BBTime 584 ニセモノ買いの銭失い

「安物買いの銭失い」ことわざ

2022/07/31投稿 8/15追加
この諺は耳にしますが、タイトルは「ニセモノ買いの・・」。そんなの当たり前でしょ!と思いますが・・のお話。諺の意味はご存じの通り『安い物を買うと品質が悪かったり、すぐ傷んだりして、結局損をする』(引用元)。では「偽物買いの銭失い」は・・前置きがあります。「本物を易く(やすく)失い、ニセモノを高く買う」・・こんなバカなことする訳ないじゃん、と思われるでしょうが、多くの方がしていらっしゃるのです。

先日、時計修理屋さんとの会話に出てきたのが上の画像です。よく見てください、ちょっと違うでしょ。「レフティ」と呼ばれる左利きで竜頭の位置などが違います。レフティは生産数が少ないこともあって、市場価格が高騰しており新品よりも中古価格の方が数十万円も上だそうです。また、一昔前のロレックスを高値で売って、その利鞘で新品ロレックスを買う。数年後、また売って新品を買う。ロレックスマラソンと言われているとのこと。修理屋さん曰くひとこと「異常です」。さて質問「ここに偽物ロレックスがあります。非常によくできています、五十万円します。では、この偽物と同じタイプの本物にいくらの値段をつけますか?」おそらく偽物が五十万なら本物は「百万だろう」「本物なんだから二百万はするよ」・・いずれにせよ通常ならニセモノより本物が高い値がつきますよね。残念ながらこの真逆のことが、さも当たり前のこと日常茶飯事のこととして起きているのが「歯科治療」なんです。

画像は陶器の歯、どんなに上手な技工士さんが作っても「ニセモノ」です。だいたい1本十万円はします。陶器の歯が必要になった原因がムシ歯であったなら「本物を易く失い、偽物を高く買う」と言えるのです。

画像は「PMTC:ピーエムティシー」と呼ばれるプロケアです。過去に何度も書いていますが「歯は磨いても、もらうもの」であって、ご自分だけでムシ歯予防は不完全です、できません(と言えます)。たやすく本物を失い、高価なニセモノを買う羽目になる。これは人々(患者さん)だけの責任ではなく、歯科医師にも責任があります。歯磨きによるムシ歯予防は、人々がすべきこととしてきたことに誤りがあると思うのです。どうぞ考えを変えてください「歯は、磨いてももらうもの」。ニセモノ買いの銭失いにならぬよう、こまめにプロケアを受けることをオススメします。ひとつご注意ください!プロケアで歯を削ることはありません。いまだに「削ってなんぼ」と思う歯科医もいますので、この点はご注意ください。皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。

追加:文章中の「時計修理屋さん」。小生も修理ふたつと電池交換ひとつ、お願いしました。オススメします!インスタグラム@bleriots0819です。腕時計で困り事があれば是非!

BBTime 577 六月四日

「六月を奇麗な風の吹くことよ」正岡子規

2022/6/6投稿
好きな句です。解説には『前書きに「須磨」とある。したがって、句は明治二十八年七月下旬に、子規が須磨保養院で静養していたときのものだろう。つまり、新暦の「六月」ではない。旧暦から新暦に改暦されたのは、明治六年のことだ。詠まれた時点では二十年少々を経ているわけだが、人々にはまだ旧暦の感覚が根強く残っていたと思われる。戦後間もなくですら、私の田舎では旧暦の行事がいろいろと残っていたほどである。国が暦を換えたからといって、そう簡単に人々にしみついた感覚は変わるわけがない。「六月」と聞けば、大人たちには自然に「水無月」のことと受け取れたに違いない。ましてや、子規は慶応の生まれだ。須磨は海辺の土地だから、水無月ともなればさぞや暑かったろう。しかし、朝方だろうか。そんな土地にも、涼しい風の吹くときもある。それを「奇麗(きれい)な風」と言い止めたところに、斬新な響きがある。いかにも心地よげで、子規の体調の良さも感じられる。「綺麗」とは大ざっぱな言葉ではあるけれど、細やかな形容の言葉を使うよりも、吹く風の様子を大きく捉えることになって、かえってそれこそ心地が良い』(解説より抜粋)。今回は奇麗な口元、白い歯についてのお話。

白い歯と言いながら手塚治虫氏ですが、実は関係ありなんです。タイトルの「六月四日」は『「む(6)し(4)」(虫)と読む語呂合わせから。漫画家・手塚治虫らの呼びかけで1988年(昭和63年)に設立された日本昆虫クラブが「虫の日」を制定。昆虫が住める街づくりを目指している』(引用元)。6/4は「虫の日」なのです。

同じく「6と4」で『1928年(昭和3年)から1938年(昭和13年)まで日本歯科医師会が、「6(む)4(し)」にちなんで6月4日に「虫歯予防デー」を実施していました。1939年(昭和14年)から1941年(昭和16年)まで「護歯日」、1942年(昭和17年)に「健民ムシ歯予防運動」としていましたが、1943年から1947年までは中止されていました。しかし、1949年(昭和24年)、これを復活させる形で「口腔衛生週間」が制定されました。1952年(昭和27年)に「口腔衛生強調運動」、1956年(昭和31年)に再度「口腔衛生週間」に名称を変更し、1958年(昭和33年)から2012年(平成24年)まで「歯の衛生週間」、そして2013年(平成25年)より「歯と口の健康週間」になっています』(引用元はこちら)。さて、ご存じの方もいらっしゃると思いますが、去る四月からインレーに白い材料が保険適用になりました。(インレー:白い樹脂を詰める処置(1回で終わる)ではなく、型(印象)をとって次回歯にセット(2回必要)する処置)

