BBTime 132 ファスト is ファースト?
「はたらいてもう昼が来て薄暑かな」能村登四郎
鹿児島は梅雨入りしましたが、今年の梅雨はツユ知らず、カラ梅雨でしょうか。さて、前回のアップから早いもので二週間が経ちました・・ツユ知らず(嘘です)。句の解説に「よほど体調がよいのだろう。仕事に集中できているから、あっという間に時間が経ってしまう。ふと空腹を覚えて時計を見ると、もう昼時である」とあります、同感。学童の頃、授業は長いのに遠足はアッという間に終わっていました。タイトルの「ファスト=fast、すぐに、速く」と「ファースト=first、最初の、重要な」は別単語で別の意味ですが混同されることがあります。正しくはファストフード fastfood であり、ファーストフード firstfood ではありません。かつて流行る定食屋が「うまい・安い・はやい」でした。この「はやい」のファストです。平成のファストフードは「はやい・高くない・まずくない」で「美味い・安い・はやい」はコンビニフーズでしょうか。ファストは品物(料理)を手にするまでがはやい、すなわち調理時間が短い、食事時間が短い、店の滞在時間が短い、手軽であるという意味でしょう。
色々なものがファスト化しています。ユニクロ・GUに代表されるファストファッションしかり。ファスト風土化という言葉も目にします。善し悪しはともかく、人々に支持される、人々の流れに添うスタイルを考慮することは必要です。近頃思うことが「歯科治療のファスト化」です。夜の診療(8時、9時まで受付とか)、土日診療に携わっていて、つくづく人々(患者さん)の要望のファスト化(コンビニ化)を感じます。言わば日常生活における「歯科治療の位置の低下」です。生活においての優先順位の低下を感じます。ファスト化が支持される理由を「手軽さ」と理解するならば、決して悪いことではありません。男女を問わず会社員の方にウイークディの昼間9時から5時の間に「休みを取って歯科治療に来てください」とは無理な話です。以前は「休みを取って来るべきだ」と思っておりました「自分の体なんだから」「治療が最優先されるべきだ」と。時が流れ自身も歳を重ね、今ではファスト化対応を考慮すべきと思います。
ウイークディの昼間に仕事を休めない、土日しかオフがない、仕事の終了は夜8時過ぎる・・この勤勉な仕事人はいつ歯医者に行くのか?昔、ジムに通っていた時のこと。年末年始はともかく、盆休みにそのジムも同じく盆休みでした。人(ジムの客)が休みの時にジムに行けないじゃんと思い脱会しました。今では年中無休24時間営業のジムが受けていると聞きます、鹿児島にも登場しました。一方でライザップが受けているのも事実です。世の中の二極化が進むにつれて、人々はさらに二極化していきます。「高価格・高品質・高デザイン」のブランドファッションが売上をそれなりに伸ばす一方で「納得価格・納得品質・納得デザイン」のファストファッション・イケア・百均が支持されるのも納得です。また二極化が進む中で対極を融合させるような新スタイル(商品)が出て来て話題となっています。「俺のイタリアン」「いきなり!ステーキ」などでしょうか。
歯科医療のひとつの分け方に「歯科治療」と「歯科予防」があります。思うに「お手軽予防」と「きちんと治療」がベストでしょう。歯科予防・メンテナンスをもっとファスト化する。いつでも手軽に高くない料金で予防処置・メンテナンスが受けられる(日本の医療保険は「疾病保険」ですので原則歯科予防は自費診療となります)。一方で不幸にも歯や口のトラブルが生じた人に対しては「きちんと治療」が受けやすい環境整備、例えばプレミアムフライデーのような早い時刻の退社、たっぷり二時間の昼休みなどの職場環境の整備。口の健康・トラブルなしが仕事の能率アップ、会社の発展につながるという認識の共有。歯科診療所において(増えては来ていますが)さらなる土日診療の拡充。イメージとしては「お手軽予防」をコンビニで受け、「きちんと治療」をデパートで受ける。
以前は「デンタルIQ:デンタルアイキュウ」という言葉を歯科従事者は使っていました。平日昼間に歯科治療に来る人すなわち歯科に高い意識を持つ=デンタルIQが高い、来れない人・来ない人=デンタルIQが低い、というような使い方です。考えてみれば患者さんや来院者に対して失礼な話です。美術館や博物館が土日オープンなのはひとりでも多くの人に観て欲しいと思うからでしょう。市役所なども土日対応サービスを広げています。歯科には歯科なりの努力がまだまだ必要だと思いますがね・・。1928年に「ムシ歯予防デー」を実施してから約90年、未だムシ歯が無くなっていないのは歯科従事者の努力不足です。なぜならムシ歯はほぼ完全に予防できるのですから。
今回、ファストの曲を探しましたがイマイチでしたのでショート(短い)の曲をご紹介、タモリ倶楽部のあの曲です。3350