BBTime 600 余力

「去年今年貫く棒の如きもの」高浜虚子

2022/12/31投稿
毎年恒例毎日新聞余録「いろはカルタ」。まずは句の解説より『季語は「去年今年(こぞことし)」で新年。午前零時を過ぎれば大晦日も去年であり、いまは今年だ。掲句は、おそらくカウントダウン・ショーで打ち上げられる「花火」を見ての即吟だろう。華やかに開きすぐに消えていく「花火」を「割印(わりいん)」に見立てたところが機知に富んでいるし、味わい深い。(中略)それを掲句では、去年と今年の時の繋ぎ目に「花火」でもって捺印しようというのだから、まことに気宇壮大である。と同時に、捺しても捺しても、捺すはしから消えていくはかなさが、時の移ろいのそれに、よく照応している。高浜虚子の有名な句に「去年今年貫く棒の如きもの」がある。このときに虚子は「棒の如きもの」と漠然とはしていても、時を「貫く」力強い自負の心を抱いていた。ひるがえって掲句の作者には、そうした確固たる自恃の心は持ちようもないというわけだ。精いっぱい気宇を壮大にしてはみるものの、気持ちにはどこかはかなさがつきまとう。多くの現代人に共通する感覚ではあるまいか。『林棲記』(2001)所収。(清水哲男)』(一部抜粋)。新年の季語ですので厳密には明日からです。

今朝(12/31 7:58)の朝日と桜島。同じ日の出が明日朝元旦になると「初日」となります。人の決めた暦が進むだけで、見守る人の数はかなり違うし、多くの人は拝みます。

毎年、カルタのいくつかに「?」ピンと来ない読み札がありますが、その語句で検索すると記事が出ます。それを読んで納得。
「ロシアのウクライナ侵攻に世界が揺れた2022年。平穏な日常の尊さをかみしめた。いろはカルタで振り返る。【い】いいね!押せぬ買収【ろ】論より国葬【は】ハロウィーン梨泰院(イテウォン)暗転【に】2世の苦悩【ほ】ポイントでは増えマイナ【へ】ヘジャブの強制いらん【と】トランプ節に陰り【ち】中国揺らす白いデモ【り】リアルやめたバース【ぬ】抜いた宝刀、質問権【る】ルースも脱帽の二刀流【を】王様超えた村神様【わ】悪い円安かわせぬ介入【か】カラの水筒悲し【よ】余韻も倍速タイパ世代【た】玉手箱に水あった!【れ】歴史に学ばぬ安保転換【そ】そうだ、きょうも節電【つ】詰み重ねて藤井5冠【ね】音を上げたい値上げ【な】内閣壊造【ら】ラニーニャであちーニャ【む】無為無策で進む少子化【う】打ち出の予備費【ゐ】威核行為【の】のけぞった日銀利上げ【お】汚職の祭典【く】クイーンの長い休息【や】やうやう黒くなりゆく山際【ま】枕ことばは「3年ぶり」【け】原発怪奇現象【ふ】部活も民活【こ】50年前はちむどんどん【え】栄冠はみちのくに輝く【て】点字毎日ともす1世紀【あ】青きサムライに熱狂【さ】最長首相の無念【き】記録的短時間ミサイル情報【ゆ】夢に見た11年ぶり帰郷【め】メッシ奉公【み】三十一(みそひと)文字に思い託すZ世代【し】知床無情【ゑ】え~YOUもスマホ不通?【ひ】被災地置き去り防衛増税【も】燃え尽きた闘魂【せ】線路は細るよ150年【す】素顔で会える日いつ【京】きょうも待つウクライナの平和」・・今、気がつきました「ん」はないんですね。今年も間もなく閉じます。余力を持って、来年はどのような歳となるのか歳にするのか、ワクワクです。過去の余録もご参照のほど!2021年・2020年・2019年。ちなみに本日大晦日に「よいお歳を!」は使用不可です、こちらもどうぞ。本日でBBTime 600号、皆様に感謝!では御自愛の程ご歯愛の程、よい御年玉を!