CAD/CAMインレー:キャドキャムインレーと呼ばれるものです。今までも白いインレーはありましたが、材料がグレードアップしましたし、インレーの作り方が全く異なります(詳しくはこちらを)。患者さんの疑問について述べたいと思います。まず一番多い質問が「耐久性」について。銀色は「12%金銀パラジウム合金」と呼ばれる金属で、かたやCAD/CAMインレーは「ハイブリッドレジン」です。この材料だけを比較すれば金属であるパラジウム合金に軍配が上がります。ただしインレーを歯につける際に使用するセメントとの相性においては、CAD/CAMインレーの勝ちです。個人的意見としては「耐久性」に、ハズレにくいを加味すればどちらとも言えないと思います。CAD/CAMインレーに関してはネットにも記事が散見されます、こちらも是非どうぞ。

「割れやすい」からと金属インレーをすすめる歯科医もいます。嘘ではありませんが、CAD/CAMインレーの場合、もし欠けても場所によっては白い詰め物で修復可能です(CR充填)。敢えて付け足すなら・・その歯科医がCAD/CAMインレーに技術的に対応できていない場合もあります。CAD/CAMインレーは新しい材料ですので、当然のこと新しい技術が必要です(さほど難しくはないのですが)。

と言うことで、特に急ぐ必要のない部位であれば、銀色を白くするのをもう少し待つのも賢い選択です。また価格においては、セット時(完成時、歯にセットする時)の支払いに関してはCAD/CAMインレーの方が安いです。治療の部位が銀色になることは、小生の考えでは「治っていない」のと同じです。もともと白ければ、治療後も白いのが当たり前。今まで適切な材料がなかったために、白い歯が治療後は銀色になっていたのです。最後に、しつこいようですが、歯はもともと生えてきた時は白い奇麗な歯です。ムシ歯にしてしまうので「銀色か白か」と言うことになってしまうのです。ムシ歯にしなければ白いままなのです。一に予防二に予防です!皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 571 魔法ではない

「春昼や魔法の利かぬ魔法瓶」安住 敦

2022/4/26投稿
昔のことです(開業したての頃)。知り合いの方が「噛むと痛い」と来院。レントゲンみると歯周病が進行しており、着手するなら「抜歯です」と伝えると「悪い歯を抜くのではなく治すのが医療でしょ」とその方。んー「治療は魔法ではないので無理なものは無理です」と思いながらも「では、投薬しますので様子見ましょう」というのがやっとでした。句の解説は『真空状態を作って保温するという論理的な英語「vaccum bottle」に対し、何時間でもお湯が冷めない現象に着目し、日本では「魔法瓶」と命名された。どんなものにもよく書けるマジックインキ、愛犬に付いた草の実(おなもみ)がヒントとなったマジックテープなども、従来にない不思議な力を強調した「魔法/マジック」の用法だが、「魔法瓶」はなかでも突出して絶妙なネーミングである。他にも、来週に控える「黄金週間」やめくるめく「万華鏡」なども腕の立つ日本語職人の手になるものと思われる。掲句は、茶の間に鎮座するポットの仰々しいネーミングにくすりと笑う大人の視線だが、いかにもうららかな春の昼であることが、笑いを冷笑から、ユニークな名称の背景にある人間の体温を感じさせている』(解説より抜粋)。今回は目についた記事のご紹介。

その記事とは「入れ歯に認知症、誤嚥性肺炎…。知りたくなかった真実。日本は歯医者さんの「超後進国」だった」と少々ドキッとするタイトル。記事の中身は・・『残念ながら、現在の日本はれっきとした『歯科医療後進国』です。80歳時点で何本歯が残っているかを調査した国際的なデータがあります。スウェーデンは20本。アメリカは17本。イギリスが15本。そして日本は、わずか8本です。諸外国と比べて惨憺な状況と言わざるを得ません。男女の平均寿命では全世界トップクラスでありながら、歯はズタボロの状況。逆に言えば、この数字を上げれば、平均寿命や健康寿命もさらに上げられるのです』(抜粋)。

記事は続きます・・『日本人は、デンタルケアに関する意識関心が低すぎる。80歳の残歯率はその表れですが、ある雑誌が行なった60歳以上のビジネスマンに対するアンケートで、興味深いものがありました。「40代のうちにメンテナンスしておくべきだった体の部位」の第一位が「歯」だったんです。多くの方が歯を失って、初めてその大切さを痛感している。しかし、一度失った永久歯は、文字通り永久に生えてはこないんです。当たり前に思われているこのことを、いま一度考え直していただきたいと思っています』(記事より)。低すぎる・・低くなってしまったのです。単純に比較はできませんが、800年前のお坊さんは今以上に歯を磨いています。しかも砂糖がほとんど日常にない頃です。今でも、お寺や神社の「手水場:ちょうずば」で手や口を清めますよね。決して低かったのではないのです、低くなってしまったのです。詳しくはBBTime561「正法眼蔵」へ。

低くなってしまった理由は・・『そして皮肉なことに、日本のデンタルヘルスが著しく低いのは、世界に誇る国民皆保険制度が影響していると私は考えています。日本全国、どこへ行っても1割から3割の自己負担で「平等の医療」が受けられる。このシステムの功罪で、日本人の治療の内容が「及第点ギリギリ」となり、患者さんからも「予防医療」という概念を奪っているのです』・・この意見には賛成です。保険診療は今でも原則「疾病保険:しっぺい」です。病気でなければ保険証は使えません。そんなことはないでしょ!定期的に歯医者で保険内メンテナンスを受けてますけど・・。今度聞いてみてください。必ずや病名がついていて、その病名に必要な処置(治療)を受けていらっしゃるのです。

