BBTime 364 キス忘れ

BBTime 364 キス忘れ
「山椒魚あらゆる友を忘れたり」和田吾朗

「キス」と「忘れる」にちなんだ名曲「べサメ・ムーチョ」と「アンフォゲッタブル」についてのお話。まずは「キス」から・・先日ネットで次の記事を見つけました。『一度のキスで交換される細菌数はどれくらい?! キスをしている間に、8000万個もの細菌が交換されるって知っていた?』・・このタイトルを目にすると、エッ本当?あらヤだ!と思う方もいらっしゃるでしょうけど、さほど心配はいりません、ご安心ください。記事によると(以下引用)。

『この研究の発端は、「数多く存在する動物の中で、どうして人間だけが唯一、唇や舌のスキンシップをするのか」という疑問に対し、研究者たちが好奇心を抱いたことがきっかけだという。それには、カップル同士が唾液を交換しあうことで、お互いの相性を判断するのに役立つと言われている説もあれば、お互いの細菌を交換しあうことで、免疫力が高まるからだという説もある。  このような説があるにもかかわらず、キスによって口内の細菌がどのように交換されるのかを調査した研究は、過去に一つも存在しなかったという。そんなわけで、今回この研究を行った研究者たちが、21組のカップルのキスをモニターした結果、10秒間のディープキスにより、8000万個もの細菌が交換されることが判明したよう。さらには、キスをすればするほど、カップル同士の舌の上に生息する細菌が類似していることも発覚したそう。』記事より。

そもそも口の中の菌数はそれはそれは多く「歯垢1ミリグラム中に数億もの細菌がいます。全身の中でも、口腔内の細菌数は非常に多く、便と同じくらいのレベルといわれています」(引用元はこちら)。このように億単位の細菌がいつも棲んでいるのが口の中です。また細菌=バイキンではありません。善玉菌もいれば悪玉菌もいます。紹介した記事も『でも、キスによって交換される口腔内の大量な細菌に関して、研究者は何も結論付けていないとか』のようです。要は「口の中を清潔に保つ」すなわち「きちんと歯を磨きましょう」です。安心して「べサメ・ムーチョ」!もっとキスして!

この女性Consuelo Velázquez:コンスエロ・ベラスケスが、約80年前1940年に発表し世界的大ヒットとなった『ベサメ・ムーチョ』(Bésame mucho)の作曲者です。Wikipediaには「彼女はこの曲を、16歳の誕生日前に作った。ベラスケス自身によれば、この曲を書いた時点で彼女はまだキスを未経験で、キスとは罪深いもののように思えたという」とあります。ただし生年が1920年ではなく1916年だという説も。いずれにせよ二十歳前後でこの曲を世に出しました。歌詞和訳は『BÉSAME MUCHO キスして、いっぱいキスして まるで今夜が最後のつもりで キスして、いっぱいキスして だってあなたを失うのが恐いの いつかあなたを失うことが。(リピート)私はあなたの近くにいたいの あなたの目の奥深くのあなたを見るため あなたがとても近くにいることを確かめたくて 多分、明日には 私は遠くにいることと思うわ とてもあなたから遠くに。キスして、いっぱいキスして まるで今夜が最後のつもりで キスして、いっぱいキスして だってあなたを失うのが恐いの いつかあなたを失うことが。だってあなたを失うのが恐いの いつかあなたを失うことが。』(引用元はこちら)。

もうひとつ「Unforgettable:忘れられない」。先日も定期検診で来院の方が「日頃使ってますけど、今日は忘れました」と義歯忘れ。また「銀歯が取れたんですけど・・」外れたモノは自宅に忘れ。お願いです、日常使用の義歯は必ず持ってきてください(口の中にいれて来て下さい)。外れたモノは、金属でも白いものでも割れたものでもカケラでも可能な限り持って来て下さい。たまに「外れた金属は黒くなっていたから捨てた」とおっしゃる方も・・勿体無いですよ。保険内の金属「12%金銀パラジウム合金」は名の通り「金パラ製品の組成・成分としては、金12%、パラジウム20%、とJIS規格(JIS適合品)で定められており、銀50%前後、銅20%前後、その他インジウムなど数%が含まれています。 メーカーによって多少の成分バランス・液相点・硬度など異なりますが、金とパラジウムの含有率に関しては、どちらのメーカーでも同一規格となります」(出典はこちら)のように約8割が貴金属です。捨てるのは勿体無い!

「忘れられない」で忘れちゃいけない人がこの人、Nat King Cole:ナット・キング・コールで、もちろん「Unforgettable:アンフォゲッタブル」。しっかり歯磨きと外れたモノは、お忘れなく!6050




