BBTime 650 オイシイ

「玉丼のなるとの渦も春なれや」林 朋子

2024/03/17投稿
 鹿児島はひと雨ごとに春近づくです。句の解説『はじめての外食生活に入った京都での学生時代。金のやりくりなどわからないから、仕送り後の数日間は食べたいものを食べ、そうしているうちに「資金」が底をついてくる。さすがにあわてて倹約をはじめ、そんなときの夕食によく食べたのが、安価な「玉丼(ぎょくどん)」だつた。「鰻玉丼」だとか「蟹玉丼」なんて、立派なものじゃない。言うならば「素玉丼」だ。丼のなかには、米と卵と薄い「なると」の切れっぱししか入っていない。丼物は嫌いじゃないけれど、毎日これだと、さすがに飽きる。掲句を読んで、当時の味まで思い出してしまった。作者の場合は、むろん玉丼のさっぱりした味を楽しんでいるのだ。「なると」の紅色の渦巻きに「春」を感じながら、上機嫌である。「なると」は、切り口が鳴門海峡の渦のような模様になっていることからの命名らしいが、名づけて妙。食べながら作者は、ふっと春の海を思ったのかもしれない。楽しい句だ。またまた余談になるが、昭和三十年代前半の京都には「カツ丼」というものが存在しなかった。高校時代、立川駅近くの並木庵という蕎麦屋が出していた「カツ丼」にいたく感激したこともあって、京都のそれはどんなものかとあちこち探してみたのだが、ついに商う店を発見できなかった。さすがに今はあるけれど、しかし少数派のようだ。なんでなんやろか。『眩草(くらら)』(2002)所収。(清水哲男)』(引用元)。今回は「オイシイ」について。

小生「玉丼」なるもの知りませんでした。好きな丼は「カツ丼」、丼のオイシイ思い出は京都の「鳥岩楼:とりいわろう」親子丼!さて、ほぼ毎日訪問するサイト「ほぼ日」今日(3/17)のダーリンは・・

「・テレビ番組で料理を食べるタレントは、
 なぜ、「おいしい」とか「わぁ」とか言わずに、
 「やわらかい」とか「ふわふわ」とか「でかい!」とか
 「外はカリッとしてて」とか「あまーい」とか
 「ジューシー」とかから先に言うのだろうか。
 それは、「おいしい」だけじゃ、
 その時その料理なりの「よさ」が
 伝わらないからだということになっている。
 彼や彼女が「おいしい」というのは
 ただの主観、ただの感想にしかすぎないからだ、と。
 しかし、言うのが「やわらかい」でも「ふわふわ」でも、
 そんなに何かが伝わっているようには思えない。」

「食べものの「よさ」を表現するというのは、
 とっさに気の利いたことばで言えるようなものでもない。
 客観的にどうだとか、どこに価値があるかとかは、
 後でうまく言えたときに言えばいい。
 まずは、あなたが「おいしい」と感じたのか、
 そうでもなかったのか、のほうが知りたいんだ。
 「わたしなど味もよくわからないただの人です」
 だとしても、その「ただの人」が
 「おいしい」顔をしたのかどうかが知りたいのだ。」

「テレビの「食レポ」とかの影響なのか、
 いまじゃ、そこらへんのだれでもが
 一口食べて「やわらかーい」とか言っている、
 「おいしい」かどうかは言わないままで。
 いいんだよ、伝えることなんか後回しでいい。
 おいしさを表わす語彙が足りないとか、
 気の利いたふうなことは言わなくていい。
 ただ「おいしい」でかまわないんだ、自由なんだ。
 やがていつか、じぶんにも他人にも伝わるような
 「よさ」が表せる機会があるかもしれないしね。」

「たとえば昔、ぼくの近くにいた若いやつが、
 「ああ、うなぎというのは魚なんだけど、
 魚っていうだけじゃなくて、
 こう、肉と魚の間みたいな感じで、
 もうなんとも言えないおいしさですねー」
 と言っていて、いいなぁと思ったよ。
 語彙なんかないけど「よさ」が鳴り響くじゃないか。
 まず、じぶんの「感じ」をたのしもうよ、だよ。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
ぼくは「おいしいね!」っていう声を聞くのが大好きです。」

去る一月、行きつけの歯科で担当の方に今年の抱負を聞かれた際「もっともっとオイシイものを探す!」と即答。BBTime 633 「美味しいを守る」をアップしました。食べるを守るが歯科治療ならば、美味しいを守るは歯科予防です。加えて「オイシイを探す」はおやつ堂の役目であると確信します。先月二月に「もっと美味しいもの」見つけました!詳しくは近々アップします、乞うご期待。では皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 643 大きな問題