BBTime 599 ベスト3

「香水に思い出す人なくもなし」清水哲男

2022/12/25投稿
画像は12/24の雪化粧した桜島。句の解説は『パソコンにはショートカットキーなるものがあります。ことによく使われているのがundo(アンドゥ)と呼ばれる復活のコマンドです。左隅のCtrlキー(macだとコマンドキー)を押しながらZを押すと、ひとつ前の動作に戻ります。これを覚えておくと、うっかり消してしまった画面や、誤った選択をしたとき元に戻ることができるのです。人生にはたびたびこの復活のコマンドが使えたらどんなによいかと思う瞬間が訪れます。掲句で思い出される人とは、遠い過去の知り合いでしょう。香りの記憶はさまざまな思い出を引き連れて、やや強引に迫ってきます。下5の言い回しは作者特有の恥じらいと、すべて思い出すことへのためらいを感じさせます。作者はふっと横切る香りのなかで、復活のコマンドを使うことなく、おそらく固有名詞さえ思い出すことを封じて「なくもなし」と完結します』(解説より抜粋)。今年も残すところ六日となりました。今年、振り返って「使って良かったベスト3」について。

まずは歯ブラシ「クラプロックス」。幾度か書きましたが、この歯ブラシはオススメです。よりオススメの使い方は、1)数本(2、3本)同時進行で使う。これは洗面、これはデスク・・というように。画像のようにカラーバリエーション豊富なので、場所や気分に色を合わせて歯磨きが楽しめます。まさにカラフルな歯ブラシが「私はここよ!」「歯を磨こうよ!」と言わんばかり。2)是非はじめは唾液磨きで。ブラシが柔らかいので、まずは唾液磨きでその感触を楽しんでください。3)複数同時使用によって、歯ブラシが長持ちします。1本+1本=3本となり結果的に経済的。

2番目がこのヘッドライト。アウトドアで使うのではなくて歯科診療で使っています。訪問診療には必須!ただし、かなり明るいので使用時には2番目の明るさで使っています。丸一日使うと必ず充電必要、フル充電には結構時間がかかります。大きさ手頃で、なんと言っても価格が魅力。歯科用だと10万円越すのは普通ですが、これは1万円でお釣りがきます。デザインもシンプル、購入を考えている歯科従事者の方にはイチオシです。

歯ブラシ、ヘッドライトと色気なしの仕事関係が続いたので、ラストは色香を感じるものひとつ。ジョーマローンの香水です。今回選んだのは「イングリッシュペア&フリージア」、洋梨のフルーティさに甘い香りが潜んでいます。意外にも「香水」は夏の季語、今や年中纏いますが・・では皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 598 敬意

「福助の頭は空つぽや十二月」小泉八重子

2022/12/20投稿 12/25追加
先日初冠雪(12/18)翌朝のお姿(桜島)です。句の解説は『福助人形。「福助足袋」の広告で有名になったキャラクターだが、元来は江戸期より幸福招来の縁起ものとして、水商売の店などに飾られていた。句では、師走の正月用意の一つとしての足袋購入が意識されており、水商売のイメージはないと思われる。それにしても「福助」の頭の中が「からつぽ」とは、意表をついた発想だ。私など、一度もそんなことを思ったこともない。でも、言われてみると、なるほど「からつぽ」みたいに見えてくるから妙だ。頭が大きいので、なおさらである。もしも「福助」と話す機会があったとしても、どんな話をしたらよいのか、見当もつかない。そんな感じがしてくる。とにかく不思議なセンスで書かれた句ではあるが、 十二月とのマッチングが愉快だ。ちなみに、天下に「福助」キャラクターを有名にしたのは、大阪の川柳作家であった広告文案家の岸本水府である。この人は後に「グリコ」でも活躍し、「コドモハカゼノコ グリコノコ」「オザウニイハヘ グリコモイハヘ(お雑煮祝え、グリコも祝え)」などのコピー(豆文)を書いている』(解説より抜粋)。解説文中に「正月用意の一つとしての足袋購入」とあります。昭和生まれの小生のみならず多くの日本人にとって「正月」には、どこかしらキリッとした雰囲気を感じます、初詣しかり。根底にあるのは「敬意」かもと思います。新年への敬意、昨年への感謝、家族へご自身へ・・。今回は「敬意:リスペクト」についてのお話。