最後に「山椒魚」について。句の解説にも『山椒魚と聞けば、井伏鱒二の短編を思い出す。近所の井の頭自然文化園別館に飼育されているので、たまに見に行くが、いつも井伏の作品を反芻させられてしまう。この国では、本物の山椒魚よりも、井伏作品中のそれのほうがポピュラーなのかもしれない。この句を読んだ時にも、当然のように思い出した。作者にしても、おそらく井伏作品が念頭にあっての詠みだろう。文学、恐るべし。谷川にできた岩屋を棲家としている山椒魚は、ある日突然、その岩屋の出口から外に出ることができなくなるほど大きくなってしまっていることに気づく。大きくなった頭が、岩屋の出口につっかえてしまうのである。孤独地獄のはじまりだ。そこでついには、岩屋の中に入り込んできた蛙を自分と同じ境遇にしてしまえと考えて、閉じ込めてしまう。彼らのその後の運命については、書かれていないのでわからない。しかし、たぶんその蛙は先に死んでしまい、その後の山椒魚は孤独の果てに、ついには世俗へのあらゆる関心を失って行く。ただ、ぼおっとしていて、ほとんど身じろぎすらもしない存在と化してしまう。そのことを「あらゆる友を忘れたり」と一言で表現した作者の想像力は深くて重い。なんという哀しい言葉だろうか。今度山椒魚を見る時には、私はきっとこの句を思い出すにちがいない。』(引用元)。

山椒魚は悲しんだ。 彼は彼の棲家(すみか)である岩屋の外に出てみようとしたのであるが、頭が出口につかえて外に出ることはできなかったのである。今はもはや、彼にとっては永遠の棲家である岩屋は、出入り口のところがそんなに狭かった。そして、ほの暗かった。強いて出て行こうとこころみると、彼の頭は出入り口を塞(ふさ)ぐコロップの栓となるにすぎなくて、それはまる二年の間に彼の体が発育した証拠にこそなったが、彼を狼狽(ろうばい)させ且つ悲しませるには十分であったのだ。 「なんたる失策であることか!」 彼は岩屋のなかを許されるかぎり広く泳ぎまわってみようとした。人々は思いぞ屈せし場合、部屋のなかをしばしばこんな具合に歩きまわるものである。』引用元はこちら。6050

BBTime 340 乳と薬

BBTime 340 乳と薬
「枇杷熟れてまだあたたかき山羊の乳」三好万美

山羊乳を飲んだ経験はありませんが、山羊チーズは好きです。先日「授乳中の服薬、諦めないで・・薬の成分、母乳への移行は微量」の記事を見つけました。読売新聞記事「授乳中の服薬、諦めないで…薬の成分、母乳への移行は微量」で、以下引用『国立成育医療研究センター(東京)にある「妊娠と薬情報センター」の肥沼(こいぬま)幸さんは「多くの薬が授乳中も安全に使用できると考えられている」と話す。薬の成分は母乳に移行するが、多くの薬は移行量がごくわずかで、赤ちゃんの健康に影響する可能性は極めて低いという。同センターのウェブサイトでは、安全と考えられる薬の一覧を掲載。「特に慢性疾患のある場合、母親の体調を安定させることは赤ちゃんのためにも重要。一過性の症状でもつらいときには、服用を選択肢の一つとして考えて」と肥沼さん。ただし、自己判断ではなく、医師や薬剤師に相談するよう呼び掛けている。』(記事より)。

山羊のチーズ、サントモールです。安全と考えられる薬一覧はこちらです。歯科で処方する抗生物質(抗菌薬)や痛み止めのほとんどが含まれます。「痛みが出る前に」とか「不安だから」などの理由で服用することは感心しませんが、必要な時には飲んでも大丈夫と言えます。歯科で授乳中の方に気を使うのがもうひとつ「麻酔薬」です。結論から言いますと「歯科麻酔」も問題なしです。記事の後半では食事についても触れてあります。『特定の食べ物を避ける必要はなく、バランスの良い食事を心がけることが大切だ。十分な水分摂取も必要で、できれば体を冷やす冷たい飲み物より、温かいものが望ましい。大井さんは「栄養価の高い具だくさんの汁物や鍋などがお薦め」とする。アルコールは避けたいが、コーヒーなどカフェインを含む飲み物は1日2、3杯なら問題なく、「好きなものでほっと一息つく時間も大事にしてほしい」と話している』(記事より)。

書きながら思い出しました・・「牛は水を飲んで乳とし、蛇は水を飲んで毒とす」出典はわかりませんが、ある講演で耳にしました。少々話は飛びますが、ある講演で次のようなことも聞きました。「牛乳を飲んで吐く子供さんは、牛乳に対する急性中毒症状として吐くのです。もしそのお子さんが吐かずに飲めるようになったとしても、それは急性中毒が慢性中毒になっただけのことです」とのこと。牛乳のみならず体や心が受け付けない(吐く)ものを無理強いすることはいかがなものでしょうか。

必要な時、緊急な時は別として、やはり予防に勝る治療なしです。歯科の多くの疾患は回避可能です。日々のケア・予防を!2980

BBTime 339 しみる!

BBTime 339 しみる!
「くちびるに夏欲しければ新茶飲む」小迫倫子

解説を読むと意外にもお茶は「飲む」ではなく・・『載せようか、載せまいか。何日か思い悩む句がある。偉そうにしているわけではないけれど、私なりの評価が定まらないからだ。この句も、そのひとつ。若々しく新しい感覚ではある。だが、どこか私にはいぶかしい。それは「新茶飲む」という表現のせいだ。これまでの句では、茶は「汲む」ものであり「喫する」ものでありと、「飲む」というストレートな言い方はゼロに近かった。茶には「飲む」だけでは伝わらない風合いがあるので、多くの俳人はあえて婉曲的な表現を選んできたのだろう。そんななかで、作者はずばり「飲む」と詠んでいる。ミルクやジュースと同じ「飲み方」をしている。そういうふうに読める。おそらくは、このあたりの表現法が今後の俳句の大問題になるはずで、当サイトの読者はどうお考えになるだろうか。「喫茶」という言葉が持つ色気を追放したときに、どんな新しい風が吹いてくるのか。私にも、大いに興味がある。その意味で、この作品は重要だと考え紹介することにした』とのことです(引用元)。