「芹レタスセロリパセリよ血を淨めよ」山本左門

2024/01/07投稿
年始早々いろいろな事で、とうに正月気分は消え去っています。解説は『自然から遠ざかるほど、人は病気に近づく。京都浄瑠璃寺の住職がラジオで話していた。作者の焦燥感も、そこに根拠を持っている。歴史上、自然が昨今ほどに人間の問題となったことはないのである。その意味で、まことに現代的な俳句だ。(前半のみ引用)』。ちなみに「淨めよ:きよめよ」

画像は朝日新聞1/3「折々のことば」。「若いうちはみんながやっていることをしないと不安だろうが、「大きな問題クエスチョン」が見つかれば迷わずにそれと格闘すべきだと言う。サイエンスを突き動かすのはつねに情熱パッションだからと」。

昨年の天皇誕生日(2/23)に、ムシ歯予防カフェ「おやつ堂」開店しました。小生の大きな問題は「歯は、磨いてももらうもの」、言い換えれば「歯は、自分では磨き切れない」・・これは真実、開業して二十年ほど経った頃に気が付きました。きちんと予防すれば、生まれて生えてきた「健康な歯」はそのまま健康です。ここ数年、箱根駅伝スポンサーサンスターのコピーは「100年mouth 100年health 口は、生きるの1丁目」(「百年一生」参照の程)。これも真実!しかし、残念ながらサンスターの歯ブラシ歯磨き粉を毎日使っても「100年マウス 100年ヘルス」は達成困難。理由はお分かりでしょう、自分自身で歯を完璧に磨くことは不可能に近いからです。そこで「歯は、磨いてももらうもの」・・このシンプルな事実を歯科医はもっともっと声高に言うべきだと思います。はっきり言って、サンスターライオン花王に、歯磨きを丸投げしていてはダメ。七草は血を清める、すなわち不足したビタミンを補う。その七草を咀嚼嚥下するためには「健康な歯」が必要です、「口は、生きるの1丁目」。皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 642 癸卯から甲辰

「うつくしや年暮れきりし夜の空」小林一茶

2023/12/31大晦投稿 2024/01/02画像追加・加筆 01/05追加
 大晦日・大晦(おおつごもり)、画像は本年最後の満月(12/27)。句の解説『今年1998年は、一茶に締めくくってもらおう。ここまでくれば、ジタバタしてもはじまらない。一茶とともに、夜空でも眺めることにしたい。ただ、ミもフタもないことを言っておけば、一茶の時代は陰暦の大晦日だから、二カ月ほど先の空を詠んでいる。そろそろ梅も咲いているかもしれぬ早春の夜空だ。だから、相当に今夜とは雰囲気は異なるが、押し詰まった気持ちには変わりはないのである。古句で締めたついでに、鎌倉末期から南北朝に生きた兼好法師の『徒然草』より大晦日の件りを引用して、今年度の『増殖する歳時記』の本締めとしたい。ご愛読、ありがとうございました。「晦日(つごもり)の夜、いたう闇(くら)きに、松どもともして、夜半(よなか)すぐるまで、人の門たゝき走りありきて、何事にかあらん、ことごとしくのゝしりて、足を空にまどふが、暁がたより、さすがに音なく成りぬるこそ、年の名残も心ぼそけれ。亡き人のくる夜とて玉まつるわざは、この比(ころ)都にはなきを、東(あずま)のかたには、なほする事にてありしこそ、あはれなりしか」。(清水哲男)』(引用元)。本日恒例、毎日新聞「余録」のご紹介。ちなみにタイトルは「癸卯:みずのと う、今年」「甲辰:きのえ たつ、来年2024」。

