BBTime 473 食前食後

BBTime 473 食前食後
「秋暑しあとひとつぶの頭痛薬」岬 雪夫

句の如く暑い毎日・・ウンザリです。『こんなにも暑さがつづくと、月並みな挨拶を交わすのさえ大儀になってくる。マンションの掃除をしにきてくれている女の人とは、毎日のように短い立ち話をしているが、最近ではお互いに少し頭をさげる程度になってしまった。会話をしたって、する前から言うことは決まっているからだ。出会ったときのお互いの目が、それを雄弁に語ってしまっている。こうなってくると、なるべく外出も避けたくなる。常備している薬が「あとひとつぶ」になったことはわかっているが、薬局に出かけていくのを一日伸ばしにしてしまう。むろん「あとひとつぶ」を飲みたいときもあるけれど、炎暑のなかの外出の大儀さとを天秤にかければ、つい頭痛を我慢するほうを選んでしまうのだ。こんなふうにして、誰もが暑さを避けつつ暑さとたたかっている。この原稿を書いているいまの室温は、34度。こういうときのために予備の原稿を常備しておけばよいのだが、それができないのが我が悲しき性…。「俳句」(2013年8月号)所載。(清水哲男)』(解説より)。今回は「食前食後」についてのお話。

画像は食前酒です、以前こんな話を聞きました。ペンション(南仏)のオーナー曰く「(レストランなど)三三五五集まるので、早く来られた方は食前酒を召し上がってもらいます。皆が集まったらテーブルへ」・・食前酒のひとつの意味は「皆が揃うのを待つこと」もあるようです。ちなみに薬を飲む時の「食前・食後・食間」とは?

食前:食事開始(食べ始め)の20~30分前で『食前とは、食事の20〜30分前のことです。食べ物や胃酸の影響を受けたくない薬や、糖尿病の際に食事で高くなる血糖値を下げるための薬などは、食前に飲むことが多くなります。また、胃の調子を整える食欲増進剤や、食べたあとの吐き気を事前に抑える薬などは食前に飲むと効果的です』(引用元)。食後:食べ終わって20~30分以内で『食事が終わって20〜30分後までのことです。食事の後は胃の中に食べたものがあるので、胃への刺激が少なくなります。食後の薬は飲み薬の中で最も多いタイプです。主に食べ物と一緒のほうが吸収が良くなる薬や、空腹時に飲むと胃を荒らす薬などは食後に飲みます』(引用元)。食間:しょっかんとは『食間とは、食事の最中だと思われている方も多いようですが、食事と食事の間という意味で、食事を終えてから約2時間後が目安です。空腹の状態で飲むと吸収が良い薬や、胃の粘膜を保護するための薬などは食間に飲みます』(引用元)。

これは食後酒。さて少々我田引水ですが「歯磨きは食前それとも食後?」と聞かれたら、皆さんはどのように答えますか?「もちろん食後でしょう」と聞こえてきそうです。『食後酒(しょくごしゅ)とは、食事の後に余韻を楽しむために飲むアルコール飲料の総称。ディジェスティフdigestif)とも言う』(引用元)。食事の余韻に浸りながらの食後酒、おしゃべり・・の最中に「歯を磨きなさい」なんていわれたら興醒めします。

こんな考え方はいかが?料理が盛られる前の皿はもちろんキレイです。ピッカピカのはずです。前客の食べた後の汚れが残っていようものなら・・。では、ご自分の口の中は?歯は?食事前には隅々までキレイですか、歯はピッカピカですか。おそらく答えは「いいえ」でしょう。この場合は食事前に歯を丁寧に磨くほうが良いのではないでしょうか。

ご存じ口腔内のプラーク、歯の汚れは細菌です。プラークが少ないほど、歯を溶かす(ムシ歯を作る)ムシ歯菌も少ないのです。すなわち食前に歯がキレイなほど、酸生産量も少なくなります。残念ながらゼロにはできませんが、ムシ歯菌が少ないほど、ムシ歯になるリスクは減るのです。

そこで提案。食後は「水うがい」で歯の素洗い、食間もしくは食前にじっくり歯の汚れを落とす。もちろんお休み前もしっかり磨く・・就寝中は口の活動(おしゃべり・食べるなど)がほぼ無いので、口腔内の菌増殖が増えますゆえ「寝る前の歯磨き」は有効です。食事前に舌でご自分の歯を舐めてみて「ヌルッと」した方は食前磨き、「ツルッと」の方は食後食間磨きでも宜しいかと。ご自愛の程ご歯愛の程。8720

