BBTime 398 情け無い!

BBTime 398 情け無い!
「マラソンの余す白息働きたし」野沢節子

まずは句の解説より『季語は「白息(しらいき)・息白し」で冬。そろそろ、連日のように吐く息が白く見えるようになる。いわゆるリストラの憂き目にあった人の句ではない。「余す白息」から、作者の健康状態のよくないことがすぐに読み取れる。健康な人であれば、「余す」の措辞はなかなか出てこないだろう。せいぜいが「吐く白息」くらいだろうか。ところが作者には、走りすぎるマラソン・ランナーの吐く白い息が、羨ましくも生きていくエネルギーの余剰と写ったのだ。自分には到底、あんなふうに「白息」を「余す」ようなエネルギーはない。いくら働きたくても、私には余すエネルギー、体力などないのだから無理だろう。しかし、みんなと同じように私も身体を使って働きたいのだ。切実にそう思う作者の目に、ランナーの白息がどこまでもまぶしい……。』(解説より)。今回は市民マラソン大会にまつわるお話。

減量のため今夏より十年以上ぶりに朝ラン開始。黙々と走るだけでは面白くないので目標設定のためレース参加を考え、日頃から走っている友人とある大会のフルの距離を二人で半分ずつ走るペアマラソン(ハーフでリレー)に申し込みました。結果は落選・・あらら残念と思っていたところ同じ大会で「メディカルサポートランナー」の募集を知り早速応募。「40名~50名程度(先着順)」とありホテル予約などを考え大会事務局に確認したところ、何と「歯科医師は該当しません」との返事。

確かに募集要項には「医師、看護師、救急救命士の資格をお持ちの方、日本スポーツ協会(旧 日本体育協会)公認アスレティックトレーナーの方を対象に、参加者の安全を見守っていただき、緊急時には救急救命活動を行っていただく『メディカルサポートランナー』を募集します」とあり歯科医師の文字は見当たりませんが・・情けなくなりました。大会事務局(市役所)の認識が「歯科医師は非該当」・・歯科医師の言わば企業努力不足でこのような認識をさせているのでしょうけど「情け無い!」が本音です。母校の所在都市であったために尚の事、情けなくなりました。歯科医師は「歯のことしか分からない、治療できない」・・よってメディカルサポートランナーは無理だと判断されたのでしょうか。歯科医師として情け無い話です。事務局との電話では、やんわりと歯科医師としての気持ちを伝えました。

他のレースを探します。電話で「来年また(ランナーとして)申し込んでください」と言われましたが「残念ながらそのような認識をお持ちの大会は遠慮させてもらいます」と答えました。最後に句の解説の後半をご紹介『句は作者の境遇を何も知らなくても読むことができるが、少し付言しておく。句は、作者の二十数年来の宿痾であったカリエスがやっと治癒した後に書かれたものだ。一応名目的な健康は取り戻したものの、むろんそう簡単に体力がつくわけのものではない。病気から解放された信じられないような嬉しさと、しかし人並みの体力を持ちえない哀しみとの交錯する日常がつづいていた。このとき、作者は既に三十八歳。一度も働いたことはなく、あいかわらず両親の庇護の下にあった。焦るなと言うほうが無理だろう。なりたくて、病気になる人は一人もいない。しかし不運としか言いようのない境遇のなかにあって、作者と同じく多くの病者が俳句をよすがとし、その世界を更に豊饒なものとしてきた。俳句が今日あるのは、社会的弱者の目に拠るところが実に大きいのである』・・読む中で「よすが」に引っかかりました。新明解国語辞典には「よすが(縁):何かをする上で、たよりや助けとなるもの(こと)」とあります。今回落選したとはいえ、歯科医師としてランナーの「よすが」になればと思いましたが残念でした。ランは続けます!2520

BBTime 397 勿体無い!

BBTime 397 勿体無い!
「白湯一椀しみじみと冬来たりけり」草間時彦

今年の立冬は八日ですので句はフライングです。老婆心ながら「白湯」はさゆと読み「飲用のための沸かした湯」のこと。今では家の中は暖房もきき、窓枠はサッシですので隙間風も入らず「しみじみ」を感じることは少なくなりました。今回は「勿体無い」話を三つ。「WSD:楔(くさび)状欠損」「歯磨き不足」「捨てました」・・今まで何度も書いておりますが、やはり日々臨床で毎日のように出会うものですから。まずは「楔状欠損」について。

原因として「噛み合わせ・歯ぎしり」も文献に出てきますが、小生の感触ではおそらく九割以上は「ゴシゴシ磨き」だと確信します。冬になると(水道水の温度が下がると)「歯磨きの時に痛い・しみる」との主訴で来院される方が増えます。鏡で見てもらいながらゴシゴシ磨きの弊害を説明し、治療はムシ歯と同じように表面を少し削って(勿論ムシ歯があればそれも除去して)樹脂を詰めます・・勿体無い話です!
1)ムシ歯ではないのにムシ歯と同じ治療を受ける必要があるのが、勿体無い!2)ご本人はムシ歯予防(ゴシゴシ磨き)のつもりが結果的にムシ歯(様欠損)を作ってしまったことが、勿体無い!3)ゴシゴシ磨きのために費やした歯ブラシと歯磨き粉と時間が、勿体無い! 次は「歯磨き不足」。

例えば上の前歯を考えます。歯磨き不足でムシ歯を作り、そのムシ歯が深くなり歯髄(しずい:血管や神経を含む)まで炎症が及び、歯髄を取り除き土台をたて白い歯を被せたとしましょう。作り物とわからないようなナチュラルな陶器の歯(一本十万円)を選択したとします。どんなに色や形がナチュラルであっても所詮偽物、作り物の歯。偽物が十万だとしたら、あなたは本物にいくらの値段をつけますか?はっきり言います、本物は百万でも買えません!勿体無い話です。