保険制度は歯科以外の病気には極めて良い制度でしょう。なぜなら殆どの病気において確実な予防方法は未だ確立されていません。しかし「歯科」は異なります、予防可能です。にもかかわらず、歯科医療も他の一般医科同様の保険制度であるために「歯科治療の悲劇」が起こり、その多くは連鎖してゆくのです。悲しいことです。最後に声を大にして言います!「歯は磨いても、もらうもの」これによって確実な予防が可能です。保険証は後手後手医療しかカバーしません。先手先手予防を是非あなたの意思で!セラミックの歯であろうとインプランであろうと所詮「偽物」に過ぎません。生まれ持ったあなたの歯をご自愛の程。皆さま、ご歯愛の程。

BBTime 569 パラジウム

「総金歯の美少女のごとき春夕焼」高山れおな

2022/4/17投稿
日々報道に接するたび、鬱々となります。句の解説には『季語は「春夕焼」。単に夕焼といえば、盛んに見られる夏の季語だ。夕焼は四季を問わずに出現するが、春の夕焼は柔らかな感じがするので、他の季節のそれとは区別してきた。で、この一般的なイメージに逆らっているのが、掲句。「よく見てご覧。そんなにうっとりと見つめられるような現象でもないよ」と、言っている。例えれば色白の「美少女」の柔らかい頬が少しゆるんで、にいっと「総金歯」が剥き出しになっているようじゃないか。そんな不気味なまがまがしさを含んだものとして、作者には見えている。』(解説より抜粋)。今回は歯科治療で使用する金属「パラジウム」について。

近頃、歯科用金属であるパラジウムに関する報道を続けて目にしました。
まずはこの記事「辻二郎氏死去 パラジウム触媒研究の先駆者」です。『希少金属のパラジウムを触媒に用い、炭素同士の結合を実現できることを世界で初めて見いだした。2010年のノーベル化学賞を受賞した鈴木章・北海道大名誉教授(91)らが開発した「クロスカップリング反応」の礎となった』(記事より抜粋)。パラジウムが車の排ガス浄化装置に触媒として使用されるために近年、パラジウム価格が高騰して来ています。加えて今回のウクライナ戦争により高騰に拍車がかかりました。

パラジウム高騰は保険診療価格にも影響が出ています。記事「銀歯治療が値上げ、ロシア産の金属「パラジウム」高騰で…1歯で180円程度」。記事によると『厚生労働省は13日、歯科の銀歯治療で用いる金属「パラジウム合金」について、5月に公定価格を約8%引き上げることを決めた。患者の窓口負担も増え、3割負担の場合、奥歯に詰め物を入れる治療では1歯あたり180円程度の負担増が想定される。ロシアのウクライナ侵攻に伴う価格高騰を受けた緊急措置として、同日開かれた厚労相の諮問機関・中央社会保険医療協議会で了承された。』(記事より抜粋)。約一年前にも「BBTime518 記事ふたつ」にも書いております、ご参照のほど。

さて、遡ること八年ほど前に白い冠(被せ物:クラウン)が条件付きで保険適用となりました。CAD/CAM冠(キャドキャムかん)と呼ばれるものです。昨年九月より適用部位が拡大され、条件を満たせば一番前の前歯から六番目の奥歯まで可能です。今月四月からは歯の一部分を詰めるインレーも条件付きですがCAD/CAMインレーが保険適用となりました。パラジウムの今や天井無しの価格高騰の影響(お陰)でしょう。ちなみにパラジウム合金インレーのセット時負担金は歯一本おおよそ3000円弱で、CAD/CAMインレーなら約3500円となり、500円程度の差があります。材料費はパラジウムインレーの方が高いのですが、CAD/CAMインレーは技術料(いわば歯科医の技術費)が高いために、CAD/CAMインレーの方が高くなってしまいます。この技術料の差を裏読みすると・・従来のインレー(メタル・レジン)よりも高度な技術を必要とするということです。お分かりですね・・銀色のインレーを白くしたい時には上手な歯科医を選びましょう(けど、どうやって選ぶの?)。CAD/CAM=Cumputer aided design / Computer aided manufacture

今回は車の排ガス規制とウクライナ戦争によって、レアメタルであるパラジウムの価格が高騰していること。その影響でCAD/CAMインレー(樹脂の白いインレー)が保険導入されたこと。そのインレーにはより高度な技術が必要であること。これら大きく三点についての話でした。皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。5590

BBTime 565 外方向かれる

「たんぽぽのサラダの話野の話」高野素十

2022/3/15投稿 3/18合格率について追加
春になると好きなこの句を思い出し、今年こそは「たんぽぽサラダ」を食べようと思いながら未だ実現せず。『たんぽぽが食べられるとは、知らなかった。作者も同様で、「たんぽぽのサラダの話」に身を乗り出している。「アクが強そうだけど」なんて質問をしたりしている。そこから話は発展して野の植物全般に及び、「アレも食べられるんじゃないか、食べたくはないけれど」など、話に花が咲き、楽しい話は尽きそうにもない。』(解説より一部抜粋)。今回は好きの反対と言える「ソッポ向かれる」について。

先日のこと、九州南部地方都市の駅窓口に「受付は夜七時で終了します」との知らせ、ショックでした。今まで仕事帰りに次回の切符を買っていたものですから・・。昨春、二枚切符が廃止され、通常購入より安くなるネット購入を利用。ネット決済しても事前に駅窓口で紙切符購入が必要です。にもかかわらず、窓口購入可能は朝7:30から19:00までとなったのです。ネット予約切符は券売機では買えません。年々、JRのサービスが低下していると思ってしまいます。