八十八夜(5/2)が過ぎて十日しか経たぬのに早くも真夏日のニュースを耳にします。これから冷たいお茶を飲まれる機会も増えるでしょう。さて「歯がしみる」という主訴(主なる訴え・一番の困り事)で来院される方がいらっしゃいます。そこで「歯がしみる」についてのお話。次の画像は中村藤吉本店の生茶ゼリイ・・大好きです。宇治本店で「生茶の意味は?」と尋ねたら「イメージです」とのことでした。

冷茶のみならず冷たい飲み物・食べ物で「歯がしみる」は不愉快なものです。冷たいものや甘いもので「歯が痛い」はムシ歯がその主なる原因ですが、痛みではなく「歯がしみる」場合はくさび状欠損が原因のことが多く、知覚過敏で歯がしみることもあります。時に「歯磨きの時に歯がしみます」と・・この場合は歯が原因ではなく「歯の磨き方」が主因のこともあります。細かいようですが、危惧するのは次のようなことです。「歯がしみる」と患者さんが言った場合、歯科医師が取る行動は大きくふた通り、ひとつは「では削って樹脂を詰めましょう」もうひとつは「知覚過敏改善処置をします」です。知覚過敏の処置ならまだしも「削って詰めましょう」となった場合を危惧します。詰める量よりも削る量が多いこともありうるのです・・勿体無い話です。

今朝(5/12)の天声人語です。『病気やトラブルが全くない人生はありません。完璧でなくていい。楕円形のように少々いびつでいいんです』(天声人語より)。もちろん「がん」と「楔状欠損」「知覚過敏」は、はっきり言って違うレベルの病気です。歯科医師として声高には言いません、小さな声で言います「歯も生きてます!冷たいものには冷たいと反応しますよ!」。おそらくヒトは元来常温(おおよそ15-25℃)の食べ物しか口にしなかったと思います。暑い時に冷たいものを楽しむことは有り得なかったことだと想像します。寒い時に熱いものを口にした可能性は充分有りますが、逆である「真夏に氷」のようなことは不可能だったと思います。

歯磨きの時だけ(歯の磨き方が原因)「歯がしみる」については、歯ブラシの持ち方を変えることで解決するでしょう。詳しくは「口友二本」をご参照のほど。誤解なきように付け加えます。「歯がしみる」場合の処置は原因によって違います。削って詰める必要のない場合もあります。日常生活、特に食事の際に困らなければ「経過観察」でも良いこともあるのです。歯は生きてます、温熱刺激(冷たい・熱い)に無感覚では有りません。「歯がしみた」時、日常生活に困らない程度であれば「歯は生きてるんだ」と思って頂き、さらに歯を慈(いつく)しんで貰えば幸いです。本日「母の日」声を揃えて「はは大切!」(母大切・歯は大切)。最後にアクセスが「八十万」超えました!深謝。800370



冒頭の句は「不透明飲料」でも紹介しておりました。

BBTime 316 究極の治療

BBTime 316 究極の治療
「春のかぜこんぺいとうが効きました」田辺香代子

この方には金平糖が薬となったようです。プラセボ(偽薬:ぎやく、プラシーボ)効果という言葉があります。「プラセボ効果とは、偽薬を処方しても、薬だと信じ込む事によって何らかの改善がみられることを言う」ウイキペディアより。今回は気になる記事について。先日「歯の神経抜く治療は半数が再発!?…感染防御が不十分のケース多く」の見出し。「歯の痛み金平糖で消えました」とはならないので・・記事を読んでいきましょう。

イラストのように歯の中には、根っこの先の小さな穴から血管と神経がきています(図では下の方から)。ムシ歯は図の上の方(歯冠部:しかんぶ)から進行します。歯髄(しずい:血管と神経)が感染すると歯髄炎となり痛みを感じるようになり、「ムシ歯が深いので神経を取りますね」となります(抜髄:ばつずい)。多くは物理的に歯髄を除去(抜髄)します。引き千切って掻き出します。その後空っぽになった歯髄腔(しずいくう)に薬剤(多くはガッタパーチャ)を詰めて一区切りとなります。

記者の方が指摘する問題(再発)はここから始まります。「この治療、痛みが取れれば、とりあえずはOKと思ってしまいますが、その後に問題を抱えてしまうことが少なくありません。細菌を含んだ組織の取り残しなどで、治療後に根の先端から歯茎の周囲に感染が広がってしまうのです。根の治療後をエックス線写真で調べると、なんと4~6割に陰影が見えるという大学病院の報告もあります」記事より。

記事ではラバーダムやマイクロスコープ(顕微鏡、メガネタイプ拡大鏡にあらず)にも触れていますが、結論から言うと記事の最後に「神経を抜く歯内療法はうまくいかないから『しない』方がいいでしょ。だから『しない療法』って言うんですよ」と、虫歯外来を担当する親しい歯科大学教授が「なんちゃって歯内療法」をシャレにしていました。しないですめば苦労はしませんよ。筆者もすでに根にトラブルを抱える身、どうするか現在進行形で悩んでいます。そこで、せめて新たに歯を傷めないために、定期的に歯科に通って、虫歯が進む前に対処するべく努めてはいます。それが歯にとってベスト、長い目で見てきっと安上がりですね。」とあるように「しない療法・治療しない」が最高の治療なんです。