「捨てました」・・これは先の二つとは次元の違う話ですが、被せ物や詰め物が外れての来院の際に「捨てました」と言われる方・・勿体無い!外れたものが金属の場合、保険がカバーしている金属であっても貴金属です。組成は金銀銅でそれぞれ12%,
52%,15%(メーカーによって若干違いますが、金12%は同じ)で、金と銀で約60%以上、さらにレアメタルのパラジウムを20%含みます。貴金属を「捨てました」は勿体無い!。再セット(外れたものを再使用する)できる場合は治療費も時間も少なくてすみます。外れた物がなければ、ゼロからの治療になります・・勿体無い!因みにパラジウムは排ガスの触媒として使われるために、時に金より高値がつくこともあるレアメタルで貴金属に分類されます。

「勿体無い」を調べてみると、「勿体」とは仏教用語で直訳すれば「かたち(体)がない(勿い)」言い換えれば「色即是空:しきそくぜくう」に通ずるとのこと。詳しくは「勿体無いはありがたいお言葉!」「もったいない」「忘れえぬ言の葉」を是非。一部引用します『例えば、夕食のおかずに出されたお魚は、本来海の中で泳ぎまわっている存在です。ところが、何の因果かめぐり巡って、今、私の目の前のお皿に載っている。このお魚の生命を粗末にしてはもったいない、というのが「もったいない」の根本です』(引用元)。

楔状欠損予防策は上のイラストのように「鉛筆握り」で磨くこと。歯磨き不足解消法は、子供さんであれば親御さんが磨いてあげる、大人の方なら「歯は磨いても、もらうもの」ですので、定期的に歯科医院でPMTC(専門家による歯磨き)を受けてくだい。最後に詰め物などが外れた場合は捨てずに「持参する」事をオススメします。金属でなく白いものであっても、歯科医にとって多くの情報を持っていますので捨てずにご持参ください。

「白湯:さゆ」は水を沸かしただけです。中華料理の「白湯:パイタン」は勿論別です。『パイタンは、豚骨、豚すね肉、豚の背脂、鶏ガラ、鶏の脚などを主材料にし、長時間材料が煮くずれるくらいまで煮込んで作る。脂肪が入ることによって、白く濁ったスープとなる』(引用元)。表記は同じでも、白湯の持つ温かさと(鉄瓶ならば)ほのかな甘みをしみじみと味わい飲む・・日本ならではの「勿体ない」です。0450


 

BBTime 396 残るサイド

BBTime 396 残るサイド
「一線を越えて凍る尾觝骨」春海敦子

終わりました・・。画像はご記憶にあるように準決勝開始前のNZチームの「ハカ」に対してイングランドがとった奇襲作戦です。イングランド選手がハーフウェイライン(中央線)を越えたため、後日罰金約35万円が科せられました。この時は「なるほど、さすがイングランド」「何もせずにハカを見ないとは流石」と肯定的に受け取りました、勝つことへの執念を感じました。一線(ハーフウェイライン)を越えたことは頂けませんが。

イングランドは決勝で南アフリカに負け銀メダル(準優勝)。ところが今度はメダル拒否!これはダメです。ラグビー発祥地のナショナルチームがこの態度はダメでしょう。小生が学生の頃、耳にしていたのが(不適切な表現ですが・サッカー関係者には失礼と思いますが)サッカーは「野蛮(人)の紳士的スポーツ→だから手を使わない」で、ラグビーは「紳士の野蛮的なスポーツ→だから手を使って良い(何をしても良い)」と。ラグビーにおいては、あくまでも「ベースは紳士である」と。

心中はわかりませんがイングランドの行動を見る限り「ノーサイド」はなかったことになります。ラグビーを愛する者として起源のイングランドにはポイント(点数)のみならずスピリット(精神)も追い求めて欲しいと思います。試合終了後のオブストラクションの反則でペナルティですよ、これは。

一時期、日本の柔道が低迷した時に、理由として日本選手は「一本勝ち」にこだわるが、外国選手(日本以外)は「勝ち」にこだわる。柔道がポイント制の今、いわばセコイ手であってもポイント稼いだ方が勝つ・・しかし現在、日本柔道は盛り返しました。黒帯の小生としてはポイント重視は否定しませんが「道」と名乗るからには「一本勝ち」にこだわって欲しいのが本音です。

対照的に「美しい勝利」が南アフリカです。黒人初のキャプテンの元「ワンチーム」で堂々たる勝利。やはりラグビーの神は見ていたのです。ネルソン・マンデラ氏が御存命なら滂沱の涙だったことでしょう。国際的には「ノーサイド」よりも「フルタイム」の方が一般的のようですが、ノーサイド精神なくしてラグビーを語りたくはありません。次のW杯まではイングランドではなく南アフリカを聖地としましょう!

最後に冒頭の句の解説を紹介します、意味深です。『凍るは「こごえる」と読ませるのだろう。うーむ、丸ハダカか。「一線を越えて」という古風な言いまわしが、かえって生々しい。行為の直後のことを詠んだ句も珍しい。この人、鋭い感受性を持ってるし、素直でいい性格もしてるだろうな。でも、お友だちにはなれない気がする。この句を読むかぎりでは、まったく詩的なセンスが合わないからだ。とはいえ、かなり凄い句ですよ。ユーモラスだが、下品に落ちていないところが……。無季と読みたい』(解説より)。今回、イングランドの行動が自らの品を落としたことは確かです。0200



おまけ:イングランドのペナルティにレフリーから「喝!」





「BBTime 393 ノーサイド」もどうぞ!