BBTime 655 シンブログ

「ある朝の焼海苔にあるうらおもて」小沢信男

2024/04/26投稿 4/25「惜春のバタークッキー
4/30「バウハウスのポスター」 5/8「河内晩柑
本当に、今年は晴日の続かない春です。句の解説『海苔(のり)に裏と表があるくらいは、誰でも承知している。でも、食卓でいちいち裏表を気にしながら食べる人はいないだろう。ご飯などに巻きつけるときに、ほとんどの人は海苔の表を外側にしていると思うが、無意識に近い食べ方である。ところが、作者はある朝に、どういうわけか海苔の裏表を意識してしまった。「ふーむ」と、箸にはさんだ「山本山」か何かの焼き海苔を、裏表ひっくり返してみては、しきりに感心している。こんな図を漱石の猫が見たら、何と言うだろうか。想像すると、楽しくなる。しかし、こういうことは誰にでも起きる。当たり前なことを当たり前なこととして直視することがある。他人には滑稽だけれど、本人は大真面目なのだ。そして、この大真面目を理解できない人は、スカスカな人間に成り果てるのだろう。余談になるが「山本山」のコマーシャル・コピーに「上から読んでもヤマモトヤマ、下から読んでもヤマモトヤマ」というのがあった。すかさず「裏から読んでもヤマモトヤマ」と反応したのが、今は早稲田大学で難しそうな数学の先生をやっている若き日の郡敏昭君であった。『足の裏』(1998)所収。(清水哲男)』(引用元)。誰でも承知している?・・知ったのは大人になってかなり経ってからでした。アルミホイルの表裏は知ってましたが。今回は新連載ブログについて。

去る二月のこと。美味しい生パスタの店「トマトの実」のカウンターに雑誌オレンジページ。パラパラめくると「エディター募集」の記事。原稿料なしですが、(ライターになる)良いチャンスと思い応募したところ採用されました!今月中旬オンライン説明会後、アップ可能となりました。オレンジページエディターとして随時ブログをアップしていきます。「オレペエディターblog」です、是非ご覧ください。

冒頭の句の解説に『どういうわけか海苔の裏表を意識してしまった』・・実は小生には、このようなことが多々あります。と言うより癖か性分なのか「当たり前な事に何故だろう?」と疑問を抱きます。例えば・・学生時代に「(超個人的に)日本人の定義は?」と思い、小生なりの答えは「日本文化を嗜(たしな)んでいる」・・その後、社会人になって「茶道」を習い始めました。ブログではカルノ的視点で感じたことを文章化していきます。

プロフィールの文章:はじめましてカルノです。歯科医になって38年、ムシ歯予防カフェ「おやつ堂」店主として丸一年。興味あること多かれど、大まかに「食う飲む遊ぶ、はは大事」にちなんだブログをアップします。「食う」鹿児島のみならず旅先でのグルメやスイーツ。「飲む」ワインを主に抹茶・茶道についても。茶道は茶名「宗秀」にて裏千家専任講師。「遊ぶ」は旅や生活雑貨など。「はは大事」歯は大事で健康や歯について。お見知り置きを!
https://www.instagram.com/oyatsu.do/

版画は黒木郁朝(いくとも)氏。内容が拙ホームページconnote.jpとかぶる事もありますが、ご容赦の程。ちなみにアルミホイル使用の際は「表裏どちらでも同じ」とのこと、詳しくはこちら。「あれなんだっけ?」「なぜなの?」などの疑問などございましたら遠慮なくリクエストください。ジャンルは「食う 飲む 遊ぶ」「はは大事」がメインです。ちなみにご紹介1曲目は「あれ、なんだっけ(名前が出てこない)」を英語で「Whatchamacallit=What you may call it.」。皆様、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 591 好きなカフェ

「突抜ける青が好き青十月の」北島輝郎

2022/10/08投稿 10/12夜ニカクモノ追加
画像は十月三日(月)朝七時半、磯からの桜島です。句の解説は『直球。ストレートに、十月をむかえた喜びを歌っている。爽やかな十月。今年も、そうあってほしいものだ。。さて、せっかくの爽やかな句の雰囲気に水をさすようだが、今日は一理屈こねたくなっている(えっ、いつものことだって、……すみません)。そんな気分になったのは、句の「好き」に触発されたからだ。いつの頃からか、俳句や短歌に「好き」だの「嫌い」だのという生(なま)の感情がそのまま詠まれるようになってきた。とてもひっかかる言葉遣いだ。理由は、もとより「好き」や「嫌い」は誰にでも生ずる感情だけれど、それを生で表現することの意図がわからない点にある。そうした作品を読むと、「好き」「嫌い」は作者の勝手であるが、読者である私はそう言われても困ってしまう場合が多いのだ。そこのところを、作者は読者が困らないように説得するのが「作品」であるのに、それをしていない「作品もどき」が大半である。私の常識では、この種の書き物を文学とはとても呼べない。文学以前に、作者がそうした個人的にしか通用しない生の感情を、なぜ作品として発表したいのか。他人に読んでもらいたいのか。不可解すぎて欠伸が出てしまう。社会常識もたいしたものではないことを前提にして言うのだが、こうした表現などをひっくるめて、世間は「変態」と呼んできた。ただ、私に言わせれば「変態」も結構なのだけれど、幼稚な「変態」は「嫌い」だということである。(清水哲男)』(解説より)。結局、清水氏はこの句を評価されているのだろうか?さて今回は「好きなカフェ」のお話。