書き写します。『ウクライナでの戦火はやまず、ハマスの奇襲に端を発したイスラエルのガザ侵攻で世界は混迷を深める。2023年をいろはカルタで振り返る。【い】一寸先にクマ【ろ】露骨な侵略正当化【は】8冠無双【に】日本一のアレ【ほ】ホンマにやるんでっか万博【へ】米中気球で乱気流【と】どうする文雄【ち】地球温暖禍【り】リバウンド、インバウンド【ぬ】抜け道の先に裏金プール【る】ルフィ気取りの怪賊団【を】お年玉どうなる物価高【わ】YMOさみし2人去り【か】ガザ無情【よ】世のなさけ頼みの博物館【た】多様な性が彩る社会に【れ】零細泣く声インボイス【そ】そっと横見てはずしマスク【つ】つらいよ「蛙化(かえるか)」なんて【ね】ネット中傷に規制の網【な】なんでもチャチャットGPT【ら】来日韓迎【む】無実の訴えようやく再審【う】ウマかった風力利権【ゐ】池袋はストに燃え【の】乗ろーカル線【お】おこしやす文化庁【く】薬不足に良薬なく【や】闇はどこまで芸能界【ま】学ばぬ日大【け】減税のち増税【ふ】不正もビッグ特大ハツ【こ】これでどうジャース1000億円【え】エッフェルで撮ってる【て】てんてこ舞いナカード【あ】安全をロスプレイ【さ】札幌降りんピック【き】銀河へ逝った男おいどん【ゆ】緩い地盤に国強硬【め】迷走する「異次元」【み】水に流せぬ風評被害【し】神宮窮状の森【ゑ】「Xって?」とツイートし【ひ】ヒロシマで何を祈った首脳たち【も】もう終わりに2世の苦しみ【せ】世界制したペッパー侍【す】昴(すばる)への旅立ち【京】きょうの夢あすの平和』毎日新聞12/31朝刊「余録」より。昨年2022年「余録」(2021,2020,2019リンクあり)、2018年はこちら(2017,2016,2014リンクあり)。

画像は中川政七商店鏡餅、マグカップはナガオカケンメイ氏デザイン。今年、小生はやはり「【お】おこしやす、おやつ堂へ、おやつどうですか!」。2月23日天皇誕生日に「おやつ堂」は誕生しました。まだまだ超低空飛行ですが、かすかな光を感じております。来年も今年以上に美味しいモノ探しに精進いたします。是非ご来店ください。では皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 635 ミラクルMTG

「空っぽの人生しかし名月です」榎戸満洲子

2023/10/27朝投稿 10/27昼追加
 唐突ですが今宵(10/27)は十五夜ならぬ十三夜です(ちなみに次の満月は10/29)。まずは句の解説『今宵は仲秋の名月。名月の句は数えきれないほどあるけれど、この句はかなり異色だ。作者はべつに名月を待ちかねていたわけではないし、愛でようとしているわけでもないからである。しかも「空っぽの人生」とは言っているが、作者が自分の人生を深く掘り下げて得た結論でもなさそうで、せいぜいがその場の自虐的な感想程度にしか写らない。そう私が受け取るのは、たぶん「しかし」という接続詞が置かれているせいだろう。この「しかし」はほとんど「ともあれ、とまれ」と同義的に使われていて、前段を否定しているのではなく、それを容認する姿勢を残しつつ、後段に想いを移すという具合に機能している。つまり「人生」と「名月」とは無関係と認識しつつ、それこそ「しかし」、作者は無関係であることに感慨を抱いてしまっている。感慨無き感慨と言ってもよさそうな虚無的な匂いのする心の動きだ。こう読めば、作者の人生ばかりではなく誰の人生もまた、日月のめぐりのなかで生起しながら、やがては日月のめぐりに置き去りにされていくという思いにとらわれる。『現代俳句歳時記・秋』(2004・学習研究社)所載。(清水哲男)』(出典元)。解説を読んでも「人生と名月」の関係は・・?。今回は無関係から生まれるかもしれないミラクルMTG(ミーティング)について。

おやつ堂でお出ししている「ひとみさんのキャロットケーキ」です。ある時、ケーキ受け取り時の雑談で「何かやりましょう、ミラクル起こしましょうよ!」の一言で、ミラクルMTG開催が決まりました。
「お世話になっております、おやつ堂河野です。おやつ堂にて「ミラクルミーティング」を開きます。この会は河野がキャロットケーキをお願いしているひとみさんの一言から動き始めました。おやつ堂を舞台に「何ができるか」「何をやりたいか」「ミラクルを起こしましょう!」が狙いです。出席者の職種年齢などは様々です。勝手気ままにご意見をお聞かせください。なおちょっとした晩御飯「パニスボックス」をご用意いたします。」(お誘いの文章)

画像はパニスの投稿より。2/23天皇誕生日にオープンして早くも八ヶ月経ちました。ムシ歯予防カフェ「おやつ堂」は、カフェなのか予防室なのか、はたまた?八ヶ月経って感じることは「ポテンシャル:可能性」は大であるということです。お客さんとの会話は、予防、治療、介護、グルメ、スイーツ、ワイン等々、多岐にわたります。カフェの持つポテンシャルが大きいことは勿論のこと、カフェを舞台に広がることも大きいと感じます。

