治療率:筋違い
「治療率アップ」という言葉を耳にすることがあります。
新学期が始まると、子供たちは歯科検診を受けます
検診終了後、結果が父兄に通知されます。
呼び名はそれぞれですが「治療勧告書」のような紙が渡されます。
治療が必要である、にマルが付いていると
「早く歯科診療所に行って治療を受けなさい」の意味で、
治療が終ったら「治療が終了しました」にチェックをしてもらい
その紙を担任か保健室に提出しなさい、というのが大方の流れです。
数年前の話で恐縮ですが、
会(歯科医師会)で治療率の高い学校を表彰しようというような話が出ました。
さすがにそれは違うと思い、反対意見を述べたことがあります。
治療率が高いと言うことは
ムシ歯という病気の意味を子供たち本人や父兄に理解してもらい
早めに病気を治す。
治療の必要な生徒が10人いて、
10人ともに治療終了したら治療率100%という計算となります。
もちろんこれは筋が通っていて必要なことです。
しかし、高い治療率を歯科医師が評価することは少々ずれていると思うのです。
要治療(治療が必要にマルが付いている)ということは、ムシ歯予防失敗の結果です。歯科医師として、校医として、ムシ歯の発生が低い学校を表彰するなら理解できます。
思うに、治療率が高いと言うことは、現場(最前線)においては、
いかに保健室の先生や担任の先生が、生徒や父兄に対して、治療に行って下さいと
(表現は不適切ですが)おしりを叩いたかと言うことの結果です。
と、小生は理解します。
治療に行っていない理由や価値基準は様々です
時間がない、お金を使いたくない、診療所に連れて行けない、
本人が行きたくない、行く必要を感じていない等等
治療率の高さを評価するくらいなら
もっと根本的に、新規ムシ歯発生率を押さえるほうに
子供を取り巻く大人たちは時間とお金とエネルギーを使うべきだと思います。
なぜなら、ムシ歯はまわりの大人がその気になればほぼ完全に予防できるからです。
ところが、今の日本のシステムや習慣のままでは、いつまで経っても
ムシ歯の治療率を高めましょうと言うしかないでしょう。
法で決められた検診を受けて、その結果で必要であれば治療に行く。
同じ生徒が毎年のように要治療であったとしましょう
毎年発症する病気があるとすれば、それは治っていないと等しいと思います。
予防可能な病気に、毎年のようにかかるというのは不可解です
自問自答します
「ムシ歯予防は可能なのか?」
何度、自問自答しても小生の答えは
「可能」です。
そろそろ、治療率の高さではなく
発生率の低さを評価しようではありませんか!
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