BBTime 472 Wマスク

BBTime 472 Wマスク
「涼風をいひ秋風をいふ頃ぞ」矢島渚男

句の解説は『暦にしたがえば、いまごろの風は秋風。しかし、実感的にはまだ夏だから涼風(夏の季語)というほうが似つかわしい。さあ、どちらにしようか。この時季の俳人は困るのでしょうね。そんな心中をそのまま句にしてしまったというところでしょうか。話は変わりますが、何年か前に、春の選抜高校野球でマスコミが「さわやか甲子園」というのは間違いだと、本気で怒っていた俳人がいました。なぜなら「さわやか」は秋の季語だからというのですが……。どんなものですかねえ。『木蘭』所収。(清水哲男)』(解説より)。「爽やか」が秋の季語だという事を初めて知りました。本当に暑い、異常な程の暑い日々ですが、早朝の空気にわずかですが「秋」を感じるようになりました。今回は、口の外のマスク+口の中のマスク=W(ダブル)マスクについて。

雑誌「プレジデント 」の七月号(6/12発売)に「病気にならない生き方10」との記事を見つけました。6/12発売時点では「新型コロナウイルスの第2波襲来が確実視されている。そこで、生活習慣の改善で免疫力を高める方法を紹介する」とのサブタイトル・・まさに今(8/24)第2波の真っ只中。今からでもできることから是非、では早速10の方法とは・・以下抜粋引用。
1「マスク」手洗いとの併用でインフル最大51%減。ウイルスの感染経路は三つ「空気感染」「接触感染」「飛沫感染」・・通常はこの中の二つ、接触感染と飛沫感染が主流で、この二つを遮断することが重要である。「接触感染」予防に手洗い、「飛沫感染」軽減にマスク。   2「水うがい」水道水で1日3回 風邪の発症率36%減。たとえウイルスが体内に入っても、上気道の粘膜細胞に吸着して感染症状を引き起こさせないことが肝要であるため、うがいはしたほうがいい・・普通の水道水で1日3回のうがいを。   3「緑茶」含まれるカテキンでインフル発症率87%減。緑茶に含まれるカテキンには、急性感染症に対して抗ウイルス作用を示す多くの報告がある。細胞実験では緑茶に含まれるカテキンが、ウイルスの増殖を抑制している。緑茶を生活に取り入れるのは感染のリスク低下になるはずだ。

4「歯磨き」口腔内の清潔保ちインフル発症率90%減。口腔内環境が悪い人は、免疫物質IgA(侵入した病原体を無力化するように働く)が少ない。   5「睡眠」5時間以下だと風邪発症4・5倍に。睡眠時間のみならず「睡眠の質」も関係するが、せめて睡眠時間は5時間を切らないように。   6「飲酒」毎日お酒を飲むと風邪のリスク54%低下。ストレス軽減や血流改善で免疫力を高める側面があるのかもしれない。特に上気道を温めることもいい。しかし、飲みすぎは免疫力を確実に低下させる。

7「日光浴」ビタミンD補給でインフル発症50%減。近年、ビタミンDは「万病に効果アリ」と、みられるようになってきた。しっかり日光を浴びれば、1日で75マイクログラムものビタミンDを作れるといわれています。日光浴のみで推奨濃度の九割に達するという説もある。1日に20分は日の光を浴びたい。   8「血圧安定」生活習慣病を治し免疫細胞を活性化。免疫細胞が効率的に働けるように糖尿病の管理、血圧の安定といった、生活習慣病を放置しないことが感染しても重症化させない大きな鍵になる。   9「体型維持」太りすぎも痩せすぎも重症化・死亡リスク増。その人の生活習慣の”積み重ね”が大きく表れるのが、体形。BMI(ビーエムアイ:体重kg÷身長m÷身長m)が23~27の間が最も死亡リスクが低かった。   10「体内時計」リズムがズレると免疫力60%ダウン。体内時計は体のそれぞれの生理機能が、最も働くべき時刻にピークを迎えるように整えてくれます。このリズムが乱れると病を発症し、免疫力が低下することがわかっている。

以上、十の方法について駆け足でご紹介しましたが、口に関することが二つ「水うがい」「歯磨き」入っています。口腔内(口の中)を清潔に保つことはまさに「口の中のマスク」。歯をきちんと磨き、水うがいの励行で口の中にもマスク。外出時の着用で「ダブルマスク」です。ご自愛の程ご歯愛の程。8390


