BBTime 306 歯牙接触癖
「或日あり或日ありつつ春を待つ」後藤夜半
ちらほらと梅の開花を耳にするようになりました。明日から二月如月、平成も残り三ヶ月!句の解説には「夜半、晩年の一句。うっかりすると読み過ごしてしまうほどに地味だが、鋭い感性がなければできない句だ。「或日(あるひ)」とは、特筆すべき出来事など何もないような平凡な日の意だろう。「或日」のリフレインは、そうした日々を重ねている時間についての写生である。句の面白さは、そんな平々凡々としか言いようのない時間を過ごしているなかで、しかし、いつしか「春待つ」心が芽生えていることの不思議に気がついたところだ。「春よ、来い」などと大仰に歌っているわけではなくて、自分の心のなかに自然に春を待つ感情が湧いてきている。そのことに気づいたときの、じわりと滲み出てくるような嬉しさ。それがそのまま、読者の「春待つ」心に染み入ってくる。月並みな比喩で恐縮だが、燻し銀の魅力を思わせる句だ。」解説より引用。句のような或る日或る日の所作(行為)が引き起こす奥歯の痛みについてのお話。
タイトルの「歯牙接触癖:しがせっしょくへき:TCH」Tooth Contacting Habit 略して「TCH:ティーシーエイチ」と呼ばれます。先日も40代女性「噛むと奥歯が痛い」、30代女性「奥歯の歯茎がジンジンする」と来院されました。レントゲン撮ってみましたが特に問題はなさそう、ただし奥歯の噛み合わせの面(咬合面:こうごうめん)が、かなりすり減っています。「家族の方から就寝中の歯ぎしりを言われたことはないですか?」『ありません』「現在、スポーツは?」『特にやってません』とのこと。このような時に疑われるのが「TCH:歯牙接触癖」。夜間(就寝中)の歯ぎしり・食いしばりと異なり、昼間(覚醒中・起きている時)のご自身が気がつかない(意識していない)「歯ぎしり・食いしばり」です。
安静空隙(あんせいくうげき・安静位空隙)という歯科用語があります。「上体を起こして、顎の力を抜いて安静にしているときの下の顎の位置を下顎安静位といいます。この状態で上の歯と下の歯の間にできる数mmの隙間のことです」出典はこちら。簡単にいうとTCHとは日中この安静空隙がない状態、すなわち常に上と下の歯が接触・噛んでいる状態のことです。いつも噛んでいることが「歯の痛み・頭痛・肩こり・不定愁訴(ふていしゅうそ)など」を引き起こすので厄介です。歯科医院に行っても「ムシ歯はありません」「問題はないです」の診断で、日中覚醒時のご本人の「知らず知らず」の所作ですので、余計に原因不明となりやすいのです。
画像のように「舌に凸凹(歯型)がある」「ほっぺたの内側に白い線がある」などもTCHの可能性があります。①運転中 ②裁縫など細かい作業 ③パソコン作業 ④料理になどで「歯牙接触癖」が起きやすいと言われます。詳しくはこちらもどうぞ。では具体的に「TCH」をなくすにはどうするか?実は人は一日の中(24時間中)で会話や食事によって上の歯と下の歯が接触する時間は平均18分と言われます。「本来、上下歯列の接触は、咀嚼、嚥下、会話時に瞬間的に起こるということはご存じのことですが、これらは瞬間的な接触ですから、接触時間を加えていったとしても、24時間中20分程度しか接触していない、と報告されています。しかし、癖としてこの接触を、本来の機能時以外にも続けている患者さんがいます」出典はこちら。ご本人の知らず知らずの癖として「継続的に無意識に噛んでいること」が問題なんです。
先日のサッカーアジアカップの動画を観ていたら何人かの選手がガムを噛んでいました。またMLBの大谷選手もプレー中に結構ガムを噛んでいます。ガムを噛むことには様々なプラス効果があると言われますが、おそらくTCH治療にも効果ありでしょう。フリスクやミンティアを口に入れておくのも良いでしょう。嘘のような本当の治療法が「付箋紙」。付箋紙に「噛まない」「噛み締めない」と書いてしょっちゅう目にするところに貼るという方法です。パソコン画面のふち、冷蔵庫の扉、トイレのドアなどに貼って置きます(詳しくはこちら)。
奥歯の痛みや違和感で歯医者に行っても原因不明の場合、この「TCH」を疑ってみるのも一法(いっぽう)です。7730
https://youtu.be/PH8FXXQ-7lU
https://youtu.be/XLpDiIVX0Wo
同じような内容の記事を見つけましたのでご参照ください。「歯ぎしり・かみ締めの癖にご注意を 抜歯、10年で倍に」朝日新聞2/3記事より。