話飛びますが、昔スキューバダイビングをしていました。よく行ったスポットは007のロケ地にもなった丸木浜(鹿児島坊津)です。潜っていると画像のような海の生物が目の前に!貝類、サザエなども目の前に!潜りながら思いました。「なぜ、逃げないんだろう?」当たり前です。彼らの棲家がそこであり小生が侵入者です。極論を言えば「人はここに来てはいけない」のです。そう思った時から捕るのをやめました。

これはご覧になった方も多いでしょう、歯科用パントモと呼ばれるレントゲン像です。学生時代に歯科エックス線の授業で海外のパントモ(特にアメリカ)がよく出て来ました。それらを見ていてふと「根充(根の治療)してない」「アメリカは抜髄・根充はせずに抜歯なのかな」と思いました。理由がありました、米国ではすぐ訴訟(歯科医が訴えられる)になるので再発の可能性のある治療は避けるとのこと。

自己弁護・言い訳です「歯科医も人」神様じゃありません。歯医者目線では治療した全ての歯において「神経抜いたあとピタッと根充して再発しない」なんて「無理でしょ」と大きな声では言いませんが、小さな声できっぱりと言いたくなります。ラバーダムやマイクロスコープ使用は今の保険点数(保険の料金)、診療形態、患者さんの経済的希望を考慮すると厳しいです。一本の歯の根の治療に十万円も払いますか?被せ物まで含めると一本あたり軽く二十万円超えます。「それを言っちゃおしめえよ」と言われますが「人が人の歯を削ってはいけない」し「人が人の歯の神経を抜いてはいけない」のです。

歯ブラシ一本の値段、様々です。しかしこの一本の歯ブラシで数十万の治療費を回避できるのも事実です。究極の治療とは予防です。後手後手治療ではなく先手先手予防へ頭を切り替えるだけで可能なのですが・・ね。これまた難しいのも事実です。最後に記者の方も「しないですめば苦労はしませんよ。筆者もすでに根にトラブルを抱える身、どうするか現在進行形で悩んでいます」と書いてますように、すでに抜髄処置を受けた方で再発した時は、再度根管治療(根の治療)を受けるか抜歯の二択です。はっきり言って現在「根尖病巣」を持つ方はその事実を受け止めて、他の歯が轍を踏まないようにされるのがベターだと思います。究極の治療とは「予防」です。治癒率50%の治療を「しない」為にも先手先手予防へ。9670

BBTime 303 楔状欠損

BBTime 303 楔状欠損
「米磨げばタンゴのリズム春まぢか」三木正美

作者はお米を研ぐ(とぐ・磨ぐ)水の温み(ぬるみ)に春を感じたのでしょうか。洗うのではなく「研ぐ」理由は「精米後に残った糠(ぬか)を洗い落とすためにお米の粒同士をこするようにして研ぐ必要がある」とのこと(こちらに詳しく)。

「楔状欠損」は「くさびじょうけっそん」もしくは「けつじょう欠損」と読み、歯ブラシの誤用や噛む力などでくさび状に生じる欠損のことです。歯冠(しかん)の歯茎に近い部にできやすく「歯がしみる」「ものが詰まる」「歯磨きの時にピリピリする」などの症状で来院されます。治療はムシ歯同様に樹脂を詰めることになります。患者さんの「これはムシ歯ですか?」の質問には「ムシ歯ではないけれどムシ歯と同じ治療となります」と説明します。

原因のひとつは「歯ブラシの誤用」:過度な力での歯磨き、歯磨き粉の使い過ぎ、歯ブラシのグー握り、横磨きなどが考えられます。歯医者から見るとモッタイナイ話です、もちろんご本人にとっても。原因を説明すると多くの患者さんはエッ!という顔に「ムシ歯にならないためのしっかり磨きが逆にダメージを与えていたの?」と怪訝な表情をされるのです。

画像はサンスターのページから拝借。サンスターライオンも「グー握り」より「鉛筆握り」を推奨しています。先月「口友二本」で同じようなことを書いておりますが、それ以降にかなりの楔状欠損を目にしましたので同じ話題に触れました。タンゴのリズムに乗せて歯を磨くのはOKですが、ペングリップをお忘れなく。(歯科医師として)いつも思います。「歯を磨く」ではなく「歯を洗う」ほうが過度な力を入れずに済むような気がします、もっと良いのは「キレイにする」かも。磨くではなく洗う、洗うよりもキレイにする!力を抜いてペングリップで。1700



おまけ:句の解説より「気がつくと「タンゴのリズム」で「米を磨(と)」いでいた。たぶん、鼻歌まじりにである。なるほど、タンゴの歯切れの良い調子は、シャッシャッと米を磨ぐ感じに似あいそうだ。想像するに、作者は直接手を水につけて磨いではいないようである。何か泡立て器のような器具を使っていて、それがおのずからシャッシャッとリズムを取らせたのだろう。手で磨ぐ場合には、そう簡単にシャッシャッとはまいらない。そんなことをしたら、米が周囲に飛び散ってしまう。子供時代の「米炊き専門家」としては、そのように読めてしまった。(中略)いつだったか辻征夫に「『ラ・クンパルシータ』って、どういう意味なの」と聞かれても、答えられなかったっけ」(解説より)。ちなみに「タイトルの「Cumparsita(クンパルシータ)」とは、イタリア語の「Comparsa(仮装行列)」がなまったもので、「Cumparsita」はその縮小語」とのことです(出典はこちら)。