これは「coffee innovate:コーヒーイノベート」。昨年晩秋、アジアンテイストのレストラン「ARTON:アートン」に行ったところ、二軒先工事中。尋ねるとカフェができるそうな・・そこがイノベートでした。TJカゴシマ10月号No.509に見開き2ページで登場。

このカフェ、ヨイショするわけではないのですが・・スゴイんです。コーヒーと週一回納入されるビーガンスイーツ(Veda Sultenfuss)もさることながら、マスターの人間関係が凄いんです。全国区イラストレーターラッパー写真家(デザイナー)、木工鉄工家他、料理人、音楽人、ヤクルトレディーに至るまで!来年2月開店のムシ歯予防カフェ「おやつ堂」の相談にも乗ってもらってます。(おやつ堂:ホテルシェラトン鹿児島から徒歩三分の場所に来年2月オープン!)

人間関係も特筆物ですが、マスターご自身が特筆者。太宰治から鈴木大拙まで、本を読んでる読んでる!マスター相手に討論なんて、十年どころか百年以上早いと思わせる読書量と見識と自己理論を持っていらっしゃいます。是非カフェに来て人生を哲学を文学をコーヒーを、マスターと語って欲しい、と思いながら通ってます。山頭火の句に「へうへうとして水を味ふ」があります。へうへうを漢字で書けば「飄々:ひょうひょう」。さしずめマスターは「飄飄として珈琲を味ふ」・・・ですが、頭や心の中は桜島に劣らず熱いドロドロが回っております。もし、対応が素っ気なく感じられたらマスターがシャイなだけなんです(おそらく)。

イノベートに来るといつも感じます。世の中に「不可能は無い!」。マスターに相談すると、何かしら情報やヒントを返してくださるし、店に来るまで「Impossible」と思えたことが、店を出るときには「I’m possible!」に変わっているのです、気持ちの中で。

何の目的でカフェに足を運ぶかは、人それぞれ店それぞれ。小生の中ではcoffee innovateのメインメニューは奇しくも福岡美美(びみ)の伝票に書いてあった文章ではないかと思うのです。
『ダルマサンガコロンダすきに 世の中も変わっとる ゆっくり珈琲ば飲んで 元気に起き上がってみんしゃい 何か手があるや呂』(昔の伝票の裏の文章)。こちらもどうぞ。
皆さま、是非コーヒーイノベートに。ご自愛の程ご歯愛の程。

追加10/12 coffee innovateの仕掛けのひとつ「第二回コーヒーイノベート作文コンクール」への投稿文です。今回のテーマは「夜に書く文」・・だったような。

夜ニ「カク」モノ
夜に「かく」もの、あぐらで酒飲み
夜に「斯く」もの、酒を飲み飲み斯く斯くしかじか
夜に「かく」もの、飲んで眠って高らか鼾
夜に「欠く」もの、歯磨き忘れ歯を欠くムシ歯
夜に「掻く」もの、蚊に刺され痒い痒い
夜に「欠く」もの、夜空の月
夜に「欠く」もの、お茶碗欠いた悪い夢
夜に「カク」もの、ふと目覚め男性諸氏の独り遊び
夜に「駆く」もの、二度寝して夢は枯野を駆け巡る
夜に「書く」もの、面白味に欠くこの駄文


BBTime 580 ハニ!チーズ

「一生の楽しきころのソーダ水」富安風生

2022/06/30投稿 6/30追加
この季節、大好きな句です。解説には『季語は「ソーダ水」で夏。大正の頃から使われるようになった季語という。ラムネやサイダーとは違って、どういうわけか男はあまりソーダ水を飲まない。甘みが濃いことも一因だろうが、それよりも見かけが少女趣味的だからだろうか。いい年をした男が、ひとりでソーダ水を飲んでいる図はサマになるとは言いがたい。だからちょくちょく飲んだとすれば、句にあるように「一生の楽しきころ」のことだろう。まだ小さかった子供のころともとれるが、この場合は青春期と解しておきたい。女性とつきあってのソーダ水ならば、微笑ましい図となる。喫茶店でソーダ水を前にした若い男女の姿を目撃して、作者はあのころがいちばん楽しかったなあと若き日を懐古しているのだ。むろん、味などは覚えてはいない。ただそのころの甘酸っぱい思いがふっとよみがえり、やがてその淡い思いはほろ苦さに変わっていく。』(解説より抜粋)。さて今年の鹿児島、梅雨入り後は雨あめアメ・・でしたが、アッと言う間に明けました。そうしたら即真夏!今回は「ハイ、チーズ」ではなく「歯にチーズ」のお話。

記事を見つけました。タイトル『虫歯はチーズで予防できる!WHO報告書で「エビデンスはほぼ確実」』。内容はタイトルの如く、チーズを食べるとムシ歯予防効果ありと言うものです。『「WHOのテクニカルリポートという報告書によると、虫歯リスクに関する科学的根拠を『確実』から『根拠不十分』まで4段階に分けた中で、リスク軽減の効果が『確実』とされる物質はフッ化物。そして、これに次いで効果が『ほぼ確実』とされたのがハードチーズでした」』(記事より)。キシリトール配合ガムよりもより確実な予防効果があるとのこと。