BBTime 471 エアロゾル

BBTime 471 エアロゾル
「歯痛に柚子当てて長征の夜と言いたし」原子公平

先ずは句の解説を・・『夜の「歯痛」は心細い。歯科医に診てもらうためには明日まで待たなければならないし、そのことを思うだけでも、痛みが増してくるようである。とりあえず、手元にあった冷たい「柚子(ゆず)」を頬に当ててみるが、ちょっと眠れそうにないほどの痛みになってきた。とにかく、このまま今夜は我慢するしかないだろう。そんなときに、人は今の自分の辛さよりももっと辛かったであろう人のことを脳裏に描き、「それに比べれば、たいしたことではない」と、自分を説得したがるもののようだ。』(解説より前半)。句では「柚子」ですが、古来(江戸時代)、歯痛の時に人々が神頼みしたのは「梨」でした。先日『WHO「歯科定期検診は先送りを、エアロゾル感染めぐり研究必要」』の記事を目にしました。今回はコロナ禍における歯科受診について。

記事は・・『世界保健機関(WHO)は11日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が抑制されている地域で歯科医院が再開していることに伴い、空気中を漂う微粒子「エアロゾル」を介した新型コロナ感染から患者やスタッフを守る必要があるとの見解を示した』。現時点で確たる証拠はないものの・・『WHOは、エアロゾル発生の可能性がある処置についてより多くの研究が必要と指摘。現時点で歯科医院の治療椅子から新型コロナに感染したというデータはないが、エアロゾルに関する研究対象には口内に風や水をかけるスリーウェイシリンジや歯の表面をきれいにする超音波洗浄装置、研磨などが含まれるとした』(記事より)とのこと。

エアロゾルとは『粉塵や煙、ミスト、大気汚染物質などといった空気中に浮遊している粒子のことで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の原因の1つでもあるとされている』(引用元)。確かに歯科では歯の切削時には水で冷却しますし、スリーウエイシリンジ(水・空気・水+空気)を始終使いますので、リスクゼロとは申しません。定期的に来院することで得られるメリットと感染リスクを皆様が判断されるのが良いでしょう。勿論歯科医としては定期来院は必須と考えますので、来院して欲しいと思います。

画像は「戸隠神社:とがくし」。江戸時代、歯科医がいなかった頃は「戸隠様」にお願いしたとのこと。『江戸時代、歯が痛くなると口中医という現代の歯科医院のようなところで、主に抜歯をしてもらっていましたが、一般庶民には治療費が高く、通うことができなかったようです。では、どうしたのか? 所謂、加持祈祷を行ったのです。具体的には、「九頭龍大神を祀っている戸隠神社(長野県長野市)で、歯を患った者が3年間『梨』を絶って参拝すると治る」という言い伝えがあり、信仰したようです。戸隠神社に行くことができない江戸庶民は、梨の実に自分の名前と痛む歯の場所を、例えば「右上の奥から3番目」などと書いてから神社のある戸隠山の方角を向いてお祈りし、その後、梨の実を川へ流したと言われています』(引用元)。落語「佃祭」にもこの話が出てきます。歯医者のいる現代、痛くなったら歯科へ。願わくは痛くなる前に歯医者へ。皆様ご自愛の程ご歯愛の程。6900



BBTime 470 食べる歩く

BBTime 470 食べる歩く
「けふいちにち食べるものある、てふてふ」種田山頭火

句の「てふてふ」が春の蝶なのか夏の蝶かはさておき、解説には『山頭火は有季定型を信条とした人ではないので、無季句としてもよいのだが、便宜上「てふてふ(蝶々)」で春の部に入れておく』と春に分類されています。

続けて『放浪行乞(ぎょうこつ)の身の上で、いちばん気がかりなのは、むろん「食べるもの」だ。それが「けふ(今日)いちにち」は保証されたので、久方ぶりに心に余裕が生まれ、「てふてふ」の舞いに心を遊ばせている。好日である。解釈としてはそんなところだろうが、ファンには申し訳ないけれど、私は何句かの例外を除いて、山頭火の句が嫌いだ。ナルシシズムの権化だからである』(解説より)嫌いな理由は次の通り。