108cafe 002 橋の下の力持ち

108cafe 002 橋の下の力持ち
「名月や橋の下では敵討ち」野坂昭如

句の作者名を見て「?」。野坂昭如氏は小説家だと思っておりました、ウイキペディアには「作家、歌手、作詞家、タレント、政治家」とあり俳人を加えればまさに八面六臂(はちめんろっぴ)。敵討ち(かたきうち)とは物騒な話ですが、今回ポンティックと歯肉のせめぎ合いについて。以下ラボへのレポートより。

「橋の下」:先日、ラボの社長さんとの会話でポンティック基底面について。6番欠損の567のブリッジ、5番7番はインレータイプの場合に起こりうること。「橋の下」はお分かりと思います。ポンティック=橋(pontic 橋桁:はしげた)の下で基底面と基底面に接する歯肉のことです。
「橋の下は力持ち!」インレーブリッジでたまに遭遇する症例が脱離です。ブリッジ脱離で来院され戻そうとすれど入らず・・「いつ外れました?」「昨日です」「?」・・犯人は「橋の下の歯肉」歯肉がブリッジを持ち上げて外れたんです。指で強く押して戻そうとしても、インレー体と支台歯は合わず(浮いており)よく見るとポンティック部の歯肉が真っ白。ポンティック基底部で押されて歯肉が貧血状態。フィットチェッカーで調べてみると案の定、基底面が歯肉を押している・・というより歯肉が基底面を押し上げている!結果・・脱離。

強く当たっている部分(基底面メタル)を削合するとすんなり入ります。削合部分を鏡面研磨して再セットしました。「えっ?そんなこと起きるの」「ハイ、起こるんです」
ブリッジ基底面の問題発生は大方二つ。1)一番多いのはポンティック基底部と歯肉の間にプラークがたまり炎症を惹起(じゃっき)して、炎症性の歯肉がポンティックを包み込むように腫れてきます。症状として出血、咬合時疼痛、咀嚼時疼痛など。この場合は、まずフロスを通し清掃し抗生物質入り軟膏を間に入れます。だいたいこれで解決します。解決しなければ除去・再製となります。
2)もうひとつがたまに起こる「橋の下は力持ち」で脱離。強く当たっている部分(基底面メタル)を削合して削合部分を鏡面研磨して再セットします。

実は似たようなことがPDでも起こるんです。上顎6番欠損一本義歯の例。義歯当たりが出て(咬むと痛い)、しばらく使用せず来院。はめようとしても合わず、フィットチェッカーで調べると欠損部のみ当たっています。削合研磨して使用可能に。抜歯窩に根の陥没がある場合はワックスで埋めてから床のワックスアップしてください。増歯修理のリベース時も要注意です。抜歯窩に入ったレジンの足を削合してください。レジンの足そのままだと抜歯窩の治りも良くないです。

というわけで皆様(技工士の方)にお願いしたいのは患者さんがフロスで清掃可能な基底面形態を付与してほしいこと。抜歯窩形態によっては鞍状型(あんじょうがた:歯肉が凸で基底面が凹)も見ますが、清掃できないので小生としてはやめてほしいところです。鞍状型を指示するのは歯科医師ですがね・・(苦笑)。6560

BBTime 284 歯科技工士

BBTime 284 歯科技工士
「疲労困ぱいのぱいの字を引く秋の暮」小沢昭一

先日、歯科技工士の方と話し込んでしまいました。ご存じとは思いますが「歯科技工士」とは歯科補綴物(しかほてつぶつ)などを作る国家資格を有する人です。歯に詰めるインレー、かぶせる冠(クラウン)、義歯(入れ歯)、矯正装置、マウスピースなど口の中に入れるモノを作ります。特に義歯においてはモノというより人工臓器を製作する人です。歯科医療において、歯科医師もさることながら歯科技工士の方の働きがないと歯科医療は成り立ちません。

永六輔さんは著書「職人」の中に「目医者、歯医者が医者ならば蝶やとんぼも鳥のうち そんな歌を歌っていた目医者や歯医者もいましたが、いまはとんでもない。歯科技工士なんか、高齢化社会には神様のような職人ですよ」と書いておられます。その神様のような職人の方々が「疲労困憊」なんです、困ったことに!