ネット利用は客のためではなく「 JR職員」のためなんですね(きっと)。小生思うに「客の方を見ていないと外方向かれますよ」。郵便事業然り。昔、永六輔さんがラジオで「年賀状の早目の投函を呼び掛けるのであれば、安くすべきじゃないの?」・・賛成!郵便局員のために早く投函するわけですから「早割」があって然るべきです。その郵便、さらにサービス低下の報道を先日耳にしました。多くの人が年賀状から離れていくのも頷けます。以前は年賀状以外にも「なんとかメール」と銘打って盛んに宣伝していましたが、今もあるのでしょうか。客が離れるのも当たり前でしょう。その点、クロネコはエライと思います。郵便に関しては昔ブログに書いておりました、「郵便局のサービスは?」ご参照の程。JRもJPも民営化されたとは言え、公共インフラですから存続するでしょうけど愛されなくなるかも知れませんね。

「客を見ていない」は人事(ひとごと)ではないのです、歯科医師も同じ。「歯科治療」にのみ注力していると、近い将来必ずやソッポ向かれます。何度も書きますが「ムシ歯はほぼ完全に予防できます、回避できます」。にもかかわらず「待ちぼうけよろしく、診療所内で「ムシ歯の患者さん」を待っているのでは、歯科医師の未来は今以上に暗くなるでしょう。歯科治療は「人の不幸がメシの種」かたや歯科予防は「人の喜びが種」です。

「たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ」坪内稔典
ちなみにタンポポを英語でdandelion:ダンデライオン。文字通り「ライオンの歯」詳しくはこちら。JRも郵便も歯科医療も「おしりに火が・・」なのかも知れません。皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。

追加:外方むかれている根拠「合格率最低」について
3/16に厚労省が発表しました。記事では『厚生労働省は2022年3月16日午後2時、医師国家試験と歯科医師国家試験合格発表を行った。合格率は、医師が91.7%、歯科医師が61.6%。前年(2021年)の合格率と比較すると、医師は0.3ポイント増加、歯科医師は3ポイント減少となった』(引用元)。医師より30%も低い合格率です、単純に考えると医師より歯科医師の方が1.5倍難しいと言えます。大学入試の偏差値では医学部の方が歯学部より高いのに、最終ゴールである国家試験において歯学部の方がかなり狭き門であるとは不思議だと思いませんか。しかも今年(2022年)の合格率は調べた範囲では戦後最低、ということは現行国家試験において最低です。一説によると「医師は何点以上は合格」に対して「歯科医師は上から何人」で合否を決めているとのこと。ズバリ歯科医師は2,000人です(今年は1969人)。すなわち、厚労省は歯科医師数は十分足りていて、これ以上は必要ないと見ているようです。完全に外方向かれています!さて、どうする?


BBTime 563 Say No!

「耕人は立てりしんかんたる否定」加藤郁乎

2022/3/9投稿
まずは句の解説から『土とともに生きるのは容易なことではない。農家の子供だった私には、よくわかる。いかに農業が機械化されても、同じことだ。春先、田畑をすき返す仕事はおのれの命運をかけるのだから、厳粛な気持ちを抱かざるを得ない。春の風物詩だなんて、とんでもないことである。この句は、土とともに生きてはいない作者が、土とともに生きる人の厳粛な一瞬と切り結んだ詩。かつての父母など百姓の姿も、まさに「しんかんたる否定」そのものとして、田畑に立っていたことを思い出す。いまどきの人の安易な農業嗜好をも、句はきっぱりと否定している』(解説より)。最近目についた記事二つご紹介します。

ひとつ目は『歯科業界に横行するカネ儲け主義 高額医療への誘導を“撃退”するベストな方法を指南』(出典はこちら)。仰々しいタイトルですが結論は極めてシンプルで「Say No!」「いいえ!」「考えてみます」「今回は結構です」などと断ることです。記事には『そこは初めての歯科医院だったのですが、自由診療(保険外治療)を勧めてくるので、保険でお願いしたいと伝えると、先生の口調が急に不機嫌そうになった。そして『保険だと、歯を残せないよ』という。もうかかりたくないのですが、しっかり断ることができなくて困っています』『「自由診療のほうが適切な場合があるのは事実。しかし、自由診療なら歯が残せて、保険診療だとうまくいかないというケースはほとんどありません。明らかに、高額医療への誘導です」  そんなことを平気で口にする歯科医師は許しがたいと話す斎藤氏だが、最近そうした傾向がより強くなっているという』(引用元)。

小生(歯科医師)からすると「断りにくい」がピンときません。記事にも『斎藤氏は「患者さんは自分の考えをはっきり、歯科医師に伝えるべきです。遠慮する必要ありません」と話す』。医療と言えど、ある意味買い物ですので納得いかなければ、気が進まなければ「買いません」「他の商品はないのですか?」など言うべきだと思います。また現実的には、いきなり「保険の歯にしますか?陶器の歯にしますか?」の場面は来ません。初めての歯科診療所・歯科医師であっても1回目2回目と重ねるごとに「なんか違うな」「儲け主義かも」などの雰囲気を感じると思います。これは「私の望む歯科治療・治療方針ではない」と思ったら、次回予約時に「予定が分かりませんので、こちらから電話します」と言って去るのがスマートでしょう。

