BBTime 552 磨く

「明け方の夢でもの食う寒さかな」辻貨物船

大方、夢の中では食べる寸前に目が覚めます。句の食べ物は何だったのでしょうか。解説には『寒い日の明け方、意識は少し覚醒しかけていて、もう起きなければと思いつつ、しかしまだ蒲団をかぶっていたい。そのうちにまた少しトロトロと眠りに引き込まれ、空腹を覚えてきたのか、夢の中で何かを食べているというのである。誰もが思い当たる冬の朝まだきの一齣(ひとこま)だ。まことに極楽、しかしこの極楽状態は長くはつづかない。ほんの束の間だからこそ、句に哀れが滲む。いとおしいような人間存在が、理屈抜きに匂ってくる。物を食べる夢といえば、子供のころには日常的な飢えもあって、かなりよく見た。でも、せっかくのご馳走を前にして、やれ嬉しやと食べようとしたところで、必ず目が覚めた。なんだ夢かと、いつも落胆した。だから大人になっても夢では食べられないと思っていたのだが、あれは何歳くらいのときだったろうか。なんと、夢で何かがちゃんと食べられたのだった。何を食べたのかは起きてすぐに忘れたけれど、そのもの本来の味もきちんとあった。それもいまは夢の中だという自覚があって、しかも食べられたのである。感動したというよりも、びっくりしてしまった』(解説より抜粋)。今回は「磨く」についてのお話。

朝日新聞「折々のことば」です。
『磨くということは、何かと何かを擦り合わせること。擦り合わせないと磨かれない。関口怜子    
 物は他の物と何度もこすれ合うことでぴかぴかしてくる。人も同じ。自分とは異質な人、理解しにくい人、話がうまく通じない人との摩擦をくり返し体験する中で人として艶(つや)やかになってゆくと、仙台を拠点に長く子どものためのアート・ワークショップを展開してきたハート&アート空間ビーアイの代表は語る。そんな遭遇を希(のぞ)むなら自分のほうから出かけていかなくちゃと。』

この文章を読みながら溜飲を下げると同時に「歯磨き」における「他の物」とは何だろうと考えました。単純には「歯と歯ブラシ」でしょうけど、「人も同じ。自分とは異質な人、理解しにくい人、話がうまく通じない人との摩擦をくり返し体験する中で人として艶(つや)やかになってゆく」を踏まえれば「歯」と「歯ブラシ」とは考えられません・・ここでの「磨く」とは、まさに切磋琢磨。

歯磨きにおける「ものと他のもの」とは「歯と歯ブラシ」ではなく「歯の汚れと気持ち」だと考えます。「キレイを保ちたい」「健康でいたい」「美味しく食べたい」等々。「汚れ」とはズバリ「食べること」であり「生きる」ことに他ならないのです。歯を使わずに生きることはできません、食べることで当然歯は汚れます。その汚れを落とすことが「歯磨き」なのです。こう考えると歯磨きとは、「日々の生活」vs「生き方」もしくは「生き様」vs「人生哲学」・・歯をキレイにしている人はキチンと生きている人だと思います。では皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。

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