困憊の理由は多々ありますが簡単に言うと「長時間労働」「ストレス過多」「低収入」「ワクワクがない」等々。結果、若い技工士さんは短期間での退職・離職・・。専門学校卒後、国家資格取得、希望を持ってラボ(歯科技工所)に就職した若き技工士は希望とやる気をなくして去ってゆく・・。

理由は数々あるのですが、その中から「再作:もう一度作る」について。あなたが右上4番目(第一小臼歯)にCAD/CAM冠(保険の白い冠)をかぶせるとしましょう。歯科医はその歯を削り印象(型採り)します。この型に石膏を流して固まった石膏模型がラボに送られます。画像はイタリアンで有名な落合シェフです。ラボの仕事はシェフに似ています。届いた材料(模型)に対して最高の調理(技工)を行うのみで、もし届いた材料(模型)に問題があればその問題は解決されないまま料理(技工物)は出来上がります。落合シェフであっても八百屋さんから届いた食材が傷んでいれば美味しい料理を作ることはできません・・が、歯科の現場では「食材に問題があっても美味しい料理を作るように」という無茶な「無言の要求」をする歯科医はたくさんいます。技工は手品ではありません!届いた模型・バイト(噛み合わせ)・削られた形に問題がある場合は、もう一度歯科医が適正な形に歯を削り直し、型を取り直し、ラボに届ける必要があるのです。ラボ「先生、模型の噛み合わせが不安定なんですが・・」「マージン(歯の境目)がはっきりしないのですが・・」→歯科医「それで作っといて」・・傷んだ食材で美味しいイタリアンはできません。技工士は手品師ではありません。

後日、技工物が届きセット(歯につける)です。案の定、合いません(当たり前です)。歯科医→患者さんへ「出来上がった冠が合いませんのでもう一度型を採りますね」。歯科医に問題があっても再作(もう一度作る)のはラボで、多くの場合ただ働きです。義歯(入れ歯)でも似たようなことが起きています。歯科医は技工指示書という注文書を歯科医の責任で書いて模型と一緒にラボに送らないといけないのですが、手抜き(指示抜き)の歯科医は設計を書かずにラボ(技工士)に丸投げです。

届いた材料に問題あれば「印象に問題があり、これでは作れません」とラボが歯科医師に言えば解決するのですが、未だに上から目線の歯科医師は多くいます。歯科医師と歯科技工士はどちらが上だ下だではなく同等のパートナーです。ラボ側にも責任はあります。届いた模型に問題があって「問題がありますけど・・」と歯科医に連絡すると・・・次から仕事が来ない。ラボにしてみれば客(歯科医院)を失うことになりますので、問題があっても黙って作る・・となるのです。さて、結果どうなるでしょう?問題のある模型で作られた適合の悪い(模型にはぴったり適合)補綴物があなた(患者さん)の口に入ることになるのです。

ほとんどの患者さんはラボ(歯科技工所)の存在は知っていても、上手なラボを見つけることは至難の技で、そのラボと取引のある歯科医院を見つけるのも困難です。今日からできることをお教えします。インレー(歯の部分的な詰め物)は別ですが、歯をぐるりと削ってかぶせる「冠」の型採りの時に、右上であっても左右全部の型を採る歯科医院は、片方のみの歯科医院より信頼できます。型採りの時に「全部採らなくてもいいのですか?」と言ってみてください。相手(歯科医師・スタッフ)はドキッとすると思います。片方のみならず全顎(ぜんがく・上全部もしくは下全部)採ることで、安定した技工物を作ることができます。これはひとつの例ですが、少なからず指標になるでしょう。

義歯は人工臓器と書きました。技工所から届いた義歯を患者さんの口の中で歯科医師が調整・確認して補綴物(人工物)が人工臓器になっていきます。もちろん歯科医院とラボがいい関係を構築していて、より良い歯科医療を目指している歯科医師・歯科技工士の方も多くいらっしゃいますが、そうでない歯科医院があるのも事実。意味ある仕事をしての疲労困憊ならまだしも・・ただ働きでの疲労困憊は疲労度が増悪します。時にはあなたの口の中の補綴物製作者にも思いを馳せてみてくださいませ。2330

BBTime 273 正直モン

BBTime 273 正直モン
「虫なくや我れと湯を呑む影法師」前田普羅

解説に「呑んでいるのは「茶」ではなく「白湯:さゆ」。健康上の理由からだろうか、この頃の普羅は「白湯」を呑むことに努めていたようだ。「がぶがぶと白湯呑みなれて冬籠」の句もある。白湯だから味わって呑むのではなく、一気のガブ呑みだ。ふと見ると、壁に写った影法師も同じ姿で一生懸命に付き合ってくれている。外では、虫の音しきり。わびしいような滑稽なような、作者の文字通りの微苦笑が目に見えるようだ」とのこと。言われてみれば当たり前です、影法師とその人自身は似た姿であり同じ動きをします、いわば正直モン。今回「歯は正直モン」について。

くまモンが正直モンか否かはさておき「歯は正直モン」です。前回、右下の奥歯にCR充填の治療した方が再来院。「CR充填:シーアールじゅうてん」とはコンポジットレジン充填のことで、ムシ歯部分を取り除いた後に歯に似た色の樹脂を詰める処置です。その歯が冷たいものがしみるし、噛むと違和感があるとのこと。「?」と思いながらも「迷ったらやり直し」との判断から、同部位を再度削りました。前回治療時、黒っぽい部分でしたがココは硬いのでムシ歯にあらずと残した箇所をもう少し削ったところ、その下がムシ歯でした。前回も「う蝕検知液」で染まらない(染まるとムシ歯)ことを確認したのですが・・。やはり「歯は正直モン」「ひと(患者さん)の体は正直モン」です。

