BBTime 475 不可逆

BBTime 475 不可逆:ふかぎゃく
「がつくりと抜け初むる歯や秋の風」杉山杉風

画像は八月末日の桜島。「初むる」はソムル「杉風」はサンプウと読みます。句の解説は『江戸の大きな魚屋で、芭蕉の門人。芭蕉の経済的後援者だったことは有名。深川の芭蕉庵も彼の下屋敷だった。右(上)の句は『猿蓑』にのるが、初案は「がつくりと身の秋や歯の抜けし跡」として、芭蕉あて書簡に出る。これだと詠嘆が勝ちすぎて、句は集中度に欠ける。改案にはおそらく芭蕉の手が入っているのだろう。近年「がっくり」の語がはなはだしく流行するが、この句あたり、最も早い時期の文学的用例かもしれない。語感を鋭くとらえている』(新編折々のうた 大岡信より)。初案改案を読むに、この「抜け初むる」は乳歯が抜けたのではなく、永久歯が歯周病(歯槽膿漏)によって抜けたのでしょう。作者は抜けた歯を手に「人生の秋」・・おそらく晩秋を感じたのかもしれません・・今回は可逆不可逆についてのお話。

不可逆を辞書で引くと「ある化学変化が生じた状態を元に戻すような変化を起こすことが不可能なこと」。つまり「元に戻せないこと」です。歯科における「不可逆」の最たるものが「ムシ歯」で、過去にも書いてますが「ムシ歯の治療」は失った歯質(歯の部分)を人工的材料で置き替えたに過ぎません。歯周病もほぼ同等で、炎症によって失った歯槽骨(歯を支える骨)を元のように戻すことはできません。よって作者は「抜け初むる」となったのです。

かたや「可逆」は?極めて初期のムシ歯であり、初期歯周病の「歯肉炎」です。この段階であれば「実質的欠損(実際の損失)」はほとんど生じていませんから、まだ元に戻すことが可能です。数日でムシ歯になるわけではありません、歯磨きしなかったからすぐに歯肉炎になるわけではありません。歯科臨床の経験的では、週に一度ほぼ完璧に磨ければ元に戻せます。しかし残念ながら御本人では完璧磨きは無理ですので、日々数回磨きましょうとなるのです。

歯科医としての希望は「月一回」の専門家(歯科衛生士・歯科医師)による歯のクリーニングです。月一回の頻度は、これまた残念ながら現時点で「保険適用外」です。今回、台風十号通過後に「事前報道ほど激しくなかった」との声をちらほら聞きますが、無事が何よりです。JRの計画運休、コンビニ閉店、鹿児島離島の島外避難等々、表現は不適切ですが「ハズレ」が良いのです。歯科予防も同様、月一回お会いして「問題なしです、無事です」が一番・・と日々思います。ご自愛の程ご歯愛の程。1790

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