二つの理由を挙げています。再石灰化と緩衝能・・『「チーズは、再石灰化を促す働きがあります。チーズを噛むとその刺激で唾液成分が倍増し、カルシウムイオンやリン酸イオンによる修復が進みます。また、唾液には食事で酸性に傾いた口の中を中性に戻す緩衝能があり、虫歯を起こしにくくします。そしてこの緩衝能は、チーズにも備わっています」』
記事より)。

チーズの中でもハード系がオススメ・・『チーズの中でも特に、チェダー、パルメザン、エメンタール、ゴーダといったハードチーズやセミハードチーズが、カルシウムとリン酸の量が非常に多い。しかしチーズなら種類を気にせず、なんでもOKとのこと』(記事より)。『「虫歯予防のためにチーズを食べるなら、食事の最後が望ましいです」  何らかの食品と一緒にチーズを食べても、チーズの働きは阻害されない。もちろんお酒もOK。むしろお酒はほとんどが酸性なので、中性に戻す作用に優れるチーズと食べることが推奨される』(記事より)。手前味噌です、前回ご紹介した「そんなバナナジュース」は、牛乳・バナナともph(ペーハー)は7前後で中性です。ちなみに冒頭のソーダ水は、砂糖ゼロであっても安心とは言えません。炭酸水(ソーダ水)そのものが酸性飲料ですので、飲んだあと可能ならば、水かお茶を飲まれることをオススメします(中性に戻すために)。皆さま暑過ぎる日々です、ご自愛の程ご歯愛の程。

追加:はい、チーズについて。
ご紹介した曲のタイトルを見て頂けるとお分かりのように「はい、チーズ」のオリジナルは「Say,cheese」(セイ、チーズ:チーズと言って!)です。Say(セイ)を「ハイ」に替えただけですが、これは見事に当たりましたね。詳しくはこちらをどうぞ!日本輸入時は、まさにチーズがらみのようです(笑・スマイル・チーズ)!

BBTime 579 そんなバナナジュース

「バナナがいっぽんありました」片岡輝

2022/06/24投稿
「そんなバナナジュース誕生秘話」
1)歯は、磨いてももらうもの
 1990年に人口約五万の地方都市で歯科を開業しました。開業したて、ムシ歯の多い小学生に「歯を磨きなさい」、親御さんには「あまり甘いお菓子を食べさせないように」と真顔で諭していました。ある時、小学四年生の男の子と母親が来院。磨き残しがあるので、母親にも見てもらい「子供さんに磨くように言ってくださいね」と言ったところ、親子喧嘩に・・母「磨きなさいと、いつも言ってるでしょ」、子「磨いたもん」。母「汚れが残ってるじゃない」、子「ちゃんと磨いたもん」。徐々にヒートアップ、ついに男の子は涙声に・・はたで聞きながら「はた」と思いました!「そうか、この男の子はちゃんと自分で磨いたんだ。けど磨き残しがあった」・・ひょっとすると「自分ではきちんと磨けないのではないか」と歯科医として遅まきながら気付いたのです。そうなんです「歯は磨いても、もらうもの」なんです。左手に絵の具が付きました、自分の目で見てわかります。右手で左手の汚れを落とします、キレイになったかどうかもわかります。絵の具と違って、歯の汚れは自分ではよく見えません。どこが汚れているかなんて、大人でもわかりません。歯医者は長年、不可能なことをあたかも可能なこととして、「ちゃんと磨くように」「磨き残しがあるからムシ歯になった」と言ってきたのです。ご自分で隅々までキレイにすることは不可能なことなんです。自己反省も含めて声を大にして言います「歯は、磨いてももらうもの」。

2)ダイエットレストラン
 ジョギングしたり、ジムに通ったりとダイエットに勤しんでいた時に、ふと「入店前と店を出る時と、体重が1グラムたりとも増えないレストランがあったなら、味はイマイチでも流行るんじゃないの」と思いました。現実的には無理な話ですが・・閃きました。歯科ならできる!入店前より口の中がキレイになって店を出る!思いついたら即実行で十年ほど前、天文館に「歯のクリーニング専門店」を開きました。しかし約十ヶ月で閉店。後になって理由がわかりました。開店したのは「クリーニング店」であって「クリーニングレストラン」ではなかったのです。メインになるものが何もなかったのです。

3)ムシ歯予防カフェ「おやつ堂」
 クリーニング専門店閉鎖後、勤務医として働きながら自問自答の毎日。巷では「美味しい店」「美味しいスイーツ」などグルメ情報が年がら年中花盛りです。美食と歯は隣同士。歯が健康でないとグルメは楽しめません。美食と歯をどうにかして繋ぐことはできないだろうか?この問いへの答えが「ムシ歯予防カフェ」です。カフェでムシ歯予防・・カフェに来られたお客さんで希望される方の歯をプロが磨く「歯は磨いても、もらうもの」の実践です。ムシ歯予防カフェ「おやつ堂」は来年(2023年)2月開店予定で現在準備中です。

