BBTime 385 口掃除

BBTime 385 口掃除
「秋風や書かねば言葉消えやすし」野見山朱鳥

句の解説に『書かれない言葉が消えやすいのは言葉が思いを正しく反映しないからだろう。もやもやした言葉になる以前の混沌をそれでも僕らは言葉にしないと表現できない。加藤楸邨には「黴の中言葉となればもう古し」がある。書かねば消えてしまう言葉だからと、書いたところでそれはもう書かれた瞬間に「もやもやした真実」とは乖離し始める。百万言を費やしたところで、僕らは思いを正確に伝えることは不可能である。不可能と知りつつ僕らは今日も言葉を発し文字を書き記す。言葉が生まれたときから自己表現とはそういうもどかしさを抱え込んでいる。』(解説より)。今回は「ことば」について、ほぼ日刊イトイ新聞「今日のダーリン」(9/13)から。

・かつてあったいろんなことばが、さまざまな事情で使われなくなったりしている。ある時代までの考えが、新しい時代になってまちがっているということになると、ことばが消される。ここにいちいち書き連ねることはしないけれど、「そのことば、使っちゃだめなんだよ」ということは、けっこうたくさんある。

そして、使っちゃいけない理由を知らないままの人は、つい使ってしまうこともある。ある考えが、まちがっているということは、まちがっているという考えを学ぶことでしか直せない。先に学んだ人が、学んでない人のことを「とんでもない考え」をもった人間としてきびしく断罪することがあるけれど、それが、どうもぼくにはしっくりこないことが多い。「考え」だとか「ことば」というものは、学んで身につけるということがとても多いものだ。

・さて、話は、まったく変わって、倫理に関わるようなことばではなく、このことばは変えてしまったほうが世のため人のためではないかという例を思いついた。「歯をみがく」ということばである。歯の表面の汚れを磨くことできれいにする、という意味では、このことばはまちがってはいない。しかし、歯は、ほんとうはみがくものではない。歯と歯の間や、歯と歯肉の間の汚れや菌などを、掃除することが「歯みがき」と言われている行為の、ほんとうの目的であるはずだ。

英語では、歯は「ブラッシング」するものでね。ほんとうに、目的にかなった言い方を探すなら、歯は「掃除する」としたほうがいいはずだ。煙突掃除や、耳掃除などのように、掃除するもの。もっと大きく「手入れする」のほうがいいかもしれない。「歯みがきする」と言われたままだと、「歯間や歯肉の問題」はないがしろにされてしまう。ぼくは、「歯をみがく」を死語にしようと思っている。さて、眠くなってきたから、風呂に入って、口のなかの掃除をして寝ようかな。   今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。歯の手入れは、健康の手入れの入り口だと思うんだよねー。

まずは仕事柄イトイさんに深謝です。歯磨きを取り上げてくださって感謝します!
嬉しくなってメールしました。以下メールから抜粋。
ほぼ毎日、拝読しております。歯科医師です。全く同感です。「歯をみがく」という言葉ゆえに誤解を招き「グゥ握りでゴシゴシ」となり、人によっては歯や歯ぐきを傷めてしまう方もいらっしゃいます(楔状欠損など)。歯が硬いゆえに「磨く」が当てられたのでしょうか。   小生も「洗顔洗歯」「歯洗い」「口洗い」・・などの言葉を考えました。昔のお坊さんはやはり賢いと思います。神社やお寺には「手水場」があり、磨き(洗い)はしませんが「うがい」します。   口清め・・なんていかがでしょう。「口を清めてから寝なさいね」「おやすみの前に、口清めね」実は「グゥ握りゴシゴシ」を「鉛筆握りチョコマカ」に変えるべく「新歯ブラシ」考案中です。毎日道具である歯ブラシ(ちなみに毎日道具No.1は歯です)、口の友(口友)である歯ブラシ。新デザインの歯ブラシによって「歯磨き」から「口清め」に!最後になりましたが、「歯」を取り上げて頂いて深謝いたします。」先日の「味のある」でも「今日のダーリン」について書いています。2930


おまけの言葉:先日、来年のほぼ日手帳が届きました。箱の中蓋に次の言葉が・・。セフティ・マッチ氏とはシャレなのでしょうか?

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