12/18のほぼ日「今日のダーリン」です。
『・だれにも、
 バカにされていない。
 なめられていない。
 蔑まれていない。

 そしてできることなら、
 だれかに、
 思われている。
 大事にされている。
 よろこばれている。

 たぶん、敬意というのは、
 こういう関係のことだろうけれど、
 とてもかんたんそうで、
 よくよく考えるとかんたんじゃないなぁ。』

『あんがい人は、人をバカにする。
 わりと人は、人をなめる。
 ときに人は、人を蔑んだりもする。
 そしてなかなか、だれかのことを
 思ったり、大事にしたり、
 よろこんだりもしないものだ。

 しかし、しかし。
 その逆のことだってよくある。

 人をバカにしない、人をなめない、
 人を蔑まない。
 それをしている人だって、いっぱいいる。
 そして、そういう人が、
 だれかのことを思ったり、
 だれかを大事にしたり、
 だれかによろこんだりしている。』

『かんたんそうだけど、
 かんたんじゃないけど、
 ないことじゃないし、
 たくさんあるようにも思う。
 じぶんが、そういうふうでいようとしたら、
 あんがいできることのようにも思える。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
最近、時間のこと、いのちのこと、敬意のことをよく考える。』
ほぼ日「今日のダーリン」12/18より

12/19昼のお姿。
人をなめない、己をなめない、心をなめない、体をなめない、歯をなめない。皆様、残り十日ほど、ご自愛の程ご歯愛の程。

訂正:歯だけは舐めて(lick)もいいです、よいお歳を。年内あと2本アップします(予定・希望)。
追加:いつ頃からか、不思議なことにクリスマスにはケンタッキーとなりました。「舐める」について「ツメが甘い」を書いております、こちらもどうぞ。

BBTime 597 寿命延長

「流れ行く大根の葉の早さかな」高浜虚子

2022/12/13投稿 12/17追加
桜島大根です。気がつけば師走もなかば、今年も残り二週間強となりました。この時期になると読み返す句です。解説には『これぞ、俳句。中学校の教室で、そう習った。習ったとき、我が家は生活用水として近所の小川を使っていたので、実感として理解はできた。が、一方ではあまりにも当たり前すぎて、句のよさはわからなかった。よさは、流れていく大根の葉だけを詠むことで、周辺の情景を彷彿させるところだろう。昭和三年(1928)の九品仏吟行で得た句というが、このような情景はどこかの地に特有なものではなく、全国的に普通に見られた。すなわち、往時の多くの日本人には、思い当たる情景だった。どのような表現でもそうだけれど、とくに短い俳句では、このように普遍性の高い生活環境や生活条件に下駄をあずけざるをえないところがある。言外の意味を、普遍性ないしは常識性に依存するのだ。そんなことを考えると、俳句の寿命は短い。世の中が変わると、昔の句は滅びてしまう。でも、私はそれでよしと思う。永遠の名作を望むよりも、束の間の命を盛んに燃やしたほうが、潔くてよろしい。おそらく、現代の若者には、この句の味は本当にはわかるまい。あまりにも、日常とは遠い世界の「大根の葉」であり、その「流れ行く早さ」であるからだ。あまりにも、当たり前の事象ではないからだ。まだ教科書に載っているかどうかは知らないが、載っていたとしても、教師には教えようがないだろう。俳句は、読み捨て。教えるとすれば、そういうことしかない。揚句に共感できる人も、みな同じ思いだろう。くどいようだが、それでよいのである。この句は、もはや「これぞ、俳句」のサンプルではなくなりかけてきたということ。(清水哲男)』(解説より)。解説に「俳句の寿命は短い」とあります。今回は寿命についてのお話。