4)そんなバナナジュース誕生
 ムシ歯予防カフェ「おやつ堂」に必要なものは「スイーツ」と「飲み物」。スイーツはネットなどでの取り寄せスイーツがメインで、当然のことながら砂糖が入っています。かたや飲み物に関しては「砂糖ゼロ」にこだわりました。「砂糖ゼロ飲料」の主役がバナナジュースです。幼い頃、バナナは「果物の王様」「病院見舞いの定番」「高嶺の花フルーツ」でした。その反動か、大人になってからはバナナをよく食べ、バナナジュースも作っていました。甘く美味しく砂糖不使用のドリンク・・・バナナジュースしかない!早速レシピの研究です。経験に加えネットで作り方を検索、基本のレシピを少しずつ改良し、毎朝バナナジュース試作。バナナと牛乳だけでは物足りないので、隠し味の探求。ヨーグルトを入れたりバルサミコ酢を加えたり、さらに生クリームを足したりと・・。ある朝のこと、ある果汁100%果物飲料が冷蔵庫に、加えてみると・・すごく美味しい!バナナと牛乳とこの果汁だけで!そんなバカな!この瞬間「そんなバナナジュース」の誕生です。その後も割合を少しずつ変え、ついに神レシピができました。砂糖不使用砂糖ゼロですからムシ歯にはなりません。歯科医として太鼓判のバナナジュース、この度、来年二月の「おやつ堂」開店に先駆けて荒田のカフェ「coffee innovate」にて来月7/1より提供開始です。是非そんなバナナジュースをご賞味ください。
おやつ堂店主 河野秀樹

BBTime 578 珈琲二題

「休むとは流れることねあめんぼう」黒田早苗

2022/6/14投稿
冒頭の句とタイトルは無関係です。句の解説は『口語でなければ表現できない俳句世界はあるだろうか。最近、口語俳句について考える機会があって、口語俳句にこだわっている人々の俳句や五七五にさえなっていれば後は自由という作品などを、まとめて読んでみた。はっきり言って、なかなかよい句は見当たらなかった。なぜ、口語なのか。多くの句が、そのあたりのことを漫然とやり過ごしているように思えたからである。俳句のような短い詩型にあって、たとえば文語である「切れ字」を使用しないで物を言う口語は、かえって口語を不自由に窮屈にしているようだ。そんななかで、掲句は例外的と言ってもよいほどに、口語ならではの世界の現出に成功している。同じ心持ちを文語的に詠めないことはない。』(解説より抜粋)。今回は珈琲(カフェ)について文を書く機会があったのでご披露します。機会についてはこちら

「句読点」  
ウイスキーよりワインを好む。持論だが、嗜好品にはそれぞれの役割がある。ウイスキーは過去へのタイムマシン。10年ものであれば10年前に、30年ものであれば30年前に思いを馳せる。残念ながらその多くは回顧ではなく反省であり後悔、みなほろ苦い。ひとり静かに、バーの棚に目を泳がせながら聞くともなくジャズに耳を貸す・・これが小生のウイスキーの飲み方。かたやワインは今。手にしたワインのエチケットを眺め抜栓する。グラスにトクトクと注ぎ鼻を入れ口に含む。トクトクがワクワクとなり、脳の中で花開く。魅惑的な人と初めて話す時のようなワクワクである。さて、コーヒーはいかに。
 その昔「コーヒーは日常における句読点」とは美美(びみ)のマスターの言葉、言い得て妙。緑茶は読点にしかなれず、紅茶は句点、コーヒーのみが句読点となりうる。朝起きて鉄瓶を火にかけ豆を挽く、湯が沸くと温度計で確かめ、秒を計りながら湯を落とす。湯気の中の薫りを探りカップに口をつける。目覚めの儀式となっている。新聞やネットに目を走らせながら、粗熱が抜けていくとともに変化する薫りと味を楽しむ、至福の時。
 賞状の文章には句読点がない。勝手に解釈するに、賞状の文章は見る文章であり、読むものではないのだ。日常において句読点がなかったらどうなるだろう。昨年のこと、コロナ禍における飲食店時間短縮中、一人暮らしのバーテンダーが店を閉めた。時に二週間、長い時で四週間。日々の会話はコンビニやスーパーでの「ありがとう」くらい、気が滅入ったとのこと。日常における何気ない会話、仕事中の必要な会話、家族とのまさに日常会話。会話がなければ、句読点も必要ない。日常に句読点がなかったらこうなるのかも。
 日々の句読点、これがコーヒー。流されがちな日常に「喝」を入れ、日々是好日を実感させてくれる。一日の流れにメリハリをつけてくれる、リズムを与えてくれる。そして安堵の一杯である。珈琲美美の伝票には「ダルマサンガコロンダすきに 世の中も変わっとる ゆっくり珈琲ば飲んで 元気に起き上がってみんしゃい 何か手があるや呂」と。そんなコーヒーが私は好きだ。

