BBTime 330 リフォーム

BBTime 330 リフォーム
「靴みがきうららかに眠りゐたりけり」室生犀星

小生、靴磨きは好きです(勿論、自分の靴ですが)。「うららか」が季語、室生犀星(1889-1962)の句、当時の靴磨き屋の情景でしょう。日頃から自分の靴を磨いていると愛着がわき、靴底が擦り減ったり不具合が生じると修理に出します。修理から上がって、靴を磨いた時には幸せを感じます。今回は入れ歯(義歯)の修理・リフォームについてのお話。

入れ歯の不具合は様々・・噛むと痛みを感じる・食べ物が挟まる・ゆるい・汚れてきた・割れた・入れ歯の歯が外れた・磨り減った等々。また御本人は自覚されていなくても、歯科医の目から見て「話しづらいだろうな」「食べづらいのでは」「歌いづらいでしょ」などを感じる義歯に出会うこともあります。

靴の修理や不具合ならば靴屋さんに行きます。入れ歯の場合は三通り考えられます。ひとつ目「歯医者に行く」、二つ目は「自分で解決を試みる」、三つ目が「入れ歯だからしゃあないとあきらめる」。三つそれぞれに問題ありです。三つ目の「あきらめる」→「どうか、あきらめずに歯医者を頼ってください」。二つ目の「自分で試みる」→「御自分で削る」「瞬間接着剤を使う」などはどうかやめてください、歯科医による修理ができなくなることがあります。「安定剤を使う」ことは否定しませんが(こちら「お餅の前に」参照)、歯科医への相談をオススメします。ひとつ目の「歯医者に行く」→もちろん良い方法ですが・・その際、歯科医の対応は大方二つに分かれます。

1)いきなり「新義歯を作りましょう」。2)新作するにせよ「まずは修理調整してこの入れ歯を使えるようにしましょう」の二つ。オススメは「まずは調整しましょう」で、その理由は三つ。1)新作するとしてもすぐ(数日内)にはできません。2)来院時の義歯不具合の原因を歯科医が究明せずに着手しても、出来上がる新義歯が不具合を解決できるとは限らない。3)新作するよりも現義歯(来院時の義歯)を修正リフォームした方がしっくりくる場合もあります。

絵本のあらすじは朧(おぼろ)ですが小生、小学校六年の時も二年生の頃に買ってもらった自転車でそこらじゅう走り回っていました。当時住んでいた日向市内の海から山まで走り回りました。それを見た近所のおばさんが「自転車が小さくなったね、新しいのを買ってもらいなさい」とお節介の一言を・・妙に覚えています。本当は新車が欲しかったのかもしれませんが「自転車の癖は充分知っている!こっちの方が乗りやすいんだ」と心の中で反論した思い出があります。

義歯にも同じようなことが言えます。ある程度(数年)使用した義歯にはその方の噛み癖が反映されます。人工歯(入れ歯の歯)も程よく擦り合わされ、新品よりも噛みやすくなっている場合が多々あります。加えて新作よりもリフォームをオススメする理由は「直接、口の中で修正できる」からです。イメージしてください。義歯新作の場合、まず患者さんの口の中の型を採ります(印象採得)。その型に石膏を流し込んで作った模型で作っていきます。使用する石膏は通常「硬石膏:こうせっこう」でかなり硬いです。歯は石膏よりも硬いのですが、粘膜は軟らかいし、また歯は多少なりとも動きます。唇・舌・頬粘膜(きょうねんまく)は軟らかい上に動きます。すなわち硬い石膏模型と実際の口の中とは差がかなりあるのです。しかし新義歯を口の中で直に作ることはできないので、口の中の情報を写し取った石膏模型を使って新作するしかないのです。技工所へ送る模型には舌・唇・頬粘膜は付いていません。この差がたとえ新作義歯であっても「初めから」しっくりこない、合わない、噛めない義歯が出来上がってしまう一因でもあるのです。

小生の愛車です、先ごろ販売終了となりました。行きつけの自転車屋のご主人曰く「もう手に入りませんから大事に乗ってください、しっかり施錠を!」。消耗パーツを替えながら大事に乗ります。義歯はほぼ完全オーダーメイドです、販売終了にはなりません(時にパーツが生産終了になることはあります)ので御安心の程。現在、義歯に不具合を感じてらっしゃる方へのアドバイス・・「まずは必要に応じて修理や修正をお勧めします」「いきなり新作よりもリフォームがベターな場合もあります」「新義歯作製前提であっても、まずは修理から」。0220


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