記事は続きます『「一度、不信感を覚えた歯科医師のもとで治療を続けるのは、苦痛以外の何物でもない。やはり、別の歯科医院に変えるほかはないような気がします」  ただ、それを言い出すにはかなりの勇気がいる。「別の医院に行きます」と言える患者は現実には少ないだろう。毎回、診察が終わると、うながされるがままに次の予約を入れて、ずるずると通院を続けてしまうのだ』。記事には「勇気がいる」とか「ずるずる」などとありますが、これが事実だとすると患者さん側にも問題があります。はっきり言いますけど「ご自分の体」ですよ、「一度削られたら元に戻らない」のですよ、それなのに義理人情で治療続けるのですか?歯科医師歯科診療所は十人十色、ピンからキリまでいます。「違う」「やばい」と思ったら無断キャンセルであろうが「電話します」でもいいので止めるべきです。あなたの歯を守るのはあなたしかいません・・ただし「あなただけで完璧に守れないのも事実です」。となるとベストな方法は後手後手医療から先手先手予防に考えを変えることです。

二つ目の記事は『ウクライナ侵攻 銀歯の材料「パラジウム」価格急上昇で危機感』。ご存じかも知れませんが、歯科用金属の金銀パラジウム合金(金パラ)には20%のパラジウムが含まれています。『仕入れ価格は30グラムあたり2万円近く値上がりして、診療報酬の基準となる価格よりも1万円以上、高くなっているということです。金銀パラジウム合金の価格は、これまでも上昇傾向にありましたが、ウクライナ情勢の悪化が追い打ちをかけているとしていて、歯科医院ではこのまま価格の高騰が続けば、持ち出しが増え、経営を圧迫して、人件費などを削らざるを得なくなると、危機感を募らせています』(引用元)。ひょっとするとパラジウムの高騰を理由に、保険外の被せ物を勧める歯科医がいるかも知れませんが、保険診療は価格(保険点数)が決まっていますので、患者さんには無関係な話です。また現在保険では、条件付きですが6番目の歯までは白い被せ物(CADCAM冠:キャドキャムかん)が保険適用です。歯医者が削る前に「被せ物は白ですか?銀色ですか?」と確認されることを強く勧めます。もし、突然歯医者が削り始めたら左手を上げてうがいを希望し質問された方がよろしいかと。

今からでも遅くありません、まずは予防(歯石取り・クリーニング)で受診されることをお勧めします。不幸にも治療(削ること)が必要な場合は、削られる前になんの目的でどのような治療なのかをしつこいまでに聞くこと。そうして納得いかなければ「その治療は次にしてください」と言って次の予約を入れないことです。皆さま、くれぐれもご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 557 現在過去未来

「スナックに煮凝のあるママの過去」小沢昭一

2022/2/4投稿 2/5追記 
「現在過去未来」から渡辺真知子の歌(迷い道)を連想した方は同世代です。解説には『掲出句の煮凝は料理として作られた煮凝ではなく、ママさんが昨夜のうちに煮ておいた魚の煮汁でできた煮凝であろう。お店で愛想を振りまいているママさんの過去について、男性客たちはひそかに妄想をたくましくしているはずだが、知りようもない。知らないなりに、しみじみと煮凝をつついているほうが身のためです。まあ、女性としての変遷がいろいろとあったのでしょう。決して輝かしい一品料理ではなく、さりげない(突き出しの)煮凝に過去の変遷が重なって感じられる。ママさんの過去がそこに一緒に凝固しているようでもある』(解説より抜粋)。今回は「過去」についてのお話。

俳句に出てくる「ママ」に限らず、人にはそれぞれの過去があり「今」現在があり未来へとつながります。これは病気においても同じこと。過去(病因・誘発因子など)があって発症(現在)し、回復した後は再発予防、予後のフォローとして未来へ続きます。さて先日のこと。女性が左下の歯の違和感で来院。その方の話では痛くなりそうな時に、かかりつけで薬(軟膏)を入れてもらっていたとのこと。今回も同じような症状なので「軟膏を入れて欲しい」が主訴(しゅそ:主なる訴え・希望・困り事)。口の中を診て歯のレントゲンも撮りましたが、歯茎は腫れていないし、軟膏を入れるようなポケット(歯と歯茎の間の空間)もありません。もしやと思い噛み合わせを確認するとその歯に入れてある金属インレーのみが強く当たっていました。今の状態を鏡で確認してもらい「噛み合わせ」が原因の可能性があると説明し咬合調整しました(当たり過ぎの金属を削る)。するとその方曰く「軽くなりました」・・この金属インレーは何年も前に入れて、思い起こせばその後から左下の違和感と左肩の凝りを自覚し始めたとのこと。

診療において、まず診るのは「今」です。今の困り事を解決するであろう治療法が複数ある場合に未来(予後:よご、治療後の経過など)を説明し、患者さんの希望も加味して治療法を決めます。例えば金属の詰め物(インレー)が外れた。問題なければ再セットします。他には、大きさにもよりますが樹脂を埋めましょう(CR充填)、新たにムシ歯ができているので新しく作りましょう、などの選択肢が考えられます。患者さんにオススメしたいのが「なぜ?外れたのですか」と歯科医に尋ねてみたください。その質問に歯科医は「キョトン」とするかもしれません。ケースにもよりますが、理由が歯科医にわかる場合とはっきりしない場合とあるでしょう。いずれにせよ「外れた原因は?」と聞くことをオススメします。

人の体は超精密機械(ロボット)です。不都合が起きる場合には必ず原因があると言えます。転んで歯を折ったなどの外傷以外は、ほぼ過去があっての今です。ムシ歯も同じ、習慣的に(砂糖いっぱいの)缶コーヒーを飲んでいる方は、それなりのムシ歯の出来方となります。入れ歯(義歯)が割れた時その時の対応が、ただ破折部位の接着であればまた割れる可能性があります。過去(割れた原因)を歯科医が診ていなければまた割れます。繰り返しますが「過去」を聞いてみてください。では皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。