「クラインガルテン」
 このドイツ語をご存じだろうか。直訳すると小さな庭、ドイツにおいて二百年以上の歴史を持つレンタル市民農園で、その多くは集合住宅が集まる都市中心部から離れた郊外にあり、小屋が併設されているものもある。週末になるとドイツ市民は野菜づくりに勤しみながら畑の脇でBBQしたり、小屋でくつろいだりと、実益を兼ねたレジャーとして人気だそうだ。先日、近所の「カフェ」でこの言葉を思い出した。
 「カフェ」とはひと昔前まで喫茶店と呼ばれ、コーヒーそのものでもある。以前、美美(びみ)のマスターから興味深い話を聞いた。もともとコーヒーチェリー(コーヒーの実)の果肉部分を乾燥させた、いわば「干しコーヒーチェリー」が商品であった。それを適量口に入れ、噛んで滲み出る汁を飲み込んではまた噛む、まさにチューイングガムのようなもの。この「干しコーヒーチェリー」をクチャクチャしながらお喋りに興じる、その時のクチャクチャ音がお喋り「チャット」の語源だそうな。さて、ベドウインはその「干しコーヒーチェリー」を商品として交易の旅に出るが、いかんせんカビたり腐ったりする。いつしか果肉に代わってコーヒー豆が主役となり、乾燥豆ゆえより遠くまで流通するようになったとのこと。
 「チャット」とは、今でこそネット上での対話も指すが、もともとおしゃべりである。古来、コーヒーとお喋りは好相性だが、飲みながらの対話はコーヒーが興奮剤であるためか時に討論となり激論化することもあったろう。近代、知識人や文学・美術などさまざまな分野のオタクが集い刺激し合う場としてカフェが存在し重要な役割を果たしてきた。まさにカフェでのチャットが「カルチャ」を生み育ててきたと言えよう。
 「カルチャ」と言えば、そのカフェにはコーヒーの香りに加え文化もかなり匂う。日常的に絵画、絵画的アート、立体造形の展覧があり、壁には日々変貌するアート「花」が生けてある。カウンターにはイータブルアート(食べられるアート)といえるビーガンスイーツが並び、カフェの一角には「坐って半畳」の茶室が不思議な空間を醸し出している。はたまた鉄製十六角柱椅子が片隅に鎮座しており、店主と常連客が太宰治について熱く語っている。時にライブが催されると聞く。カルチャの雰囲気漂うというより、ここでは「文化空気」を吸いながらコーヒーを楽しめる。
 ご存じの通り「カルティベート:耕す・栽培する」がカルチャーの語源である。なるほど「クラインガルテン」を思い出したのも合点がゆく。ここでは様々な文化野菜が植えられ栽培されている。小生のクラインガルテンはここである。そう言えば、カフェの名はカルチベートに似ていたような気がする。

タイトル二題で、音楽は三題。余談ですが、太宰治が山崎富栄と入水したのが昭和二十三年(1948年)六月十三日、発見されたのが十九日。奇しくも十九日は太宰の誕生日でした。皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 546 アマゾン脱出!

「あたたかき十一月もすみにけり」中村草田男

先日(11/29)の桜島、まさに小春日和。解説には『昔から、この句が好きだ。なんということもないのだけれど、心がやすまる。実際に今年の十一月も暖かかったが、そういう事実を越えて、何か懐かしい響きを伝えてくれる句だ。意図的に使われている平仮名の、心理的な効果によるものだろう。字面は詠嘆的なのだが、詠嘆がまといがちな大袈裟な身振りを、やわらかい平仮名がくるんでしまっている。ほど良い酔い心地。そんな感じもする。そしてちょっびりと、同時に明日からの「酔いざめの師走」が暗示されていて、そこがまた読む者の琴線に微妙に触れてくるのだ』(引用元)。解説には「ほど良い酔い心地」とありますが、地球温暖化を憂うに「酔い心地」とは言っておれません。掲句は11/3掲載「BBTime 543 Disaster」でも引用しております。今回、ほんの僅かでも温暖化阻止に貢献したいと思いつつ・・コーヒーについて。

先月からウエーブ式ドリッパーを使っています。それまでは紙フィルターの横と下を折ってドリッパーにセットするタイプでした。このウエーブタイプの方が美味しいです。紙フィルターが残り少なくなってきたため近所のスーパーに・・このタイプはありませんでした。アマゾンで頼めば少々送料がかかりますが数日で手元に届きます。ポチッとしようとして「待てよ」・・運送中にCO2排出するよな。ということで探しました、ハンズにありました。・・今回アマゾン脱出成功、温暖化阻止の僅かな一歩!

このドリッパーで何を淹れているの?・・「coffee county」の豆です。行きつけのパン屋「panis:パニス」で飲んで感動!コーヒーカウンティの豆を色々と飲むうちに、(この歳になって)やっと味の違いがわかるようになりました。今では毎朝起床後の儀式となりました。「次のおやつ」001クルミっ子とカウンティの珈琲、最高です。「次のおやつ」002プティ・ピエールにも好相性!「次のおやつ」003はcoffee countyの豆。

画像はcoffee countyのサイトから拝借。ちなみにBBTime 545 Epinard はこちら。写真だけですが、コーヒーどうぞ。皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。



