小生の場合)。

ある日の睡眠パターン。さほど自分では認識していないのですが、記録を見ると覚醒と睡眠を細かく繰り返しています。

これは途中の覚醒がありません。実はこちら「歩きだけ」の日の睡眠です。思うに、自転車よりも歩きの方が、体全体(脳を含めて)が程よく疲労するのではないか。よって自転車エクササイズ日よりも落ち着いた睡眠になるのではないか、ということ。気付いてからしばしば睡眠パターンをチェックしますが同じような結果です。
追加:小生の仮説を裏付けるような記事を見つけました、こちらです

さて、必要なので(仕方なく)車椅子を使用されることは理解できますが、施設によっては車椅子を多用する傾向があると感じます。もちろん理由は推測できます。施設利用者の転倒、転倒によるケガ骨折防止、職員側の効率等々。ある訪問先の要介護男性宅(ワンルームひとり住まい)にて・・季節が良いので散歩どうですか?と提案したところ、「看護師から外出は禁止されている」とのこと。数ヶ月後、玄関に車椅子・・車椅子がありますね。「転けると危ないので車椅子を使うように」とのこと。その方は室内ではつたえ歩き可能な方でした。ある理学療法士との会話・・リハビリに励み杖使用で歩行可能になったら、その方の家族から介護度が下がったとクレームが来た。それぞれのケースがあるので一概に「車椅子より杖歩き」とは言えません。しかしはっきり言えることは、今現在、歩ける人は自分の足で歩くことを死守してください!です。

ヒト(ホモ・サピエンス)の定義は未だはっきりしていないと聞きますが、特徴でまず挙げられることが「直立二足歩行」です。Wikipediaには「現存生物で唯一ヒトのみが直立二足歩行を行う。 二足歩行のみなら鳥類やカンガルー、一時的な二足歩行であれば一部の哺乳類が行えるが、頭から足までまっすぐ伸ばした直立姿勢を取るのはヒトのみ。」とあります。逆に言えば(極端な表現ですが)直立二足歩行しなければヒトではないとなるのでは?

施設職員の方を見ていると大変な仕事だと思います。きつい介護の仕事を減らすために可能なことは、今健康な方が「口から食べる」「自分の足で歩く」を死守していただくことだと痛感します。歩くを死守するために日頃から歩く!くどいようですが直立二足歩行可能な哺乳類が唯一「ヒト」なのです。皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 643 大きな問題

「芹レタスセロリパセリよ血を淨めよ」山本左門

2024/01/07投稿
年始早々いろいろな事で、とうに正月気分は消え去っています。解説は『自然から遠ざかるほど、人は病気に近づく。京都浄瑠璃寺の住職がラジオで話していた。作者の焦燥感も、そこに根拠を持っている。歴史上、自然が昨今ほどに人間の問題となったことはないのである。その意味で、まことに現代的な俳句だ。(前半のみ引用)』。ちなみに「淨めよ:きよめよ」

画像は朝日新聞1/3「折々のことば」。「若いうちはみんながやっていることをしないと不安だろうが、「大きな問題クエスチョン」が見つかれば迷わずにそれと格闘すべきだと言う。サイエンスを突き動かすのはつねに情熱パッションだからと」。

昨年の天皇誕生日(2/23)に、ムシ歯予防カフェ「おやつ堂」開店しました。小生の大きな問題は「歯は、磨いてももらうもの」、言い換えれば「歯は、自分では磨き切れない」・・これは真実、開業して二十年ほど経った頃に気が付きました。きちんと予防すれば、生まれて生えてきた「健康な歯」はそのまま健康です。ここ数年、箱根駅伝スポンサーサンスターのコピーは「100年mouth 100年health 口は、生きるの1丁目」(「百年一生」参照の程)。これも真実!しかし、残念ながらサンスターの歯ブラシ歯磨き粉を毎日使っても「100年マウス 100年ヘルス」は達成困難。理由はお分かりでしょう、自分自身で歯を完璧に磨くことは不可能に近いからです。そこで「歯は、磨いてももらうもの」・・このシンプルな事実を歯科医はもっともっと声高に言うべきだと思います。はっきり言って、サンスターライオン花王に、歯磨きを丸投げしていてはダメ。七草は血を清める、すなわち不足したビタミンを補う。その七草を咀嚼嚥下するためには「健康な歯」が必要です、「口は、生きるの1丁目」。皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 641 エンタメ

「粕汁にあたたまりゆく命あり」石川桂郎

2023/12/24 投稿 2024/01/02画像追加と加筆
先日(12/21)桜島初冠雪、やっと冬らしい年末が来ました。句の解説『鮭や野菜等に粕を加えてコクを出すという、冬を乗り切る知恵が<粕汁>には詰まっている。桂郎はこの句を病床にあって詠んだ。だからこそ身体のみならず<命>がぬくめられる感覚を抱いたのだろう。この一年の間に死別した人の数を思う。そして、いずれ自分自身の命ともサヨナラをしなければならない時が来ることをも思う。しかし生きている限り、その日まで食べ続けなければならない宿命をわれわれは生まれながらに持っている。(『四温』)季語=粕汁(冬)』(櫂未知子著 食の一句より)。同感!「Music for 介護」「Sweets for 介護」ときて締めは「食こそエンターテインメント!」。この言葉、昔雑誌「dancyu」の表紙に載っていました。

今年(2023)春から本格的に訪問診療に携わるなかで、今更ですが歯科医師の仕事は「食べる」であると痛感しています。健康な人そうでない人、誰にとっても「食べる」は喜びであり生きている証(あかし)でありエンターテインメントであると実感します。句の解説にあるように『生きている限り、その日まで食べ続けなければならない宿命をわれわれは生まれながらに持っている』のです。

ある施設利用者女性は百歳。その方だけは、昼御飯お膳に九皿載っています。ご家族の希望で「おばあちゃんに、好きな物を好きなだけ、食べて欲しい」とのこと。おおかた箸をつけられるのは二割から三割、ご家族はそれでもいいと。これを知った時ショックを受け感動しました。まさに「食こそエンターテインメント」!。栄養のバランスがどうのこうの、ムシ歯のリスクがどうのこうの等々、一切関係無いと気付きました。(失礼な言い方ですが)残された日々をいかに楽しむか。その大きな楽しみが「食べる」です。まさに「エンタメ、生きる、生ききるため」!

以前書いた「BBTime 538 残るは食欲」に・・「阿川佐和子著「残るは食欲」に『書名ともなった「残るは食欲」というのは、そもそもだいぶ昔に悪友、ダンフミが呟いた言葉だ。「愛欲と物欲を捨てた今、自分と俗世を結ぶ唯一の絆は食欲のみ」うまいことを言う女優だと感心した。感心はしたけれど、私はそこまで欲を捨ててはいないと自認した。』(あとがき)」。

余すところ七日、除夜の鐘は百八。百八番目の煩悩が食欲なのかも知れません。今年の大掃除のメニューに口の中の大掃除も加えてください。診療所に出向くのが無理な場合、湯船でゆったりゆっくりじっくりのハミガキを!皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

https://youtu.be/ZcJjMnHoIBI?si=gytN2JaKfE7Z5zwU

朝日新聞 2024年元日の朝刊より