BBTime 266 アマルガム
「水銀の玉散らばりし夜の秋」佐藤郁良
先日(8/16)NHKラジオ「今日は何の日」が「水俣条約発効丸一年」を伝えていました。水俣条約とは「水銀および水銀を使用した製品の製造と輸出入を規制する国際条約」(ウイキペディアより)。子供の頃、句の解説に「体温計をうっかり割って、水銀が一面に散らばってしまうというのだから、その様子はたいへん危険なものだ。水銀が有毒であることは充分理解しつつも、その玉の美しさ、おそるおそる爪先で寄せればひとつひとつがふつりとくっつき合う様子は不思議な魅力に満ちている」とあるように、溢れた水銀を不思議だなあと眺めた記憶があります。
今回は皆様の口の中に入っている可能性のある金属についてのお話。まずは「水銀」・・アマルガムとして詰めてあります。水銀と銀・すずの粉末を練りあわせて使用されました。現在では保険診療から無くなっています。以前は「廉価である」「他に適切な材料がない」などの理由で多用されました。鏡で見ると銀色というより鈍い銀色もしくは黒っぽい光沢のない詰め物です。多くは奥歯の噛み合わせの面に使用しますが、上の前歯の裏側(ノド側)に詰めることもあります。「BBTime167みずがね」も御参照のほど。
次は金・ゴールドを12%含む「金銀パラジウム合金」。保険診療がカバーする貴金属で金:12% 銀:50% 銅など:18% パラジウム:20%の成分です。口の中に見受けられる割と光る銀色の金属がこれです。パラジウムは幾つかの理由で配合されていますが、このパラジウムが高騰してきています。原因は「自動車の排気ガス浄化用の触媒(三元触媒)」としての需要が高まっているためです。ちなみに1グラム当たりの値段はおおよそ、金4500円・パラジウム3400円・プラチナ3000円・銀55円です。パラジウムの高騰が追い風となり昨年12月からは下顎第一大臼歯(6歳臼歯・6番目の歯)も樹脂の白い歯が保険適用となりました。
もうひとつあげるなら「コバルトクロム合金」でしょうか。部分床義歯(部分入れ歯)に使用されます。最近「コバルト」について気になるニュースを目にしました。「アップルはなぜアフリカのコバルトを買い占めるのか?」記事はこちら。「アップル、コバルト鉱山丸抱え 電池需要急増で自動車業界も食指 」記事はこちら。パラジウム同様近い将来コバルトも高騰するのでしょうか?
水銀を材料としているアマルガムは早目の除去をお勧めします。金銀パラジウム合金の詰め物(インレー)や冠(クラウン)をやり変える場合にも、やはり樹脂をお勧めします。白い色のみならず、歯につける際の合着・接着においても樹脂の方に軍配が上がりますので。
connote:カノートをお読みの方はお分かりでしょう、金よりもプラチナよりパラジウムよりも価値あるものは「天然の白」です。掲句の「夜の秋」とは「夏の夜にどことなく秋めいた感じを受けること」とのこと。予防が一番!ご自愛のほど。1961