BBTime 596 老のもと

「旅に病んで夢は枯野をかけめぐる」松尾芭蕉

2022/11/30投稿
 明日から師走、今年も残すところあとひと月。句の解説はこちらをどうぞ。前回「炎症はなし」で慢性炎症について触れました、詳しい記事を見つけましたので御紹介します。記事タイトル「ヒトはできるだけ身体を動かさないように進化してきたが、適度な運動は寿命を延ばし、生活の質を上げる」。出典はこちら

記事後半の「慢性的な軽度の炎症は、着実かつこっそりと、動脈、筋肉、肝臓、脳などの組織を蝕んでいく」を一部ピックアップします。

 運動せずに座ってばかりいると、なぜ健康を害するのだろうか。もちろんさまざまな理由があるだろうが、近年注目されているのが「慢性炎症」だ。

 人類学者のハーマン・ポンツァーがハッザ族の一日のエネルギー消費量を測定したところ、奇妙なことに、活動的なハッザ族の一日あたりの総カロリー消費量は、同じ除脂肪体重のカウチポテトのアメリカ人とほとんど変わらなかった。それ以外のデータでも、活動的なひとの一日のカロリー消費量が、同じ体重の座りがちなひとよりもわずかに多いだけだということが確認されている。人体は、エネルギーを浪費せずに効率的に歩けるように進化したのだ。

 ここからポンツァーは、「人体の総エネルギー予算は制約されている」という理論を唱えた。いまだ議論の途上にあるが、この「代謝性代償」によれば、歩くことに500キロカロリーを使うのなら、その運動量を賄うために、安静時の代謝に使われるエネルギーが減らされる。逆に歩く必要がなくなれば、そのために使うはずだった500キロカロリーは安静時の代謝に回されることになる。この余分なエネルギーが、さまざまな経路で慢性的な炎症を引き起こしているかもしれない。

「炎症」は有害な病原体や損傷した組織などを感知したときに免疫系が最初にとる反応で、免疫細胞が化合物を大量に放出して血管を拡張し、侵入者を破壊しようとして駆けつけた白血球を通過しやすくする。血流の増加にともなう腫れによって神経が圧迫され、発赤(ほっせき)、熱感、腫脹(しゅちょう)、疼痛という炎症の4つの主症状を引き起こす。その後、免疫系は必要に応じて、特定の病原体を標的にして殺す抗原を作ることにより、さらなる防衛線を活性化させるが、このとき「サイトカイン」と呼ばれる数十種類のタンパク質が炎症を制御する。

 近年の研究では、身体が病原体に感染したあと、短期間の激しい局所的な炎症反応を引き起こすサイトカインの一部が、持続的でほとんど検出できないレベルの炎症を全身に起こすことがわかってきた。風邪を引いたときのように、数日から数週間にわたって一箇所に急激に炎症が生じるのではなく、気づかないうちに数カ月から数年にわたって、身体のあちこちで炎症がくすぶるのだ。

 慢性的な軽度の炎症は、ある意味、終わりのない風邪を引くようなものだ。あまりにも軽いため、その存在に気づかないことがあるが。それでも炎症は確実に存在し、この「トロ火の炎症」が着実かつこっそりと、動脈、筋肉、肝臓、脳などの組織を蝕んでいく。

 慢性炎症は、心臓病、2型糖尿病、アルツハイマー病など、加齢にともなう数多くの非感染性疾患の主な原因であると見なされるようになった。さらには、大腸がん、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、関節炎など「~炎」とつく炎症のほぼすべてに、慢性炎症の痕跡が見つかっている。

 慢性炎症の最大の要因は、喫煙、肥満、特定の炎症を引き起こす食品(その代表は牛肉や豚肉などの赤い色の肉)の過剰摂取、身体活動の欠乏だ。それは次の4つの経路でわたしたちの身体を蝕んでいく。

1  内臓脂肪が溜まる
 適度な量の内臓脂肪(全体重の約1%)は正常で、長距離を歩いたり、ジョギングしたときなどに、大量のカロリーを素早く活用する短期的なエネルギー貯蔵庫として役立っている。
 だが脂肪細胞が大きくなりすぎると、膨らみすぎたゴミ袋のように膨張して機能しなくなり、炎症を引き起こす白血球を引き寄せてしまう。内臓脂肪細胞は代謝的に活発で、体内の血液供給と結びついているため、内臓脂肪細胞が膨張すると、炎症を誘発する大量のタンパク質(サイトカイン)が血液中に滲み出してくる。
 健康な若い男性が2週間にわたってカウチポテト族さながら座り続け、一日に1500歩(約1.6キロ)以上歩かないようにした実験では、内臓脂肪はわずか2週間に7%も増えただけでなく、食後に増加した血糖を吸収する能力の低下などの、慢性炎症の典型的な症状を示し始めた。

2 血液中の脂肪や糖を取り込む速度が遅くなる
 食事から4時間以内は「食後状態」で、今すぐ使わない脂肪と糖が脂肪として貯蔵される。控え目な活動であっても、すこしでも身体を動かせば、細胞はこれらの燃料を優先的に燃やす。座るのをちょっと中断して、しゃがんだり、膝をついたりして筋肉を使う軽い断続的な活動を行なうと、長時間何もせずに座っている場合より、血液中の脂肪と糖の濃度を下げることができる

