BBTime 117 観察瞑想:疲れない脳の作り方その3
「考へてをらない蝌蚪の頭かな」後藤比奈夫
蝌蚪(かと・オタマジャクシ)には失礼な話ですが親しみゆえの表現でしょうか。前回に続いて脳について考えてみます。第一話はこちら、第二話はこちら。オリジナル音源はこちら。
*今回は観察瞑想について教えてください
『文字通り観察する瞑想法です。瞑想中の頭の中の考えや感情、あるいは体の変化などをいちいち立ち止まらずに観察しながら受け流すという瞑想法で、非常に簡単に言うと頭の中で実況中継するようなものです。例えば、今私は坐っているなとか、外の風が涼しいなとか、怒っているなとか、第三者的視点で自分自身の思考や感情、行動を観察するという方法です。このやり方で余計な判断・思考をどんどん追い出してゆくことになります。この観察瞑想で象徴的に言われることが「私は怒っている」と「私は怒りを感じている」は全く違うということです。「私は怒っている」は怒りによって自分が支配されている状況で、「私は怒りを感じているな」は自分自身を第三者的視点から冷静に観察していると言えます。このように何かに捉われるのではなくてちょっと斜め上から自分自身の思考や感情を観察します。「私は怒りを感じている」→「まだ怒りを感じている」→「少し怒りがおさまってきたぞ」というように自分自身を実況中継するのです』
『また観察瞑想にはボディスキャンという方法があります。体をひとつひとつ観察する方法で、頭の天辺から足の指先まで順々に意識を向けてゆくというものです。まずは頭のてっぺん、次は目、鼻の頭と意識を向けます。日頃体の部位を分割して意識することはないと思いますが、あえてこれを実践することで右手と左手の重さの違いに気づくようになります。それぞれの部位に5秒間くらい意識を向けてゆきます、右耳に五秒、左耳に五秒といった具合にスキャンしていきます。始めは難しいのですが次第に自分の体に対する感性があがってきます』
*この観察瞑想によって脳にどのような効能があるのですか?
『脳にはデフォルトモードネットワークというネットワークがあります。言わば脳がボンヤリしている時に働くネットワークです。このデフォルトモードネットワークの時には頭の中の様々な記憶や感情を結びつけてくれていると考えられます。集中している時には気づきにくいのですが、ちょっと手を止めてぼんやり歩いていたりすると「ハッ」と思い出すことがありますよね。「アッあれを忘れていた」とか「こんないいアイデアを思いついた」です。私たちの脳は不思議なんですが何かに集中しているとこのネットワークが働かないので忘れていた記憶や新しいアイデアが浮かびにくいんです。ですので集中するというよりは敢えてボンヤリすることが想像力という点では重要になってきます。
昔から馬の上、ベッドの上(枕の上)、トイレの中(便器の上)(馬上枕上厠上(ばじょうちんじょうしじょう))が新しいアイデアが浮かびやすいと言われてますが、デフォルトモードネットワークつまり脳のアイドリング状態の時にヒラメキが生まれやすいのです。私たち研究者は昔からよく「徒歩旅行」をします。若い研究者と指導者(先生)が二人でずっと歩きます。歩きながら研究のみならず互いの私生活などについても話します。ボンヤリ歩いている時はいいアイデアが出やすいのです。歩きながら新しいアイデアを出して、それらをまとめる時には机についてガリガリと集中してやるということをします』馬上枕上厠上:ばじょうちんじょうしじょう
*どれくらいの頻度でやると良いのでしょうか?
『観察瞑想をまずは一日五分程度から始めてみてください。お風呂に入っている時、眠りにつく前、パソコンの電源を入れた時などちょっとしたスキマ時間を利用して五分程度取り組んでみてください。だいたい二週間ほど続けてゆくと自然にできるようになり、二ヶ月継続すると意識なくできる様になります。まずは一日五分、二週間やってみてください』今回のBeat は全く脈絡のないElvis Costello の ‘She’です。デフォルトモードネットワークが働いており脈絡なしです(笑)0600
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追加:読み返しているうちに蝌蚪(オタマジャクシ)も瞑想している?何せ「考へてをらない」ですから。また蝌蚪は瞑想の権化的な達磨さんと同じ?なぜなら手も足も出てない・・・座布団一枚ですかね。