『元来、有季定型の俳句俳諧は、つまるところ世間と仲良くする文芸であり、有季と五七五の心地よい音数律とは、俗な世間との風通しをよくするための、いわばツールなのである。そのツールを、山頭火はあえて捨て去った。捨てた動機については、伝記などから推察できるような気もするし、必然性はあると思うけれど、それはそれとして、捨てた後の作句態度が気に入らない。理由を手短かに語ることは難しいが、結論的に言っておけば、有季定型を離れ俗世間を離れ、その離れた場所から見えたのは自分のことでしかなかったということだ。そんなことは、逆に俗世間の人たちが最も執心しているところではないのか。だからこそ、逆にイヤでも世間とのつながりを付けてしまう有季定型は、連綿として受け入れられてきているのではないのか。せつかく捨てたのだったら、たとえば尾崎放哉くらいに孤立するか、あるいは橋本夢道くらいには社会批判をするのか。どっちかにしてくれよ。と、苛々してしまう。まったくもって、この人の句は「分け入つても分け入つても」自己愛の「青(くさ)い山」である』(解説より)。お時間ある方はこちら「あなたの幸せ」もどうぞ。

今まで、句の通り字面通りに解釈してきたので、解説を読んで浅学を恥じる次第であります。今回は「食べ歩き」ではなく「食べる」と「歩く」が長寿への道のお話。

先日、最新の平均寿命データが発表されました。ご覧のように日本人男性81.4歳、女性87.5歳です。意外なのが男女とも最長寿国が香港であることです。中華料理が主因でしょうか?『2019年の日本人の平均寿命は女性が87.45歳、男性が81.41歳となり、ともに過去最高を更新したことが31日、厚生労働省が発表した簡易生命表で分かった。前年に比べ、女性は0.13歳、男性は0.16歳延び、いずれも8年連続のプラスとなった。女性は5年連続で世界2位、男性は3年連続で3位だった』(記事より)。また『同省(厚生労働省)の試算では、19年に生まれた日本人で75歳まで生きる人の割合は女性が88.2%、男性は75.8%。90歳までの割合は女性が51.1%で、男性が27.2%だった』・・昨年生まれた女性の半数は90歳まで生きる可能性がある・・やはり「百年人生」到来!

終わりに『同省は介護を受けたり、寝たきりになったりせずに生活できる「健康寿命」を算出しており、最新の16年は男性72.14歳、女性74.79歳だった。どれだけ平均寿命に近づけるかも課題となる』(記事より)とあります。多くの人が願う「ピンピンコロリ」のピンピン人生が平均寿命よりもおおよそ十年短いことに要注目です。ラスト十年、床に伏せての「ネンネンコロリ」より寿命を味わい尽くしての「ピンピンコロリ」の方が宜しいかと。そこで「食べ歩き」が大事!

ご存じのように「8020:はちまるにいまる」とは80歳で歯が20本、20本の歯があれば満足できる食生活が可能であるとの意味です。これからは「0020:丸々ニイマル」100歳で自分の歯が20本となるのでしょう。歯科医師としては「ニイマル」と言わず、幾つになっても28本(7×4=28)全部とは言いませんが、歯を失ってほしくないのが願いです。長寿の基本は「口から食べる」であり、口から食べるには「歯」が必要です。

さて歩くについて、「1日8000歩で「死亡リスク半減」 米国で研究報告」の記事を見つけました。『1日の歩数が多い人ほど死亡リスクが低いことが、40歳以上の米国人を対象とする観察研究で明らかになりました。1日4000歩の場合と比べ、6000歩歩く人では死亡リスクは低下し、8000歩ではほぼ半減していました。一方で、歩く速さは死亡リスクに影響しないことも示されました』。記事はさらに続きます。

『歩数が多い人には、以下の特徴がありました:年齢が若い、BMIが低い、食事の質が低い、学歴が高い、飲酒者が多い、併存疾患(糖尿病、心臓病、がんなど)の有病率が低い、運動制限のある(歩行の継続が困難または杖などが必要)人が少ない、健康状態が良くないと申告した人が少ない。喫煙率には差は見られませんでした』(記事より)。一日一万歩や歩く速度に、こだわる必要はなさそうです。先ずは昨日よりも多く歩くこと!昨日より多く歩けば、いつしか一日八千歩になりますから。

「食べ歩き」は人生の楽しみのひとつです。「食べる」と「歩く」が長寿の王道であることもお忘れなく。やはり百年人生は一歩一歩自分の足で歩むのが宜しいかと。ご紹介の曲は「歩く」ではなくスキップにちなんでの一曲。ご自愛の程ご歯愛の程。4370
「けふいちにち食べるものある、てくてく」カルノ


本文とは無関係ですが、この通りなのかな?と思いましたので。