3 社会心理的なストレス
 長時間の通勤、過酷なデスクワーク、病気や障害などによって座ることを余儀なくされる状況はストレスを募らせ、ストレス・ホルモンであるコルチゾールの値を上昇させる。コルチゾールはストレスの原因ではなく結果として分泌され、身体がよりよくエネルギーを使えるようにするために進化してきた。だが、身体活動をともなわない状況でコルチゾールの値が上昇すると、糖や脂肪を血流に送り込み、糖分や脂肪分の多い食べ物を欲しがらせ、皮下脂肪ではなく内臓脂肪を蓄えるようにしむけるなど、肥満や慢性炎症の原因になる。

4 筋肉の活動が停止する
 筋肉は身体を動かすことのほかに、腺としての機能を持ち、「マイオカイン」と呼ばれる重要な役割を持つ数多くのメッセンジャータンパク質を合成・放出している。マイオカインにはさまざまな機能があるが、代謝・血液循環、骨などに影響を与えるほか、炎症の抑制にも役立っている。
 身体活動による抗炎症作用は、ほとんどの場合、炎症を起こす作用より強力で長く続くうえ、筋肉は身体の約3分の1を占めるので、活発に活動する筋肉は強力な抗炎症作用を発揮する。椅子に座りつづけていると、筋肉が活動しないため、マイオカインも分泌されない。

 がんのような身体的な病からアルツハイマー病などの精神疾患まで、免疫機能が自分自身を攻撃する自己免疫疾患が疑われる病気は増える一方だ。こうした「現代病」は、すくなくともその原因の一部が、使い切れないエネルギーを体内にため込んでいることだというエビデンスが増えつづけている。

 リーバーマンのいうように、運動はきわめて効果的な「薬」であり、副作用もなく、歩いたり、走ったり、腕立て伏せをするだけなら無料だ。適度な食事と適度な運動によって身体のエネルギーバランスを整えれば、健康寿命を延ばし、生活の質(クオリティ・オブ・ライフ)を上げることができるだろう。(出典はこちら

記事を読みながら「犬の散歩」を考えました。昔、野良犬に餌をやっていた事はありますが、飼ったことはありません。飼っている人からよく聞くのが「散歩が必要」です。目にした記事に『ストレスを行動で表現します。代表的なストレスサインに、体の一部をなめ続ける行動があります。そのまま放っておくと、なめ続けた部位の毛が抜けたり、炎症を起こしたりしてしまいます』(引用元)。

ここでお伝えしたいのは「適度な運動が必要です」よりも、繰り返しますが「慢性炎症」を少しでも減らすこと。そうです!できるだけ歯周病を軽いものにしましょう。そのコツは「歯は磨いても、もらうもの」・・皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。


三つめの動画は「YouTubeで見る」をクリックすると見ることができます!

BBTime 595 炎症はなし

「博多場所しぐれがちなる中日以後」下村ひろし

2022/11/22投稿 11/24追加(最後に)
おととい(11/20)朝の博多駅。利用したタクシー運転手曰く「昨日もお相撲さん乗せたけど、暖かいね」。時雨の「し」の字もない博多場所中日でした。句の解説には『寸分の隙もない、見事な決め技だ。上下漢字四文字の間にひらがな七文字を挟んでみせるなんぞは、確実に技能賞ものだろう。技法と中身の呼吸がぴたりと合っている。そして、情緒てんめん。芸で読ませる句のサンプルといってもよいと思う。ただし、素人がうっかりこの技に手を出すと自滅する。型がきれいなだけに、負けるとみじめさは倍になる。この句でも、どこかに作者の得意顔がちらついていなくもなく、考えるほどに難しい手法ではある。(清水哲男)』(解説より)。落語好きの方は気付かれたように「えんしょう話」といえば「艶笑話」ですよね、今回は「炎症の話」です(笑)。

近頃「老化細胞」の記事をよく目にします。細胞老化は知っていましたが老化細胞とは?まず細胞老化とは『普段意識することはないが、私たちの体には約37兆個の細胞があり、一部の細胞は、日々、分裂を繰り返している。「その過程で、DNAが修復不可能なほど大きなダメージを受けたときに、細胞分裂を停止してがん化を防ぐ『細胞老化』と呼ばれる仕組みが備わっています。細胞老化は、自分の体の細胞をがん化させないために、人間を含む高等動物が進化の過程で獲得した安全装置の1つです」』(引用元はこちら)。

では「老化細胞」とは?『通常、古い細胞が分裂を停止して新しい細胞に置き換わるときには、自ら死んで壊れるアポトーシス(細胞死)を起こすか、免疫細胞に食べられて体内から消える。ところが、細胞老化によって分裂を停止した細胞の中には、なぜか死なずに、臓器や組織の中に残ってたまっていくものがあるのだという。「この、細胞分裂を停止したのに死なずに組織にたまっていく細胞が『老化細胞』です。老化細胞は蓄積すると、SASP(サスプ:細胞老化随伴分泌現象/Senescence-Associated Secretory Phenotype)という現象を引き起こします。老化細胞の存在は60年くらい前から知られていたのですが、過度のSASPが慢性炎症を誘発し、がんや動脈硬化など加齢に伴って増える病気を発症させることが近年の研究で分かり、注目を集めるようになりました」と原教授は話す。SASPは、周囲の正常な細胞の細胞老化を引き起こし、さらに老化を加速させる。米国の科学ジャーナリストは、英科学誌の『ネイチャー』のコラムで、分裂をしないが死にもしない奇妙なこの老化細胞を「ゾンビ細胞」と表現した。まるで死体が蘇るように、炎症を起こす物質を出して周囲の細胞の老化を加速させて仲間を増やし、組織や臓器の機能を低下させるゾンビのような細胞というわけだ。』(引用元はこちら)。