先日(12/11)の朝日新聞「折々のことば」より。言い得て妙。英単語「deadline:デッドライン」は期限、〆切ですが、まさに寿命はデッド(死んだ、切れた)ライン。期限が決まっているのであれば、無駄を減らせば有効な時間(健康寿命)は結果的に伸びます。何が無駄であるかは人それぞれですが・・。

浪人は無駄ではないと思いますが、万人にとっての無駄は治療に要する時間です。病気にならなければ治療時間はゼロ。治療時間ゼロに必要なことは言わずもがな「予防」であり、病気の中でほぼ完全に予防できる病気が「ムシ歯」です。寿命の延長、歯の命を伸ばすためには歯磨き。ただし、ご自分のセルフケアだけでは足りません、合わせてプロケアも受けてください。少しでも歯の寿命延長の助けになればと、小生のセルフケアグッズをご紹介します。

まず電動歯ブラシ。ブラウンのiOシリーズ、価格は四万円前後。以前の電動歯ブラシに比べて確かに汚れは落ちるとは思いますが、CMほどの差は感じません。振動で歯磨き時間を教えてくれるのは良いかも。以前からの1万円前後でも悪くはないでしょう。

手動ブラシは「curaprox:クラプロックス」がイチオシ。行きつけの歯科医院の衛生士さんが教えてくれました。使用してみて、1)色がカラフル:色使い、カラーコーディネートが秀逸。このため歯ブラシの存在感が大きく、ブラシが「歯を磨こうよ」と言わんばかり!2)カラーバリエーションが豊富:好きな色を選ぶことで「私の歯ブラシ」という意識を強く持てる。2本使い、3本使いが可能(洗面、寝室、デスクなど)。3)ブラシ部分:見た目は日本人サイズには大きく感じるが、使ってみると歯を包み込むような磨きを実感でき、汚れが落ちる感覚あり、大きさは問題なし。4)ハンドル:八角形のハンドルがペングリップ(鉛筆握り)、パームグリップ(グゥ握り)の両方に心地良い。5)ネック:ハンドルからブラシ部への角度のために、平面に置いてもブラシ部が宙に浮き安心。6)SWISS MADE:今時珍しいスイス製。使用せずとも見ただけで信頼できる・・というのが小生の感想です。

これはウエルテックの「コンクールF」。マウスウオッシュですが、歯磨き直前に数滴口に入れ、舌で口全体(歯全体)に行き渡らせます。もしくは歯ブラシに数滴垂らします。手動でも電動歯ブラシでも同様に。歯磨き終了時はうがいせずに吐き出すだけ。歯茎から出血する方には特に勧めます。数日で出血が無くなること請け合い、これイチオシ!

液体よりもペーストがお好みの方にはコレ「ライオンのSP-T」1本1,300円位です。これもコンクールF同様、最後はうがいせずに吐き出すだけがよろしいかと。

歯間ブラシはGC(ジーシー)のルシェロが使いやすいです。先(ブラシ部)のみ交換可能で、角度やハンドルの形もなかなかよろし。

デンタルフロス(糸ようじ)はこれ、ライオンのウルトラフロス。これ1本、いつもポケットに入れてます。

最後に、プロケアもお忘れなく。是非、かかりつけ行きつけの歯科医院を持ってください。限られた人生の中の健康寿命を伸ばすために、口の大掃除もお忘れなく。老婆心ながら言い添えます。歯は人生を味わうためのもの。ヒトも生き物、人生におけるイロハとは「イ=胃、ロ=くち、ハ=歯」なり。皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。

追加:歯の着色が気になったら・・週に一回程度の使用で充分かと。「MASHIRO:マシロ」が良さげです。かと言って、大根のような白を求めるのはいかがなものかなと思いますがね。ではでは