太宰府「梅園」の宝満山大徳寺納豆入です。おやつ堂開店準備中から「樫舎:かしや」(奈良)、「フロレスタ」(奈良)、「アルパージュ」(東京)、「パニス」(鹿児島)、「梅園:ばいえん」(太宰府)などの店主の方に会っておやつ堂のことを話しました。「美味しいものが歯を守るのです!」・・風が吹けば桶屋が儲かるのような話です。カフェで美味しいものを提供して、お客さんの口から「美味しい」のひと言が出ます。美味しい理由のひとつは「口と歯が健康だからです」と伝えます。美味しいと感じたことで「歯と口への敬意」をアップして頂き、更なる予防へ繋げてもらえれば、というのが狙いです。このように話すと店主の方々皆さん納得してくださいます。冒頭の画像は朝日新聞「折々のことば」です。「人生は、面白くしたものが勝つ」の考えを持ってミラクルを考えます。皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

追加:これも「折々のことば」。最後の方に「菓子は人を救いもする」とあるように、美味しいもの甘いものは人を救い助ける、加えて歯を守ることもできるのです。「BBTime 633 美味しいを守る」「BBTime 429 甘い力」もご参照ください。ではでは、ではまた

BBTime 633 美味しいを守る

「鯛焼のあんこの足らぬ御所の前」大木あまり

2023/10/14投稿
 鹿児島も、やっと秋らしくなって来ました。句の解説『朝夕はだいぶ冷え込むようになってきた。辛党の私でも、ときどき街でホカホカの鯛焼きを食べたい誘惑にかられるときがある。まして、作者は女性だ。旅先の京都で鯛焼きを求めたまではよかったが、意外に「あんこ」が少なかったので、不満が残った。庶民の食べ物とはいえ、さすがにそこは京都御所前の鯛焼き屋である。上品にかまえているナ、という皮肉だろう。それにしても、御所の前に鯛焼き屋があったかなあ。どなたか、ご存じの方、教えてください。ついでに「あんこ」の量についても。無季。『雲の塔』所収。(清水哲男)』(引用元)。久しく鯛焼き食べてませんが、あんこ好きです。前回の「食べるを治す」に続いて、今回は「美味しいを守る」

食べるを治す」に・・歯科医となって四十年近くなろうとしています。恥ずかしながら今頃になって歯科医の仕事は「食べるを治す」ことであると気が付きました(猛省)。ムシ歯の治療も歯周病の治療も入れ歯を作るのも全て「食べる」ためです。木を見て森を見ずでした・・と書きました。このことはムシ歯予防・歯科予防についても同様。ムシ歯にならないように「歯を守る」のではなくて、その方が常にずっと味わえるように「美味しいを守る」ことが歯科医の使命だったのです。「美味しい」を守る・維持するためにムシ歯予防する、歯周病予防するのです。
次の画像は先日(10/12)の朝日新聞コラム「折々のことば」です。

むしろ菓子は悲しみに寄り添うものである。 平野紗季子 
オンラインで菓子の店を開いたら、多くの人から気軽に「幸せ」と言ってもらえて驚いたと、フードエッセイストは言う。文章を書いてもこんなことはなかなかない。ある日、明日入社式があるという女性客は、不安でいっぱいの独りの夜にスイーツで自分をなだめようとしたらしい。それで菓子は人を救いもすると知ったと。随想「お菓子屋の日々」(「新潮」9月号)から。・・10/12朝日新聞折々のことばより

文章読んで溜飲を下げました。
インスタに「おやつ堂新企画について。休みの火水木はおおかた訪問診療に携わっております。その時ふと浮かんだアイディア、おやつの宅配!月に一度、オススメの和菓子もしくはスイーツをお届けし歯磨きがおまけで付きます。お菓子の持つ「甘い力」によって、御本人のみならず介護をする方のストレスも軽減できること請け合い。「おやつの宅配」・・早速来月からスタートします」と投稿しております。美味しいを守るから一歩進んで「美味しいを届ける」。

「食べるを治す」「美味しいを守る」さらに「美味しいを届ける」に精進します。最後に宣伝・・おやつ堂では各地の「美味しい」が味わえます。金土日月の開店で、詳しい営業時間などは「おやつ堂インスタグラム」をご参考になさってください。皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 631 ラジオ出演