しかも、この老化細胞を除去する薬「セノリティクス」が開発されているのです!画像の中西真(なかにしまこと)教授が中心のグループによるものです。詳しくは記事「老化細胞除去薬の開発で見えてきた「健康寿命120歳」の可能性」をお読みください。記事はこちらです!記事には『種類の異なる老化細胞を一網打尽に取り除く画期的な新薬候補として、世界的にも注目されているのは、GLS1(グルタミナーゼ1)阻害薬という老化細胞除去薬だ。「老化の大きな要因の1つは、慢性炎症を引き起こす老化細胞が臓器や組織の中に蓄積することです。実は、一口に老化細胞と言っても非常に多様なのですが、細胞分裂の停止後も生体内に生き残っているのが共通点です。私たちは、個体の中で、多種多様な老化細胞を生き延びさせているのがGLS1という酵素であることを見出しました。この酵素の働きをブロックして細胞死を誘導し、老化細胞を取り除くのがGLS1阻害薬です」と中西教授は解説する。』(引用元はこちら)。

繰り返します『老化の大きな要因の1つは、慢性炎症を引き起こす老化細胞が臓器や組織の中に蓄積することです』・・端的に言えば老化増進の原因は「慢性炎症」!多くの人が普通に慢性炎症を持っています。肥満、過度の飲酒、喫煙、ストレスの蓄積、怒りetc、忘れてはならないのが、そうです「歯周病:ししゅうびょう」。

「芸能人は歯が命」のCMがありました。歯をキレイにすることは可能です。補綴(ほてつ)処置すれば、どなたでもどうにでもなります。真実は「若々しい人はハグキが命」なんです!ハグキがきれい、ハグキがピンク・・これが若々しさの秘訣。つまり歯周病にかかっていないということ。郷ひろみ(今日現在67歳)が若々しいのは、歯茎もキレイ、お酒飲まない、などの慢性炎症を極力少なくしている努力の賜物なのです。

御歳七十九歳のカトリーヌ・ドヌーブが美しいのも(おそらく)メンテナンスによって口の中の炎症(歯周病)をコントロールしているのでしょう。誰にでもできる「若さを保つ法」があります。お分かりのように口の中の慢性炎症である歯周病を低レベルに抑えることです。すなわちこまめなクリーニング(月一回がベター)がおすすめ! 今からでも何歳からでも遅くありません、是非ぜひ!
「歯は白くハグキピンクに吐息は甘く」
えっっとタイトル「炎症はなし」の読みを言い忘れました。これは「炎症は、なし」・・お後がよろしいようで。皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。

追加:思いっきりハグキが見えます、キレイなハグキです。菜々緒さんのインスタグラム。

BBTime 583 カムカムポンプ

「円涼し長方形も亦涼し」高野素十

2022/07/25投稿・昨夜から桜島は噴火警戒レベル5 7/28追加
今朝の桜島は静かです。句の解説は『猛暑の折りから、何か涼しげな句はないかと探していたら、この句に突き当たった。しかし、よくわからない。素十は常に目に写るままに作句した俳人として有名だから、これはそのまま素直に受け取るべきなのだろう。つまり、たとえば「円」は「月」になぞらえてあるなどと解釈してはいけないのである。円も長方形も、純粋に幾何学的なそれということだ。いわゆる理科系の読者でないと、この作品の面白さはわからないのかもしれない。円や長方形で涼しいと感じられる人がいまもいるとすれば、私などには心底うらやましい昨今である。ふーっ、アツい。『空』(ふらんす堂・1993)所収。(清水哲男)』(解説より)。二度目の梅雨が開けたと思ったら、またまた猛暑。サウナかと思うほどの暑さと湿気です。前々回「週一回」の補足で、歯の周りのポンプについて。

シンプルにいうと、噛むたびに歯の根っこ(歯根:しこん)と骨の間の毛細血管が圧迫・弛緩を繰り返します、いわば「カムカムポンプ」。
 記事には『歯は、体に思っている以上に全身へ影響を与えています。実は、歯でものを噛むときには、ひと噛みごとに脳に大量の血液が送り込まれています。  歯の下には「歯根膜(しこんまく)」というクッションのような器官があり、噛むときは、歯がこのクッションに約30ミクロン沈み込みます。そのほんのわずかな圧力で、歯根膜にある血管が圧縮されて、ポンプのように血液を脳に送り込むのです。  その量は、ひと噛みで3.5㎖。市販のお弁当についている、あの小さな魚の形の醤油入れがだいたい3~3.5㎖サイズなので、噛むたびに、あの容器いっぱいの血液をピュッと脳に送り込んでいるということ。ひと噛みでこの量ですから、よく噛む人の脳にはひっきりなしに血液が送り込まれて、その間、常に刺激を受け続けていることになります。つまり、噛めば噛むほど刺激で脳が活性化されて元気になり、どんどん若返るのです』(引用記事はこちら)。また記事では『「歯がない人はボケやすい」は正しい・・歯の本数が少なくなればなるほど、歯根膜のクッションにかかる圧力が減って、脳に送り込まれる血液の量が少なくなります。脳への刺激が減って、脳機能の低下につながるわけです。脳機能の低下は、ヤル気の喪失や、もの忘れを引き起こし、やがては認知症へとつながっていきます』(引用元)。

