BBTime 649 唄を楽しむ

「声にせば覚えてをりぬ手毬唄」大橋淑子

2024/03/16投稿
 前回投稿から早二週間、鹿児島の春はそこまで来ております。句の解説『言葉の運びが窮屈で、そこがとても惜しまれる句であるが、人の記憶のありかたについて貴重なことを言っている。作者の弁。「友達と童謡を歌っていた時のこと。てまりが殿様のおかごの屋根に揺られ紀州のみかんになった手鞠唄、全部覚えていたのです。子ども時代の歌、なつかしいです」。遠い子供の日々に、毬つき遊びをしながら覚えた歌だ。童謡『まりととのさま』は結構長いので、まさか全部を覚えているはずもないだろうと、とりあえず友達と声に出して歌ってみたら、あら不思議、二人ともすらりと全部歌えてしまったというのである。びっくりだ。嬉しかった。人の記憶にはあやふやなものが多いけれど、このように身体の動きと一緒に記憶したことだけは、なかなか抜けないようだ。歌だけを覚えているのではなくて、身振り手振りすべてが記憶のなかで連鎖しているからだ。つまり、記憶を呼び起こすキーがたくさんあるわけだ。だから、声に出すことがきっかけとなって、苦もなく歌えたのである。手鞠のように全身を使わなくとも、たとえば教室で音読させられた詩などが、ときに意味もなく口をついて出てきたりするのも、同種の記憶構造に仕込まれた引き金によるものだろう。俳誌「未来図」(1999年1月号)所載。(清水哲男)』(引用元)。今回は唄について。

昨年霜月のブログ「Music for 介護」をアップして早四ヶ月、訪問歯科診療の際にはスマホで音楽を流しております。今のところ「ノー」の方はいらっしゃいません。ご本人や家族の方にリクエストを聞くと「ちあきなおみ」「石原裕次郎」「福田こうへい(小生知りませんでした)」「おはら節」など多岐にわたります。半分以上の方が演歌を希望、あとはおまかせか童謡です。こちらの言うことは理解されるけど、言葉では返事困難な方でも反応してくださいます、体を揺する方、手(指)でリズムを取る方。言葉で対応可能な方は「口ずさむ」「(カラオケよろしく)歌う」なども。また黙って涙ぐむ方も・・季節的によく流れる童謡は「花」です。

冒頭の句の解説の追加に『記憶には「宣言的記憶」と「非宣言的記憶」という大きくわけて2種類のものがある、と言われております。宣言的記憶とは、覚えている俳句であるとか、昨日体験した出来事であるとか、簡単に言えば「口で説明できる記憶」です。非宣言的記憶とは、車の運転やスポーツなど、「口では説明できなくても動作で手順として覚えている事柄」であります。手続き記憶とよばれる記憶もこれに属します。歌や道順などは手続き記憶です。一時に全部は思い浮かべられないが動作の連続として再生はできます。なお脳にとっては言葉も動作もカテゴリーとしては同じ「運動」です。これらの記憶は蓄えられている場所も取り出し方も違います。 宣言的な記憶は海馬と呼ばれる部位が中心になって蓄えられており、本人が積極的に検索して取り出してきます。一方、手続き記憶などは様々な大脳皮質や小脳に分散して蓄えられており、ひとつの動作や想起から芋蔓式に取り出されてきます。学習も取り出しもたいていの場合は自動的です。海馬が損傷された患者さんでも歌は歌えることが多いのはこのためです。』(引用元)とのこと。

五感の中で最後まで機能するのは聴覚だと聞いたことがあります。目覚ましアラームが有効なのは耳が年中無休二十四時間営業であることの証拠です。ちなみにBGM診療で最も効果的だと感じたことは、訪問診療しているこちら側(歯科医師・歯科衛生士)です。コミニュケーションが困難、口を開けてくれない、噛まれる等々ストレスを感じることは多々ありますがBGMで明らかに軽減されます。