BBTime 486 謙虚な料理

BBTime 486 謙虚な料理
「謙虚なる十一月を愛すなり」遠藤梧逸

十一月七日立冬で暦の上では冬です・・唐突に「謙虚」と詠まれても。解説には『はや、十一月だ。季語としての「十一月」は、立冬のある月なので冬に分類。暦の上では冬に入る月だが、小春日和といわれる暖かい日々もあり、トータルでは案外十月よりも暖かかったりする。「あたゝかき十一月もすみにけり」(中村草田男)という印象深い句もある。とはいえ、一方では木枯らしの吹く日もあって、季節はじんわりと確実に冬へと向かっていく。掲句を読んで真っ先に思ったことは、句のように当月を人格化したときに、なるほど「謙虚」という表現がぴったりくるのは、今月十一月しかないだろうなということだった。前に出過ぎず、しかし着実に次の月へとバトンを渡していく感じがある。そこで、お遊びを思いついた。では、他の月には、どんな人格や性格を当て嵌めればぴったりくるのだろう。拙速で私なりに並べてみると、来月十二月は「短気」だろうか。一月は「堂々」でいいだろう。そして、我が生まれ月の二月は「孤独」。三月は浮かれがちになるので異論も覚悟で「軽佻」、逆に四月は年度はじめゆえ「実直」となる。五月は文句なしに「明朗」で、六月は「陰鬱」と言うしかあるまい。七月は「蹶起」ないしは「血気」のような感じだけれど、八月は七月の惰性みたいな月だから「怠惰」でいきたい。九月にはちょっと困ったが「素朴」としておいて、十月は案外に雨の日も多いことから「曖昧」としておこう。いかがでしょうか。下手くそすぎますかね。やっぱりね。『新日本大歳時記・冬』(1999)所載。(清水哲男)』(解説より)。さて「謙虚な料理」こそ贅沢!のお話。

最近出会った、ふたつの「謙虚な料理」。ひとつは先月十月スフォリーノのパスタを知りました。以来、幾度となく足を運んでおります。「スフォリーノ」や「ナイデンテ」に書きました、極めてシンプルなパスタです(しかも砂糖ゼロ)。ふたつ目は先日「COFFEE COUNTY:コーヒーカウンティ」の豆を手に入れ淹れて飲みました。COFFEE COUNTYも「素:す」が味わえるコーヒーで、ミルクや砂糖は邪魔です。

店員さんオススメの「ニカラグア:エンバハーダ農園」を飲んでみて、つくづくコーヒーの素の味の素晴らしさを改めて感じました。豆の説明には「桃やグァバやを思わす甘い香り、弾けるよような口当たりからビワや白ぶどうの柔らかな果実感、ユリの花ような香りの余韻が続きます」と、ワインの説明かと思われるような文章。聞くところによると代表の方は大のワイン好きとか・・なるほどと納得!

謙虚とは『自分の能力や置かれている立場をありのまま受け入れ、相手の意見を認めてすなおに取り入れたり相手を抑えるような自己主張を控えたりする様子だ』(新明解国語辞典第七版)とあります。このふたつにおいては「何も足さず何も引かずとも、持ち味を十二分に発揮できる」と言えましょうか。しかも美味しい・・否(いな)美味しいという陳腐な表現ではなく「味わい深い」の方が適切でしょう。

画像はトマトの実のパスタ。いつ食べても裏切られることのない味でオススメの一皿です。手打ちパスタにソースや具がのっております。もちろんこのパスタもよし!時にスフォリーノヨシモトの超シンプルなパスタもよし!ミルクや砂糖を加えてのコーヒーも美味しい!可能ならば「素の珈琲」も味わって欲しいと切に思います。ちなみに鹿児島市内では「panis:パニス」で飲むことができます。

画像はタリアテッレ:tagliatelle。小生には覚えにくく、つい「きしめん」と。かたやトルテッローニ:tortelloni(二枚目の画像)は「ギョウザ」と注文してしまいます。スフォリーノのパスタもコーヒーカウンティの珈琲も、砂糖ゼロで味わえます。(別に、美味しい料理において砂糖ゼロにこだわる必要は全くないのですが、仕事柄つい・笑)美味しくて味わい深く、健康にもよろし、しかも懐にも優し!「謙虚な料理」を探してみるのも、これまた楽し!皆さま、ご自愛のほど御歯愛の程。5650


https://youtu.be/by4Cr3kPNPg

BBTime 482 ソンナ!