BBTime 596 老のもと

「旅に病んで夢は枯野をかけめぐる」松尾芭蕉

2022/11/30投稿
 明日から師走、今年も残すところあとひと月。句の解説はこちらをどうぞ。前回「炎症はなし」で慢性炎症について触れました、詳しい記事を見つけましたので御紹介します。記事タイトル「ヒトはできるだけ身体を動かさないように進化してきたが、適度な運動は寿命を延ばし、生活の質を上げる」。出典はこちら

記事後半の「慢性的な軽度の炎症は、着実かつこっそりと、動脈、筋肉、肝臓、脳などの組織を蝕んでいく」を一部ピックアップします。

 運動せずに座ってばかりいると、なぜ健康を害するのだろうか。もちろんさまざまな理由があるだろうが、近年注目されているのが「慢性炎症」だ。

 人類学者のハーマン・ポンツァーがハッザ族の一日のエネルギー消費量を測定したところ、奇妙なことに、活動的なハッザ族の一日あたりの総カロリー消費量は、同じ除脂肪体重のカウチポテトのアメリカ人とほとんど変わらなかった。それ以外のデータでも、活動的なひとの一日のカロリー消費量が、同じ体重の座りがちなひとよりもわずかに多いだけだということが確認されている。人体は、エネルギーを浪費せずに効率的に歩けるように進化したのだ。

 ここからポンツァーは、「人体の総エネルギー予算は制約されている」という理論を唱えた。いまだ議論の途上にあるが、この「代謝性代償」によれば、歩くことに500キロカロリーを使うのなら、その運動量を賄うために、安静時の代謝に使われるエネルギーが減らされる。逆に歩く必要がなくなれば、そのために使うはずだった500キロカロリーは安静時の代謝に回されることになる。この余分なエネルギーが、さまざまな経路で慢性的な炎症を引き起こしているかもしれない。

「炎症」は有害な病原体や損傷した組織などを感知したときに免疫系が最初にとる反応で、免疫細胞が化合物を大量に放出して血管を拡張し、侵入者を破壊しようとして駆けつけた白血球を通過しやすくする。血流の増加にともなう腫れによって神経が圧迫され、発赤(ほっせき)、熱感、腫脹(しゅちょう)、疼痛という炎症の4つの主症状を引き起こす。その後、免疫系は必要に応じて、特定の病原体を標的にして殺す抗原を作ることにより、さらなる防衛線を活性化させるが、このとき「サイトカイン」と呼ばれる数十種類のタンパク質が炎症を制御する。

 近年の研究では、身体が病原体に感染したあと、短期間の激しい局所的な炎症反応を引き起こすサイトカインの一部が、持続的でほとんど検出できないレベルの炎症を全身に起こすことがわかってきた。風邪を引いたときのように、数日から数週間にわたって一箇所に急激に炎症が生じるのではなく、気づかないうちに数カ月から数年にわたって、身体のあちこちで炎症がくすぶるのだ。

 慢性的な軽度の炎症は、ある意味、終わりのない風邪を引くようなものだ。あまりにも軽いため、その存在に気づかないことがあるが。それでも炎症は確実に存在し、この「トロ火の炎症」が着実かつこっそりと、動脈、筋肉、肝臓、脳などの組織を蝕んでいく。

 慢性炎症は、心臓病、2型糖尿病、アルツハイマー病など、加齢にともなう数多くの非感染性疾患の主な原因であると見なされるようになった。さらには、大腸がん、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、関節炎など「~炎」とつく炎症のほぼすべてに、慢性炎症の痕跡が見つかっている。

 慢性炎症の最大の要因は、喫煙、肥満、特定の炎症を引き起こす食品(その代表は牛肉や豚肉などの赤い色の肉)の過剰摂取、身体活動の欠乏だ。それは次の4つの経路でわたしたちの身体を蝕んでいく。