かたやこんな句も
「雪の降る町といふ唄ありし忘れたり」安住 敦
『町に雪がちらついている。歩きながら作者は、そういえば「雪の降る町といふ唄」があったなと思い出した。遠い日に流行した唄だ。何度か小声で口ずさんでみようとするのだが、断片的にしか浮かんでこない。すぐに、あっさり「忘れたり」と、思い出すのをあきらめてしまった。それだけの句ながら、この軽い諦念は心に沁みる。かくし味のように、句には老いの精神的な生理のありようが仕込まれているからだ。すなわち「忘れたり」は、単に一つの流行り唄を忘れたことにとどまらず、その他のいろいろなことをも「忘れたり」とあきらめる心につながっている。若いうちならば、どんなに些細なことでも「忘れたり」ではすまさなかったものを、だんだん「忘れたり」と早々にあきらめてしまうようになった。そういうことを、読者に暗示しているのだ。そうでなければ、句にはならない。唄の題名は、正確には「雪の降る街を」(内村直也作詞・中田喜直作曲・高英男歌)だけれど、忘れたのだから誤記とは言えないだろう。歌詞よし、曲よし。私の好きな冬の唄の一つだ。しかし長生きすれば、きっとこの私にも、逃れようもなく「忘れたり」の日が訪れるのだろう。せめてその日まで、この句のほうはちゃんと覚えていたいものだと思った。『柿の木坂雑唱以後』(1990)所収。(清水哲男)』(引用元)。BGM付き訪問診療、関係者の方は是非!皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 647 拙を守る

「木瓜咲くや漱石拙を守るべく」夏目漱石

2024/02/10投稿 2/11追加 2/14追加 2/17動画追加
鹿児島には春がそこまで来ております。句の解説『花そのものではなく、木瓜(ぼけ)という語感に着目した句だ。「拙を守る」とはへんてこな意志と思われるかもしれないが、漱石のような才気横溢した人にとっては、おのが才気のままに流れていくことは、たぶん怖いことだったのだろう。才気には、知らず知らずのうちに現実から遊離してしまうという落し穴がある。小説家にしてみれば、この穴がいちばん恐ろしい。だから、どうしても「拙を守る」強固な意志を持ちつづける必要があった。「世間には拙を守るという人がある。この人が来世生れ変るときっと木瓜になる。余も木瓜になりたい」(『草枕』)。そして漱石ならずとも、現代人の多くはいま木瓜になるべきときかもしれない。シャープという名の小賢しさが一掃されたら、どんなに気持ちがよいことか。私が俳句を好むのも、俳人には「拙を守る」人がたくさんいるからである。とは、それこそまことに小賢しい言い方かもしれないが……。『漱石俳句集』(岩波文庫)所収。(清水哲男)』(引用元)。先日目にした記事「認知症を引き起こすアカン習慣13選」について、ズバリ認知症予防のお話。

まず『「拙を守る」とは、漱石が好んだ言葉で、生き方の基本としたものという。世渡りが下手なことを自覚し、それをよしとし敢えて拙を曲げぬ愚直な生き方、俗世に媚びて利を追求する事を卑しとする心』(引用元)。さて記事を見ていきましょう。
「日常生活の改善で発症リスクは約4割も下げられる」・・厚生労働省の推計によると認知症の患者数は2025年に約730万人にのぼり、65才以上の5人に1人は発症するとされている。もはや誰もが認知症に罹(かか)ると思った方がよさそうだ。最近の研究によると普段の習慣が認知症を招く要因になっていることがわかってきた。認知症を予防するためにやってはいけない生活習慣について専門家が解説する(記事)。
「2020年、世界五大医学雑誌のひとつ『ランセット』に、認知症の発症にかかわる12のリスク因子が掲載されました。それは、飲酒、喫煙、糖尿病、肥満、高血圧、頭のけが、運動不足、難聴、社会的孤立、うつ病、教育歴、大気汚染です。これらに加えて、睡眠の重要性も説かれており、これらを改善することで認知症の発症リスクを約4割下げられるといわれています。いまから、認知症になりにくい生活習慣を身につけておくことが重要です」(記事)。