この記事を読み返して確信しました。昔、おやつの定番「かっぱえびせん」のCMコピー「やめられない、とまらない」の理由はここにあり!えびせんやポテトチップスを食べ始めたら止まらないのは、パリパリぽりぽりと噛むごとに歯根膜ポンプによって脳に血液が送られ「プチ快楽」を感じているからなのではないでしょうか。えびせんでなくとも、ナッツ類でもスルメでも同じだと思います。いずれにせよ「カムカムポンプ」を作用させることは、記事にあるように「若返り」「ボケ防止」に効果有りのようです。やはり噛むことは大事です、カムカムポンプで若返り!皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。

追加(7/28):カムカムポンプが脳に心地良い根拠のひとつ発見!脳は「ブドウ糖と酸素」を欲しがります。脳に血液が供給されることは、ブドウ糖と酸素が送り込まれることなのです。記事「脳だって、もっと栄養が欲しい」には『脳がしっかりと働くためにはエネルギーが必要で、通常はブドウ糖(グルコース)のみが利用されます。低血糖症で意識消失が起こるのは、ブドウ糖を利用できなくなるから。その脳に、ブドウ糖以上に必要なエネルギーが酸素です』(抜粋)とあります。カムカムポンプで脳も元気ハツラツ!
画像追加2023/06/28

BBTime 576 今日でしょ!

「明日は又明日の日程夕蛙」高野素十

2022/6/2投稿
好きな句です。句の解説には『とにもかくにも今日の仕事を消化して、作者はしばし夕蛙の鳴き声に耳を傾けている。ホッとしている。明日もまた忙しいが、明日は明日のこととして、今日はもう仕事のことは考えたくないという心境だ。このように、昔は蛙たちが一日の終りを告げたものだが、いまの都会では何者も何も告げてはくれない。もっと言えば、一日の終りなどは無くなってしまっている。だから、明日の日程のために眠ることさえできない人も増えてきた。過労死が起きるのもむべなるかな。こんな世の中を愚かにも必死につくってきたのは、しかし私たちなのである。『雪片』所収。(清水哲男)』(解説より)。気持ちは理解できますが「明日は明日のこととして」と言えない今日この頃。コロナ然り、ウクライナ戦争しかり、気候変動然り・・。今日をしっかりしないと明日が来ない世の中になるのではないかと危惧します。思うだけでは世の中は変わりません、行動を起こさなければ・・言うは易く行うは難し。今回は最近気になっている曲のご紹介。

BBTime 570 吾子の歯

「万緑の中や吾子の歯生えそむる」中村草田男

2022/4/19投稿 4/22当ブログ誕生日(1999/4/22開始)本日アースデイ
4/18の朝、ラジオから流れてきた歌に愕然としました。まずは句の解説『どんな歳時記にも載っている句だ。それもそのはずで、「万緑」という季語の創始者は他ならぬ草田男その人だからである。「万緑」の項目を立てる以上、この句を逸するわけにはいかないのだ。草田男自身は、ヒントを王安石の詩「万緑叢中紅一点」から得たのだという。見渡すかぎりの緑のなかで、赤ん坊に生えてきたちっちゃな白い歯がまぶしいという構図。人生の希望に満ちた親心。この親心のほうが、読者には微笑ましくもまぶしく感じられるところだ。私は読んでいないが、この句のモデルになったお嬢さんが、最近、家庭人としての草田男像を書いた本を上梓され評判になっている』(解説より抜粋)。我が子(吾子:あこ)の成長を礼賛し喜ぶ掲句に対して、今回はあまりにも「らんぼう」な歌について。

数字の語呂合わせで、4/18を「良い歯の日」として日本歯科医師会が1993年(平成5年)に制定したとのこと。その朝に聞こえてきた歌は・・「虫歯のこどもの誕生日」。作詞作曲みなみらんぼう、2010/5/12発売。歌詞を聞いて驚き悲しくなりました。その歌詞は・・

2023/06/05 JASRAC指摘により削除・・歌詞はこちら

揚げ足取りです・・まず「虫歯」この表記は誤りです。ムシ歯:う蝕歯とは蝕まれた(むしばまれた)歯の意味です。虫の歯ではありません。「甘いお茶」ケーキに合わないし、わざわざ「甘い」をつける必要もないでしょ。「あしたになったら」治りません!治療受けないと治りません。「虫歯の虫」細菌は居ますが見えません。あまりにも子供騙し!らんぼうです。

歌詞削除・・JASRAC指摘により

「悪いことなどしていない」これは正しい。悪いのは周りの大人です。歌詞の内容から就学前児童と思われます。周りの大人に責任有りです。「前歯がないよ」これまたひどい!おそらく上の前歯(BAAB)のことでしょう。昔は「みそっぱ」(カリエスでおそらく味噌のような色の歯)とか「哺乳瓶カリエス」などの言葉も聞きましたが、上顎前歯(じょうがくぜんし)がなくなる状態は、かなりひどいです。もちろん奥歯もカリエスでしょう。「残りの虫歯」案の定、前歯のみならず奥歯もムシ歯、ひどい状態です。

歌詞削除・・2023/06/05

まず理解して欲しい(気付いて欲しい)のは、我が子の病気を歌にして歌うのか?しかもNHK「みんなのうた」で流れていたようです。「こどものムシ歯ごときで・・」との考えは間違っています。ムシ歯は病気で、しかも不治の病です。歯は使い捨てではありません。乳歯であってもかけがえのない歯です。この歌を幼稚園や小学校でみんなそろって聞いたり歌ったりしていたなら、ゾッとします。まさに掲句とは対照的です。

句の解説にも出てきますが「万緑:ばんりょく」は万緑叢中(そうちゅう)紅一点から生み出された季語です。この紅一点の「紅」とは柘榴の花とのこと(上の画像)。中村草田男の描く親心、かたやみなみらんぼうの歌の親子像、あなたならどちらを選びますか?皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 560 快眠快食快便