追記2/5:定期検診などで「ムシ歯ですね」と診断されたら「なぜムシ歯が新たにできるのですか?」と聞いてみてください。おそらく歯科医は「磨き方が足りなかったからでしょう」と答えます。「毎日磨いているのに、何が足りなかったのですか?」とさらに質問してください。それに対する答えでその歯科医の力量がおおよそ分かります・・日常、歯を磨いているのにムシ歯発生・・原因は必ずあります。その核心を突き止めなければ、数ヶ月後の定期検診で再び「ムシ歯がありますね」と言われるでしょう。核心が明らかにならなければ、不十分な予防しかできません。過去(原因)あっての今であり未来です。

BBTime 554 色違い

「買初にかふや七色唐辛子」石川桂郎

今年の買初(かいぞめ)は結果的にiPhoneでした。2年ごとの機種変更ですが、今回は難産も難産、堪忍袋の緒が切れました。・・唐辛子について以前「BBTime 269 人生七色唐辛子」に書いております。「人生、七味とうがらし ある占師  鷲田さんのことば うらみ、つらみ、ねたみ、そねみ、いやみ、ひがみ、やっかみ。人を翻弄(ほんろう)するこれら七つの性(さが)は、いずれも自他の比較に由来する。他人と較(くら)べる中でしか自己を見ることのできない人の宿痾(しゅくあ)であり業である」(一部抜粋)。とは言え、今回は恨み、辛み、嫌味など言いたくなりました(小人です)。

本題に入る前に句の解説を・・『買初(かいぞめ)は「初買」とも言い、新年になって初めて物を買うことだ。といっても、スーパーで醤油や味噌などを買うのとは違う。新年を寿ぐために、いささか遊び心の入った買い物をすることを指している。だから、いろいろと買うなかで、本年は「買初となすしろがねの干鰈」(岡本差知子)と思い決めたりする。句として公表するとなれば、おのずから作者のセンスが問われるわけだ。作者は「七色唐辛子」を「買初」とした。なかなかに小粋な選択ではないか。買初コンテストがあるとしたら、必ずベスト・テンには入りそうである』(一部抜粋)。さて本題です。

事の起こりは昨年4月のこと、毎月のスマホ代(通信料と機種代)を圧縮しようと使用中キャリアの弟分へ相談したところ「安くなります」「最新機種への変更も可能です」「四年払いの残り二年分はチャラになります」と、こちらの希望が全て叶います、とのことで二つ返事で乗り換えました。ご存じのようにiPhoneは毎年9月に新機種発表です。9月に段取り確認で弟分キャリアに足を運び、12月が買い替え時期のため、再度11月に日程を詰めるために足を運びました。ちょうどその頃、半導体不足により品薄との報道でしたが、12月下旬には三台揃いますとのことで機種変更日を予約。たまたま予約の二日前に近くに寄ったので顔出してみると「間に合わないかも」とのこと。まぁしょうがないかと予約変更して当日(クリスマス)にワクワクしながら(iPhoneは最高のおもちゃです)店に行くと・・色が違う!予約した色が届いていない!店側は「高級感のあるグラファイト(黒)」がありますが・・予約色はシルバーなのに「高級感」もへったくれもないもんだと頭に血が登り始めました。まぁケースに入れるので百歩譲って「黒」でもいいです、と店側の不当な要求を飲みました。この後、耳を疑うことを言い出すではありませんか!思わず「What did you say? 何だって?」と声を荒げました。

店員曰く「今回新機種変更される3台のiPhoneは、残債なしと思ってました」さすがに爆発!・・「残債(三台分で約二十万)をチャラにする方法は?」への回答が「使わないでも良いので安いアンドロイド(三万三千円)を買ってください」そうすれば「残債がチャラにできます」と言うではありませんか。1台13万円以上する買い物で、数ヶ月前から予約しており、段取り確認で数回足を運んだ結果が「高級感のある黒ならあります」「必要のないアンドロイド買ってください」・・あきれてモノが言えません。お店にはバイバイしました。数日後、晦日(12/30)に年末の買い出しの際に「使用中の機種買い取ります」との看板を別のキャリアの店先で発見。大まかに希望を言うと「可能です」とのことで、年明けに乗り換えキャンペーンがありますのでその時に・・と小生にとって渡りに船、正月早々行きました。担当男性に今回のことの顛末を話し、こちらの希望機種を伝えると、目の前で「今、当店にはご希望の色はございませんが、福岡店にありました。発送を指示しました」とテキパキ。前のキャリアとは違うと感心しながら次の予約日を決めました。ところが・・・またしても

予約当日、店に出向くと前回の対応ではない別男性店員、嫌な予感。予感的中、またしても希望した「シルバー」が届いていない!運送業者が云々と言い訳がましく話しますが、昨年末のことがあったのでさすがにキレました。「あなたは十万円以上の品物、例えばヴィトンのバッグを予約していて、店側の指定した日に行って、希望された色は届いていません、別の色ならありますが」と言われて「ハイ、それ買います」と言いますか?と詰問しました。店員は「すみません」・・すみませんじゃなくて「あなたは違う色を買いますか?と質問しているのです」と再度聞くと・・「いえ、買いません」

愚痴を聞いて頂いて申し訳ありません。今回、色に関してひとつ付け加えます。歯科治療自費診療(保険外治療)において色が関係する治療があります。多くはセラミックの被せ物だと思います。おおかた十万円以上の治療、言い換えれば十万以上の買い物です。色に関して満足もしくは納得できなければ必ず「色が納得できません」と仰ってください。自費診療において患者さん(客)は妥協する必要はありません。保険診療には限度があるので、色において「完全納得」といかないことはあります。しかしながら自費診療において妥協する必要はありません。歯科医が何やらぶつぶつと言っても自費診療ですので満足納得いくまで希望を伝えてください。