では「アカン習慣13選」とは。
【1】たばこを吸う・・周りの人にも悪影響が!
「中年期(40~64才)以降も喫煙を続けた人は、非喫煙者に比べてアルツハイマー型認知症になる可能性が2倍、血管性認知症は2.9倍高いとされます」。受動喫煙者もリスクが上がるので要注意。・・脳内の循環
【2】愚痴や悪口を言う・・ネガティブ思考が機能低下を招く
「どうせ自分なんて」といったネガティブな思考は認知機能の低下を招く原因になるという。「悪口や批判的な態度は自分のストレスを助長するだけでなく、家族や友人が離れ、社会的な孤立を深める原因になるのでやめましょう」。・・ネガティブ(自己否定)
【3】料理はしない!食事は外食やデリバリーが中心・・“料理”は最適な脳トレに!
コロナ禍の影響でデリバリーが習慣化したり、もともと外食中心の食生活で料理をしない人もいるようだが、料理には脳を活性化させる効果がある。「脳の前頭前野の働きが活発となり、血流が増加したという研究結果も。簡単なものでいいので料理は毎日続けましょう」。・・脳の不活性

【4】面倒なときは歯みがきをサボりがち・・ムシ歯や歯周病が認知症を招く
「歯の健康と認知症の関係は深く、歯周病菌がアルツハイマー型認知症の発症因子アミロイドβの生成・蓄積を促進させることがわかっています。さらにムシ歯菌が認知機能の低下と関係していることも明らかに」。口腔内の健康が脳の健康につながると覚えておこう。・・歯周病菌が原因
【5】休日は誰にも会わず家でダラダラ~人に会わないと脳が衰える
他者とのコミュニケーションは、脳を刺激し、脳の発達を促進させる。「家にひとりで閉じこもっていては、人と話す機会が減るだけでなく、社会的孤立にもつながります。買い物に行く、カルチャースクールに通うなど、意識的に外出する用事を作って」。・・脳の不活性、ネガティブ
【6】イヤホンをして音楽を聴く・・使用自体を控えるのが望ましい
「イヤホンやヘッドホンを使い、大きな音量で音楽を聴き続けると、音を伝える役割をしている内耳の有毛細胞が徐々に壊れて難聴になりやすくなります。使用は控えた方がよいでしょう。やむなく使う場合は、音量に気をつけ、1日1時間未満に」・・難聴のリスク

【7】欲求は悪!“三大欲求”はできるだけがまん!・・欲求は満たすことこそ大切です
「認知症予防には、ストレスをためないことが大切です。人が心の底からリラックスできる状態は実は、食欲・性欲・睡眠欲の三大欲求が満たされることで成立します。性欲を満たす方法は、異性と体を重ねるだけでなく、ペットなどの動物や子供と触れ合ったり、“推し活”などの疑似恋愛でもかまいません。“ときめくこと”で、脳が活性化されます」・・脳の不活性
【8】美を維持するため筋トレは必須!毎日、ダンベルを上げています!・・筋トレのやりすぎはかえって危険!
「認知症予防に運動は大切。筋力維持を目的とした適度な筋トレはいいですが、50代以上でムキムキになるくらいの過度な筋トレは、けがや病気のもとに。認知症予防が目的なら有酸素運動が有効です。おすすめは、週2~3回、1回30分以上のウオーキング。認知機能の低下防止だけでなく、代謝がよくなり血糖値や血圧の改善も期待できます」・・怪我、ストレス
【9】ちょっとした不調でもすぐ市販薬をのむ・・必要以上の服薬は控えた方が◎
ちょっとした不調ならば、ドラッグストアなどで手に入る薬をのんで様子をみるという人も多いが…。「市販の風邪薬、花粉症薬、胃酸の分泌を抑える薬、せき止め薬、睡眠改善薬などの中には、認知機能に影響を及ぼす成分が含まれているものも。過度な服用は控え、不調時は病院で適切な薬をもらいましょう」。・・薬は毒