「眠る山薄目して蛾を生みつげり」堀口星眠

2022/2/21投稿
イラストをご覧ください。カエル大好き詩人草野心平の詩です、本文(四文字)よりもタイトル字数が多い作品です。句の解説は『季語は「眠る山(山眠る)」で冬季だが、冬の間は眠っていた山が目覚めかけて「薄目して」いるのだから早春の句だ。山のたくましい生産力を描いて妙。早春の山というと、私などはすぐに木々の芽吹きに気持ちがいってしまうけれど、それでは凡に落ちる。当たり前に過ぎる。というよりも、山を深くみつめていないことになる。山は、我々の想像以上に多産なのだ。植物も生むが、動物も生む。もちろん「蛾」も生むわけだが、ここで「蛾」を登場させたところが素晴らしい。「蝶」ではなくて「蛾」。「蝶」でも悪くはないし、現実的には生んでいるのだが、やはり「薄目して」いる山には、地味な「蛾」のほうがよほど釣り合う。「蝶」であれば、「薄目」どころかはっきりと両眼を見開いていないと似合わない。「薄目」しながら、半分眠っている山が、ふわあっふわあっと、幼い「蛾」を里に向けてひそやかにかつ大量に吹きつづけているイメージは手堅くも鮮やかである』(解説より抜粋)。今回は快眠のみならず快食快便についてのお話。

小生ほぼ毎日訪れる「ほぼ日」で目にしたのが「快眠快食快便」。『小説雑誌に『快眠快食快便』という連載コラムがあった。いまの時代には、このコラムのタイトルは、よく言われる常識のように見えるかもしれないが、当時はずいぶんとユーモラスなものに思えた。「快眠快食」まではあちこちで語られていただろうが、「快便」は一般的には下ネタでもあるわけで、リズムにまかせて快を3つ並べた表現に、考えた編集者のセンスを感じていた。つまり、いまよりだいぶん若かったぼくは、このタイトルを「おもしろいなぁ」と思っていたのである。』(今日のダーリン2/17より)

『しかし、いま「快眠快食快便」というタイトルは、もうユーモラスには感じられない。
 どちらかといえば、人生の目的というくらい立派な目標だ。なぜならば、快眠も、快食も、快便も、「そんなことはふつう」じゃなくなっているからだ。眠が快なること、食が快であること、便が快たること。そのひとつひとつが、そうそう思うようにはならない。詳しく語るつもりはまったくないのだけれど、この3つの快から、ぼくはもう遠ざかっているのである。遠ざかっている、とまでは言いたくないな。遠ざかりつつあるというような感じです、ほんとは。そして、その快からの距離は広がるばかりだろう。知らなかったなぁ、考えてこなかったなぁ。』(今日のダーリン2/17より)

いくらでも眠れるし、いくらでも眠りたい男であった。食いたいものがあれば、満腹の後もさらに食うアホだった。出るとか出すとか、考えることもなく日々通じていた。どうだろう、2〜3年前くらいまでは、それだった。それがそうでなくなるということが、老いるということだ。だれに教わることもなく、覚悟をしてきたわけでもなく、ごく自然に、身体が変化してきたというわけだ。老いるつもりもなく、老いを恐れていたわけでもないのに、老いにともなう事態に「へーえ、そうか」と思うばかりだ。』(今日のダーリン2/17より)

『若い諸君、先に知ってしまったものとして伝えておく。「老い」なんてものはない、そんなもの見たことない。ただただ、老いると起こることが起こるのである。たとえば「快眠快食快便」がありがたく思えはじめたら、「そうか」と、わが秋の気配を知ることになるのである。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。秋には秋の実りもあるし、などと、春を待ちつつ言ってみる。』(今日のダーリン2/17より)

このエッセーを読んで思いました。「眠食便」を同時に「快」にできる方法あり!(と確信してます)。ズバリ「歩き」です(ダーリンを読むと糸井さんは日々歩いていらっしゃるようですが)。数年前より腕にアップルウォッチ、これが結構せかすんです。「今日はどうしたの?」「立ちなさいよ」「今日スゴイじゃない」等々。せかされると、こちらも「ハイハイ」と言いながら立ったり歩いたり・・。以前より明らかに歩く量が増えての実感が「快眠快食快便」です。

昔々「足は第二の心臓」と耳にした時、そんなことはないでしょ、足は足、心臓は心臓と思ってましたが、今では「第二の心臓」であると実感します。「ポンプとして流れをアシストする」意味で第二の心臓なのでしょう。ご存じのように血液は心拍によって全身を巡るのですが、さすがに隅々までとはいきません。血管は大別して「動脈・静脈・毛細血管」の三種類あります。歩くことで、心臓から送り出される血液、毛細血管を通過して、再び心臓にかえる血液の流れがより活発になるのだと思います。

口の中にもポンプがあります。歯の根っこ(歯根:しこん)の周りを、みかんネットのように毛細血管が取り巻いています。口の中のポンプ、歯のポンプとは「噛むこと」。グッと噛むと歯は沈みます、この時に歯と顎の骨の間の毛細血管も押されてひしゃげます。噛み終わると圧がなくなるので血管が元の太さに戻り新しい血液が流れ込みます。噛むことで貧血、圧が抜けて充血。噛むことは歯の周りの血液循環を促しているのです。