「人間に寝る楽しみの夜長かな」青木月斗

2023/09/16投稿
先日(9/9)地元民放ラジオ(MBC)出演でした。句の解説は『秋の「夜長」。ようやく暑い夜の寝苦しさから解放されて、一晩通して眠れるようになった。この時期にこの句を読むと、はらわたに沁み入るようなリアリティを感じる。とくに会社勤めの人たちにとっては、そうだろう。私もサラリーマン時代には、寝る前にひとりでに「寝れば天国」とつぶやいていたものだった。若かったから、むろん寝ない楽しみもあったけれど、くたくたに疲れて眠る前の至福感もまた、格別だった。江戸期の狂歌に「世の中に寝るほど樂はなかりけり浮世の馬鹿は起きて働く」があり、これは昼間も寝ている怠け者の言い草を装っていながら、眠らないで頑張る人たちへの痛烈な風刺になっている。なぜ、そんなに頑張るのか。わずかな蓄財のために、親方に鼻面をひきまわされながらも頑張って、それでお前の一生はいいのかと辛辣だ。当時の私はこの狂歌を机の前に貼り付けて、何もかもぶん投げてしまいたいと切に願っていたが、ついにそういうことにできずに、今日まで来てしまった』(解説より抜粋)。寝る楽しみもさることながら「食べる楽しみ」もあります。ラジオで話した内容を文章化してみました。

「おやつ堂」はどんなお店ですか?
・・おやつ堂には「ムシ歯予防カフェ」が枕詞として付いています。メニューは看板の「ソンナバナナジュース」をはじめ、コーヒー、抹茶、ワインなど飲み物は全て砂糖を含みません、砂糖ゼロです。飲み物以外ではドーナツ、和菓子、チーズなどを常備しております。全て取り寄せで言わばスイーツのセレクトショップです。

「ムシ歯予防カフェを開こうと思ったのは?」
・・1990年に歯科医院を開業しました。開業当初、子供さんのムシ歯を見つけると親御さんを診療室に呼んで「ここがムシ歯です」「甘いものをあまり食べないように」「もう少ししっかり磨くように指導してください」とか真顔で話していました。ある時、小学四年生くらいの男の子だったでしょうか。ムシ歯があったのでお母さんに「もっと磨くようにいてください」と話したところ、お母さんが男の子に「だから言ったじゃない」と。すると男の子は「僕、磨いたもん」お母さん「でもムシ歯ができてるじゃない」男の子「ちゃんと磨いたよ」・・二人は徐々にヒートアップして男の子は泣き顔に・・。はたで見ていて「そうだよね、この子はちゃんと磨いたんだ!けど磨き方が足りなかっただけだ」・・。
そのような経験を踏まえて、2011年に天文館近くにクリーニング専門の「ニコラ歯科」を開業しました。自費診療の歯のクリーニング専門施設です。「歯は、磨いてももらうもの」を掲げてのオープンでしたが、約十ヶ月で閉めざるを得ませんでした。

その後、勤務医として働きながらも、頭の中では「歯を磨けばムシ歯にはならない、予防できる、回避できる!」との考えが渦巻いていました。病気の中で唯一ほぼ完全に予防できる、回避できる病気が「ムシ歯」。かたや巷では「グルメブーム」・・ランチ、ディナーからスイーツに至るまで。年を経るごとに盛り上がります。グルメブーム、美味しいを求める欲望とムシ歯予防を結びつけられないかと悶々する日々でした。
 ある時「あれこれ難しく考えずに、ムシ歯予防とグルメをシンプルに結びつければ良いのでは?」・・この時、ムシ歯予防カフェの誕生です。より美味しく食べるためには、口の中の食器(食具とも言います)が、食器である歯がキレイでなければ味わえません。美味しいと思われた時に、少しでも口の中の食器の大切さ・健康を再認識していただければと思うのです。このような考えのもとに、ムシ歯予防カフェが私にとっての究極の予防歯科スタイルです。

ムシ歯予防カフェと謳っているには根拠があります。ドリンクは砂糖ゼロでもスイーツには砂糖が入っています。心配御無用、希望される方には歯磨きのプロ(歯科医師)が歯磨きチェックをします。また、その人に合った歯磨きのタイミング、歯磨き粉(歯磨きペースト)の選び方、使い方もアドバイスいたします。ドリンク砂糖ゼロだけでは勿論不十分で、プロの歯磨きチェックがあるので「ムシ歯予防カフェ」なんです。

近年の研究で歯周病と認知症の因果関係、ズバリ言うと、認知症の発症のひとつの原因が歯周病であることが明らかになりました(BBTime603「プラーク三種」参照の程)。
「美味しい」の一言が歯を守る。ムシ歯予防は歯周病予防につながり、歯周病予防は認知症予防につながる。「美味しい」の感動が人生を守る、「美味しい」のひと言が人生を味わい尽くす秘訣であると心から思います。