【10】簡単な計算にすら電卓を使う・・計算は効果的な脳トレに
「脳は使わないとどんどん衰えてしまうので、日常生活で計算する習慣を作るのがおすすめです。たとえば、買い物をしながら合計金額を算出することで、計算力と記憶力が鍛えられます」・・脳の不活性
【11】失敗が怖い。得意なことしかやりたくない・・ささやかな“初体験”を心がけて
「年齢を重ねると何事も慣れ親しんだものを選びがちですが、新しい体験をすると脳の神経細胞が活性化。いつもと違う道を通る、新しい店に入るなど、ささやかでいいので“初体験”を心がけて」・・脳の不活性、ネガティブ
【12】いつも同じ人としか話さない・・知らない人との会話が脳の刺激に
「親しい人との会話は気楽で楽しいですが、緊張感が不足するかも。初対面やあまり話したことのない人との会話の方が、相手がどんな人か探りながら話すので脳への刺激も強くなります」・・脳の不活性、ネガティブ
【13】心配性で、何度も確認したくなる・・声を出して笑ってみよう!
「スウェーデンの大学が行った調査によると、心配性な人ほど認知症になりやすいとのこと。人は笑うと脳が活性化し、心身もリラックスします。心配性な人は、意識的に声を出して笑ってみて」(出典)。脳の不活性、ネガティブ

・中国原産。実が瓜のような形であるところから「木瓜」。「木瓜」を「もっけ」と呼んでいたのが 次第に 「もけ」→「ぼけ」になった。(「ぼっくわ」→「ぼけ」の説もある) ・花の色は赤、白、ピンクなど。枝にトゲがある場合とない場合がある(引用元)。

拙(小生)なりにまとめてみます。(2/11追加)
1)喫煙・・脳内の血液循環悪化
2)愚痴悪口・・ネガティブ・自己否定
3)料理しない・・脳の不活性
4)歯磨きサボリ・・歯周病菌による慢性炎症
5)人に会わない・・脳の不活性、ネガティブ
6)イヤホン使用・・難聴のリスク
7)我慢・・脳の不活性、ヒト本来の否定
8)筋トレやりすぎ・・怪我リスク、ストレス
9)薬の服用・・薬は毒
10)暗算しない・・脳の不活性(漢字の確認でも可)
11)失敗が怖い・・脳の不活性、ネガティブ(今さら失敗はない)
12)同じ人のみ・・脳の不活性、ネガティブ
13)心配性・・脳の不活性、ネガティブ
さて、いくつ当てはまりましたか?ご覧のように殆どが脳の不活性、言い換えれば「脳を使わない」。「廃用性萎縮:はいようせいいしゅく」使わないと使えなくなる!脳をもっともっと使いましょう、よりポジティブに、より楽しく。例「テレビ捨ててラジオ聴こう」「クルマ捨てて歩こう」さっそく今日から、いや今から!
皆様ご自愛の程ご歯愛の程。
2/14追加・・セミナー用2040年問題(詳しくはこちらを)。






BBTime 644 歩く!