「噛む噛むポンプ」について思いました。「やめられない、とまらない!」はかっぱえびせんのコピーですが、他にもとまらない食べ物はあります。ポテトチップス、ナッツなど、パリパリポリポリの食品はとまりません。とまらない理由はいくつかあるようですが、脳の報酬系が刺激されることが主因のようです。以前「BBTime 261 あんぱん」に書きましたが、ヒトは進化の過程において「甘いものが好き」なのではなく、「好き(好んで食べる=高カロリー)ものが甘かった」のだそうです。この考え方同様、パリポリ食品がやめられないのは、パリポリする食べ物を食べた方が長生きする(生き延びる)からと考えられるでしょう。すなわち「歯のポンプ」を作動させる食品は進化的にも好んで食されるのだと推察します。

歩くこととパリポリ食品で「快眠快食快便」実践可能です。もちろん歯磨きもお忘れなく、皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 558 未来形

「ものの芽の出揃ふ未来形ばかり」山田弘子

2022/2/16投稿
そろそろ大好物の楤の芽(タラ)が出てきます。句の解説には『句意は明瞭だ。なるほど「未来形ばかり」である。誰にでもわかる句だが、受け取り手の年代にによって、読後感はさまざまだろう。中学生くらいの読者であれば、あまりにも当たり前すぎて、ものたらないかもしれない。中年ならば、まだこの世界は微笑とともに受け入れることが可能だろう。だが、私などの後期高齢者ともなると、思いはなかなかに複雑だ。つまり、みずからの未来がおぼつかぬ者にとっては、ちょっと不機嫌にもなりそうな句であるからだ。「ものの芽」ばかりではなく、私たちは、日々こうした「未来形」の洪水のなかで生きているような気分であるからだ。考えてみれば、これは今にはじまったことではなく、いつの時代にも、人々は「未来形」ばかりに取り囲まれてきた』(解説より抜粋)。今回は前回「現在過去未来」に続いて「未来形」についてのお話。

先日ネットで「削るべきか削らざるべきか?–AIは歯科医よりも歯を知っているかもしれない」とのタイトル記事を見つけました。内容は「歯科医療はAI導入に適した分野であり、導入するタイミングが来ている」とのこと。二つの理由を上げています。まず『レントゲン写真が豊富にあります。患者は2年ごとに歯科用レントゲンを撮影するので、他のどの医用画像よりも多数のレントゲン写真があります。これは、歯科用AI放射線システムの開発に非常に役立ちます。システムは、多数のレントゲン写真でトレーニングする必要があるからです』(記事より)。さらに続きます『次に、歯科業界には、他分野の医療業界よりも起業家精神があります。ほとんどの歯科医は診療所にある程度投資しているので、医者であると同時に事業主でもあります。歯科医の主な関心事は患者に最適な治療を施すことであり、AIはそれを助けます。それだけでなく、AIは歯科医が事業主として直面する経営上の懸念に対処するのにも役立ちます』(記事より)。

導入したところ・・『われわれの技術を採用している歯科医の反応は、非常に肯定的です。もっとも、アーリーアダプターはAIに好意的である可能性が高いため、これは想定内です。確かに懐疑的な歯科医もいます。疑念を晴らすためには、教育が必要です。懐疑論者でも、一度技術を手にし、AIにできることとできないことについて学べば、AIが自分の仕事にとっての脅威ではなく、より高レベルな仕事を実行できるようにする強力なツールであることに気づくでしょう。歯科におけるAIリテラシーが高まるにつれてシステムの採用が急拡大し、AI診断への抵抗がなくなっていくと期待しています』(記事より)。アーリーアダプター(early adopters)とは新し物好きの意味。患者さんの反応について記事は続きます。『歯科医は、このテクノロジーで最も気に入っているのは患者の反応だとよく言います。患者にとっては、こうした技術があること自体が素晴らしいことであり、歯科医がそのような最先端の診療技術を提供していることを高く評価します。また、AIは患者が医師の診断を理解するのに役立ちます。レントゲン写真上の不明瞭な斑点を指して「分かりにくいですが、これが治療の必要な虫歯です」と説明するのではなく、医師は、AIが明確に輪郭線を引いてラベルを付けた虫歯のレントゲン写真を患者に見せることができます』(抜粋)。最後に「10~15年後にはほとんどの歯科医が導入しているでしょう」と結んであります。

記事を読んでみて・・AI導入に反対する気はありませんが違和感を持ちます。記事ではAIが有効なのはレントゲン写真をもとにした画像診断です。レントゲン画像は診断に必須ですが、他にも視診・触診・打診など画像以外にも必要な情報は多々あります。現在を診て、過去を踏まえ、診断し治療法を選び未来(予後:病気の見通し)を判断します。ただし予後に関して歯科の場合、日々の患者さんのブラッシングなどセルフケアが大きく関わってきます。加えて日本は欧米と異なり、歯科治療のほとんどが保険診療です。保険診療は最高の治療ではありません、最低限の治療の質を保証するに過ぎません。AIはまさに日進月歩ですが、日本の保険診療の内容は日進月歩とは言えません。加えて診断能力と治療スキル(技術)は別です。歯科の場合、いかに診断能力に優れていても治療技術に問題あれば話になりません。

最後に声を大にして言いたいのは、特に日本の歯科医療が「ムシ歯ありき」「歯周病ありき」であること!例外を除いて「白く健康な歯」として生えてきます。ムシ歯ありきではなく「白い歯ありき」なんです。医療においてさらにAIは導入されるでしょうが、まず導入すべきは人々の考え方・生き方の転換だと思います。病気ありきではなく健康ありき・・が本来の姿。歯科の未来形は「白い歯ありき」であり、歯科治療ではなく「歯科予防」です。明日からの未来形をじっくり考えてみませんか。未来への予感ならぬ、まだまだ余寒の今日この頃、皆様ご自愛の程ご歯愛の程。