以上がラジオで話した内容です。おやつ堂に是非お越しください。営業日営業時間などはインスタグラムにてお知らせしております。では皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 616 0.5次予防

「春なれや歩け歩けと歩き神」山田みづえ

2023/05/01投稿
葉桜の下を歩け歩けと行きたいところですが、朝晩結構寒い晩春です。句の解説は『春や春。何となく家にとどまっていられない気持ちになって、さしたる目的もないのに、外出することになる。やはり、春だからだろうか(「春なれや」)。しかも、しきりに「歩け歩け」と「歩き神」が促してくるのである。私も、そうだ。これからのほど良く暖かい季節には、休日の原稿書きの仕事がたまっていても、ついつい「歩き神」の命じるままに、少し離れた公園などに足が向いてしまう。帰宅してからしまったと思っても、もう遅い。ところで、この神様はそんなにポピュラーではないと思うが、平安末期の歌謡集『梁塵秘抄』に出てくる。「隣の一子が祀る神は 頭の縮れ髪ます髪額髪 指の先なる拙神(てづつがみ) 足の裏なる歩き神」。隣家の娘をからかった歌と解釈されており、髪はちぢれて手先は不器用、おまけにやたらとそこらをほっつき歩くというのだから、当時の女性としてはひんしゅく者だった。しかし、それもこれもが娘に宿った神様のせいだよと歌っているところに、救いはある。すなわち「歩き神」とは、人間を無目的にほっつき歩かせる神というわけで、決して健康のためにウォーキングを奨励するような真面目な神様ではない。しかも足の裏に宿っているというのだから、取りつかれた人はたまったものではないだろう。足が、勝手に動くのだからだ。このことを踏まえて、もう一度掲句に戻れば、何もかもをこのどうしようもない神様のせいにして、「ま、いいか」と歩いている作者の楽しい心持ちがよく伝わってくる。『木語』所収。(清水哲男)』(引用元)。「歩き神」なる神様がいらっしゃるとは・・。先日「ゼロ次予防」の記事を目にしました。さてゼロ次予防とは・・。

画像はこちらから借用。記事「予防医学の新しいフェーズ「ゼロ次予防」とは 千葉大学が産学で進める健康まちづくり「WACo」」によると・・『疾患の予防については、健康づくり・保健指導などの1次予防、健康診断などの早期発見・早期介入による2次予防、治療・リハビリなどの3次予防があります。最近ではさらに一歩進んで、疾患の原因となる生活習慣に影響を及ぼす社会環境や都市空間や構造などの物理環境から整えようという考え方が広がりつつあります。これが『ゼロ次予防』です。WACoではその名のとおり、暮らしているだけで健康で(Well)活動的(Active)になるコミュニティー(Community)づくりを目指しています』(引用元)。

シンプルに考えるならば、冒頭の句に出てくる「歩き神」も一緒に住んでいる家づくり、街づくり、社会にしようと理解できます。手前味噌ですが記事を読んで「おやつ堂」もこのゼロ次予防に近いのではないかと思いました。ゼロ次と言えないにしても「0.5次予防」にはなるのではないかと。

おやつ堂開店して2ヶ月経ちました。今まで診療室の中で「後手後手治療より先手先手予防」とお経のように唱えていた割には、患者さん(生活者)に寄り添っていなかったんだと痛感します。上の図に当てはめるなら「2.5」くらいの位置にいたのでしょう。2.5から0.5へシフトするには「壁がふたつ」ありますが、精進します!おやつ堂は「3じ」ですが「0.5」目指して美味しい物を探します。目指すは「スイーツセレクトショップ」!ではでは、ではまた御歯愛のほど、今日もおやつ堂ですか。今回の選曲は「歩き神」よりも「春愁」に合わせて・・。

余談:ふと手元を見て合点しました「歩き神」はいらっしゃる!小生の「歩き神」はアップルウオッチ、いつも腕にまとわりついて「歩け歩け」と。さすが神様、針を進めるのみならず歩も進める!