「なずな咲くてくてく歩くなずな咲く」小枝恵美子

2024/01/20大寒投稿 1/21追加
 今朝の桜島(1/20)大寒なのに鹿児島は温かい朝です。昨春から本格的に歯科訪問診療に携わるようになって痛感すること・・それは「口から食べると歩く」・・これだけは死守して欲しい!まずは句の解説『なずな(漢字では「薺」と難しい字を書く)は、陰暦正月七日の七種粥に入れる七草の一つなので、単に「なずな」だと、歳時記的には「新年」に分類される。が、花が咲くのは早春から梅雨期にかけてであり、掲句の場合には「薺の花」で春。またの名を「ぺんぺん草」とも「三味線草」とも言う(こちらのほうがポピュラーか)。さて、この句の魅力は「てくてく」にある。「歩く」といえば「てくてく」など常套的な修辞でしかないが、実にこの「てくてく」の用法は素晴らしい。いたるところに咲いているなずなの道を行く気分は、別にいちいち花を愛でながらというわけでもないので、むしろ常套的な「てくてく」がふさわしいし、句の情景を生き生きとさせている。「むしろ技巧的に思われるほどだ」と句集の栞で書いた池田澄子は、さらにつづけて「そこここに咲いている『なずな』と、そのことを喜び受け止めながら歩いている人物は、春を輝く万物の細部としての代表である」と述べている。これまた素晴らしい鑑賞だ。春の道は、こんなふうに「てくてく」と歩きたい。なお「なずな」を「ぺんぺん草」「三味線草」と呼ぶのは、その実を三味線のバチに見立てたことにちなむそうだ。今日調べてみるまでは、つゆ知らなかった。『ポケット』(1999)所収。(清水哲男)』(解説より)。今回は歩くについて。

私事で恐縮です、就寝時アップルウォッチをつけて寝ます。ある時、面白いことに気がつきました。雨以外はほぼ毎朝、自転車かウオーキングで30分以上のエクササイズをします、天候などによって自転車なし歩きだけの日もあります。ちなみに一日トータル80分以上のエクササイズがノルマ。驚いたことに、エクサイズ時間は同じでも「歩き」と「自転車」では睡眠の質が違うのです(小生の場合)。

ある日の睡眠パターン。さほど自分では認識していないのですが、記録を見ると覚醒と睡眠を細かく繰り返しています。

これは途中の覚醒がありません。実はこちら「歩きだけ」の日の睡眠です。思うに、自転車よりも歩きの方が、体全体(脳を含めて)が程よく疲労するのではないか。よって自転車エクササイズ日よりも落ち着いた睡眠になるのではないか、ということ。気付いてからしばしば睡眠パターンをチェックしますが同じような結果です。
追加:小生の仮説を裏付けるような記事を見つけました、こちらです

さて、必要なので(仕方なく)車椅子を使用されることは理解できますが、施設によっては車椅子を多用する傾向があると感じます。もちろん理由は推測できます。施設利用者の転倒、転倒によるケガ骨折防止、職員側の効率等々。ある訪問先の要介護男性宅(ワンルームひとり住まい)にて・・季節が良いので散歩どうですか?と提案したところ、「看護師から外出は禁止されている」とのこと。数ヶ月後、玄関に車椅子・・車椅子がありますね。「転けると危ないので車椅子を使うように」とのこと。その方は室内ではつたえ歩き可能な方でした。ある理学療法士との会話・・リハビリに励み杖使用で歩行可能になったら、その方の家族から介護度が下がったとクレームが来た。それぞれのケースがあるので一概に「車椅子より杖歩き」とは言えません。しかしはっきり言えることは、今現在、歩ける人は自分の足で歩くことを死守してください!です。

ヒト(ホモ・サピエンス)の定義は未だはっきりしていないと聞きますが、特徴でまず挙げられることが「直立二足歩行」です。Wikipediaには「現存生物で唯一ヒトのみが直立二足歩行を行う。 二足歩行のみなら鳥類やカンガルー、一時的な二足歩行であれば一部の哺乳類が行えるが、頭から足までまっすぐ伸ばした直立姿勢を取るのはヒトのみ。」とあります。逆に言えば(極端な表現ですが)直立二足歩行しなければヒトではないとなるのでは?