What did you say? (何と言ったの?)今回、耳を疑うような対応が続きケータイ会社では「色違い」は当たり前、普通のことなんだろうかとまで思いました。客の希望(予約)と色が違っても「どうせ買うだろう」という考えがあるのでしょうか?ちなみに今回登場する3社は「SAY」。はじめ「Say Yes」で最後は「Say No」のお話でした。皆さま、ご自愛の程ご自愛の程。

BBTime 518 記事ふたつ

BBTime 518 記事ふたつ
「行く春について行きたる子もありし」矢島渚男

読み返してみても、解説にあるような深い意味を推測すらできませんでした。解説には『掲句の「子」は、赤ちゃんよりはもう少し大きい子だろう。作者の知っている子だが、そんなによく知っていたわけでもない。たぶん近所の子、あるいは友人か知人の子で、その死は伝聞によってもたらされたくらいの関係か。春の終り。生きとし生けるものの生命が盛んになる夏を待たずに逝った子のことを思って、作者の心はいわば春愁のように沈んでいる。しかし沈みながらも、作者は悼む気持ちをできるだけ相対化しようとしている。実際、子供というものは、習性と言ってよいほどに何にでもついていきたがる。だからこの子は、きっと春についていっちゃったんだと、そう思い決めることにしたのである。これまた、苦いユーモアにくるんで刻んだ心やさしい墓碑銘と言ってよい。『百済野』(2007)所収』(解説より)。最近、目にした記事について。

ひとつ目は、5/17記事「排ガス規制が「銀歯」に影響、原材料のパラジウムが高騰 「100万円前後の持ち出しも…」(出典はこちら)。車の排ガス規制で・・「風が吹けば桶屋が儲かる」のような話ですが、これは数年前から歯科業界では言われ続けてきた事実です。記事には『排出ガス規制をクリアするために、自動車に「排ガス浄化装置」という装置を組み込んでいる。この装置を作るうえで欠かせないのが「パラジウム」という金属。いま世界各国の需要拡大に伴い、このパラジウムの価格が高騰している。パラジウムが実は「銀歯」の材料にもなっている。歯科医院で虫歯の治療に使われる銀歯だが、原材料は銀だけではなく金、銀、パラジウムなどからなる「金銀パラジウム合金」、通称「金パラ」という合金から作られている。パラジウムの価格高騰により、この金パラの価格も上がっているのだ』(引用元)。

車(ガソリンエンジン車など)の排気ガスを浄化する際に触媒としてパラジウムが必要で、大量にパラジウムが使われるようになり高騰しているとのこと。ちなみに歯科用金属にパラジウムを混ぜているのは日本だけだと言われています。歯科用の通称「キンパラ・12パラ」とは金(ゴールド)を12%含む歯科用金属のことで、その組成は「金Au 12%、パラジウムPd 20%、銀Ag 52%前後、銅Cu 15%前後」。パラジウムを混ぜる理由は、適度な硬さ(天然歯に近い)にするためで、似たような硬さにしないと、その金属(冠やインレー)とご自分の歯が長持ちしないからです。画像はパラジウム地金

ネットでパラジウム価格を見て驚きでした!5/18時点で、1グラム当たり金:7254円、プラチナ:4886円、パラジウム:11467円、銀:117円の相場です。パラジウムは金の約1.5倍の価格、銀の100倍です(引用元)。実は数年前より歯科治療で「脱パラジウム」の動きが加速しています。簡単に言うと「白い被せ物:白いクラウン(冠)」の保険適用が拡大されています。口の中の条件・状態にもよりますが、大方上下とも6番目の歯までは白い冠が保険適用となっています。ついでに、土台(コア)の材料も脱金属の流れです。もし今後、歯の根の治療後に「被せ物はどうしましょう?」との質問には「金属を使わない方法は?」と聞いてみてください。一概に言えませんが、土台であれば「ファイバーポスト」、被せ物なら「CAD/CAM冠:キャドキャムかん」がオススメです。高騰しているパラジウムを使用しない分、割安感もあります。蛇足ですが・・エンジンを持たない車(電気自動車など)が増えるにつれ、当然ながら「触媒としてのパラジウム」の必要性は減少し、いつしかゼロとなります・・その時にはパラジウムは暴落するでしょうね。

さて二つ目は、5/17記事「歯磨きに「虫歯を予防する効果はない」衝撃事実」・・この見出しを鵜呑みにするとショックでしょう。この見出しの真意は「歯磨きだけではムシ歯予防は不十分です」だと解釈しました。記事には『実際に歯ブラシでこするだけの歯磨きには、むし歯の予防効果はありません。なぜなら、むし歯になりやすいところは、たいてい歯ブラシの毛先が届かないからです。むし歯になりやすいところとは、奥歯の噛み合わせの溝の中と、歯と歯の間です。また、一度むし歯を削って材料を詰めた場合、詰めた素材と歯の境目も、歯ブラシの毛先が届かず、新たにむし歯になりやすい箇所です』(引用元)。この文章は真実ですが、即「歯磨きに予防効果はない」とするのはちょっと飛躍し過ぎだと思います。