BBTime 613 カフェの力

「散る桜 残る桜も 散る桜」良寛

2023/04/13投稿
今年の花見はいかがでしたか?久しぶりに鹿児島市もここかしこで宴を目にしました。さて掲句、良寛さんの辞世の句とも言われています。『桜は散る。命は散る。必ず散りゆくこの命とは何なのか。人がその人生において本当に考え抜くべき問いを残してこの世を去った良寛の辞世の句に、潔さと美しさを感じるのは、私だけではないはず』(引用元はこちら)。詳しくはこちらをお読みください、深い内容が書いてあります。昨日(4/13)は喫茶店の日でした。引用文にあるように「考え抜くべき」に注目しての喫茶店の力、カフェの力について(カフェのカではなくチカラです)。

4/13は喫茶店の日:その由来は遡ること135年前・・『1888年(明治21年)のこの日、東京・上野(下谷上野西黒門町)に日本初の本格的なコーヒー喫茶店「可否茶館(かひいさかん)」が開店した。・・1階がビリヤード場、2階が喫茶室の2階建ての洋館で、1階ではビリヤードの他、トランプや囲碁、将棋などをすることができた。珈琲(コーヒー)は、明治の文明開化に花を添えるハイカラな飲み物として、特権階級の人々の間で人気があった。・・「可否茶館」での値段は、もりそば1杯1銭の時代にコーヒーが1銭5厘、牛乳入りコーヒーが2銭だった。また、席料が1銭5厘もした。値段が高すぎたこともあり「可否茶館」は、3年もたずに閉店してしまった』(引用元)。

さて世界に目をやると、1888年からさらに遡ること334年、1554年にイスタンブールでカフェは生まれたようです。その後、1652年にロンドンでコーヒーハウスが開店、1684年にパリにカフェがオープンしました。しかも現在よりも社会的価値が深かったようです。コーヒーハウスでは『コーヒーハウスが果たした役割の中でも特に大きなものが、ジャーナリズムの誕生です。この頃から多く誕生していた新聞や雑誌などが、コーヒーハウスに行けば無料で読むことができました。反対に、ジャーナリストはコーヒーハウスに出向いて情報を収集することも多かったようで、コーヒーハウスはまさに最新の情報が行き交う場所だったのです』(引用元)。カフェでは『ただ単にコーヒーを飲むだけではなく、チェスやトランプなどの遊戯を楽しんだりする場や人と出会い、語り、議論する場ともなりました。他にも、音楽や道化芝居などの見せ物を見せるカフェも登場し、豪華なカフェもあれば、安い居酒屋のようなカフェもありました』(引用元)。おそらく客同士「人がその人生において本当に考え抜くべき問い」についても喧々囂々(けんけんごうごう)の議論を戦わせたのでしょう。

画像にあるように4/9付の「ほぼ日」今日のダーリンです。続きます・・

さらに続きます。

「今日のダーリン」からは少々逸れるかも知れせんが、「むずかしいことをやさしく」する力がカフェにはあると思います。セミナーやミーティングにおいて必ずコーヒーブレイクがあります。困難と思われることにおけるブレイク(解決法)のひとつがカフェであると確信します。

天皇誕生日(2/23)に誕生して二ヶ月弱が経とうとしています。ムシ歯予防カフェが、人々の日常生活と歯科診療所の間に立っていると痛感します。今まで「後手後手医療から先手先手予防へ」と言いながらもリアルな行動は診療所内に居て患者さんを待っているだけで「守株待兎:しゅしゅたいと:待ちぼうけ」でした。日常生活への寄り添いは不足していました。

メニューもほぼ揃いました!「ソンナバナナジュース コーヒーとドーナツ ワインとチーズ 抹茶と和菓子 予防に歯磨き 等々」。営業日などはインスタグラムにアップしております。皆様おやつどうですか、ご歯愛のほど。ではでは、ではまた


BBTime 611 加糖菓子

「山笑ふみづうみ笑ひ返しけり」大串 章

2023/04/01投稿
樫舎(かしや・奈良市)の薯蕷饅頭です。まず句の解説から『春爛漫の風景句。たしかキャンディーズに「ほほえみ返し」という歌があったが、これはまたスケールの大きい「ほほえみ返し」だ。トリビアルで巧緻な仕組みの句もよいけれど、このように風景を大づかみにした作品も面白い。なによりも、読者としてはホッとさせられるところが心地よい。何事につけセコセコした世の中で、スケールの大きい句をつくることは非常に難しいと思うが、大串章はそれをいとも簡単な感じで作品化している。無技巧と見えるが、やはり長年技巧の波をかぶってきた作者ならではの境地の表出だろう。素人には、つくれそうでつくれない。プロの腕前と言うべきか。ちなみに「山笑ふ」は「春山淡冶にして笑ふが如く、夏山蒼翠にして滴るが如く、秋山明浄にして粧ふが如く、冬山惨淡として眠るが如し」(臥遊録)から、春の季題となった。『百鳥』(1991)所収。(清水哲男)』(引用元)。前回の「無糖飲料」の次は「加糖菓子がムシ歯予防につながる」というコジツケ理論です(微笑)。