施設職員の方を見ていると大変な仕事だと思います。きつい介護の仕事を減らすために可能なことは、今健康な方が「口から食べる」「自分の足で歩く」を死守していただくことだと痛感します。歩くを死守するために日頃から歩く!くどいようですが直立二足歩行可能な哺乳類が唯一「ヒト」なのです。皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 639 Sweets for 介護

「数へ日の素うどんに身のあたたまり」能村登四郎

2023/12/09投稿
 早いもので今年も残り三週間、まさに「看看臘月尽:みよみよろうげつつく」。まずは句の解説から『季語は「数へ日」で冬。日数の残りも少ない年末のこと。感覚的には、まだ少し早いかもしれない。が、あらためて壁のカレンダーをを見ると、今年もあと三週間しか残していない。これからは何かと慌ただしく、一瀉千里で今年も暮れていくのだ。忙しいということもあるが、そんな思いのなかでの独りの外食は、見た目にデコラティブな料理よりも、シンプルの極みたいなものがしっくりと来る。「素うどん」などは、その典型だ。とりあえずの「身のあたたまり」ではあるだろう。が、もう少し「素うどん」を敢えて句にした作者の実感に迫っておけば、シンプルな食べ物からしか受けることのできない恩寵に、ひとりでに感謝する響きが込められている。おかげで「身」も暖かくなった。そして、心の内もまた……。年末の多忙は、多く整理の多忙だ。来る年を迎えるために、身辺も心の内もさっぱりとしておきたい。その気持ちが、たとえば「素うどん」の「素」にすんなりとつながっていく。そういうことだと掲句を読み、今日はどこかの立ち食いの店で「素うどん」を食べたくなった。それも「七味」ではなく「一味唐辛子」を、さっと振りかけて。『人間頌歌』(1990)所収。(清水哲男)』(解説より)。前回「Music for 介護」の続編です。

太宰府梅園の干菓子(ひがし)「よろつよ」。「Music for 介護」の通り、現在訪問診療中に音楽を流しております。その方(治療やケアの対象者)とコミニュケーション可能ならばリクエストにお応えします、困難な場合は師走ですので洋楽クリスマスソングを流します。今まで断られたことはありません、好評です。ケアの途中で口ずさむ方、頷くようにリズムを取る方など様々。その方が聞こえづらい場合も音楽をかけます。音楽があると従事者(こちら側)もスムーズに施術が進みます。スマホがあれば可能ですので、是非トライしてみてください。そこで(調子に乗って)次なる試みが「sweets:スイーツ」!

梅園の「宝満山:ほうまんざん」。ある訪問先でのこと。居宅(ご自宅)訪問、九十代半ばのお母さんを娘さんがみていらっしゃる。私たちが行くと、それぞれ(相手に対する)不満や愚痴を苦笑をまじえて話されます。聞きながら思います「それぞれにストレスが溜まっている?」そこで一案!そうだ「お菓子だ」「スイーツだ」。帰りしな飲み物など頂きますので、まずは日頃の御礼ですと「よろつよ」をお渡しました。よろつよを口にお茶を飲みながら、少しでもお二人のストレス減少できるのでは、が狙いです。

これは「うその餅」。「美味しいを守る」に書いておりますように「おやつの宅配!月に一度、オススメの和菓子もしくはスイーツをお届けし歯磨きがおまけで付きます。お菓子の持つ「甘い力」によって、御本人のみならず介護をする方のストレスも軽減できること請け合い」のようなシステムを考えております。口腔ケアがゴールではなく、その一歩先の「美味しい」まで届ける、いかがでしょうか。では皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 638 Music for 介護