BBTime 482 ソンナ!
「をりとりてはらりとおもきすすきかな」飯田蛇笏

句の解説にはすすきのイメージとは真逆の「ソンナ、ばかな!」の話が・・『季語は「すすき(芒・薄)」で秋。秋の七草の一つ。(中略)そこで、ひとつどうでしょうか。近所の河原にでも出かけてみて、すすきを手折るなどして句のような風流を味わってみては……。でも、てな誘いにうかうかと乗せられて、すすきを手折ろうなんてことはしないほうが良いですよ。あの茎はとても強くてしぶといですから、普通の人には手折るなんて上品な行為では、まず「をりと」るのは無理でしょう。力任せに左右に何度もねじって、引き千切るくらいの野蛮さが必要です。学生時代にはじめて掲句に出会ったとき、私は蛇笏を人並外れた怪力の持ち主かと思いましたね。どう考えても、この句は丈の高い丈夫なすすきを「をりとりて」いるとしか読めません。なにしろ、手にして「はらりとおもき」なのですからね。そんなすすきを、句はたやすく手折ったように印象づけていますが、またそれでなくては句の美しさが失われてしまいますが、本当にさらりと「をりと」ったのだとすれば凄いことです。私だったら、「ねじきって」とか「ねじおって」、あるいは刃物で「きりとって」とでもやるところでしょうか。しかし、これでは「はらりとおもき」とはいきませんから駄目でしょう。名句の誉れ高いこの句は、ま、あらまほしき世界を描いたフィクションとしての名作なんでしょうね。世の中には「はらりとおもき」に目を奪われた解釈が圧倒的ですが、「をりとりて」にもう少し注目する必要があろうかと思います。むろん、私は俳句のフィクションを否定しません。否定しませんが、これはいささかやり過ぎじゃないのかと。いかにも実際めかした衣裳が、どうにもいただけませんので。(清水哲男)』(解説より)。先日、不動産屋さんとの会話にも雑草すすきが登場。すすきについては、解説に軍配が上がるようです。さて今回はバナナジュースに関する真逆の「ソンナ!」のお話。

バナナジュースに関して「極旨!」「超極旨!」「ほぼ完成」の三部作で完結したと思っておりました。ところが・・雑誌「エル・グルメ」最新号(11月号)に神レシピとして載っていた「決定!バナナジュースの黄金比!」はナント真逆。まず超極旨!の黄金比は「冷凍バナナ:生バナナ=7:3(=2.33:1)」。エル・グルメ黄金比は「冷凍:生=1:2」とほぼ真逆、そんなバナナ!

もちろん、逆黄金比で作ってみました・・美味でした。んーまた、考えます。共通点は「生と冷凍を使う」。両者ともに、それなりに美味しいのです、味わいが違うようです。例えるならば、しっかりとしたボルドーの赤ワインが美味しい、かたや繊細なブルゴーニュの赤も美味しい。現時点では真逆の二つのレシピの判断は保留です、また報告します。ちなみに二つのレシピは・・A)冷凍バナナ70g+完熟生バナナ30g+牛乳130cc B)冷凍バナナ50g+完熟生バナナ100g+牛乳125ccです。さて、秋の夜長にはやはりコーヒーでしょ。ということでコーヒーの歌を二曲ご紹介。1130


追記:ブログアップ後、毎日のようにエル・グルメレシピで作っています。こちらの方がなんとなく良さげです。
追加(10/26):冷凍バナナが生バナナの約二倍のレシピAと、逆に冷凍バナナが半分のレシピBで何度か作ってみました。どうやら軍配を挙げるとするならば「B」です。Aもそれなりに美味しいのですが、レシピB「冷凍バナナ50g+完熟生バナナ100g+牛乳125cc」の方がよりふんわりと甘いバナナジュースになるようです、ご参考までに。

BBTime 426 バーボン

BBTime 426 バーボン
「バー温し年豆は妻が撒きをらむ」河野閑子

本日は令和2年西暦2020年2月2日と「2」が揃いました。昨夜は鹿児島も冷えましたが、句の如くバーは温し(ぬくし)でした。そのバーでお酒の起こりが話題になり、早速「バーボン」について。

昔「Maker’s Mark」は美味しいけど入手困難で探し歩いた記憶があります。さて「バーボン:Bourbon」には発明者がいらっしゃいました。Wikipediaによると『1789年(合衆国発足の年)、エライジャ・クレイグ牧師によって作られ始めたのが最初といわれている。バーボンという名前はフランスの「ブルボン朝」に由来する。アメリカ独立戦争の際にアメリカ側に味方したことに感謝し、後に合衆国大統領となるトーマス・ジェファーソンがケンタッキー州の郡のひとつを「バーボン郡」と名づけた。それが同地方で生産されるウイスキーの名前となり、定着したものである。したがってかつてバーボン・ウィスキーというのは、地理的な呼称、つまりケンタッキー州で生産されたコーン・ウィスキーのことを指す呼称であった。しかし後にバーボン・ウィスキーとコーン・ウィスキーとはその原料と製法によって再定義がなされ、別物を指すようにアメリカ合衆国の法律で規定されるに至った』(Wikipediaより)。因みにアメリカ独立は1776年7月4日。

1)バプテスト派のエライジャ・クレイグ牧師によって1789年に作られ始めた。2)バーボンの名前はフランスブルボン朝に由来するケンタッキー州バーボン郡に因む。続けてWikipediaには『主原料は51%以上のトウモロコシライ麦小麦大麦など。これらを麦芽で糖化、さらに酵母を加えてアルコール発酵させる。その後、連続式蒸留機で、アルコール度数を80%(160プルーフ)以下となるように蒸留を行って、バーボンの原酒となる蒸留酒(この時点では無色透明)を製造する。こうして作られた無色透明の蒸留酒を、その後アルコール度数62.5%(125プルーフ)以下に加水して調整し、内側を焼き焦がしたホワイトオーク製の新樽に詰め熟成を行う。この熟成によって、焦げた樽の成分がニューポットへ移り、またニューポットの一部は大気中に揮発し、さらにこの間にゆっくりと進行する化学変化によって、バーボンは作られる』Wikipediaより。

