「六月」茨木のり子

「六月」茨木のり子
どこかに美しい村はないか
一日の仕事の終りには一杯の黒麦酒(ビール)
鍬を立てかけ 籠を置き
男も女も大きなジョッキをかたむける

どこかに美しい村はないか
食べられる実をつけた街路樹が
どこまでも続き すみれいろした夕暮は
若者のやさしいさざめきで満ち満ちる

どこかに美しい人と人との力はないか
同じ時代をともに生きる
したしさとおかしさとそうして怒りが
鋭い力となって たちあらわれる

*今朝(8/22)の天声人語に載ってます。

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