今回の歯磨き曲(BB:Brush Beat)は未来:futureにちなんで。

BBTime 555 かつ丼

「たくあんの波利と音して梅ひらく」加藤楸邨

2022/1/22投稿 2/1お替り追加
句は「たくあん」なのに「かつ丼」とは、これいかに。「新編 折々のうた 第三」には『「波利」はハリと読むのかそれともパリか。後者の方が実際の音には近いが、この場合にはあえてハリと読むべきだろう。たぶん作者は、「波利」と意識的に漢字で書いて、パリという音をうしろに漂わせながら、ハリの音に軽やかに遊んでいるのである。その結果「梅ひらく」がこの音と優しく響き合う。たくあんと梅の花がこんな形で結びつけられるのを見ることに、詩を読むだいご味もあるといえる』(11頁より抜粋)。毎年、この時期になるとこの句を思い出し味わうとともに「沢庵食べたい!」と唾液が・・今回は「食べたい!」のお話。

先日(1/21)の今日のダーリンは「かつ丼」。久々に(ひょっとすると初めて)「かつ丼食べたい!」の文章でした。食べて書いた人は糸井重里氏。何はさておき、まずは召し上がれ!

『水曜日のお昼に、去年からずっと食べたかった「かつ丼」を食べに行った。「ソースかつ丼」も大好きではあるのだけれど、やっぱり少なめの丼つゆでさっと煮て、卵でとじたものが、本流というか王道というか、ぼくのいちばんなのだ。』

『浅い丼鍋でつくるから、揚げたてのとんかつの一部分には、まったくつゆがかかってないところがある。火にかけて、つゆがわぁっと沸いたところに長ネギを入れ、そこに揚げたばかりの熱いとんかつをするっと滑らせる。とじる卵にしても、まんべんなくかけたりしないし、黄身と白身はあんまり混じり合っていない。あえて、出来上がりの「ばらつき」を料理にしているのだ。食べるときに箸を入れたその部分によって、ちょっとずつ別のメロディが聞こえてくるわけだから、おいしさの変化がたのしめる。
 つゆのかかったごはん、長ネギと重なるとんかつ、かりっとしたころもの部分もうまいし、しっとりとつゆのしみた煮物としてのかつもたのしめる。ときには、とろっとした卵の黄身をごはんに混ぜて、卵かけごはんのように食べる一瞬もある。途中途中で、箸休めのように白菜の漬物を食べたり、小梅をかりっとかじったりしてもいい。思い出したように、かつおぶしの香りも軽やかに残るなめこの味噌汁をすすったりもする。』

『そして、これはみんながやっていることではないのだが、小皿に盛ってくれたキャベツの千切りに、とんかつ用のソースをかけたものを待機させておいて、そこに最初に目をつけておいた、つゆも卵もかかってない、まだ衣のちくちくしているようなかつの一切れを取り分け、ソース味のとんかつとしてキャベツといっしょにいただく。ロースかつ定食にせずに、かつ丼にしたわたしなのに、ソースのとんかつも味わえるのである。
 それも、かつ丼をあえて「むら」に仕上げているおかげだ。この店の、こういうかつ丼のつくり方は、いまは亡きご主人がつくっているころからずっと同じだ。奥さんと娘さんが、店の味をしっかりと引き継いでいる。

 行こうと決めて行く前の日々も、たのしみだったし、 こうやって、思い出している時間も、またおいしい。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。とんかつのなかでも特に丼については、「やまいち」だなぁ。』

最後に出てくる「やまいち」とは東京淡路町のお店だそうな(小生未体験)。こんなにも美味しい「かつ丼」は読んだことがない。嵐山光三郎著「頬っぺた落とし う、うまい!」にもかつ丼はなかったような、明日にでも「やまいちかつ丼」食べたい!

小生、高二から寮生活で日曜は食事無く自前調達。学校近くの喫茶食堂「花の木」のカツ丼が好きでした。味もさることながらおかみさんが美人、けどいつもご主人と仲悪そうに働いていました。画像のような陶器の丼ではなく、底の浅い塗物の大きな蓋付きで、蓋を取った時に立ち登る卵とじの甘い湯気をはっきり覚えています。残念ながらその店は今はなし。

画像は銀座「とん喜」のかつ丼。昔、この店で隣テーブルの男性(工事現場労働者風)が「歯が悪いから小さく切ってくれ」に、お店のご主人「切ったらかつ丼にならん」と。横で聞きながら「だよね!だから歯は大切」とひとり合点しました。カツのみならず、付いてくる沢庵も歯が健康でなければ「パリ」とはいきません。皆さま、かつ丼を味わうためにも御自愛の程ご歯愛の程。