「あたたかき十一月もすみにけり」中村草田男

2023/11/23投稿 11/29報告追加
 昨今の気温について、掲句の解説のようには受け止められない「今年」です。解説は『旧版の角川書店編『俳句歳時記』には、この句と並んで細見綾子の「峠見ゆ十一月のむなしさに」が載っている。長年親しんできた歳時記だから、毎年この時期になると、二つの句をセットで思いだすことになる。並んでいるのは偶然だが、いずれもが、十一月という中途半端で地味な月に見事な輪郭を与えていて、忘れられないのだ。忙中閑あり。……ならぬ、年の瀬をひかえて「忙前閑あり」といえば当たり前だが、両句ともそんな当たり前をすらりと表現していて、しかもよい味を出している。ただ草田男句の場合は、どちらかといえば玄人受けのする作品かもしれない。(清水哲男)』(引用元)。今回は介護と音楽について。

 歯科訪問診療で介護の現場に出向きます。訪問先で感ずること二点、明るさ(照明)と音。居宅(ご自宅)であっても施設であっても様々です。今回新たな試みを始めました。今までも可能な限り、ご家族や職員の方に一言断って、カーテンや窓を開けて外光を入れたり換気したりしていました。また、その場の「音」・・テレビ、ラジオ、BGMなどの音があることもあれば無音のこともあります。大雑把に言えば、戸やカーテンが閉まって(明るくなく)音がない部屋は、空気は重く暗く感じます。

介護を受けられるご本人が耳が遠い故の無音なのかも知れません。明るい空間(現場)もあります。明るい部屋にベッドがあり介護される方も明るい。あるお宅はご主人が奥様を介護されています、奥様は元バスガイドさん。いつも音楽が演歌、歌謡曲とエンドレスで流れてきます。小生がイントロ当てクイズよろしく「これは前川清」と言って間違っていると、奥様は寝たまま大笑い。ご主人と奥様のやりとりはまさに夫婦(めおと)漫才。かたや暗い空間もあります。光は届いていても「無音」、九十代半ばのお母さんを六十代半ばの息子さんがお世話していらっしゃる。介護鬱(うつ)を疑いたくなるくらい気落ちされていることも。帰りしな思いました「音楽をかけよう!」

簡単です、手元にスマホがあります。早速BGM作戦開始!はたと考えました「何をかけよう?」その時に浮かんだ曲がチャップリンの「Smile:スマイル」。早速spotifyで検索すると、様々な歌手がこの曲をカバーしているチャンネルがありました。狙いは「ご本人」「介護する人」「我々(歯科訪問診療)」へのBGMです、スマイルです。

効果の検証はこれからです。先日百歳過ぎ女性の口腔ケアでした。会話は成立しませんが、言う事は理解してくださいます。ケア終了後「今日はこれで終わりです、また来ますね」と大きめの声で言うと、感謝と喜びの気持ちが充分に伝わる目だけの笑顔で見送ってくださいました。「目は口ほどにものをいう」と言いますが、これほどまでに伝わるとはと驚くほどの「目だけ笑顔」でした。Music for 介護、試行錯誤していきます。皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

報告11/29 報告します。
1)ご家族、施設の方に「音楽をかけながらさせて頂きます」と言うと、皆さん「それは、良いですね」との反応でした。
2)コミニュケーションの取れない方には、こちらが勝手に選びます。取れる方には「どんな歌がお好きですか?」と聞きます。ある方は「演歌がいいです」・・早速流したところ、口腔ケアの合間合間に口ずさんでおられました、その曲は石川さゆりの「津軽海峡・冬景色」。
3)コミニュケーションの取れない女性。スタッフが「この方は天文館(繁華街)でお店をされていたそうです」・・この方にも演歌を流しました。おそらく耳に届いていたことでしょう。情報に病歴はありますが、音楽歴も加えて頂くと助かると思いました。
4)演歌、文部省唱歌、洋楽でおおかたカバーできるでしょう。
5)音楽はエンターテイメントに分類されることもあります。介護の現場に更にエンターテインメントを取り入れることを進めていきます。続き、また報告します。11/29

https://youtu.be/xuMKgVJQZkQ?si=7WI7tvrOwlGH87bs