3)原料の半分以上をトウモロコシと麦とし、麦芽で糖化する。4)アルコール度数を80%以下となるように蒸留し、これ(無色透明)に加水し62.5%以下にする。5)内側を焼き焦がしたホワイトオークの新樽で熟成させる。Wikipedia『アメリカ国内で消費・宣伝されるバーボンは以下の要件を満たす必要が有る。結果、着色料の使用が禁止されている。・アメリカ合衆国で製造されていること。・原材料のトウモロコシの含有量は51%以上であること。・新品の炭化皮膜処理されたオーク樽を製造に用いること。・80%以下の度数で蒸留されていること。・熟成のために樽に入れる前のアルコール度数は62.5%以下であること。・製品として瓶詰めする場合のアルコール度数は40%以上であること。』Wikipediaより。

蛇足ですが(仕事柄・笑)ムシ歯になりにくい飲み方を伝授。御馳走様の前に「水」を口に含んでブクブクうがいをこそっとする事をお勧めします、歯の素洗い(水洗い)です。更に効果的なのは「ジン」のストレートを口に含んでクチュクチュごっくん。多くのお酒の中で唯一「ジン」だけがアルカリ性(ph=8.3)なんです。もちろん可能ならば、お休みなさいの前に歯磨きを!ご自愛のほど、ご歯愛のほど。8250





追加:トウモロコシを原料とし、勝手にいかにもアメリカらしいお酒とのイメージを持っていましたが、フランスゆかりの名前で発明者が牧師さんとは意外でした。バーボンを作ったクレイグ牧師は「エライおひとジャ!

BBTime 285 一杯の珈琲

BBTime 285 一杯の珈琲
「珈琲は一杯がよし日向ぼこ」亀井杜雁

先日(10/23)朝・・ポタリング(自転車ブラブラ)終えて朝刊を開きました。まず目を向けるのは「折々のことば」・・飛び込んできたのは「森光宗男:もりみつむねお」福岡市赤坂の珈琲店「美美:びみ」のマスター

「一杯のコーヒーから店のあらゆる寸法を割り出す」森光宗男
「ともに焙煎(ばいせん)とネルドリップの名人、森光と大坊勝次の対談録『珈琲屋』から。椅子にもこれしかない寸法があると森光が言うと、道具から設(しつら)えまで「コーヒーを楽しむ」ことで決まると大坊が応える。森光が判断の根拠は後でしかわからないと言えば、大坊は「あきらかにしないからこそ、誰もが生きていられることがある」と返す。目の前の一事も大きな時空感覚で捉える2人。(鷲田清一)」朝日新聞折々のことばより。

まだ読んでませんが新潮社から出版された対談集「珈琲屋」のページには、
森光宗男「1947年福岡県久留米市に生まれる。1966年県立久留米高校卒業後、桑沢デザイン研究所(専門学校)入学のため、上京。ハワイ・オアフ島に半年間滞在の後、1972年東京・吉祥寺「自家焙煎もか」入店。マスターの標交紀氏に5年間師事した後、帰福。1977年12月福岡市中央区今泉に自家焙煎ホーム・コーヒー販売、ネルドリップの店「珈琲美美」を開業。1987年コーヒー産地視察のため、イエメンはバニー・マタル、ハジャラ、マナハを訪問。以来、モカコーヒーのスパイシーな香りに魅せられ、イエメン5回、エチオピア7回を始め、ケニア、インドネシア、フィリピンなどを訪れ、コーヒーのルーツをひもといた。2009年5月福岡市中央区赤坂けやき通りに移転。2012年、著書『モカに始まり』(手の間文庫)を出版。2016年には、自ら発案・監修したネルドリップ抽出器具「ネルブリューワーNELCCO(ねるっこ)」を「フジローヤル」より発売。一般家庭でも専門店に引けをとらないネルドリップの一杯を実現すべく、啓蒙活動を行う。2016年12月ネルドリップ普及セミナーの帰途、韓国の仁川空港にて倒れ、急逝。享年69。(2018年5月現在、お店は妻の充子さんが引き継いで営業中)」とのプロフィール

拙インタビュー記事「丸ごと味わう」聞き取り時に「何よりも印象的だったのは、一杯の珈琲が、毎日の生活のなかで、または日々のきつい労働のなかで“句読点”であったということです。この時に珈琲の本物の味とともに、珈琲を飲むということそのものの意味を垣間見たような気がしました」と語られました。

美美では必ずカウンターに座り、いつもマスターの珈琲のお点前(てまえ)を凝視しておりました。まさしく薄茶ではなく濃茶の点前さながら・・目の前に出てくるのは珈琲の濃茶・・啜るように頂きました。もちろん美味!掲句はブラジル移民の方の句のようです。薄茶は二服目もありますが濃茶は一服のみ。マスターの珈琲も「珈琲は一杯がよし」でした・・が、味を記憶に留めようと二杯目を注文しておりました。

「一杯のコーヒーから店のあらゆる寸法を割り出す」この逆がマスターの起点のような気がします。「一杯の珈琲が、毎日の生活のなかで、または日々のきつい労働のなかで“句読点”であった」から始まった人生ゆえの言葉でしょう。茶室が一碗から始まるのと同じです。今度の師走で亡くなって丸二年・・合掌。2550