BBTime 467 マユツバ話
「うなぎ の日うなぎ の文字が町泳ぐ」斎藤すず子
解説には『季語は「うなぎの日(土用丑の日)」で夏。ただし、当歳時記では「土用鰻」に分類。この日に鰻(うなぎ)を食べると、夏負けしないと言い伝えられる。今年は今日が土用の入りで、いきなり丑の日と重なった。したがって、この夏の土用の丑の日はもう一度ある。鰻にとっては大迷惑な暦だ。句のように、十日ほど前から、我が町にも鰻専門店はもちろんスーパーなどでも「うなぎの文字」が泳いでいる。漢字で書くと読めない人もいると思うのか、たいていの店が「うなぎ」と平仮名で宣伝している。面白いのは「うなぎ」の文字の形だ。いかにも「うなぎ」らしく見せるために、にょろにょろとした形に書かれている。なかには、実際の姿を組合わせて文字に仕立てた貼紙もあって、句の「うなぎ」表記はなるほどと思わせる。作者は、夏が好きなのだ。もうこんな季節になったのかと、町中を泳ぐ「うなぎ」に上機嫌な作者の姿がほほ笑ましい。今宵の献立は、もちろんこれで決まりである。私は丑の日だからといって鰻を食べようとは思わない性質(たち)だけれど、世の中には、こういうことに律義な人はたくさんいる』(一部抜粋)。
前回「眉唾に非ず」は唾液の話でしたが、今回はそれって本当?マユツバじゃないの?のお話。ちなみにうなぎを食べると「精がつく」は眉唾ではなさそうです。詳しくはこちら。
1)歯磨きの「333運動」:眉唾っぽい
「333(さんさんさん)運動」とは「毎食後(三食後)三分以内に三分間磨きましょう」です。昭和四十年代頃によく耳にしました。これは間違い(眉唾)とは言いませんが、歯科医として積極的には薦めません。「三食後に磨く」ーこれはオススメします、ただし可能であればですが。朝食前よりは朝食後の方が、予防効果は高いものとなります。朝起きてすぐは「うがい」のみで朝食後に歯磨きがベターですが、忙しい朝ですので朝起きて歯磨きし、朝食後はうがいのみでも構いません。次の「三分以内」ーこれはどちらかというとNG(良くない)です。食事中に歯の表面は酸によってわずかですが溶けている(軟らかい)状態です。その後、唾液のもつ「緩衝作用:かんしょうさよう」によって元の状態(硬い表面)に戻されます。食後三分以内に歯の表面を磨く(歯の表面をゴシゴシする)と傷つけてしまう可能性があります。ご馳走様のあと二、三十分待って磨く方が良いでしょう。最後に「三分間磨く」ーこれは悪いことではないのですが、毎回三分間磨けないこともあるでしょうし、三分間で汚れをきれいに落とすことは無理です。夜だけでも(日に一回は)三分と言わずに、五分から十分は磨いて欲しいところです。
2)歯磨き粉は必須である:個人的意見ですが眉唾です
不要とは言いませんが必須ではありません。歯磨き粉の有効成分は大まかに「研磨剤」と「フッ化物」です。ただし研磨剤は汚れを落とすのみならず歯の表面を傷つける可能性がありますので要注意。歯磨き粉で歯の表面の頑固な汚れ「バイオフィルム」を除去(溶かす)することはできません。バイオフィルム除去はあくまでも物理的除去(ゴシゴシ)のみです。唾液磨き(唾液で磨く)を推奨します。「ハミガキ」「鰯の頭も!」「ソントク」にも書いています、ご参照の程。
3)ムシ歯はできるものである:嘘です
ムシ歯の原因ははっきりしています。歯周病の原因もはっきりしています。子供はムシ歯になるものだ、歳を重ねると歯周病になるのは仕方がないーそんなことはありません。ムシ歯はほぼ100%避けることができます。歯茎の変化(退縮)は加齢によるものもありますが、加齢による変化と歯周病は別です。
4)毎日磨いている:眉唾です(疑わしい)
毎日磨いているのに「なぜムシ歯ができるのだろう?」と思われたことはありませんか。もちろん磨いておられることは否定しませんが、毎日磨いていることと、毎日磨けていること(キレイになった)は別なんです。ご自分で隅々までキレイになったかどうかを知ることはほぼ不可能です。歯科診療所で第三者による定期的清掃をオススメします。
5)治療後金属になるのはしょうがない:眉唾です。
ムシ歯を指摘され治療を受ける前に(歯科医が歯を削る前に)最終的に何が入るかを確認されることを薦めます。「白=樹脂」なのか「銀色=パラジウム合金」なのかを聞いてください。もし「金属です」の答えなら「白いのはできませんか?」と聞かれることを薦めます。また「樹脂(白)でも金属でも可能です」なら、メリットデメリットまで聞いてください。現在、多くの部位で白い樹脂による保険内治療が可能です。
6)キシリトールはムシ歯予防効果あり:眉唾ではないけど
ご存じとは思いますがキシリトールにはムシ歯予防効果があります。ただし、毎日結構な量のキシリトールを摂取(ガムを噛む)し、三ヶ月以上続ける必要があります。思い出したように「キシリトールガム」を噛んでも効果はほぼゼロです。詳しくはこちら。
7)ムシ歯になってから歯医者に行けば良い:ダメです
ムシ歯という病気は、数ある中でほぼ完全に予防可能な病気です。唯一と言っても良いでしょう。ムシ歯になってから歯科に行って治療を受けても、ムシ歯以前の機能回復は可能ですが、元の歯には戻りません。多くのムシ歯治療は代替医療(別のものに置き換える)でしかないのです。
今年は土用の丑が二回、本日(7/21)と来月二日(日曜)二の丑です。美味しい精のつく鰻料理も健康な歯があっての物種です。鰻料理をブログでお届けすることはできませんので、代わりに落語「鰻の幇間(たいこ)」をお召し上がりください。小生の好きな可楽師匠の味付けで。皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。1030