2ページ目で『最も効果的なむし歯の予防法は、フッ素を使うこと。フッ素には、むし歯の初期に起こる、歯から唾液中に溶け出したカルシウムやリンを元の歯に戻す効果があります(再石灰化作用)。また、口の中の細菌の増殖を抑える作用や、歯のエナメル質に働いて酸に溶けにくくさせる作用もあります』(引用元)。とあり3ページ目に結論として『「むし歯を減らす」たった2つの方法・・・むし歯ができないためには、むし歯ができる環境を根本的に改善する必要があります。そのための一番の近道が、砂糖を摂る頻度が高い人は、その頻度を減らすことです。  また、長い間、歯に詰め物をしていたり、歯の根が露出したりして、むし歯のリスクが高まっている人なら、フッ素入り歯磨き剤を使うことです。この2つを実践するだけでも、むし歯になるリスクは一気に低くなるのです』(引用元)。

揚げ足取る気はありませんが・・・歯磨きに効果なしと見出しにするのに、結論で「フッ素入り歯磨き粉を使うのが良い」と・・歯磨き粉を指で歯に塗るわけでもないでしょうから、やはり歯磨きは必要ですよね。さらにアドバイスするならば、夜の歯磨きをメインとし時間をかけてください。まず歯ブラシに歯磨き粉を付けずに「唾液」での歯磨きをオススメします。口の中で最もムシ歯ができにくい部位は下の前歯です。理由はシンプル・・常に唾液で濡れているから。つまり唾液によって守られているからです。鏡で口の中を見てください、ベロ(舌)を上げるとピンと伸びたスジ(舌小帯:ぜつしょうたい)が見えます。小帯の歯に近いところに左右に小さな膨らみ(舌下小丘:ぜっかしょうきゅう)が確認できます。ここから唾液が出てきます。よって下の前歯は始終唾液で守られている訳です。すなわち唾液には歯を守る作用があるんです。と言うことで、まずは唾液磨き。歯磨き粉を使うのは最後にちょこっと、歯ブラシに載せ、歯磨き粉を歯の表面に塗るつもりで歯磨きし、うがいせずに吐き出して終わり!せっかく塗布したフッ化物をうがいで流してしまうのはもったいないのです。このやり方だと、翌朝起床時の口の中のネバネバが少ないのが実感いただけます。

最後に、最もムシ歯予防効果のある方法をお教えします!ズバリ「歯は磨いても、もらうもの」なんです。セルフケア(自分磨き)でフッ素入りペーストを常用し、月に一度は「プロケア」を受けることを勧めます。脱金属で白い冠や詰め物を選択する、保険外でセラミック製のモノを選ぶ・・ご存じのように生えてきた時は白い綺麗な歯です。守った方がお得ですよ!繰り返しますが「歯は磨いても、もらうもの」。ではでは皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。4930

BBTime 471 エアロゾル

BBTime 471 エアロゾル
「歯痛に柚子当てて長征の夜と言いたし」原子公平

先ずは句の解説を・・『夜の「歯痛」は心細い。歯科医に診てもらうためには明日まで待たなければならないし、そのことを思うだけでも、痛みが増してくるようである。とりあえず、手元にあった冷たい「柚子(ゆず)」を頬に当ててみるが、ちょっと眠れそうにないほどの痛みになってきた。とにかく、このまま今夜は我慢するしかないだろう。そんなときに、人は今の自分の辛さよりももっと辛かったであろう人のことを脳裏に描き、「それに比べれば、たいしたことではない」と、自分を説得したがるもののようだ。』(解説より前半)。句では「柚子」ですが、古来(江戸時代)、歯痛の時に人々が神頼みしたのは「梨」でした。先日『WHO「歯科定期検診は先送りを、エアロゾル感染めぐり研究必要」』の記事を目にしました。今回はコロナ禍における歯科受診について。

記事は・・『世界保健機関(WHO)は11日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が抑制されている地域で歯科医院が再開していることに伴い、空気中を漂う微粒子「エアロゾル」を介した新型コロナ感染から患者やスタッフを守る必要があるとの見解を示した』。現時点で確たる証拠はないものの・・『WHOは、エアロゾル発生の可能性がある処置についてより多くの研究が必要と指摘。現時点で歯科医院の治療椅子から新型コロナに感染したというデータはないが、エアロゾルに関する研究対象には口内に風や水をかけるスリーウェイシリンジや歯の表面をきれいにする超音波洗浄装置、研磨などが含まれるとした』(記事より)とのこと。

エアロゾルとは『粉塵や煙、ミスト、大気汚染物質などといった空気中に浮遊している粒子のことで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大の原因の1つでもあるとされている』(引用元)。確かに歯科では歯の切削時には水で冷却しますし、スリーウエイシリンジ(水・空気・水+空気)を始終使いますので、リスクゼロとは申しません。定期的に来院することで得られるメリットと感染リスクを皆様が判断されるのが良いでしょう。勿論歯科医としては定期来院は必須と考えますので、来院して欲しいと思います。

画像は「戸隠神社:とがくし」。江戸時代、歯科医がいなかった頃は「戸隠様」にお願いしたとのこと。『江戸時代、歯が痛くなると口中医という現代の歯科医院のようなところで、主に抜歯をしてもらっていましたが、一般庶民には治療費が高く、通うことができなかったようです。では、どうしたのか? 所謂、加持祈祷を行ったのです。具体的には、「九頭龍大神を祀っている戸隠神社(長野県長野市)で、歯を患った者が3年間『梨』を絶って参拝すると治る」という言い伝えがあり、信仰したようです。戸隠神社に行くことができない江戸庶民は、梨の実に自分の名前と痛む歯の場所を、例えば「右上の奥から3番目」などと書いてから神社のある戸隠山の方角を向いてお祈りし、その後、梨の実を川へ流したと言われています』(引用元)。落語「佃祭」にもこの話が出てきます。歯医者のいる現代、痛くなったら歯科へ。願わくは痛くなる前に歯医者へ。皆様ご自愛の程ご歯愛の程。6900