ドラえもんが正直モンか否かはさておき「歯は正直モン」です。治療前でも治療後でも、しっくりいかない・納得いかない・満足しない時は必ず歯科医師に伝えてください。たまにインレー(部分的な被せ物)や冠(クラウン、銀色や白色)をつけた後「しばらくは噛みにくかったけど良くなりました」と表現される患者さんがいらっしゃいます。これは危険です!革靴ならまだしも、靴が足に合う可能性はありますが、歯科の場合は違います、革ではなく金属・セラミック・硬質レジンなど硬い材料です。「冠をかぶせて噛みにくかったけど良くなった」は、良くなったのではなく噛み合わせがずれた可能性があります。充填(詰める処置)・入れ歯・根の治療なども同じです。納得いかない時には必ず伝えてください。

言わばヒトは「超精密ロボット」。必ず原因あっての結果(症状)です。原因を探って見つけるのが医療従事者の仕事ですが、すぐに見つからないこともあります。原因が解決されなければ結果(症状)は消えません。症状に変化なき場合は、遠慮することなく躊躇することなく伝えてください。医者・歯医者にとって便利な言葉があります。「経過観察」すなわち「(原因がはっきりしないので)しばらく様子をみましょう」の意味で使うことがあります。また「大丈夫です」「特に異常はありません」もある意味、逃げで患者さんに言うことがあります。

症状が消えない時、納得のいく理由・答えが得られない時には、有耶無耶(うやむや)にするのではなく、あなた(患者さん)自身もあきらめずに追求(歯科医師に伝える)してください。体は正直モン、歯は正直モンです。正直とくれば、やはりこの曲でしょう。4300


おまけ:冒頭写真は拙インスタグラムより小生の影法師です。hideky1961
おまけ2:句の解説に「ただ、光源が何であれ、一つ言えることは、当時の人たちはみな、現代の私たち以上に灯りには敏感だったということである。句のように影法師に着目するのも、そのあらわれだろう。光あるところには必ず影があるというわけだ。いまは、光の氾濫が影の存在を希薄にしている。精神のありように影響しないはずはない」光あるところには必ず影がある・・原因あっての結果なんです。

BBTime 267 歯にのり

BBTime 267 歯にのり
「ある朝の焼海苔にあるうらおもて」小沢信男

解説に「海苔(のり)に裏と表があるくらいは、誰でも承知している。でも、食卓でいちいち裏表を気にしながら食べる人はいないだろう。ご飯などに巻きつけるときに、ほとんどの人は海苔の表を外側にしていると思うが、無意識に近い食べ方である」とありますが、言われてみると・・そうかもねです。よりツヤツヤの方が表でしょう。同じく解説に「コマーシャル・コピーに「上から読んでもヤマモトヤマ、下から読んでもヤマモトヤマ」というのがあった。すかさず「裏から読んでもヤマモトヤマ」と反応したのが・・・」とあります、言われてみると・・これまたそうですね。薄い白い紙にマジックで「山本山」と書いて裏返すとやはり「山本山」。ちなみに「海苔」は春の季語、悪しからず。小学生時分、遠足弁当の定番がお握りの頃、友人の「歯にのり」を見つけては大笑いでしたが、今回は同じノリでも接着剤の「ノリ」のお話・・ノリが違う(笑)。

「歯科用セメント」と呼ばれ、歯科治療の中で「印象採得:いんしょうさいとく:型を取る」後に出来上がったものを歯に固定する際にセメントを使用します。土台(銀製・樹脂製)、インレー(部分的な詰め物、金属製、樹脂製、セラミック製)、クラウン(冠、金属製、樹脂製、セラミック製)などを歯に着ける時に使い、大きく「合着」と「接着」に分かれます。

セメダインのページに接着の基本についてわかりやすく説明してあります。
「接着とは「接着剤を媒介とし、化学的もしくは物理的な力またはその両者によって二つの面が結合した状態」と定義されています。この定義に至る迄には永い歴史がありました。さて、次に接着のメカニズムについて簡単には、1)機械的結合 2)物理的相互作用 3)化学的相互作用の三つがあり、機械的結合とはアンカー効果とか投錨効果とも言われ、材料表面の孔や谷間に液状接着剤が入り込んで、そこで(接着剤が)固まることによって接着が成り立つという考え方です。木材や繊維、皮等の吸い込みのある材料の接着を説明するのに有効です」セメダインのページより

「物理的相互作用とは分子間(引)力といわれるもので、あらゆる分子の間の引き合う力(ファン・デル・ワールス力)をいい、二次結合力ともいって接着剤の基本的な原理とされています。三つ目の化学的相互作用とは、一次結合力といって最も強い接着力が期待される共有結合や水素結合をいいます。即ち「接着」とは、機械的な引っ掛かりや分子間力、原子間力によって成り立っており、そのどれかに原因を絞り込むことができない複雑さをもっています」セメダインより

歯科臨床においては「合着:機械的結合のみ」より「接着」の方が良いと言えます。合着セメントよりも接着セメントをオススメします・・と言っても患者さんの口から「接着セメントで着けてください」とは言いにくいでしょうね。歯科臨床でどのようなことが起きるか簡単に述べます、イメージしてください。二枚の紙をのり付けしましょう。ノリを塗って貼り合わせます→ノリが乾くと(固まると)二枚の紙ははがれません→貼り合わせの部分が濡れたら?→おそらくはがれますよね。「合着セメント:ごうちゃく」だとこれに似たことが起こり得ます。歯にインレー(部分的詰め物)を合着セメントでセット(歯に着ける)しました→数年経ってインレーが外れました・・理由は?いくつかありますが、合着セメントも原因のひとつです。歯とインレーは機械的結合のみです、すなわち顕微鏡レベルでの凸凹にセメントが入り込んで固まっていることでインレーは歯にくっ付いています。数年経つうちに、歯とインレーの間にミクロン単位の隙間ができた場合、その隙間に唾液・水分が侵入します(隙間ができる原因はいくつかあります)。入り込んだバイキン入りの唾液・水分が徐々に歯とインレーの機械的結合を剥がしていくのです。剥がすのみならず、その隙間にムシ歯を作ってしまう可能性も十分あります(二次カリエス)。ただ単に外れることよりも二次カリエスの方が問題なんです。