樫舎のきんとん「春霞」。樫舎のご主人はおっしゃいます、「和菓子屋(菓子職人)は素材の味を引き出すだけで、材料に「加水」「加熱」「加糖」するだけ」とのこと。おやつ堂の話をしたところ怪訝そうな顔で「お菓子はムシ歯の原因でしょう?和菓子とムシ歯予防とは相反するのでは?」。和菓子屋さんのみならず、洋菓子屋さんやパン屋さんも同じ反応です。確かに砂糖はムシ歯の原因です。しかし、今の食生活から砂糖をゼロにすることは不可能です。もっと言うなら「歯は、ムシ歯にしないためにあるのではなく、味わうためにあるのです」。大袈裟かも知れませんが「美味しい」は喜びの半分以上を占めるのではないでしょうか。

哲心(てっしん・宮崎市)のフィナンシェ。ひと口目で上品さを感じ、ふた口目で質の良さを感じ、食べ終えた後は舌が余韻を楽しんでいます。添えてある紙に「なんでもない日を口福に」とあります。これなんです!口福を感じた時に「歯や口が有るから美味しいんだ」と思って欲しいのです。

美味しい菓子を食べる→口福を感じる→歯や口の健康に感謝する→予防に思いを馳せる→予防の実践。風が吹けば桶屋が・・のような理論展開ですが、これこそ真理ではないかと思います。

丸一(とんかつ・鹿児島市)店内に掲げてあります。和菓子でもとんかつでも蕎麦でも洋菓子でも「美味しい!」と舌鼓を打った時に、ほんの少しでいいですから歯や口に感謝して頂き、予防に思いを馳せてくださると嬉しく思います。ではでは皆様、ご歯愛の程、今日もおやつどう(堂)ですか?

https://youtu.be/uvBatbOfuHU

BBTime 609 ドーナツの穴

「そんなことよく思ひつく春の水」岡田史乃

2023/03/23投稿
先月、天皇誕生日に誕生して1ヶ月経ちました。その間、飲み物はそんなバナナジュース、コーヒー、抹茶と増え、来月四月からワイン提供開始です。おやつは順次提供しておりますが、常時並ぶスイーツ(定番スイーツ)第1号として近々ドーナツが登場します。ドーナツの前に句の解説を!『さて、「そんなこと」とは、どんなことなのか。「そんなこと」は、書いてないのでわからない。 わかることは、「そんなこと」が「そんな馬鹿なこと、どうでもよいこと」に近い中身であろうということだけ。もしも「そんなこと」が、心より賛嘆すべき内容を持っていたとしたら、「春の水」と照応させたりはしないはずだ。水温む候、作者の機嫌はすこぶるよろしく、「そんなこと」にも立腹せずに微笑して応えている。また、あなたの馬鹿話がはじまった。それにしても、次から次へと、よく「そんなこと」を思いつく人であることよ。わずらわしい時もあるけれど、今日はむしろ楽しい感じだ。目の前には、豊かな春の日差しを受けてキラキラと輝く水が流れている。全て世は事もなし。束の間ではあるかもしれないが、至福の時なのだ。』(解説より抜粋)。さて、ドーナツの歴史・由来はドーナッてるの?

その名もズバリ、本「おやつ」のトップバッターが村上春樹氏の「ドーナッツ」。以下引用『ところでドーナッツの穴はいつ誰が発明したかご存じですか? 知らないでしょう。僕は知っています。ドーナッツの穴が初めて世界に登場したのは1847年のことで、場所はアメリカのメイン州のキャムデンという小さな町。とあるベイカリーで、ハンソン・グレゴリーという15際の少年が見習いとして働いていました。』(文庫本より引用)。読んでいくと『ちゃんとした本に載っていたから本当の話みたいだ。』とあります。ネット検索すると諸説あるようですが、小生はこのハンソン君説を信じます。そんなことならぬ、スゴイことを思い付いてくれたハンソン君に拍手喝采!!

ちなみにドーナッツとは文字通りドウ+ナッツ。ドウ(dough:ドー)とは生地(きじ)、ナッツは木の実(nuts:ナッツ、くるみ)。こちらをご参照の程。おやつ堂のドーナツは、奈良市のフロレスタのドーナツです。詳しくは動画を見て頂いた方が良いと思います(スクロールにてご覧できます)。おやつ堂に近々登場する、フロレスタのネイチャーを、是非ご賞味ください。

これもドーナツに似ていますが、歯間ブラシです。クラプロックスの歯間ブラシ、おすすめです。では皆さま、ご歯愛の程、今日もおやつどう(堂)ですか?