1  内臓脂肪が溜まる
 適度な量の内臓脂肪(全体重の約1%)は正常で、長距離を歩いたり、ジョギングしたときなどに、大量のカロリーを素早く活用する短期的なエネルギー貯蔵庫として役立っている。
 だが脂肪細胞が大きくなりすぎると、膨らみすぎたゴミ袋のように膨張して機能しなくなり、炎症を引き起こす白血球を引き寄せてしまう。内臓脂肪細胞は代謝的に活発で、体内の血液供給と結びついているため、内臓脂肪細胞が膨張すると、炎症を誘発する大量のタンパク質(サイトカイン)が血液中に滲み出してくる。
 健康な若い男性が2週間にわたってカウチポテト族さながら座り続け、一日に1500歩(約1.6キロ)以上歩かないようにした実験では、内臓脂肪はわずか2週間に7%も増えただけでなく、食後に増加した血糖を吸収する能力の低下などの、慢性炎症の典型的な症状を示し始めた。

2 血液中の脂肪や糖を取り込む速度が遅くなる
 食事から4時間以内は「食後状態」で、今すぐ使わない脂肪と糖が脂肪として貯蔵される。控え目な活動であっても、すこしでも身体を動かせば、細胞はこれらの燃料を優先的に燃やす。座るのをちょっと中断して、しゃがんだり、膝をついたりして筋肉を使う軽い断続的な活動を行なうと、長時間何もせずに座っている場合より、血液中の脂肪と糖の濃度を下げることができる

3 社会心理的なストレス
 長時間の通勤、過酷なデスクワーク、病気や障害などによって座ることを余儀なくされる状況はストレスを募らせ、ストレス・ホルモンであるコルチゾールの値を上昇させる。コルチゾールはストレスの原因ではなく結果として分泌され、身体がよりよくエネルギーを使えるようにするために進化してきた。だが、身体活動をともなわない状況でコルチゾールの値が上昇すると、糖や脂肪を血流に送り込み、糖分や脂肪分の多い食べ物を欲しがらせ、皮下脂肪ではなく内臓脂肪を蓄えるようにしむけるなど、肥満や慢性炎症の原因になる。

4 筋肉の活動が停止する
 筋肉は身体を動かすことのほかに、腺としての機能を持ち、「マイオカイン」と呼ばれる重要な役割を持つ数多くのメッセンジャータンパク質を合成・放出している。マイオカインにはさまざまな機能があるが、代謝・血液循環、骨などに影響を与えるほか、炎症の抑制にも役立っている。
 身体活動による抗炎症作用は、ほとんどの場合、炎症を起こす作用より強力で長く続くうえ、筋肉は身体の約3分の1を占めるので、活発に活動する筋肉は強力な抗炎症作用を発揮する。椅子に座りつづけていると、筋肉が活動しないため、マイオカインも分泌されない。

 がんのような身体的な病からアルツハイマー病などの精神疾患まで、免疫機能が自分自身を攻撃する自己免疫疾患が疑われる病気は増える一方だ。こうした「現代病」は、すくなくともその原因の一部が、使い切れないエネルギーを体内にため込んでいることだというエビデンスが増えつづけている。

 リーバーマンのいうように、運動はきわめて効果的な「薬」であり、副作用もなく、歩いたり、走ったり、腕立て伏せをするだけなら無料だ。適度な食事と適度な運動によって身体のエネルギーバランスを整えれば、健康寿命を延ばし、生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)を上げることができるだろう。(出典はこちら

記事を読みながら「犬の散歩」を考えました。昔、野良犬に餌をやっていた事はありますが、飼ったことはありません。飼っている人からよく聞くのが「散歩が必要」です。目にした記事に『ストレスを行動で表現します。代表的なストレスサインに、体の一部をなめ続ける行動があります。そのまま放っておくと、なめ続けた部位の毛が抜けたり、炎症を起こしたりしてしまいます』(引用元)。

ここでお伝えしたいのは「適度な運動が必要です」よりも、繰り返しますが「慢性炎症」を少しでも減らすこと。そうです!できるだけ歯周病を軽いものにしましょう。そのコツは「歯は磨いても、もらうもの」・・皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。


三つめの動画は「YouTubeで見る」をクリックすると見ることができます!