この二次カリエスは金属(メタル)インレーの場合(メタルインレーの下が二次カリエス)はレントゲンで判別は困難です。メタルインレーが真っ白く写るために二次カリエスの発見はほぼ困難です。あなたの歯に部分的な金属(メタルインレー・アマルガム)がある場合は、定期検診の際にでも「メタルインレー部の二次カリエスは大丈夫でしょうか?」と聞かれてみてはいかがでしょうか。今回の曲は「ABBA」どちらから読んでも「アバ」!3300


BBTime 246 大丈夫

BBTime 246 大丈夫
「大丈夫づくめの話亀が鳴く」永井龍男

俳句好きの方は気づかれたと思いますが「亀が鳴く(亀鳴く)」は春の季語です。
最近いろんな場面で「大丈夫です」を耳にします・・いろんな意味があるようで。「間に合ってます」「要りません」「可能です」等々。この大丈夫・・本来名詞で「だいじょうふ」と読み「りっぱな男子。ますらお。偉丈夫(いじょうふ)」のこと(コトバンクより)。次なる意味で形容動詞「 あぶなげがなく安心できるさま。強くてしっかりしているさま。「地震にも大丈夫なようにできている」「食べても大丈夫ですか」「病人はもう大丈夫だ」 まちがいがなくて確かなさま。「時間は大丈夫ですか」「大丈夫だ、今度はうまくいくよ」[補説]近年、形容動詞の「大丈夫」を、必要または不要、可または不可、諾または否の意で相手に問いかける、あるいは答える用法が増えている。「重そうですね、持ちましょうか」「いえ、大丈夫です(不要の意)」、「試着したいのですが大丈夫ですか」「はい、大丈夫です(可能、または承諾の意)」など」とあります。まさしくこの「補説」の使い方をよく聞きます。ちなみに副詞として「まちがいなく。確かに。「大丈夫約束は忘れないよ」」の使い方も。金ちゃんも大丈夫(ふ)!

先日、患者さんとの会話で「ムシ歯かなと思うのですが、(別の歯科で)大丈夫と言われました(が納得いきません)」とのこと。問診で(歯科以外の)医科での「大丈夫」も時折耳にします。医者歯医者の「大丈夫」にはいくつかの真意が推測できます。1)医学的に全く問題ない・病気ではない 2)厳密には病気だが治療する程ではない(と医師歯科医師は診断した) 3)その時の状態・検査結果においてその医師歯科医師は異状を認めないもしくは診断できない(レントゲン・各種検査データ・診断能力が根拠)。

鬼ちゃんは「大丈ブイ」をしていますが、「大丈夫」「問題ない」と言われて納得いかない、腑に落ちない時には是非「どう、大丈夫なのですか?」「何が問題無いのですか?」と勇気を持って突っ込んで聞かれてみてはいかがでしょう。それでも「大丈夫」の返事なら迷わず医者歯医者を変えましょう。変えた方が「大丈夫になれる」と思います。あなた(患者さん)にとって「大丈夫じゃない状態」なのに根拠も示さず「大丈夫ですよ」の診断は不十分です。

当たり前ですが、ヒトは超精密ロボットよりも優れた体の仕組みを持っています。すなわち「原因なければ症状なし」です。噛むと痛い・しみる・噛みにくい等々、必ず原因があります。レントゲン撮って直接見て噛み合わせ調べて・・「大丈夫ですよ」と歯科医師が言ってもあなたが大丈夫でなければ、必ず何か原因があります、潜んでいます。先に書いたように元々「大丈夫」は頑丈な人のこと、健康体そのもの。

句の解説から。「季語は「亀鳴く」。春になると亀の雄が雌を慕って鳴くのだそうな。もちろん、鳴きゃあしない。でも亀を見ると鳴いてもよさそうな顔つきはしている。浦島太郎に口をきいた亀は海亀(それも赤海亀の「雌」だろうという説あり・昨夜のNHKラジオ情報)だが、俳句の亀は川や湖沼に生息する小さな亀だ」「さて「大丈夫」という話ほどに、「大丈夫」でない話はない。ましてや「大丈夫づくめ」とくれば、誰だって何度も眉に唾する気持ちになる。そんなインチキ臭い話につき合っているうちに、作者はだんだんアホらしくなってきて、むしろ逆に愉快すらを覚えたというところか。鳴かない亀の鳴き声までが聞こえてくるようだと、気分が落ち着いた」今回は大丈夫のような大丈夫でないお話でした!4060



「空の声が 聞きたくて 風の声に 耳すませ」
「海の声が 知りたくて 君の声を 探してる」
「体の声が聞きたくて 心の声に耳すませ」
「体の声を知りたくて 心の声を探してる」