お替り!ここのメニューにかつ丼はありません、丸一です。画像は上ロース、ボリュームすごいでしょ!店は丸一、味は花丸。

BBTime 552 磨く

「明け方の夢でもの食う寒さかな」辻貨物船

大方、夢の中では食べる寸前に目が覚めます。句の食べ物は何だったのでしょうか。解説には『寒い日の明け方、意識は少し覚醒しかけていて、もう起きなければと思いつつ、しかしまだ蒲団をかぶっていたい。そのうちにまた少しトロトロと眠りに引き込まれ、空腹を覚えてきたのか、夢の中で何かを食べているというのである。誰もが思い当たる冬の朝まだきの一齣(ひとこま)だ。まことに極楽、しかしこの極楽状態は長くはつづかない。ほんの束の間だからこそ、句に哀れが滲む。いとおしいような人間存在が、理屈抜きに匂ってくる。物を食べる夢といえば、子供のころには日常的な飢えもあって、かなりよく見た。でも、せっかくのご馳走を前にして、やれ嬉しやと食べようとしたところで、必ず目が覚めた。なんだ夢かと、いつも落胆した。だから大人になっても夢では食べられないと思っていたのだが、あれは何歳くらいのときだったろうか。なんと、夢で何かがちゃんと食べられたのだった。何を食べたのかは起きてすぐに忘れたけれど、そのもの本来の味もきちんとあった。それもいまは夢の中だという自覚があって、しかも食べられたのである。感動したというよりも、びっくりしてしまった』(解説より抜粋)。今回は「磨く」についてのお話。

朝日新聞「折々のことば」です。
『磨くということは、何かと何かを擦り合わせること。擦り合わせないと磨かれない。関口怜子    
 物は他の物と何度もこすれ合うことでぴかぴかしてくる。人も同じ。自分とは異質な人、理解しにくい人、話がうまく通じない人との摩擦をくり返し体験する中で人として艶(つや)やかになってゆくと、仙台を拠点に長く子どものためのアート・ワークショップを展開してきたハート&アート空間ビーアイの代表は語る。そんな遭遇を希(のぞ)むなら自分のほうから出かけていかなくちゃと。』

この文章を読みながら溜飲を下げると同時に「歯磨き」における「他の物」とは何だろうと考えました。単純には「歯と歯ブラシ」でしょうけど、「人も同じ。自分とは異質な人、理解しにくい人、話がうまく通じない人との摩擦をくり返し体験する中で人として艶(つや)やかになってゆく」を踏まえれば「歯」と「歯ブラシ」とは考えられません・・ここでの「磨く」とは、まさに切磋琢磨。

歯磨きにおける「ものと他のもの」とは「歯と歯ブラシ」ではなく「歯の汚れと気持ち」だと考えます。「キレイを保ちたい」「健康でいたい」「美味しく食べたい」等々。「汚れ」とはズバリ「食べること」であり「生きる」ことに他ならないのです。歯を使わずに生きることはできません、食べることで当然歯は汚れます。その汚れを落とすことが「歯磨き」なのです。こう考えると歯磨きとは、「日々の生活」vs「生き方」もしくは「生き様」vs「人生哲学」・・歯をキレイにしている人はキチンと生きている人だと思います。では皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。

BBTime 549 唇

「数へ日やレジ打つときの唇うごく」小原啄葉

画像はどう見ても「レジ打つ人」の唇には見えません(笑)が。皆さんマスクしておられますので、そもそも「唇」は隠れています。今回は「唇」についてのお話。解説には出てきませんが「唇うごく」は「くちうごく」と読むのでしょう(おそらく)。先日の朝日新聞「折々のことば」に目が留まりました。

『唇のまわりに、文化が横たわっている。 ミッシェル・セール  食べる、味わう、話す、歌う、泣く、笑う、愛撫(あいぶ)する。口は文化を最も基本的なところで担う器官だ。知性の原型もそこから蠢(うごめ)きはじめる。赤子は物の形状を囓(かじ)って確かめるし、考えるとはそもそもが、ものごとを吟味すること、つまり味わい分けることだ。そしてホモ・サピエンス。語源をたどれば「味わう人」を意味する。フランスの哲学者の『五感』(米山親能訳)から』(朝日新聞12/16付「折々のことば」)。

かなり前ですが、拙文に「さてタイトルの三つの語句(マンジャーレ・カンターレ・アモーレ)。イタリア語をかじった方はご存じ、イタリアに興味ある人にも耳なじみの言葉でしょう。イタリア人は「食べる・歌う・愛する」ために生きていると、よく日本では評されます。これに関するイタリア人の興味深い記事を見つけました。来日後はじめこそ面白いと感じたが、あまりにも目にするので、今では次元の低いステレオタイプだと思うようになったとのこと。同時に、ふと気がついたそうです。この三つはすべて「口という器官」が関係している!言われてみればそうですね。食べる、歌うはもちろんのこと、彼の解釈では「愛する=キス」で、やはりくち」(ハナ通信No.73)。

イタリア人と言えば・・こんな言葉も。『「陽気にならないと、人はいい仕事ができないぞ」ディエゴ・マルティーナ  日本文学研究家・詩人が引くイタリアの塗装職人の言葉。一日中マスクをしているからか、それとも世間の空気のせいか、仕事中は鼻歌をほとんど歌わなくなった。歌は嫌な仕事にものせてくれるし、まわりの空気もほぐす。適度のゆるみがないと、作業も軋(きし)んで不快な音を立てる。イタリア人は何より「余裕」を大事にする。無理をするのは御法度。『誤読のイタリア』から』(朝日新聞7/26朝刊「折々のことば」より)。歌う・・まさにカンターレ!

唇の脇役」も投稿しております、どうぞ。「唇のまわりに、文化が横たわっている」を考えるに、動物であれば何はさておき「食べる」ことが最優先事項。まさに物事のイロハとはイ=胃、ロ=くち、ハ=歯となります。これがヒトなら、より正しくは恐らく「歯口胃=ハロイ」。歯と口を同じとすれば「ハ・イ」。「ハイ」に携わるのが「ハイシャ(歯医者)」・・おあとが宜しいようで 皆さま、ご自愛の程ご歯愛の程。